二人だけで過ごす初めての夜。
サトシがそれに思いを馳せると、緊張までは行かなくとも少し鼓動が早くなる。
おそらくはカスミも同じ気持ちだろう。
スッとサトシの隣に座る。
まるでそこが自分の場所であるように、ごく自然に。
「あの…サトシが初めて、だから。優しくしてくれると……嬉しいかな…」
「わかってる、努力はするよ。乱暴にして嫌われたくないから、さ」
「バカっ……ここまできて、嫌う事なんて………」
カスミは一旦、サトシから身体を離すと静かに立ち上がり、
衣服を脱ぎ捨て、完全に生まれたままの姿になる。
その間に、サトシの方も身に纏うモノを全て外していった。
もう一度、サトシの隣に腰を降ろすと、
深青の瞳に潤んだ色をたたえ、カスミが訴えかける。
「な、なんだろ。やっぱり恥ずかしいな……」
旅の中で共に過ごした仲なのに―――いや、むしろ旅仲間だからこそ、
改めて裸身を晒しあった事に不思議な戸惑いを覚えていた。
今まで互いを知り尽くしていたと思っていたのに。
未だ相手について知らない事があったのか、と。
今、一糸まとわぬ姿を目の前にすると、彼女がやけにまぶしく感じられる。
二人とも相手の身体に触れられぬまま、数瞬の時が過ぎる。
ようやく意を決した風にサトシが手を伸ばし、そのままグッと身体を引き寄せた。
「う…んっ……」
恐れて、だが待ち望んでいたもの。カスミはビクリと身体を揺らす。
彼女の唇を自らの口でふさぐと、最初はおずおずとサトシを受け入れたカスミも、
次第に大胆に舌を絡め合わせてくる。
舌を舌で受け止めつつ、サトシの手は彼女の身体のラインに沿って降り、
薄く茂った秘所に辿り付いた。 そこはまだ濡れてこそいないが、
内股の柔肌がかなりの熱を持っている事がわかる。
初めてであろう彼女を思いやって、すぐに過度の刺激を与える事はせず、
秘裂に沿って人差し指を二、三度前後に往復させる。
「あぁっ…ぁぁん…!」
不意にサトシから顔を離し、カスミは快感に上ずった声を上げた。
キスから解放されたサトシの顔が首筋、胸へと下がっていき、
カスミの乳房のところで止まる。
豊かで柔らかな丘にわずかに吸い付くと、頂点の突起を舌先で転がしてゆく。
「あぅっ…くぅん」
胸と秘所、2ヶ所に渡って加えられる刺激に、ふるふるとカスミの身体が揺れる。
動きに呼応して、次第に秘所からトロトロと愛液が漏れ始めていた。
内股を伝わりサトシの指、手のひらまで滴っていく。
「感じてるかい…?」
サトシの囁きに対し、うねる感覚に眉を寄せながら、かすかにカスミが頷く。
「何だか頭がボウッとして……腰とか、お腹の下がおかしくなりそう……」
その部分が滑らかになった事を確認すると、サトシは秘裂に一本の指をうずめ、
指先を軽く曲げてから、中をこすりはじめた。
「! そんなぁっ……ダメだよ、サトシ…私……こんなっ、事されちゃっ…!」
はぁっ、はぁっ、と息を荒くしていきながら、抵抗の意思を示すカスミ。
…抵抗?
そうだろうか…と、官能に翻弄される意識の元で彼女は自問する。
口ではそう述べても、身体の動きは意思に迎合しない。
むしろ、自分の中の未だ刺激されてないところを求めて、
サトシの指にあわせてくねり、艶かしく動いているではないか………。
そう気づいた時、羞恥心とそれに煽られたさらなる快感で、
今まで以上に身体が熱くなり、花弁から流れる蜜が多くなってきた。
にちゃ…。
湿った音を響かせて、サトシは指を抜いた。
乱れるカスミの姿を見て、自分のモノも固く天を突いている。
恋人となった女性を征服したい……男としての生理欲が身体の内で湧き上がる。
「カスミ……いいよな?」
「はぁっ……はぁっ…ちょっ……待って…」
震える息を静めて、カスミは相手を制止する。
「ねぇ…最後に、その……サトシのソレ……私に見せて…くれる?」
「な、なんだって?」
「私の中にどんなモノが入ってくるのか、ちゃんと見てみたいんだ。
サトシの全て、知っておきたいって……気持ちもあるし…」
男性の性器を見たい―――普段ならまず言えない恥ずかしい願望を、
カスミは頬を赤く染まらせつつ口に出した。
「いや、それは…」
「ね、お願い……」
思いもかけぬ願い出に戸惑ったサトシだが、
これから一緒にいるのだから、と自らに言い聞かせ、
膝で立って自分のモノがよく見えるような姿勢をとった。
座するカスミの目の前に、角度を付けて天を向く男根が現れた。
「わぁ……こういう、モノ…なんだ」
サトシのモノは大きさという点で平均的なものだったが、
そこは初めて目にするカスミの事。思わず口から驚きの声が出てしまう。
無意識のうちに脈打つ一物に触れようとして、自分の行為に驚いたように手を引っ込める。
「え、と。これが入ってきても、大丈夫……よね。
他の人達も…その……ちゃんとヤッてこれてるんだし」
不安と、ほんの少しの期待が交じった声はか細く、今にも消え去りそうだった。
「ありがと。うん……もうイイよ。サトシ、来て……」
「じゃあ…」
身体を預けてきたカスミを、床に敷かれた寝台にコロリと転がすと、
サトシは正面から覆い被さる。
彼女の脚に手を添えゆっくりと股を開いた。
女性の部分が、まだ愛液で滑らかさを保っている事を確認すると、
自らを徐々に沈みこませてゆく。
「つぁっ…かっ……はァっ……」
サトシが入ってくるとともに、カスミの顔が苦痛に歪む。
いくら覚悟を決めたとは言え、
それだけでは処女を失う痛みを受け止めきる事はできなかった。
「くっ、キツ…」
「あぅっ、ご、ゴメ……サトシ、ちょ止め……」
カスミの言葉に、サトシが腰の動きを止める。
「うん…うぅ。イタイ…よぉ。み、みんな、こんな感じなの…?」
「わかんないけど……後は慣れてくるん…ン、ハッ……じゃないかな…」
「サ、トシは…ぁっ……気持ちいい?」
「気持ちいいって言うか……カスミの中がきつくて、ずっと締め付けられてる…」
どういう表情をしていいかわからず、サトシはただ苦笑を浮かべる事しかできない。
それきり、二人は繋がったまま動きを止める。
その状況に膣内が慣れ、収縮が緩んだのか。
カスミの意識のほうに若干の余裕が生まれた。
「ぁ…さっきよりは……いいかも。サトシも……動けるようだったら…」
カスミの言葉に頷くと、サトシは少しずつ腰を前後に揺らし始めた。
ぬちゅ―――ずちゅ―――。
互いがこすれる度に、より愛液が生み出され挿入を緩やかにしていった。
もちろん、カスミはまだ痛みを感じているが、
感覚の中にも少しずつ甘いシビれが生じてきている。
快感に全身を委ねるほどまでは行かなくとも、
そのシビれ……恍惚となりそうな悦びに意識を集中させると、
痛みを薄れさせる事ができた。
くちゅん…くちゅん、ちゅぷん。
「あんっ、うぅん……サトシ……はぁぁん…」
リズム良く響く、愛液が弾む音。
甘みを増したカスミの吐息がほどよく絡み、二人の感覚をさらに昂ぶらせてゆく。
彼女の身体を満たしているサトシには、内側のヒダで愛撫される度に、
快楽と呼ぶにはあまりに生々しい刺激が襲っていた。
「カスミっ、オレ、もう…!」
腰を振りながら、サトシがうめいた。
カスミの中の、処女らしい強い締め付けに、
自分の思ってた以上に早く頂きに達しそうだった。
目の前がクラクラし、一方で股間に意識が集まってゆく。
「い、いいよっ、サトシ! 私を愛して…私を最後まで貫いて…!」
「わかっ、た…」
いっそう激しくなった動きに、再びカスミの眉間にシワがよる。
だが男に心配をかけさせまいと、唇を噛み痛みの声を飲み込む。
サトシは本能のままに腰を動かし、そして―――
「はっ、ぁっ!」
口から空気の塊を吐き出した。と同時に一度、
身体が大きく揺れ、自らの精が解き放たれる。
ドクン、ドクン―――反射的に腰がわずかに前後し、
カスミの中に白濁とした液が流し込まれた。
「ふあぁ…な、何か来てる、私の中にサトシのが来てるよぅ……」
快感より、戸惑いが勝った言葉が、カスミから発せられる。
「ごめ……これが、オレの……」
そこまで言うと、ドッと疲れが押し寄せ改めてカスミの上にかぶさった。
初めての営みは、身体的以上に精神的にサトシを圧していたのだった。
「何だか、思ってたのとちょっと違う。随分痛かった……」
少し落ち着いてから、カスミはそう呟いた。
まだ身体の芯に、鈍い重みが残っている気がする。
姉達から、夜の営みは女性にとってもイイものよ、と聞かされていただけに、
どこか腑に落ちない気がするのは否めなかった。
…もちろん、この先幾度か経験を重ねればなくなるハズの痛みであったし、
今日の時点でも、女としての悦びを多少なりとも感じる事ができた。
ならば、深刻な悩みになる類でもなかったが。
「悪い……オレもあまり…加減とかわからなくて…」
「ううん、いいの。サトシが良くなって私も嬉しかったから」
それは正直な思いだった。自分の中で愛する男が果ててくれた。
この事実は、今まで知り得なかった充足感を彼女に与えている。
「それに今夜で終わりじゃないもの。今からが始まりなんだからね」
「あぁ……そうだよな」
穏やかに言うと、サトシはカスミを愛しそうに抱きしめた。