トキワシティーの道路一帯は大渋滞を模様していた。
なぜなら先程、ポケモン輸送車が事故を起こし、それが原因で大渋滞となった。
「まったく、酷いありさまねジュンサー」
「そうね…貴方も早く、怪我をしているポケモン達の元に行きなさいジョーイ」
「はいはい、そうさせてもらうわ、ジュンサーもお仕事頑張ってね」
渋滞の交通整理と怪我をしたポケモン達の応急処置のために
ジョーイとジュンサーは現場に事故現場に急行した。
各人それぞれの役割を果し、忙しく動き回る
すぐに仕事に集中し始めるジュンサー。
そのギュッと結んだ唇を、ジョーイは熱っぽい視線が見つめるのであった。
「ふう、これでお終いっと……」
額の汗を拭い、顔を見合わせるジョーイとジュンサー。
ふと、その二人の視線の間に人の頭が現れた。
ジョーイたちの視線が辛うじて隠れるぐらいの背の高さ、少年であった。
「ん?」
仕事中のジョーイとジュンサー同士の間に立つなど、少年の行動は明らかに不自然であった。
「どうしたの、きみ」
ジョーイの問い掛けに応えず、少年はいきなり動いた。
素早く伸びた少年の手が二人のスカートの裾を掴み、捲り上げる。
バッ、パッ。
『なっ!』
一瞬呆気にとられ、なすがままの二人は、次の瞬間、慌てて身体を捩った。
ジョーイの紫色に染め上げたシルクのショーツと、
ジュンサーのグレーのスポーツビキニが、ストッキングの下で踊った。
タイトなため、あたふたと元に戻すのに必死になっているジョーイを尻目に、
ジュンサーはめくれ上がったスカートもそこそこに、逃げていく少年を追いかけていた。
「待ちなさいーーー君!!」
見事な太腿を露わにしたジュンサーがぐっと加速し、
人込みを縫うように走っていく少年との距離を一気に詰める。
前に行こうとしていた少年の身体が、突然、グンと後ろに吹っ飛んだように見えた。
正確にはその場に固定されたというべきか、
猫を掴み上げるようにジュンサーの腕が、がっしりと少年の襟首を捕まえていた。
すぐさまミニパトがタイヤを軋ませ急停止し、中からジョーイが飛び出してきた。
「ジュンサー!」
「捕まえたわよ!さぁあて、この子、どうしてくれようか」
ジュンサーの腕に持ち上げられた少年はじたばたともがくが、
いかんせん、地に足がついていない状態ではどうしようもない。
「うう……」
「悪戯にしては度が過ぎるわね。キミ、どうしてあんなことしたの?」
少年の顔をまじまじと見つめながらジョーイが問いただす。
その顔にちょっとした驚きの表情が浮かんだ。
「あれ? ジュンサー、まさかこの子、殴ったりしてないでしょうね」
「そんな事してないわ、子供相手に手なんかあげる訳ないでしょう」
「そうよね……でも……。キミ、何処かにぶつけた?」
よく見ると少年の口の端が少し赤く腫れ上がり、うっすらと痣になっているのだ。
それは、こうした傷を見慣れているジョーイたちだからこそ
分かったぐらいの微かなものであった。
少年は、今更のように、自分のしたことの大きさに気づいたのか、
その幼い顔を蒼白にし、問われたことも分からない様子であった。
震えた横顔はよく見ると可愛い顔をしている。
男の子にしては少し長めの前髪が端正な瞳にかかり、華奢な彼を中性的に見せていた。
小柄で幼いようだが、服装からして小学生ぐらいだろうか。
「このぉ。公衆の面前でジュンサーとジョーイのスカートめくっといて、そういう態度とるんだ」
ジュンサーが少年のほっぺたを摘み、グリグリと引っ張った。
「いっ、痛いです」
「待って、なんか訳がありそうよ」
少年を見つめていたジョーイが、ジュンサーを制した。
ミニパトの後部座席で少年は小さくなっていた。ツードアの車である。逃げ場はない。
「なるほどね。イジメってこと」
「その子たちにやらされたのね」
「う……ん……」
「で、誰にイジメられてるの。ミツルくん?」
助手席のジュンサーが少年の名前を呼んだ。
「え、なんで名前なんか……」
ジュンサーが、少年のカバンからと取りだした生徒手帳を見ていた
「トキワ小学校、5年1組、ミツル10歳……」
「うう、ごっ、ごめんなさい! もっ、もうしませんから」
「あのね、君ののやったことはれっきとした犯罪なの。それも警官相手にね」
「でも、事情が事情だし、とにかく明日、学校に相談に行ってあげるから、今日はもう帰りなさい」
「ジョーイ、甘い!ここは自分のやったことの重大さを骨身に染みて分からせなきゃ」
口の端に涎を浮かべているジュンサーをジョーイは見逃さなかった。
「ジュンサー、まさか、変なこと考えてんじゃないでしょうね」
「えっ、まっ、まさかぁ」
「なら、この子は解放よ」
「はいはい」
不承不承頷くジュンサーを、ジョーイは嫉妬めいた視線で見つめた。
「ミツルくん、私はトキワのポケモンセンターのジョーイよ。
困ったことがあったらここに電話しなさい。キミが捕まるところを
そのいじめっ子の方も見てたら、また、なにか言ってくるかも知れないからね」
ジョーイはポケモンセンターの電話番号のメモを少年に渡した。
解放され、トボトボと歩いていくミツルの後ろ姿を見つめていたジュンサーがぼやく
「あ〜あ、可愛い子だったのに」
「何言ってんの。子供に手を出すなんて…貴方警察官なのよ」
「10歳は子供じゃないわ、もう充分大人よオ・ト・ナ
でも……むふふ、あの何にも知らなさそうな顔が困ったところ……、
これはこれでそそるのよね。ああ、あの華奢な鎖骨が……」
「…おやじね、まったく」
呆れる反面、ジョーイは素直に自分の願望を口にできるジュンサーを
少し羨ましく思った。他の街のジュンサーなら公私限らず真面目なのに……
一日の職務を終えた二人は私服に着替えていた。
ここトキワのポケモンセンターで待ち合わせをしていたからだ。
「さあ、ジュンサー、帰りましょう」
「あ、ちょっと待って」
ジョーイはあたふたと後を追いかけた。
ポケモンセンターの駐車場から二人の乗った車が出た時、助手席のジョーイが声を上げた。
「ジョーイ、あれ、さっきの子じゃない」
ジュンサーの視線の先を辿っていくと、こちらを伺っていたミツルの姿があった。
「本当だ。やっぱり心配よね。明日、学校にジュンサーが来るっていうんだから」
「ジョーイ、あたし、買い物するから歩いて帰るわ」
「ジュンサー、また、なんか考えてるんでしょう」
「分かる?でも、ちょっと寄り道して帰るだけ。心配しないで、あの子には手を出さないから」
「本当に?」
「はい、誓います」
ロングスカートから伸びた足をしなやかに捌き、ジュンサーは車から降りる
正門の方に向かって歩いていくジュンサーのお尻の辺りを見つめながら、
もうすぐ生理なんだ……。ジュンサー……今夜あたりが
こっちに向かって手を振り、ジュンサーは車で追い越し、飛び出していった。
電信柱の影に隠れていたミツルが、車中にジョーイに気付いたようだ。
何か言いたそうな顔で、ジョーイを見つめている。だが、ジョーイは止まらなかった。
バックミラーの中でぼう然とジョーイの乗った車を見送っていたミツルは、
背後から近づいてくるジュンサーに気がつき、あわてて電柱の影に身を隠れた。
ジュンサー……本当に手なんて出さないでよ。
ジョーイは前方に目をやると、さらにアクセルを踏み込むのだった。
うふ、あせっちゃって……、さあ、おいで……。
ジュンサーは電柱の陰のミツルには目もくれず、ポケモンセンターを後にした。
隠れていたミツルが動き出すのを気配で確認する。いいわよ、付いてきて。
ポケモンセンターからジュンサー達の部屋までは歩いて三十分もかからない。
ジュンサーは途中、薬局に立ち寄った。
生理用品を手に取りながら、カエルの人形の影に隠れるミツルを目の端に捕らえる。
使わないんだけど……。
ジュンサーはレジ横のコンドームの箱を生理用品の上に乗せた。
見てるかな……。
そう思うとジュンサーの下半身がチリチリと疼いた。
レジを打つ中年の店員の好奇の目が、
ジュンサーの昂ぶった気持ちをさらに刺激するのであった。
前を行くジュンサーの足取りが心持ちふらついていることなど、ミツルは知る由もなかった。
ミツルは思っていた。なんとか、学校沙汰にはしたくなかった。
そんなことになれば、両親は心配するだろうし、なによりあの子達が何をするか。
本当は優しそうなジョーイの方に頼みたかったのだが、
彼女は声をかける間もなく車で行ってしまったのだ。
あの事を知っているのはもう一人、今、前を歩いているジュンサーだ。
さっきからミツルは何度も声をかけようとしているのだが、
その度に、ジュンサーは立ち止まったり、店に入ったりと、
まるでミツルをあざ笑うかのように取りつく暇を与えてくれない。
やがて、ジュンサーはとあるマンションの前まで立ち止まった。そして、
数段の階段を跳ねるように昇り、ロビーへと入っていった。
慌てて追いかけると、ロビーのガラス越しに集合ポストを覗くジュンサーが見えた。
間違いない、ここがジュンサーさんの家だ……。
ミツルは、エレベーターを待っているジュンサーに、ゆっくりと近づいていった。
別に悪いことをしているわけでもないのに心臓がドキドキと高鳴った。
ミツルがまさに声をかけようとしたとき、その動きを躱すように、
ジュンサーはいきなり脇にある階段を昇り始めてしまった。
あ……。ジュンサーが待っていたエレベーターが降りてドアが開く。
呆然としていたミツルは、その無人の扉が閉まる音を聞き、我に返った。
ついに声をかけることができなかった。どうしよう、このまま帰るか……
その時、ふとジュンサーが探っていたポストがあったことに思い当たった。
ミツルが見つめるポストには、部屋番号とともにジョーイ、ジュンサーの文字が……。
ああ!あの二人、一緒に住んでいるんだ!
思い悩んでいたミツルの顔がパッと明るくなった。
ジョーイの優しそうな態度を思い出し、ミツルは決心すると、エレベーターのボタンを押した。
金属のドアが、どこか違う世界の扉が開くように音もなく、ゆっくりと開いていった。
「たっだいまー」
マンションのドアを開けたジュンサーをジョーイはあからさまに不機嫌な顔で出迎えた。
「なによ、何にもしてないわよ」
ジュンサーは玄関から自分の部屋に入るまでに、あっという間に下着姿になっていく。
その脱いだ服を拾いながらジョーイが追いかける。
「まったく、脱ぎ散らかさないでって言ってるでしょう」
「あー、はいはい」
「あの子、どうしたの。何か言ってきた?」
「それが何にも……。でも、今ごろ、この下でうろうろしてるわよ」
「呆れた。ここまで連れてきちゃったの」
「まあ、勝手についてきたんだし」
大きめのTシャツだけを頭から被り、そのシャツの中でもぞもぞとブラジャーを脱ぎながら
ジュンサーがリビングに入っていった。
ブラジャーを慣れた手つきで後ろのジョーイに放り投げてきた。
「あ、ついでにカゴに入れといて」
「もうっ……。どうするの。ここに来ちゃうわよ。警官が自宅を簡単に知らせるなんて」
「まあまあ、いいじゃない。ここにこれる勇気があればの話なんだから」
冷蔵庫から缶ビールを取りだしながらジュンサーはソファーに寝そべった。
「勇気って……」
まったく、最近はジュンサーのペースに嵌められている。
洗濯機の前で一人、ジョーイは苛立たしげに
洗濯物のカゴにジュンサーの脱いだ服を投げ入れた。
ふと、一緒に置いたジュンサーのブラジャーに目が止まった。
ジョーイは震える手でそれを手に取ると、そっとそれに顔を埋めてみた。
プウンッとジュンサーの使っている柑橘系のコロンの香りに混じり、
汗の匂いがジョーイの鼻腔をくすぐった。
ジュンサー……。
ジョーイの円らな瞳がじっと潤んでいくのであった。
ピンポ〜ン ジョーイたちの部屋のチャイムが鳴った。
「きたきたきた〜♪」
ジュンサーがいそいそと玄関に走っていく。
「ジュンサー!」
ジョーイが脱衣所から顔を出したときには、ジュンサーはドアの覗き窓に
片目を押し付けながら、唇に指を立て、ジョーイにサインを送っていた。
「うはは、いるいる。悩み多き少年って感じね」
「ちょっ、ちょっと、そんな格好で出るつもり?」
「あったりまえでしょう。ジョーイ、もう制服脱いでんだから、
わたしたちはただのオ・ン・ナ。細かいことは気にしない」
「入れたらダメ……」
ジョーイが言い返そうとしたとき、ジュンサーがドアのロックを外した。
ガチャッ。
「はぁ〜い。どなたぁ〜♪」
「あっ、あのぉ……」
玄関には硬直したミツルが立っていた。
ジョーイが出てくるだろうと思い込んでいたミツルは、
いきなり顔を出したジュンサーに用意していた言葉を飲み込んでしまったのだ。
「あらぁ、キミは確か……、ミツル君じゃない。
どうしてここが分かったの?ははん、さては、つけたのね」
「えっ、あのっ、つけたなんて……、うわぁ」
ジュンサーの太腿剥き出しの開放的な部屋着姿に、
ミツルは顔を真っ赤にし、あたふたと俯いてしまう。
うっふふのふ〜♪ かっ、かわゆい……。
「何のご用かしら?」
「あ、あのぉ……明日の事なんですけど……」
「ああ、あれね、まっ、立ち話も何だから入んなさいよ」
にやけた顔を室内に戻すと、あからさまに不機嫌なジョーイの顔があった。
「うっ……、ほっ、ほら、ジョーイ、さっきの子、ミツル君。
なんか話があるんだってさ。廊下じゃまずいでしょ」
「まったく、ジュンサーったら、勝手なんだから……」
それでも当のミツルを目の前にしては、ジョーイの怒気も削がれるというもの、
仕方なく部屋に上げソファを勧める。
キッチンでソフトドリンクをグラスに注ぐジョーイは、リビングの様子が気になっていた。
まさかジュンサーったらここでなんてこと……ないわよね……。
氷を浮かせたグラスを持って戻ってきたジョーイは、
ソファの反対側でクッションに胡座をかいているジュンサーに眩暈を感じ、
その心配は確信に変わっていく。
案の定、ミツルの伏せた視線は、ジュンサーの、クッションで隠されてはいるが、
それ以外は剥き出しの下半身に釘付けになり、
憐れな少年はぴったりと膝を閉じて固まっていた。
ジュンサーはジュンサーでそんなミツルを悪戯っぽい瞳で楽しそうに眺めている。
「どうぞ!」
少々手荒く置かれたグラスにミツルはビクッと身体を揺すらせ、我に返った。
ジョーイはそんなミツルの隣りに腰掛けると、言葉を選んで話しかけた。
「で、明日のことって言ってたわよね。あのね、
明日、学校に行くのはさっきのことを言い付けに行くんじゃないのよ。
ミツルくん、虐められてるんでしょう。そのことをね」
一瞬、ほっとしたミツルは、しかし、イジメという言葉に、再び顔を硬くする。
「そっ、そんなことになったら、あの子達何するか……」
「そんなことだから、相手はエスカレートするのよ。あたしがガツンと言ってあげるわ」
「でも……、あの子達……、おっ、女の子なんです……」
「何?貴方、女の子に虐められてるの?」
ジョーイはジュンサーの無神経な言葉にこめかみが痛んだ。
ミツルはジュンサーの言葉にただもじもじと俯くだけだった。
くう〜、堪らないわ。こんな姿見てたら虐めたくもなるわね。わたしだって……。
ジョーイの見透かすような視線がジュンサーに向けられている。う……。
「そっ、そう……」
ジュンサーは一呼吸置いてから
「よし、お姉さんが一肌脱ぎましょう。
キミに男としての自信を持たせてあげる。ね、ジョーイ、いいでしょう?」
甘えるようにジョーイを見つめる。まさか、ジュンサー貴方……。
ジョーイの視線に、ジュンサーが頷く。
ジュンサーの目には淫らな光りが揺らぐ。それは発情する牝の瞳であった。
ジョーイはその淫靡な視線が、一瞬、自分に向けられたような気がして、陶然となってしまう。
「ねぇ〜、いいでしょう」
「えっ、ええ、まあ……」
ジュンサーの甘えるような瞳に、
ジョーイはまるで術にでも掛かったようにあいまいに相づちをうった。
「よし、決まった! そうとなれば……、おいで、
わたしの部屋に来るのよ!ジョーイ、あんたには迷惑かけないわ!じゃね!」
バタン! 言い終わる頃にはミツルはジュンサーの部屋へと吸い込まれていた。
「もう、ジュンサーったら……」
取り残されたジョーイはしばらくぼんやりと
ジュンサーの座っていた辺りを眺めていたが、やがて自室へと戻っていた。
手を付けてられていないグラスの中で、小さな煌めく気泡がふつふつと湧き上がっていた。
部屋に戻ったジョーイはデッキチェアに深々と腰をかけると、
その前に置かれたテレビのスイッチを入れた。
ややあってから、ブラウン管に映像が映し出される。
若い女の横顔が大写しになっていた。見慣れた顔。愛おしい唇。ジュンサーであった。
その獲物を狙うような精悍な横顔をじっと見つめるジョーイは、ポオッと頬を火照らせる。
ジュンサー……。
ジョーイはいつの頃からか、ジュンサーを親友以上の気持ちで見つめるようになっていた。
いつしか彼女に対する欲望がジョーイの中で芽生え始めていたのであった。
最初はジュンサーらしからぬ開放的な性格への憧れであったのかも知れない。
ジュンサーに対する想いはどうしようもないぐらい強いものになりつつあった。
寂しいと言う気持ちはジュンサーによって解消され、違うものへと昇華していった。
ジュンサー……
ジョーイは慣れた手つきでコントローラーを調整し、
ミツルが映し出されるところまで、カメラを引いた。
ジュンサーはミツルをベッドに座らせ、
デスクチェアの背もたれを抱えて向き合っていた。
ミツルは、大きめのTシャツを着ただけで、背もたれの陰からしなやかな足を伸ばした。
ジュンサーの姿に、目のやり場に困り、視線はきょろきょろと部屋中を彷徨っていた。
その部屋には幾つかの使われたどうか怪しい、
深夜の通販番組で扱っている。健康機器と必要最低限の家具しかなく
ミツルが想像していた大人の女性の部屋とは大分違っていた。
物珍しげに健康器具を見つめるミツルにジュンサーが声をかけた。
「ミツル君、イジメ、辛い?」
「えっ、だっ、大丈夫……です……。だっ、だから、学校には……」
「そうね、でも、このままじゃ何の解決にもならないわよ。
いい、あたしが鍛えてあげる。ミツル君があたしの特訓に耐えられたら、
あたしたちは一切干渉しない。これでどう?」
「とっ、特訓って…なに?……」
ミツルは健康器具機器を眺め、
体力に自信がないことをジュンサーに告げようか迷った。
「男の自信をつける特訓よ。大丈夫よ。お姉さんがちゃんと指導してあげるから。ねっ」
「うん……」
片目を瞑るジュンサーの笑顔に、ミツルは頷いた。頷いてしまった。
「よーし、さあ、ミツル君、始めるよ」
ジュンサーの口調がきつくなったことに、早くもミツルは後悔し始めていた。
「じゃあ、まず、脱いで」
「えっ、脱ぐって?」
「こんなお決まりのパターン、することはひとーつ!」
ジュンサーが人さし指を高々と差し上げる。
することって、もっ、もしかして……。
ミツルは湧き起こる淫らな期待に戸惑いながらも、
正直な下半身に血液が集まっていくのを抑えることなどできなかった。
「でっ、でも……、わっ、やっ、やめて……」
「ほら、はやく脱ぎなさいって」
「そんなぁっ、あっ、だめえっ」
ジュンサーはミツルを捕まえTシャツを剥ぎ取り、放り投げる。
女の子みたいな声出しちゃって。この子、やっぱり素質あるわ……。
ミツルはどうしていいのか分からずに、裸の上半身を隠しながら俯いた。
その頼りない姿は、隣りに腰かけたジュンサーの嗜虐的な昂ぶりに火をつける。
Tシャツの裾から覗く柔らかそうな太腿を見せびらかすように、足を組み、
「立って……」
先ほどの件で、ジュンサーの力に抵抗することの無意味さを感じ取っていた
ミツルは、言われるがまま立ち上がった。
「ジーンズも脱ぐの」
「そっ、そんな、はっ、恥ずかしいよ……」
「恥ずかしい? 私たちにあんなことしておいて、よく言えるわね」
「うう、ごめんなさい」
「あやまっても許さないわよ。さあ、脱ぎなさい」
「わっ、分かりました……」
ミツルは震える手で、ボタンを外すとジッパーを降ろしていく。
「あんもうっ、なにちんたらやってんの。男でしょ、ぱっぱと脱ぎなさいよ」
「はっ、はい……」
ミツルは下着姿の股間を押さえながら、よろよろと不器用そうにジーンズを脱いでいった。
ミツルの白いブリーフ姿にジュンサーの自制心が崩れそうになる。
くうう、可愛い……。
押さえつけパンツを剥ぎ取りたいという欲望を何とか堪え、ジュンサーが声をかける。
「こっちにおいで……」
ジュンサーは組んでいた足をゆっくり大きく広げると、手招きをした。
広げられた股間ではグレーのパンティが惜しげもなくミツルに向かって晒されている。
レースの部分にうっすらと黒いものが煙り、
ミツルの目はどうしてもその薄い布に釘付けになってしまう。
ジュンサーの猛禽類を思わせるような鋭い瞳が、
小動物のように怯えるミツルを吟味するような視線で見つめていた。
「おいで……」
股間を隠したミツルは、誘われるがまま震える足でジュンサーの前に立った。
「手をどけて」
「だっ、だめだよ」
「今、あたしのパンティ見てたじゃない。今度はあたしの番でしょう」
「でっ、でも……」
「でも……なに?」
「そっ、それが……」
「はっきりしない子は訓練、辛くなるわよ」
「……っきくなってるから……」
「聞こえない」
「おっきくなっちゃったから……」
「何が?」
「おっ、オチンチンがっ……」
「へえ、オチンチンおっきいんだ。なら、なおさら見たいわね。ほら、手をどけなさい!」
「うう……」
ミツルはジュンサーの強い口調に観念すると、おずおずと震える手をどけていった。
その幼く健気な物体はそれでも自己主張をするように、白いブリーフを精一杯、突き上げていた。
今度はジュンサーの視線が釘付けになる番だった。
瞳をぎゅっと閉じていたミツルは、脇に添えた手を握りしめ、
女性の前で恥ずかしく勃起したペニスを見つめられるという、
倒錯した刺激に昂ぶっているのか、呼吸が荒くなっていた。
「うう、みっ、見ないで……」
その言葉にジュンサーの瞳がツウッと吊り上がる。
「うふふ、ハアハアさせちゃって。見て欲しいんでしょう、
オチンチン。あら、全然、大っきくないじゃない」
「くうう」
「さあ、ここに座りなさい」
ミツルの身体はいいように引っ張られ、太腿の間に据えられた。
ジュンサーはミツルの震える背中に、後ろからぴったりと身体を合わせる。
うああっ。
背中に当たる柔らかい固まりにミツルの起立物はさらにその勢いを増した。
柑橘系のコロンの香りがミツルを甘く包み込み、
それは媚薬のようにミツルをうっとりとさせてしまう。
ミツルの耳元にジュンサーの熱い吐息がかかる。
「ミツル君、始めるわよ。頑張ってね」
うう、頑張るってなにを……、あっ。
ジュンサーがブリーフの上から勃起したものを握ってきた。
「ふふ、可愛い、こんなに硬くなって。ねえ、もう、オナニーなんてするの?」
「うっ、あっ、しっ、しないよぉ」
「嘘言うんじゃないわよ」
ジュンサーはミツルのペニスを万力のような力で握りしめる。
「あううっ、いっ、痛いよぉ! ごっ、ごめんなさい……しっ、してます」
「うふふ、そうよ、素直な子は好きよ。いい子だから、御褒美にあたしが手伝ってあげる」
てっ、手伝う? ああっ!
ブリーフの上を這い回る手が、小用の口から、卵を狙う蛇のように潜り込んでいくと、
熱く固まった肉の棒を飲み込むように握りしめ、その出口から摘み出した。
直接の肌の刺激にミツルはビクッと震える。
「あら、皮被っちゃって……可愛い色。まだ、あんまり弄ってないのね。ほら、見てみなさい」
勃起したピンク色のペニスが、白いブリーフからにょっきりと突きだしているのが目に入った。
その量感を確かめるように、ジュンサーの手が下腹をポンポンと叩き上げている。
「う、うう……」
「恥ずかしいわよね。こんなみっともないもの付いてんだから……」
「見ないでよぉ……」
そう、もっと恥ずかしいことしてあげる。楽しませてね……。
「ミツル君は、どうやってするのかな、オナニー……。こう?」
ジュンサーは両の手の平でペニスを挟み込むと、火を熾すようにクルクルと捩じる。
「ふああぁぁぁぁっ」
「それともこうかな?」
片手で陽根を握りしめると、上下にしごき始める。
「あっ、あっ、あふううう」
「こんなことしてたりして」
「あっ、がっ、まっ、回さないでぇ」
ジュンサーがペニスに刺激を加えるたびに、
ミツルのペニスの先からじくじくと透明の粘液が滲み出る。
「うふふ、もうこんなに滲ませて。ねえ、これ、なんて言うか知ってる?」
ジュンサーは指先でその粘液を半分顔を出した亀頭に伸ばしながら尋ねる。
「あああぁぁっ、カッ、カウパー液……」
「あはは、そういうことは知ってるんだ。
でもね、これは我慢汁っていうの。今日はいっぱい我慢してもらうわよ」
ジュンサーは亀頭部を包み込んだ包皮ごと幼気なペニスをしごきたてていく。
「はううっ、すごい……、気持ちいいよ……ジュンサーさん」
生まれて初めて受ける他人からの局部への刺激を、ミツルは夢中で貪っていた。
「うふふ、気持ちいいでしょう。
あたしの言うこと聞いていれば、もっといいことしてあげる。わかった?」
「うっ、うん」
「そう、いい子ね。あら、ピクピクしてきたわよ。もう、いきそうなの?」
扇情的なジュンサーの言葉はミツルの官能を根元から揺さぶり、
あっという間に頂きに昇り詰めようとする。
「あっ、あああっ、気持ちいいよぉ、あっ、あっ、いきそう」
「まだよ、まだだめ、我慢しなさい。いっぱい我慢したほうが気持ちいいんだから」
「うっ、あっ、でっ、でも」
ミツルのペニスがしゃくりあげ、限界を告げるとジュンサーの手がパッと離れた。
「あっ、ああっ、もう少しなのにぃ」
初めて受けた異性からの性的な刺激。絶頂の寸前で止められてしまったその刺激は、
狂おしい射精への欲望となってミツルの幼い精神を支配していく。
堪えきれず自ら最後の刺激を加えようとするミツルのいけない手を、
ジュンサーはからかうように押さえつけ、後ろ手に搦め捕った。
「ああっ、放してっ、もう少しっ、もう少しだからぁ」
張り詰めたペニスをピクピクとヒクつかせ、いやいやをするようにミツルは腰をくねらせた。
その時、後ろに回されたミツルの両手が熱く泥濘んだものに触れた。
ミツルの身体がビクッと戦慄く。
「うふ、だめよ、自分ばっかりじゃ。男の子は女の子に気を使わなきゃね」
「こっ、これって……、ジュンサーさんの……」
「そう、ミツルくんの手はあたしのパンティの中に入っているの。分かる?」
「あっ、熱くてぬるぬるしてる……。これが……」
「そう、オ・マ・ン・コ」
ミツルのペニスがヒクンっと跳ね上がる。
「うふふ、元気ねぇ、あん、そう、動かして、だめっ、優しくよ」
先ほどまで、狂おしいほどの射精への欲望を口にしていたミツルは、
新しく与えられた玩具、その淫らに滑った肉を夢中で掻き回していた。
ねっとりと指先に絡む柔肉の熱い感触。
ああ、これがオマンコなんだ。ここに入れるんだ。
「ああっ、そうっ、いいわよ」
ジュンサーの吐息が耳元をくすぐるたびに、
ミツルの昂ぶりを示すように張り詰めたペニスが上下に揺れた。
下半身で揺れている健気な一物に、ジュンサーの限界もピークに達した。
「ヒクヒクさせて……、ああん、もう、堪らない!」
ジュンサーは大きめのTシャツを捲り上げ、ズボッとミツルの頭からに被せた。
ジュンサーのTシャツにすっぽりと覆われたミツルは、
視界が真っ白になり、同時にミツルの素肌の背中に温かく豊満な柔肉が触れる。
その温かな感触の先端に硬いものがあることまで、はっきりと分かった。
ジュンサーは身体をくねらせ、その凝りをミツルの背中に擦り付ける。
「あっ、あうんっ」
柔らかい女の肌の感触、零れる吐息……。それは温かくミツルを包み込み、
汗ばんだシャツの中の匂いが少年を陶酔の彼方に押し流していく。
「あふん、いいっ、もっとぉ、掻き混ぜてぇっ!」
背中を這い回る二つの突起を敏感に感じながら、
ミツルは言われるがまま、泥濘みに触れていた指先をかき混ぜた。
クチュクチュと湿った音が背後に漏れる。
ふと闇雲に動かしていた指先に硬いものが触れた。
「ああっ、そこっ、そこいいっ、そう、摘んで、あっ、そうよっ、いいっ、クリクリして」
ミツルは確かめるようにその突起物を摘み、挟んだり、回したりすると、
ジュンサーの反応がさらに高まっていくことに不思議な感動を覚えていた。
硬くなってる。これ、多分、クリトリスだ。ここを弄るとジュンサーさん気持ちいいんだ。
男も女もおんなじなんだ。
「あふっ、上手いじゃない。あっ、そう、もっと弄って……。あああっ、もうだめっ」
ジュンサーの手がミツルのペニスに伸びていった。