『横恋慕の延長(書き直し)』  
 
 
* 『1節:過去の意識』  
 
 
 女子生徒は廊下を歩いていた。ただ何となく、野球部の"アイツ"が気になって。ソフトボールではなく、野球を選んだあの女子生徒が何しているか知りたくて。その女子生徒がいる教室の前で立ち止まってみた。  
 
 いた・・・早川のやつ・・・。  
 
 内心馬鹿だと思っていた。どうせその内あの男子達に着いていけなくなって、ソフトボール部に入れてくれって言ってくるものだとばかり思っていたから。  
 
 
 教室の外から聞こえてくる声は、野球の話だった。七瀬はもちろん、小波や矢部たちと楽しそうに野球の話題で盛り上がっている姿に、幸子は堪らなくムカついた。  
 
 あからさまに嫌な顔をして歩を出す。歩きながらブツブツ。  
 
「女のくせに野球なんかやりやがって・・・」  
 
 誰も聞いていない・・・、誰にも聞こえない声で、そう呟いた。  
 
 この時、高校時代の幸子には、野球とはつまり男がやるものであり、女はソフトボールをするのが常識だった。だからこそ、幸子は早川たちのプロ入りを快く思わなかった。  
 
 
* 『2節:意義』  
 
 
 その男は小波に似ていた。あまり冴えないくせにやたらとモテて、野球じゃここ1番にその真価を発揮するような男。あの頃の野球部部長、小波にそっくりだった。  
 
 今は何とも思わないが、小波の所為で早川は結局最後までソフトボール部には来なかった。  
 
 
「グラブの手入れ?まめなのね、あなた」  
 
 練習が終わり、もう日も色を変えてきた頃、高波【たかなみ】はレンタルグラウンドに持ってきたベンチに座って、グローブにドロースやらを塗って磨いているところだった。  
 
 その姿がどこか、小波だけでなく早川の面影まで背負っている気がした。  
 
「オレって馬鹿なくらい野球好きだしね、毎日磨かないと気が済まないんですよ」  
 
 そう、馬鹿なくらい、あなたはあいつらに似てる・・・。  
 
「飽きない?毎日野球ばっかり」  
 
「・・・何でそんな野暮なこと聞くんですか?飽きてたら本気でプロなんて目指してませんよ」  
 
 そうだった。飽きてたら本気でプロになろうなんて思わない。早川がそうだったように、本気でプロになろうとしてるから、こうやって草野球で野球をしている。  
 
 あたしは何を期待しているんだろう。  
 
 ふと、そんなことを思った。ここで自分が考えていることは、何故自分が野球をしているのかだった。気が付けばソフトボールを辞めて野球をしている自分が謎。  
 
「ねえ、あたしのことどう思う?」  
 
「ぇえ!?」  
 
 高波がうろたえた。目を点にしながら「そんなこと言われても幸子さんにはダンナさんが・・・」なんて言って、ポロッとグローブを落としてしまい、付かなくていい汚れが付いた。  
 
「・・・ごめんなさい、そういうことじゃなくて・・・言い方が悪かったのかも・・・」  
 
 何が何だか分からないような様子で、高波はグローブをひょいと拾い、パンパンと砂を叩く。  
 
 何を言われても構わない。もしかするとこの人なら、ずっと悩んでた問いの答えを教えてくれるかもしれなかった。  
 
 ソフトボール1つに生きてきた自分。気が付けば結婚してた自分。子供ができて、野球を始めた自分。それが幸せなのだと思い続けてきた自分。それら全てが壊れてしまっても良かった。  
 
 
「あなたは・・・女が野球をやるのって、どう思う?」  
 
 そう、全てはそこに尽きた。  
 
 
* 『3節:問の返答』  
 
 
 オレはボーっとテレビを眺めていた。ほんの数年前の、早川あおい選手の引退試合の時のビデオ。プロ野球界のアイドルが野球を辞めた瞬間だった。  
 
 聞いた話では、幸子さんと早川さんは同級生だったらしい。  
 
「何となく解かるなぁ・・・」  
 
 女性が野球をする意義というのか何というか。  
 
 これは本人から聞いたことだけども、高校時代はソフトボール部のキャプテンでエースだったとか。だから余計、幸子さんはソフトボールに縛られているんだと思う。  
 
 きっと、早川さんに野球を辞めさせようとか考えてたんだ。女として、ソフトボールをして欲しかったから。でも早川さんは野球を選んだ。  
 
「そこら辺が難しいところなんだね、きっと」  
 
 
 幸子さんからされた質問に、オレは答えなかった。普通ならああいう質問されれば『全然良いと思いますよ、女性が野球しても』って答えていたと思う。  
 
 
 でも、それじゃダメな気がした。きっと、幸子さんは何度もその言葉を聞いていると思ったから。  
 
 だからオレは何も答えず、ただ「ソフトボールも野球も同じですよ」とだけ言った。幸子さんは一瞬ポカンとしたかと思うと「ふふっ」と笑って、「そうね」とだけ返してくれた。  
 
「何で笑ったんだろ」  
 
 未だに、あの笑みの真意がわからない。  
 
 高波の言った言葉が特別な意味を持つわけではない。『ソフトボールができるんだから野球だって出来るんじゃないですか?』という意味で言っただけだったから。  
 
 ただ少しだけ、グッときたという事実だけを実感した。幸子さんもああいう笑顔が作れるんだと。  
 
「わ、こんな時間・・・」  
 
 今まで元気を分けてくれる為の笑顔しか見たことない。初めて見た幸子さんのあの笑顔が忘れられず、何故かドキドキしてしまう。  
 
 ・・・これ以上考えるのは止してもう寝よう。  
 
 高波は明日どんな顔で幸子に「おはようございます」て言おうか考えながら、電気を消した。  
 
 
* 『4節:予兆の予兆』  
 
 
 次の日の昼飯時だ。  
 
 幸子さんが作ってきてくれたお弁当のおにぎりを頬張りながら、リンちゃんの作ってきてくれたラーメンを食べる。リンちゃん曰く、「お兄ちゃんだけ特別だよ♪」らしい。  
 
「あなたってホント、冴えないくせによくモテるわよね」  
 
「う、ぶ・・・っ、冴えないって・・・、2度目でもキツいなぁ・・・」  
 
 割とショックだった。そりゃあお世辞にもイケメンとまではいかずとも、普通よりは少しくらいカッコイイんじゃないかと思っていた。ナルシストってわけじゃないけど。  
 
「そんなとこ、あいつに似てる」  
 
 幸子さんがオレの顔をジッと見る。何か、まじまじと見られると恥ずかしかったり。  
 
「あいつって誰です?」  
 
「うちの高校の野球部のキャプテンだった人」  
 
「ああ・・・、前にも何かそんなこと言ってましたね」  
 
 あの時はお見合いの話まで出されて焦ったけども・・・。  
 
「もしかしたらあたし、早川に嫉妬してたのかも、あなたみたいな良い人、あまりいないから」  
 
 と言われても、オレはその人じゃないんだけどなー・・・なんて考えてみる。まあ"良い人"って言われて悪い気はしなかった。  
 
 って、その嫉妬の先にあるものって何・・・?  
 
「あーあ・・・、結婚、早まっちゃったなー・・・」  
 
「でも今のダンナさんと一緒になったから、あんな可愛い娘さんがいるんじゃないですか」  
 
 少し前になるけど、練習場に娘さんを連れてきたことがあった。幸子さんに似て凄く可愛い女の子だったことを覚えている。  
 
 そうかもね、と言ってそのまま、黙りこくってしまった。しばらくの沈黙の後、幸子さんが思いもかけない質問を投げかける。  
 
「あなた初体験っていつ?」  
 
「え゛・・・いきなり下ネタですね・・・、大学の時ですけど・・・」  
 
 言うと幸子さんは「そう」とだけ言ってまた黙りこくってしまう。ズルズルとラーメンを食べる音と、ノリのパリパリと弾ける音だけが虚しく響いて、何故か、気まずい。  
 
 
* 『5節:ゴム』  
 
 
 そろそろ少し欲求不満かもしれない。  
 
 そう思い始めた7月の中頃、もうすぐ草野球の全国大会が始まる。高波は名スカウトで有名な影山スカウトに、すでに声を掛けられている。あとはプロテストで結果を残すだけだった。  
 
 それでも練習をサボるわけにはいかないし、サボろうとも思わないのだが・・・。  
 
「ダメだ・・・下半身が疼く・・・」  
 
「この神聖なグラウンドで何変なこと言ってるでやんすか・・・」  
 
 隣にいて聞いていた矢部くんが呆れた様子。  
 
 それというのも、幸子さんのあの問いがえらく頭に残ってしまって、最近やたらとムラムラする。初体験がどうとかの内容は別にいいとして、それが女性から聞かれると、何か意識してしまう。  
 
「ごめん、オレ今日何か気持ち悪いからさっさと寮に帰るよ・・・」  
 
「仕方ないでやんすねぇ、監督には伝えておくでやんす、あとこれ、何だったら使え、でやんす」  
 
 言うとポケットからゴソゴソと何かを取り出し「手ぇ出すでやんすよ」と言われて手を出した。  
 
 ・・・トサッと手の上に置かれたのはコンドーム。しかも4つ。ていうか矢部くん、何でユニフォームのポケットにこんなもの入れてるの?なんて聞きたかったけど、面倒な話を聞かされると思ってやめておいた。  
 
「高波くんにリンちゃん取られるのは癪でやんすが、避妊はしっかりしないといけないでやんす」  
 
 何だかもの凄い勘違いをされている気がするけど、もう敢えて突っ込まない。今はただ、家に帰ってオナニーでもしたい気分だ。  
 
「あ、ありがとう・・・一応、もらっておくよ・・・」  
 
 オレは握ったコンドームをポケットに入れ、その足で寮へと帰った。  
 
 
* 『6節:夢』  
 
 
 寮に帰ってきて、少し頭痛がしているのに気づいた。練習をせずに帰ってきたから、ユニフォームは汚れていない。その格好のままベッドの上に横になる。  
 
「少し寝よう・・・」  
 
 言ってオレは目を瞑った。  
 
 
 それほど深い眠りではない。ただ、夢の中にいることだけは分かっていた。  
 
 目を覚まそうと思って、覚めない。覚めたくない。今起きても、まだ頭痛がするんじゃないかと思ったから。それに、夢の内容が内容だけに。  
 
 欲求不満か、或いは矢部くんにあんなこと言われた所為なんだろう、こんな夢を見るのは。  
 
『リンちゃんッ』  
 
『あ、あぁん!お、兄、ちゃ・・・!んあぁあ!』  
 
 夢の中のオレはリンちゃんを抱いていた。何故だか『ラーメンを持ってきてくれたリンちゃんを襲っている』という脳内設定が働いている。  
 
 裸のリンちゃんと正常位で交わる自分が滑稽に見えた。  
 
『お兄ちゃぁん!もっとぉっ、もっと突いてぇ!』  
 
 夢の中のリンちゃんはオレを激しく求めてくれた。オレはリンちゃんが壊れてしまいそうなくらい強く抱きしめ、ただただ快感を求めた。  
 
『きもち、いい・・・ッッ、きもちいいよぉ・・・!お兄ちゃんッ』  
 
『かわ、いいッ、リンちゃん・・・ッ』  
 
 抱きしめる力を緩めて自分の身体を起こすと、決して大きくはないが、それでも揺れるリンちゃんの胸がオレを挑発していた。  
 
 腰を動かしながら、リンちゃんの可愛いおっぱいに吸い付く。  
 
 コリコリと舌の上で転がる乳首を虐めてやると、リンちゃんが『ひゃぁあんッッ』と可愛い声で喘いでくれる。オレはそんなリンちゃんに、この上ない興奮を覚えた。  
 
 勃って硬くなったリンちゃんの乳首が、オレの舌のひだに触れ、擦れ、リンちゃんの身体に快感の電流を迸らせる。  
 
『あ、あ、あ、あっ、も、もうだめぇっ、お兄ちゃぁん・・・ッ!イクぅ・・・!イっちゃうーッッ』  
 
 オレの方も限界だった。リンちゃんの膣にぶちまけたくて仕方がなかった。込み上げてくるものを実感したその時だった。  
 
『あッ、アッッ!ああああぁぁあぁ・・・!!』  
 
『う、ぁ・・・』  
 
 カクンっとリンちゃんの身体から力が抜けた瞬間、オレはリンちゃんの膣に欲望を吐き捨てた。  
 
 
* 『7節:1児の母』  
 
 
 目が覚めるとオレの下半身は精液で濡れていた。  
 
 まさか夢精しちゃうなんて・・・。  
 
 この上なく恥ずかしかった。ただ幸いなことに、誰にも見られていない。今は草野球の練習の真っ最中だったはずだから。  
 
「起きた?」  
 
 あれ、と、オレは固まった。聞き覚えのある声。空耳?いや違う。何であの人の声が聞こえるんだろう、と、身体を起こす。  
 
「うなされてたわよ、あなた」  
 
「幸子さん!?」  
 
 そこにいたのは私服姿の幸子さんだった。  
 
 何でここにいるんだろう。もしかして練習ってもう終わってるのか?オレってそんなに寝こけてしまっていたんだろうか?などと焦りながら、枕元に置いてある普段は意味の無い目覚まし時計に目をやる。  
 
 まだ10時半じゃないか・・・!普通ならミラクルズ全員がグラウンドの方で練習している時間だ。  
 
 なのに何で幸子さんが??  
 
「何であたしがここにいるか不思議だ、って顔してる」  
 
 そりゃ当然だ。今、この時間の寮には大家さんとオレ以外誰もいないし、幸子さんたちは練習してる時間なんだ。疑問に思わないほうがおかしい。  
 
 もしかしたらさっきの夢で変な声を上げていたかもしれない。最悪だ。  
 
「全く・・・、あなたのお友達に聞いたら『気分が悪いから帰った』って言うじゃない・・・」  
 
 あぁ、そういえば帰ってくるときに矢部くんにそう言っていた気がする。じゃあ幸子さん、もしかしてオレのこと心配してくれたのかも・・・。少し、嬉しかったり。  
 
 私服の幸子さんは、なかなかに綺麗な女性だった。それでもやっぱり"1児の母"って感じがするのは気の所為じゃない。むしろオレの意識はそんなところに何か目もくれず、『人妻』である幸子さんに胸が高鳴った。  
 
「ダンナは出張でいないし、あの子は幼稚園だし・・・あなた1人じゃろくにご飯も食べないでしょ」  
 
 図星だ。最近じゃ1日1食が板についてきている。胃が決まってくる、っていう表現を使うのだろうか?1食でも充分生きていけることが分かった。  
 
「お昼も晩も、あたしが作ったげるから、ちゃんと今日中に治しなさい?いいわね?」  
 
「うん」  
 
 凄く、嬉しかった。  
 
 
* 『8節:精の痕』  
 
 
「シーツ代えましょうか、汗かいたでしょ」  
 
「は、ぁ・・・」  
 
 幸子さんのお母さんっぷりは見てて気持ちが良い。つい流されてしまいそうになる。オレはベッドから降りようとして、咄嗟にまた同じ位置に戻る。  
 
 し、しまった・・・オレの精液・・・。  
 
「ちょ、ちょっと、どうしたの?」  
 
「あ、あああ、い、え!シーツくらいなら自分で代えますー!!」  
 
「そう?」  
 
 オレは自分の精液が付いたシーツを引っ剥がして、ダダダッとベランダの方に持っていった。  
 
 広げて見るとシミが残っている。よく見たら自分のズボンも、オネショしたみたいにベタベタだ。パンツの内側まで気持ちが悪い。  
 
 そのシーツを洗濯機の中に放り込んでフタを閉めた。  
 
「ズボンの方はどうするか・・・」  
 
 このまま幸子さんの前に出たら、絶対に勘違いされる。『あらやだ・・・あなた社会人にもなって・・・』なんて恥ずかしすぎる。そうなるなら、いっそのことこのベランダから飛び降りて死んだ方がましだ。  
 
 ここは1階だから死ねないだろうけど。  
 
「とにかく代えのシーツで隠そう」  
 
「何を隠すの?」  
 
「うっひゃあ!!」  
 
 オレは新幹線よりも早く幸子さんに背を向ける。  
 
「こら、何を隠した?」  
 
 当然、パワフルな幸子さんはオレが隠したものを確認しようとして、身体をがっしり掴んで放してくれない。何てパワーなんだ、この人は。  
 
 それでもやはり、男のオレの方が力はある。無理矢理幸子さんを引っぺがした。  
 
「あ、こら!」  
 
 しめた、とオレは代えのシーツが置いてある押入れに走った。が、神はオレを見放したらしい。一瞬"ズキン"と頭が痛んだ瞬間、オレの身体は前方に勢い良くぶっ倒れた。  
 
 
* 『9節:勃起』  
 
 
「で、そんなちびっちゃうくらい怖い夢だったの?さっきの」  
 
「う〜・・・だからオネショじゃないですってば・・・」  
 
 結局その後、ずっこけたオレを捕まえた幸子さん。オレの精液で濡れたユニフォームのズボンを見て大笑いしていた。どうやら完全にオネショだと思っているようで、恥ずかしすぎる。もう死にたいよ・・・。  
 
 しかもさっきの夢の内容がホラーだなんて、ベタ過ぎる。かと言って、「これはオレの精液です!!」とは反論しづらかった。  
 
「このユニフォームは明日は使えないわねぇ・・・黄色いシミが残っちゃってるし」  
 
「そんなシミありませんよ・・・」  
 
 からかうように、幸子さんは鼻でものを言う。実際は白いシミしかついていない。ユニフォームもズボンは白だから、明日着ていくには何ら問題ないけど、きっと幸子さんが明日みんなに言いふらすに違いない。  
 
「じゃあこのシミは何よー、コーヒー零したじゃ済まないわよ」  
 
 それは比較になっていないと思うけど。  
 
「うー・・・、男にしか解かりませんよ、どうせ・・・」  
 
「は?・・・あ・・・え、男しか、って・・・じゃあもしかしてこれ・・・」  
 
 あぁ、もう恥ずかしい。穴に入りたい。気づかれた。もうオレお婿にいけない。幸子さんがまじまじとオレのズボンのシミを見る。  
 
 こんな時にまで、オレの下半身は幸子さんの視線を敏感に感じ取ってしまっていた。  
 
「あ、や、やっぱりその・・・何だ・・・、出すと気持ち良いものよねぇ〜・・・ははは」  
 
 どうやらフォローしてくれているようだが、フォローになっていない。ムクムクと大きくなる自分の息子が、ついにユニフォームを突き破ってしまいそうなくらいの完全体になってしまう。  
 
「若いわね・・・、それともこんなおばさんにも興奮してくれてるのかしら」  
 
「こ、こんな時に冗談やめてくださいよー・・・恥ずかしい・・・」  
 
 オレは真っ赤になりながら、泣くように訴えた。  
 
「そ、そうね・・・ごめんなさい・・・」  
 
 そう謝った後、幸子さんは俯いた。  
 
「ぁ、あなたさえ良ければ・・・」  
 
 消えかかるような、そんな声で幸子さんは呟いた。オレは「え・・・?」と、幸子さんと同じくらいの声のトーンで聞き耳を立てた。  
 
「こんなおばさんで良いなら、抜いてもらって構わないから・・・」  
 
 はっきり聞こえたその台詞は、オレの息子を脱皮させるほどの威力を持っていた。それは今まさに、完全体から究極完全体へと変貌を遂げさせる言葉だった。  
 
 
* 『10節:自慰行為』  
 
 
 幸子さんは上着を脱ぎだした。上半身がブラジャーだけの状態になると、オレの方を向いて静に、照れながらにっこり歯を見せ、幸子さんらしい笑顔をした。  
 
「き、気になって仕方ないでしょ・・・?・・・あたしがこうしててあげるから、さっさと抜いちゃって」  
 
 それってつまり、幸子さんをオカズにしろってことなのか。  
 
 だとしたら最高だ。幸子さんは野球やってる割に美人だし、スタイルはもちろん抜群だし、なんてったって、普通はこんなことしちゃいけない『人妻』だ。  
 
「本当に良いんですか・・・?」  
 
「う・・・良くなかったらこんなことしないわよッ」  
 
 やばい、可愛い。赤くなる幸子さんが半端なく可愛い。こんな人を生でオカズに出来るなんて最高だ。一生に一度、あるかないかくらいの確率だ。  
 
「今の幸子さん・・・すっげぇ可愛いかも・・・、いっぱい出そう・・・」  
 
「つ、つべこべ言わないでッ・・・は、はは、早く出しなさい!」  
 
「ひあ、は、はいッ」  
 
 言わされてオレはユニフォームのベルトを外してズボンをずらし、濡れたトランクスの窓からペニスを取り出した。もちろん、濡れているのはペニスも同じである。  
 
 
「あ・・・うちのダンナより大きいかもだわ・・・」  
 
 
 オレはいきり勃ったペニスをグッと掴み、幸子さんの胸元を見ながらシゴき始めた。  
 
「わぁ、男の人ってやっぱりそういう風にスルのね・・・」  
 
「う、ぁ・・・」  
 
 幸子さんのブラジャーの内側にある胸を想像する。上半身だけでも、身体のラインが分かっていると想像しやすく、かなり気持ち良い。  
 
 頭痛を忘れさせてくれるこの時間が、とてつもなく長い時間に感じられる。  
 
「あたしの何を見てどんなこと考えてるのかしら?」  
 
「え、あ・・・う、ぅっ・・・そ、そんな、こと・・・」  
 
 幸子さんはかなり困った人だ。そんなの胸を見てエロいこと考えてるに決まってる。張りがあって形が良く、柔らかそうで吸い付きたくなる。少しで良いから触ってみたい。  
 
「あたしの胸を見てどんなこと考えたか言ってみて・・・そしたらズボンも脱いであげるわよ?」  
 
 そんなの美味しすぎる。ていうかこの展開は何だ。最高じゃないか。オレは必死で手こきしながら、言葉を選んだ。  
 
「さ、幸子さんの、おっぱいって・・・形が良いし・・・、柔らかそうだったから・・・」  
 
「だったから・・・?」  
 
「あ、くぅ・・・ギュウって、揉んでみたい・・・とか・・・、乳首に、吸い付きた、い・・・とか考えて・・・」  
 
 言いながら、オレは幸子さんの胸を見て想像していく。無意識のうちに手こきがより一層激しくなっていく。幸子さんで欲望を吐き捨てたい。もっともっと見せて欲しかった。  
 
 幸子さんはそんなオレを見てクスリと笑い、ズボンのベルトを外して脱ぎ始めた。パンティは割と普通に女性が付けるようなもので、凄く新鮮だ。  
 
「は、ぁ・・・はぁ・・・」  
 
「ちょっと嬉しいな・・・こんなおばさんでも魅力を感じてくれるんだって思うと」  
 
 おばさんってほど歳は食っていないと思う。20代後半、30いってるかいってないかの瀬戸際なはずだ。そう考えれば、オレから見た幸子さんは『お姉さん』って方があっている。  
 
「そんな・・・綺麗です・・・、幸子さんは・・・」  
 
 言ってオレは目線を下に移していく。  
 
 この綺麗な太股にキスしたい。股を開かせて、もっと奥まで見たかった。淡いピンク色のパンティの奥にある、幸子さんのアソコに、オレのペニスをぶち込みたい。  
 
 オレの手こきは一気にスパートがかかる。  
 
「そろそろかしら?」  
 
「う、は・・・ぁ・・・ッ、イク・・・」  
 
 幸子さんが本気で欲しいと思った。結婚してようがそんなのお構いなかった。むしろ、今のダンナさんから幸子さんを奪ってしまいたかった。  
 
 そんな願望も一緒に、オレは全ての欲望を吐き捨てた。  
 
 
* 『11節:フェラチオ』  
 
 
「まだ元気なのね・・・」  
 
「いや、その、しばらくしてなくて・・・野球野球で忙しかったから」  
 
 オレのペニスは精を出しても尚、その形を変えることはなかった。敢えて言うなら、究極完全体が完全体にランクダウンした程度だ。  
 
 まだまだヤり足りない。そう思っていると、幸子さんが思いがけない行動に出た。  
 
「わ、ちょ、ちょっと!幸子さんッ!?」  
 
 急にオレの下半身に顔を埋めたかと思うと、チュプッとオレのペニスから垂れる精液を舐め取っていく。幸子さんの舌に敏感に反応するオレのペニスが、また張り裂けそうになる。  
 
「あ・・・幸子さッ・・・!う・・・ぁ」  
 
 一通りオレの精液を舐め終わると、幸子さんはゆっくりとオレのペニスを咥え始めた。  
 
 舌の先でペニスの先端をチロチロと舐められる。あまりの快感に、オレの息子は我慢汁を零し始めていた。そんな我慢汁ですら舐め取ってくれる幸子さん。気持ち良過ぎた。  
 
「んふ、下手だけど許してね」  
 
「そんな・・・下手だなんて」  
 
 もう一度咥えなおすと、幸子さんはゆっくりとフェラし始めた。  
 
 下着だけしか付けていない姿があまりにも官能的で、かかんでいる幸子さんを上から覗くと、ブラの下に胸の谷間が見え隠れする。  
 
 フェラ自体はそれほど上手ではないが、そんな不慣れな手付きでも、高波は嬉しかった。  
 
「ん、ん、んっ・・・ん、ん・・・っ、んっ」  
 
 
 一生懸命してくれる幸子さんが愛おしくなってくる。そんな時、『幸子さんを抱きたい』という欲望が表に出始めていた。  
 
「んっ、ん・・・んん、ん、んっ、ん、は、ぁ・・・む、ん・・・んっ、ん」  
 
 やがて溜まっていた精液の第2発目がこみ上げる。ここで出してしまうと、もしかしたら『これでお終まい』なんてことになりそうだった。  
 
 そんなの嫌だ。もっと、幸子さんと一緒にいたかった。  
 
 オレはペニスを咥えている幸子さんを引っぺがし、ドサッとそのままベッドに押し倒し、その下着だけの半裸体に覆い被さった。  
 
 
* 『12節:欲情』  
 
 
「だめ・・・あたしにはダンナが・・・」  
 
「ここまでしたらもう一緒だよ、オレ、幸子さんが好き・・・」  
 
 イケナイ事だとは分かっている。でもこの溢れ出でる衝動を、もう自分では止められない。幸子さんを抱きたいという衝動は決して治まらない。  
 
 抱きたい。愛してあげたい。ダンナさんから幸子さんを奪いたい。  
 
「脱がすよ・・・」  
 
「やめて・・・ダメよ、こんなこと・・・」  
 
 オレの胸に当てられた手は、抵抗の意味を成していなかった。  
 
「だったらもっとオレを拒んでよ・・・、自分じゃ抑えられない・・・幸子さんが好きなんだ・・・っ」  
 
 言ってブラジャーに手をかける。「や、やめて・・・」と幸子さんが呟くが、そんなことはお構いなかった。背中に手を回す。クイッと引っ張ってブラジャーのホックを外すと、グッと引っ張ってブラジャーを投げ捨てる。  
 
 幸子さんの張りのある綺麗な胸がプルンと揺れ、これまた綺麗なピンク色の乳首が高波の前に顔を出した。  
 
 幸子さんは恥ずかしいのか、胸を手で覆った。  
 
「こんなおばさんなんか抱いて・・・あなたは嫌じゃないの・・・?」  
 
「何言ってるんだよ、さっきも言ったけど、オレは幸子さんが好き」  
 
 そう言って幸子さんの唇を奪った。僅かにオレの精液や我慢汁で苦いけど、そんなこと気にならなかった。舌を挿入させ、幸子さんの舌と絡める。  
 
 自分の液と幸子さんの唾液が交じった液体を舌を使って絡め取っていった。  
 
「ん、はぁっ、それにさ、こんなに可愛いじゃん・・・おばさんなんかじゃないよ、お姉さん」  
 
 オレは幸子さんの下半身に手を伸ばした。  
 
「あ、や、やめ・・・ひあ!ひ、んッ」  
 
 パンティの中に手を潜り込ませると、幸子さんが親指を咥えた。その仕草が堪らなく可愛い。  
 
 指をアソコに持ってくる。入り口に中指だけをズルッと挿入させる。幸子さんのヴァギナは既に出来上がっていて、中指はすぐに愛液に飲まれた。  
 
「んくぅ・・・」  
 
 幸子さんの肉壁がオレの中指を包み込み、締め付けた。軽く出し入れすると、幸子さんはビクンビクンと身体を反応させた。  
 
「ねとねとしてる・・・、幸子さんも興奮していてくれたんだね」  
 
「そ、そんなこと・・・ひ!ぃぁあ!あ、ん、むぅ・・・」  
 
 咄嗟に幸子さんの口を塞ぐように唇を奪う。忘れていたことだけど、あんまり大声出されると大家さんにバレてしまう。大家さんにバレれば、きっと矢部くんや輝に伝わってしまいかねない。  
 
「幸子さん、もうちょっと声のトーン下げて・・・」  
 
「・・・ねぇ、ホントにするの・・・?あたし、浮気になっちゃう・・・」  
 
「大丈夫、黙ってればバレないよ、幸子さんだって本当は溜まってたんでしょ・・・?」  
 
「・・・」  
 
「じゃないとあんなことしないよ、オレみたいな"冴えない"男に」  
 
 そうだよ、冷静に考えてみれば、こんなこと普通じゃありえないんだ。『自分を使って抜いてくれ』だなんて、そんな都合の良い女性なんているはずないんだ。  
 
 考えられることなんて1つしかなかった。幸子さんは欲情したんだ。それも、オレが『幸子さんを抱きたい』って思う前に。  
 
 
* 『13節:母乳の味』  
 
 
「足、開いて・・・さっき幸子さんがしてくれたみたいに舐めてあげるから」  
 
「や、やだ・・・そんなの恥ずかしいわよッ」  
 
 そんなことお構い無しにパンティに手をかけると、幸子さんはオレのユニフォームの袖を掴んで引っ張った。俯き下唇を噛んで、顔を真っ赤にしている。  
 
「あたしだけが恥ずかしい思いをするなんて不公平よ・・・、あなたも全部脱いで・・・」  
 
 どうやらもう諦めたようだ。  
 
 オレは「良いですよ」とだけ言って、中途半端に脱げたズボンとトランクス、上のユニフォームやアンダーシャツもさっさと脱いでバサッと纏めて脱ぎ捨てた。  
 
「ホント、若いのね・・・、ふ、ぁ、ぁあッ!」  
 
 幸子さんの股に顔を埋める。愛液で濡れたヴァギナを、舌や唇を使って愛撫する。  
 
「大きい声出しちゃダメだってば・・・、ちゅ・・・、幸子さんのここ、可愛い」  
 
「ひぁ・・・だ、だめ・・・あ、ん、んんん・・・」  
 
 オレに言われた幸子さんは声を押し殺しているが、それでも喘ぎ声は漏れてしまう。そんな喘ぎ声が可愛くて可愛くて仕方がない。もっと可愛い声が聞きたい。もっと感じて欲しかった。  
 
 ダンナさんにどんなことをされてたなんて気にならない。今はダンナさんよりもっと気持ち良いことをしてあげたかった。『オレの方が良いでしょ?』とでも言うように・・・。  
 
 オレは一旦ヴァギナの愛撫をやめた。幸子さんの胸を触りたかった。  
 
 幸子さんの身体を起こし、オレは幸子さんの後ろに回った。後ろから両胸を鷲掴みにすると、幸子さんが「ひあぁ・・・ッッ」と可愛い声を上げた。  
 
「幸子さんのおっぱい柔らけー・・・」  
 
 ムニムニと大きく円を描く。  
 
 丁度手の平を挑発するように、幸子さんの乳首が勃起した。手の平と乳首が擦れて、幸子さんの身体に快感を与えていく。  
 
「あ、ああ、あんッ、だ、めぇ・・・、きもち・・・い・・・っ」  
 
 やっと気持ち良いって言ってくれた。そのことがこの上なく嬉しかった。嬉しくなってもっと力を入れてグニグニと揉んでいきながら、中指を使って器用に乳首を擦り付けていく。  
 
 ふと、その中指に水滴が付くような感覚があった。  
 
「あれ・・・汗・・・」  
 
「ん、あ・・・ぅ、そ、それは・・・」  
 
 え・・・これって・・・。  
 
 中指を確認してみる。少量過ぎて透明の液体。舐めてみたけど、しょっぱくない辺りから、それが母乳だということが分かった。そう、幸子さんの娘さんって、まだ幼稚園に入りたてだ。  
 
 それは、幸子さんの母体機能が、まだまだ全然現役だということを証明する母乳だった。  
 
「ダンナさんに味見されたことある?」  
 
「な、ないわよ・・・そんなこと・・・」  
 
「じゃあオレが初めてになるね、いただきま〜す」  
 
 ダンナさんより先に幸子さんの母乳を味見することに対して、少し優越感があった。  
 
 さっき押し倒した時のような体制に戻し、幸子さんの乳首に吸い付いた。口を窄め、丁度ストローを使ってドリンクを飲む時のような要領で、幸子さんの母乳を吸いだした。  
 
「あ、や、やだっっ、ちょ、高波くん!?あ、やんっっ」  
 
 何だか初めて名前で呼んでもらった気がするけど、この際そのことは置いておく。  
 
 母乳ってそれほど味がない。コップ一杯で例えるなら、8割水で2割牛乳だ。決して美味しくはないけど、幸子さんの母乳ってだけで興奮した。  
 
「あんんんん・・・っっ、だ、だめぇ・・・」  
 
「あんまり味ないんだね」  
 
「んあ、ひ、ぁ・・・、あ、赤ちゃんには甘く感じるの・・・ッ」  
 
 何をムキになっているのか。エッチな母乳、ごちそうさまでした。  
 
 
* 『14節:挿入』  
 
 
 浮気なんて屁の河童。罪悪感など微塵もない。ダンナさんから奪うために、幸子さんをオレだけのものにするために。幸子さんがオレのことを好きになってほしかった。  
 
 オレは未だにいきり勃つペニスにコンドームをかぶせる。  
 
「あ、あたしは・・・どういう体制になれば良いの?」  
 
「そのままで良いですよ、幸子さんの表情を見ていたいし」  
 
 もちろん正常位だ。胸が揺れたり、快感に喘ぐ幸子さんの表情が見れる。普段の幸子さんは、元気で強気で多少男勝りだけど、こうなってしまうと本当に女性だ。  
 
 こんな可愛い幸子さんを、誰か名前も知らない他所の男に先を越されたかと思うと、怒りがこみ上げてくるような気がした。敢えて考えないことにする。  
 
「挿れるよ」  
 
 オレのその一言に、幸子さんはコクリと1つ頷いた。矢部くんに貰ったコンドームがこんな風に役立つなんて思っていなかった。どうせ使わないまま放置するだろうと思っていたから。  
 
 
 ペニスの先端を幸子さんのヴァギナに宛がった。愛液で濡れているし非処女だから、一気に挿れても良いかもしれないけど、オレは新鮮な気分で幸子さんとセックスがしたかった。  
 
「あ・・・」  
 
 ゆっくりと、処女を奪う時のように優しく、ペニスを挿入していく。幸子さんのうっとりしている顔。妙に色気があって、その表情に見惚れた。  
 
 奥までペニスを挿入し終わる。幸子さんの膣はありえないほど気持ち良い。  
 
「嬉しい・・・あたし、こんなに優しく挿れられたの初めて・・・」  
 
「本当?」  
 
 だとしたら、結局ダンナさんは性欲に対する本能だけで幸子さんを抱いたんだ。ムカつく。こんなに綺麗な女性なのに。  
 
「あ、でもオレ経験・・・ほんの2〜3回しかないんだ・・・、下手くそだけど我慢して」  
 
「大丈夫よ、あたしもそんなもんだし・・・、セクレに慣れてきちゃってたから・・・」  
 
 セックスレスのことだろうか。何か嬉しいな。しばらくご無沙汰だなんて。  
 
「あの人愛撫も何もしてくれなかったから・・・、胸揉んで自分が興奮してるだけだったし・・・」  
 
 少し腰を動かしてみる。いきなりで驚いたのか、幸子さんのヴァギナはキュッ!とオレのペニスを締め付け、今度はオレの身体にビビッと快感が迸った。  
 
「きゅ、急に動いたらビックリするでしょ・・・ッ!」  
 
「ご、ごめんなさい・・・」  
 
 怒られたけど、何だか可愛かった。本当に数回しか経験が無さそうな初々しさが残っていたから、この新鮮な感じが堪らなく嬉しい。  
 
「動くよ・・・?」  
 
「う、ん・・・、優しく・・・して・・・」  
 
 笑顔で了解した。幸子さんに気持ち良くなって欲しいから。幸子さんの要求に全部答えようと思った。ゆっくり、ゆっくりと、幸子さんを愛おしむようにピストンを開始した。  
 
 
* 『15節:オーガズム』  
 
 
「アッ、い、いいッ、あッ、そこっ、んっ、そこッ」  
 
 ゆっくり、20回ほどピストンさせていくと、幸子さんの一番感じる部分が分かってきた。  
 
 それにしても、幸子さんの経験が浅いなんて嘘みたいだった。キュッ・・・キュッ・・・とピストンする度に肉壁がペニスを包み込んできつく締め上げ、オレの理性を追い出そうとしている。  
 
「幸子さんの・・・、すげ・・・」  
 
「ああんッ、ん、んぅッ・・・、あ、はっ、うれしっ、あ、アアッ」  
 
 パンパンと肌を突く音と喘ぎ声が部屋中に響く。声は極力我慢してくれているらしく、これくらいなら外には漏れていない。  
 
「幸子さ・・・ッ、気持ち・・・良い?」  
 
「はぁ、あ、あん、あ、いいッ、いいッ、すごく・・・あああっっ」  
 
 乱れた髪が汗で濡れて、妙に色っぽい。胸もいやらしく揺れる。  
 
 オレはピストンを続けながら上体を寝かし、幸子さんの身体に軽く被さり、両手で両胸を包み込んだ。胸の突起を口に含んで、胸を掴んでいる手に力を込める。  
 
「あぁ!ん・・・だ、めぇ・・・ッ」  
 
 絞りたての母乳をコクコクと飲んでいく。味は相変わらずだが、やはり幸子さんの母乳というだけで興奮した。それと比例してか、オレのペニスは更に膨張し、腰の動きも激しくなる。  
 
「うっ・・・大きい声・・・出しちゃダメだよ・・・、幸子さん」  
 
「あ、うぅん・・・だ、って・・・アァッ、んッ、だってっ、あ、ひぁっ」  
 
 オレは込み上げてくるものに我慢しながら突き上げ続ける。  
 
 幸子さんの背中手を回すと、丁度幸子さんの唇が真下にある。喘ぐその唇を強引に奪うと、喘ぎ声が呻き声みたいになって、何だかレイプしているような、違う気分にもさせられた。  
 
「ん、んんっ、んー・・・ん、んんんんッ、はぁッッ、あ、はぁ・・・っ、はぁ・・・っ」  
 
「ごめん幸子さん・・・っ、でもオレ、もうすぐイきそう・・・ッ」  
 
「んぁぁあ、あ、あたしもっ、高波くんっ、イかせて・・・っ、お願いッ」  
 
 背中に回した腕に力を込める。ギュッと抱きしめ、ペースを上げる。すると幸子さんの手足がオレを求めるようにしがみ付いてくる。幸子さんの顔をチラッと見ると、イク一歩手前の表情だ。  
 
 セックスレスによるものなのか、久しぶりのセックスが身体に刻み込んでいるのは、やはり『女の喜び』以外の何物でもない。  
 
 不意に優越感をモロに感じた。この瞬間だけでも、幸子さんはオレを求めてくれる。今、幸子さんが求めているのはダンナさんなんかじゃなく、オレだということ。幸子さんの心を独り占めにしていることが嬉しかった。  
 
「大、好き・・・だよっ、幸子さんッ」  
 
「あ、はぁッ、あ・・・あたし、もっ、好きッ・・・大好きッッ」  
 
 ベッドが軋む音を聞いた。汗が弾いた。抱きしめる腕に力が入った。  
 
 オレはスパートをかける。激しく突き上げるペニスはもう既に欲望を溜め込み、込み上げてくるそれらを必死にブロックしている。後は何か引き金になるものを解除してしまうだけだった。  
 
「もうッ、もうだめッ、イクっ、あたし・・・イっちゃうッ!」  
 
「う、あ、あ・・・お、おれ・・・も・・・ッ、ダメ・・・」  
 
「あ、あ、ん、あ、ああ、あ!んあぁあぁぁああああ!!」  
 
 お互いの乳首が擦れあったその瞬間、ビリッと身体に電撃が走ったのを引き金に、オレと幸子さんは同時に絶頂に達した。  
 
 幸子さんの身体からガクッと力が抜けた。追うように、オレは幸子さんの膣で果てた。  
 
 
* 『16節:共犯』  
 
 
「あはっ、高波くんの精液、見て、こんなにいっぱい、溜まってたんだわね〜」  
 
 幸子さんはオレの精液が入ったコンドームをぶら下げ、ケラケラと笑っている。オレのペニスは夢精・オナニー・セックスの3回の射精ですっかり元気を失っていた。  
 
「幸子さん、浮気しちゃったね・・・」  
 
「あら、あんなダンナ要らないわよ、高波くんの方がいっぱいあたしのこと愛してくれそうだし」  
 
 でも真面目な話、幸子さんはもう既に結婚している訳だから、オレと一緒になれない。何故か、凄く寂しい。終わってみればこんなにあっけないなんて。  
 
 ダンナさんさえいなければ、こんな気持ちにはならなかったのに・・・。  
 
「あたしにダンナさえいなければ、って顔してる」  
 
「そ、そんな顔・・・」  
 
「してる、分かるわよ、好きになった男性の考えてることくらい」  
 
 好きになってくれれば、そうなるほど悲しい。多夫一妻なんて聞いたことない。日本の法律がそれを許さない。こんな気持ちになるなら、抱かなければ良かった。  
 
 あれ・・・、涙が・・・。  
 
「安心しなさい、あたしに考えがある」  
 
「・・・へ・・・??」  
 
「別れる理由があれば別れられるんでしょ?なら楽勝だわよ」  
 
 幸子さんは何を言っているのか。でもまあそういえば、別れる理由があれば離婚できたような。  
 
「ダンナにも浮気させりゃオールオーケーじゃない?」  
 
 パワフルにも程がある。どうやってそうさせるか分からない。だけど、オレは嬉しかった。少なくとも、幸子さんはオレを選んでくれた。今はそれだけで良い。  
 
 幸子さんは裸のまま、持ってきた自分のカバンから携帯電話を取り出した。  
 
 
 "―もしもし倉橋?お見合い?まあ似たようなもんだけど・・・、協力して欲しいの、成功したらあんた好みの―・・・"  
 
 
(終わり)  
 
 

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