樺恋は甘〜い一時を終え、教室に腰も軽く帰る。  
するとそこには深衣奈が……  
「あら樺恋……お昼どうしたのよ?麻郁も見つからないし………  
 先にもう1人で食べちゃったわよ?」  
深衣奈は、散々2人を捜した挙げ句に、  
全く見つからないので1人でふてながら  
弁当を食べていたのであった。  
そんな深衣奈を見て、ちょっと罪悪感にさいなまれる樺恋。  
しかし、別れ際に次は深衣奈と、と麻郁も言っていたので  
複雑な気持ちではあったが、深衣奈に悪びれる事を辞めた。  
「ちょっと、用事があったんですぅ〜」  
そう言って心なしか体を浮かせて深衣奈の肩に手をやる。  
「ん? なんか変な感じね?」  
深衣奈はそんな樺恋の違和感に気付き怪訝な顔をする。  
「なーんか怪しいなぁ……、妙に嬉しそうだし……」  
深衣奈は女の勘という奴で、樺恋に疑惑を沸き立たせた。  
そんな鋭い目になった深衣奈を見て、少しびびる樺恋。  
しかし、ま、自分だけじゃないしとか思い直し、  
ニコニコしながら深衣奈の手を取る樺恋。  
「いいじゃないですかぁ〜、それに次は深衣奈さんですよぉ〜」  
そう言ってニパーと笑う樺恋。  
深衣奈はそんな変な樺恋の仕草にますます違和感を覚えるしかなかった。  
「樺恋……大丈夫? 頭?」  
深衣奈は、頬を引きつらせた。  
 
麻郁は突っ伏していた。まぁこの次の授業前の短時間に  
樺恋の運んでくれた弁当をパクついていながらであったが…。  
「いけないねぇ〜麻郁君……昼はもっと早くに食べないと〜〜」  
島崎が相変わらずやってくる。そして麻郁に抱きつこうとする島崎。  
「うるせーー!! 俺は忙しいんだっ!」  
弁当を腹に詰め込みながら変態相手に叫んでその場から退避する麻郁。  
まさかエロに忙しいでした、とは言えないし……  
(くそっーーーー)  
いつもの涼しげな変態フェイスを横に置いていると  
腹が立つのもますます倍増される。  
「仕事も良いが、愛は大事にしないといけないよぉ〜麻郁君〜」  
そう言って背後に薔薇のスタンドを広げる島崎。  
そんな仕草に、女子の黄色い声がどよめく。  
「ええいっ俺に近づくな変態っ!!」  
麻郁はとにかく高速で食事を行いながら、島崎を足で牽制した。  
しかし、こんなやり取りで助かってる今の自分に  
麻郁は目眩を覚えるしかない。  
さっきまで、樺恋をバックからチンチンで突きまくりたい衝動を  
必死に堪え続けていたのだ。帰り際にはいきり立つムスコに  
パンチの1つ2つお見舞いして、痛みでシクシク泣いたりもしたのである。  
その我慢のフラストレーションは、思った以上に大きかった。  
だからこうやって、アホ相手に意識を拡散出来る事は有りがたい事であった。  
(くそっ……誤算だったな……俺の欲求ってのは………  
 今度は深衣奈相手か………我慢出来きれるのか……俺………)  
麻郁はその「次」を思って暗澹たる気持ちになるしかなかった。  
 
そしてネクストステージ〜なわけですが、  
流石に5限の昼休みに情事を……というわけにはいかない訳で  
6限まで経過して放課後をミッション時間に設定する麻郁。  
事前通達で5限の休みに深衣奈に放課後に一緒に帰ろうと通達してある。  
当然、樺恋には目配せして口裏を合わせて貰った。  
まぁ、当の樺恋は昼のハニャーンな行為の後なので、  
麻郁の予定通り目を潤ませ、  
5限の間中、脳内妄想で出来上がっていたみたいであり、  
まずまずの成果と見て取れたが、やはり問題は深衣奈であった。  
怪訝な顔をひたすら浮かべる深衣奈。  
一緒に3人で帰ろうという話は当然納得できたが、  
麻郁と樺恋の2人の態度が明らかにおかしいと感じていた。  
「なんか私に隠してない? 2人とも?」  
ジト目で2人を深衣奈は詰問したが、2人は惚ける。  
そんな感じで適当に誤魔化して、放課後を迎える麻郁。  
先に樺恋と合流する。  
樺恋は6限も脳内妄想でハァハァしていた様で、  
麻郁の顔を見るだけで瞳を潤ませ、顔を真っ赤にさせていた。  
 
「夜にたっぷり期待出来てるか?樺恋……」  
ちょっと嫌らしそうに微笑みながら、聞いてみる麻郁。  
そんな麻郁の意地悪な問いかけに、  
変に笑顔を浮かべながら樺恋は答えた。  
「もう、今でも濡れちゃって、  
 ショーツ凄い事になっちゃってますよぉ〜麻郁さん〜」  
言って顔を真っ赤にさせているのに、それでも笑顔が止まらない。  
思わず麻郁の腕に腕を絡ませてしまう樺恋。  
そんな樺恋の仕草に愛らしさを感じ、髪をそっと撫でる麻郁。  
そっと耳元で囁く。  
「夜になったら……その……なんだ………  
 やりたい放題……やってやるから……覚悟してくれよ……」  
自分でも無茶言ってるな…と思いながら麻郁はハズイ台詞を口にした。  
その言葉に、樺恋は  
「はいっ! ものすっごく期待してますからっ!!」  
と更に目を潤ませるばかりだった。  
そして、先に1人で家に帰って食事の準備でもしてくると告げる樺恋。  
 
今日はバイトもオフなので、さっさと帰れるのだ。  
「その……1人で帰るって……大丈夫かな?   
 えっと、4,5人の悪漢に囲まれて襲われてとか………」  
麻郁も麻郁で、いざ愛しくなると妙な妄想が沸くようだった。  
そんな言葉に、思わず吹き出してしまう樺恋。  
「もぉ麻郁さん〜、そんなのおかしいですよぉ〜  
 こんな、のんびりした田舎の中ですよぉ〜〜〜」  
ちょっとした、たわいもない会話なのに、  
そんな言葉が出てくるのを思うと、妙に愛されている事を感じる樺恋。  
やっぱり腰が軽くなる。  
「今はまだ私1人の方が、良い思いしてますから………  
 今度は深衣奈さん……、ちょっとやっぱり…妬けるけど……  
 それでも頑張って下さいね……麻郁さん………」  
樺恋は無理に笑ってそう言う。そんな言葉に思わず頭をかく麻郁。  
じっと考えると公然と浮気しますと言ってるわけなのに、  
それが2人の間でまかり通っているのがおかしい。  
それでも樺恋は続けた。  
「確かに、私達……おかしいですけど………  
 でも……私……1人で麻郁さんに独占されるより……  
 麻郁さんが深衣奈さんも愛してくれないと嫌ですよ………」  
樺恋はそう言ってはにかんだ。  
 
「女の子って、独占欲強いって言われてるけど……違うのかな?」  
麻郁は樺恋の言葉に耳年増(?)な事を言って頭をかく。  
その言葉に思わず吹き出す樺恋。  
「男の人だって、独占欲強いじゃないですか……すっごく……  
 そんなの、一方の勝手な思いこみですよ………たぶん…」  
樺恋は言っておかしそうに笑うしかない。  
「そっか……」  
麻郁は樺恋の返事に、妙に納得してしまった。  
「私……深衣奈さん……とっても好きです………  
 何時も一緒に悩んで騒いで…楽しく過ごせる相手だから……  
 麻郁さんを好きなのとは全然違いますけど、大好きなんです……  
 深衣奈さんは…私の家族だから………  
 だから、深衣奈さんにも麻郁さんと幸せになって欲しいし、  
 私だって、麻郁さんに幸せにして欲しい……  
 私は……そうなんです………」  
瞳を滲ませながら樺恋はそう言った。  
そんな樺恋の言葉に、思わず胸が熱くなる麻郁。  
「そっか……じゃ……3人で幸せに成れるように頑張らないと……  
 やっぱいけないな……俺達………」  
そう言って、今度は麻郁がはにかむ。  
「はいっ!」  
そんな麻郁の台詞に、胸を弾ませて樺恋も答え返すしかなかった。  
 
「で? 私はこの状況に説明を求めてもいいわけなの?」  
場所はいつぞやの体育倉庫の中、麻郁と深衣奈は向かい合い  
深衣奈はしらーっとした視線で麻郁を見つめていた。  
「やっぱり説明が必要かな?」  
麻郁もかなり疲れた表情で、その視線を受けて頬を引きつらせる。  
麻郁は、3人で合流した後、深衣奈に用事があるのだと言って  
樺恋に先に帰らせ、そして深衣奈を連れてきたのである。ここに。  
説明を求められるのは当然だった……が……  
深衣奈の眼は既に全てを悟りきっているようにも見えた。  
「5,6限の樺恋のあの浮かれようと、  
 こういう場所に連れてこられた今の状況を合わせると、ね…  
 だいたいどういう事なのか想像がつく訳よ……そこは…」  
深衣奈はしらーっとした眼を麻郁に送り続けて彼をいたぶった。  
麻郁も思わずハァーと額に手を当てる。  
「じゃ、何も聞かずにこのまま……という、  
 俺の労力短縮は……やっぱり駄目かな?」  
麻郁は自分でアホな事を言っていると思い、  
溜息を連射するしかなかった。  
深衣奈も麻郁の言葉に肩を上げる。  
「難しい所ね……やっぱ納得のいく説明が欲しいわね……  
 こういう事するに至った……」  
 
深衣奈は、これから起きる事に関して、  
一つの諦めにも似た境地に陥っていたが、それはそれとして  
思考回路の方がこの状況を納得できる理由を欲する。  
ま、当然の事だった。  
「3人で夜に一緒にって決めたのは麻郁じゃん……  
 なのにどうして、しかもわざわざ学校で1対1なのよ?」  
深衣奈は率直に自分の疑問を麻郁に言った。  
その言葉は既に樺恋から問われた言葉である。  
「ハァ……1日に2度、同じ説明をするのは疲れるな……」  
深衣奈の言葉を聞き、麻郁は思わず率直な感想を口にする。  
「それでも説明して貰わないと困る…」  
深衣奈は2度目という言葉に、1度目が樺恋であるという事は  
容易に想像が出来たが、それなら尚更、説明してもらわなければ  
ワリが合わないとムッとした表情になる。  
「まぁ、端的に言えば、時間差で2人を愛でまくって  
 盛り上がった所で3人でラブラブ大作戦と、そういう訳なんだが…」  
麻郁は自分で自分の思考の要約をして目眩を覚えた。  
「………麻郁………馬鹿じゃないの?…アンタ……」  
深衣奈は、麻郁の知能指数の低そうな作戦名を聞いて、  
引きつった顔を更に引きつらせるしかなかった。  
「俺も自分で、自分が馬鹿じゃないのかと思い始めた……」  
深衣奈に一撃で魂を刺し抜かれて、鬱を感じる麻郁。  
なんだか泣きそうになってきた。  
 
そんな、妙に哀れに映る将来の旦那の姿を見て、  
同情を感じ始める深衣奈。  
馬鹿は馬鹿だが、それでも一生懸命考えたんだろうなぁと  
そう言う事は分かるので、どう言って良いのかさえ分からない。  
微妙な『間』が2人の間に漂っていた。  
「なんか……アホらしくなってきたな……辞めて家に帰るか……」  
麻郁は深衣奈に言われた言葉に、鬱が激しくなり、  
もう深衣奈と2人でイチャイチャとか、  
わざわざ疲れる事は辞めて  
家で夜中に3人でくんずほぐれつにしようかと  
妥協の思考を巡らせ始める。  
「それもヤダ………」  
麻郁の諦めの言葉を耳にして、今度は深衣奈が尖った。  
「へ?」  
服を深衣奈に握りしめられて、体育倉庫を立ち去ろうとするのを  
止められた麻郁は、深衣奈の行動に眉をひそめる。  
そんな麻郁に、深衣奈は少し必死になってすがりついた  
「だってしょうでしょう!? 樺恋には特別に2人でHしてたのに  
 私は辞めて家でだけって、不公平だよっ!!  
 私だって2人だけで麻郁とHな事したいよっ!」  
深衣奈は、樺恋がどんなに麻郁と素敵な時間を過ごしたのかと  
想像してしまい、それを思って激しく嫉妬を感じるしかなかった。  
 
これでは樺恋が1回得をしたようなもので、  
ここで帰ってしまったら深衣奈は物凄く不満が残る所である。  
「じゃ……すっか? ……ここで?」  
麻郁は深衣奈の真っ直ぐな気持ちを聞いて、  
やっぱり腹をくくるしかないかと息を吐いた。  
「うーー、なんか……、気持ちの高ぶりというか、  
 気持ちの経路が滅茶苦茶な気がするけど………  
 しょーがないよね……私としては………」  
深衣奈は現状が完全に選択の余地の無い状況に追いつめられた事を思って  
物凄く複雑な気持ちになるしかなかった。  
そりゃぁまぁ……、好きな男に抱かれる事が嫌なわけではないのだが…  
「でも……H……するのは……納得するからいいけどさ…麻郁……」  
体育倉庫のマットに腰を下ろし、どうぞ押し倒して下さいと  
言わんばかりの姿勢になってから、深衣奈は少し心細げな目で麻郁を見上げた。  
「何だよ? 深衣奈……」  
そんな深衣奈の、少し不安げな表情を見て、  
ルパンジャンプをする勢いも失せて  
同じように、しなっと深衣奈の隣に座り込む麻郁。  
「ちょっとだけ、不安だから……教えてよ……」  
「ん? 何?」  
深衣奈の不思議な言葉に表情を歪める麻郁。  
 
「どうして……先にHしたのが樺恋で、後が私だったの?」  
その言葉と同時に深衣奈は麻郁の服をギュッと掴んで、瞳を潤ませた。  
「え? ど、どうしてって……得に意味はないけど……  
 たまたま昼に先に見つけたのが樺恋なだけで………  
 順番はサイコロでも振って決めようかなとか…  
 思ってたって…その程度だけど……」  
深衣奈の不可思議な問いかけに、頭を振りながら答える麻郁。  
その言葉に更に迫る深衣奈。  
「ホント?」  
深衣奈の瞳が不安げに潤んだ。  
「ホントって……どうしてそんな事、そんな不安そうに聞くんだよ?」  
麻郁は深衣奈の仕草に心苦しさを覚え、首筋に手を回して  
深衣奈の髪に指をからめた。  
そんな麻郁の手の感触に、思わず顔を赤らめ反応する深衣奈。  
「だって心配なんだもんっ…私が2番目って事……  
 それって…麻郁は樺恋が1番好きで、2番目が私なのかって……」  
「は?」  
麻郁は深衣奈の思いを聞いて、思わず呆然となった。  
「他にも、麻郁が樺恋が血の繋がってる妹だと気を使って  
 樺恋の事、優先してるのかなって……そうも思えるし……  
 そう言う事考えると……私……不安なんだもん………」  
言って深衣奈は、思わず麻郁の胸の中に自らの頭をうずめた。  
そしてその場で肩を小刻みに振るわせてしまう。  
そんな深衣奈の独白を聞いて、ポカンとしてしまう麻郁。  
 
「深衣奈って…、結構、細かい事で不安になるんだな……」  
麻郁は思わず、真っ直ぐにそう返してしまった。  
その言葉にカチンと来る深衣奈。  
「細かい事じゃないよっ!! 私には大事な事だよっ!  
 私が麻郁の1番好きな人になるのは……そりゃ…樺恋に悪いと思うけど…  
 でも、麻郁の2番目に好きな女の子になるのは耐えられないよっ!」  
少し頭を離して、思わず瞳に涙を潤ませて迫る深衣奈。  
そんな必死な深衣奈の姿が、思わず麻郁の心の琴線に触れる。  
「そっか……2番目って……耐えられないか……」  
麻郁は深衣奈の言葉をなぞった。  
なぞられる言葉に、深衣奈の気持ちも揺れる。  
「そうだよっ! 耐えられないよっ!」  
深衣奈はまた叫んで、頭を左右に振った。  
激昂する深衣奈の仕草に、麻郁は何故かその時  
過去の自分の姿を見たような気がした。  
いや、こんなに素直に自分の思いをぶつけた事など一度もない。  
なのにどうしてか、そこに居る深衣奈が  
自分が今まで心の何処かで押さえつけていた、  
もう1人の自分の姿に見えたのだった。  
 
だからこそ、その深衣奈の姿に物凄い愛しさを覚えてしまった麻郁。  
「そんな心配しなくていいさ深衣奈……  
 俺…深衣奈も樺恋もどっちも好きなんだ……」  
そう言って麻郁は深衣奈の手の平に  
自分の手の平を重ねて指を絡ませる。  
その麻郁の言葉と仕草に、深衣奈の激昂が思わず止まる。  
麻郁はじっと優しい瞳で深衣奈を見つめた。  
「大事な家族だから……愛してるんだ……  
 だから…家族に1番か2番かなんて……ないよ……」  
そのまま深衣奈を抱き寄せて、キスをする麻郁。  
「あっ………」  
強く抱き寄せられて唇を塞がれ、驚きの悲鳴を上げる深衣奈。  
「好きだぜ…深衣奈……」  
そっと唇を離して、麻郁は深衣奈にそう囁いた。  
その言葉を耳にしたから、深衣奈の気持ちは一瞬でとろけてしまった。  
「ま、麻郁……」  
深衣奈は顔を赤くして、潤んだ瞳で麻郁を期待した。  
 

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