私はその夜、ほとんど眠れなかった  
ゴールドの言ったことが頭の中でぐるぐる渦巻いて、どうしようもなかった  
いっそのこと、明日なんて来なければ良いのに……切にそう思った  
 
それでも、「明日」は来た  
何の対策も挽回策も思い浮かばぬまま、私は登校し、授業を受けた  
ノートはしっかり取ったけれど、内容はまったく頭に入らない  
妙に勘の鋭いナツメ先生の数学の授業ではひやりとしたけど、乗り切ることは出来た  
そうして、今日という一日は過ぎていく  
 
下校のチャイムが鳴った  
 
校内に誰もいなくなるまで、私は図書室で時間を過ごした  
どんな本を読んでも、心の中に淀む不安や恐怖は消えなかった  
「(……そろそろ平気かな)」  
読みかけだったけれど、私は本を閉じて図書室を出た  
本当は、あんな約束の時間なんか守りたくないけれど……  
校内はしんとしていて、人の気配が無い  
私は、B棟の屋上へ向かった  
 
屋上のドアノブに、私の手がかかった  
もうここまで来たら、後には退けない  
元々、退くことなんか出来やしないけど  
指先がほんのわずかに震えたけれど、これ以上は躊躇わない様に一気に押し開けた  
「よっ」  
屋上でごろりと横になっていたゴールドが、のん気そうに声をあげた  
私がドアを閉めると、ゴールドもむくりと起き上がった  
「もうそんな時間か」  
あーあと大きな欠伸をしつつ、ゴールドが背伸びをした  
もしかして、午後の授業はサボってずっとここで寝転んでいたのだろうか  
「ずいぶん暇なのね」  
「まーな」  
ほめてない  
私は立ち止まり、ゴールドと一定の距離を保った  
向こうはそれをわかっているのか、私を無視して屋上のドアの前に立った  
退路は絶たれた  
これから、私が何をされようと、誰も干渉することは出来ない  
「……」  
私はゴールドを見据えた  
「そう怖ぇ顔すんなよ」  
ゴールドはまた軽口を叩いた  
強がっていないと、私は崩れてしまいそうだった  
「んじゃ、今日の分のお願いな」  
ごくりと、私はつばを飲み込んだ  
 
「服、脱げ」  
 
私は顔を強張らせたが、予想の範囲内の「お願い」だった  
むしろ、そうきて当然だとも思っていた  
女の子の手で、自らの手でのストリップ……  
「ほら、座ってでいいから」  
ゴールドに急かされたわけじゃないけれど、私は観念して制服のリボンに手をかけた  
しゅるりと音を立てて、それは地面に落ちた  
上着を脱いで、ブラウスのボタンをひとつずつはずす  
その指は震え、うまくはずれてはくれない  
それでもぷつっぷつっとボタンは陥落し、胸元がはだけていく  
ゴールドは、その光景をじっと見ていた……と思う  
私は顔なんか合わせることが出来ず、ぎゅっと目をつぶっていた  
「(……最後の一個)」  
手の位置と感触でわかる  
これをはずしたら、もうあとは薄いシャツと白のブラジャーだけ  
いや、「上半身で出来ること」だから……手作業なら下の方も脱げる  
私はうっすらと涙を浮かべ、最後の砦に手をかける  
 
ぷちっとはずれて、私はブラウスを脱ぎ去った  
その勢いで、シャツも潔く脱いだ  
薄い布切れに覆われた小振りな胸を、ついにゴールドは見ただろう  
決して胸を張るほど自慢出来るものではない、控えめな存在感  
成長途中を思わせるそれは、異性にまだ見せたことはない  
それを、こんな形で見せることになるとは……思いもしなかった  
 
私が、背中に手を伸ばそうとした時だった  
突然、ゴールドが声をあげた  
「ストーップ!」  
ぴたりと、思わず私の手が止まった  
なに、何、何が……ストップ? ストリップじゃなくて??  
「あー、そのまんまでいいから」  
そう言うと、ゴールドは私の方に歩み寄ってきた  
私はそのまま後ろに下がろうとして、後ろにつんのめってしまう  
体勢を崩してしまった間に、ゴールドは私の目前まで来ていた  
何をする気なのか、このまま襲おうというのか……  
私は腰が抜けてしまったのか、その場から動けずまた立てなかった  
「……ゃ……」  
ゴールドもしゃがみこみ、その顔が30cmにも満たないところまできた時、私は顔をそらし目をつむった  
「すっげー」  
ゴールドの素っ頓狂な声に、私は目を開けた  
「すっげ、これがブラジャーってやつかぁ」  
「……は?」  
「いや、マジで初めてだ。こんな近くで見んの」  
「は?」  
ゴールドは子供のように、私の下着をずっと眺めている  
勿論、手なんか出してこない  
「(……なに、この状況?)」  
私は複雑な表情で、ゴールドのことを見た  
そりゃ異性に……間近でブラジャーを見られるのは恥ずかしい  
でも、こんなの水着を見られているようにしか思えない  
乳首が浮き出ているわけでもないから、心境としてはそんなところだった  
「(ていうか、人が死ぬ気でさらした胸の方には興味無し?)」  
それはそれで腹が立つ  
が、私はあえて何も口にはしなかった  
 
5分、いや10分だろうか  
私のブラジャーをしげしげと眺めていたゴールドがすっと離れた  
「……やー、ごちそうさまでした」  
ぱんと手を合わせ、ゴールドはそう私に言った  
「じゃ、帰るわ」  
「へ?」  
「今日のお願い、聞いてくれたじゃん」  
「あ、ああ……」  
私が次の言葉を出す前に、ゴールドはさっさと先に帰ってしまった  
呆然と取り残された私は、とりあえず脱いだ服を手で拾い集めた  
「何なの、いったい……」  
その呟きは、誰にも届かなかった  
 
 
…  
 
 
何だろう、このわだかまりは……  
 
私は、2日目の……翌日の放課後がくるまでそれに悩まされていた  
確かに、昨夕は何もされなかったに等しい  
助かった、そう素直に思えばいいのだろうか  
「(当たり前よね)」  
それでも、私は悩んでいた  
何というか、何とも言えないような……  
「(……いつまで考えてても仕方ないか)」  
そう結論付けられた時、私は放課後を迎えていた  
 
「んじゃ、今日も服脱いでな」  
ゴールドの無邪気そうな顔が、腹が立つ  
私は昨日と同じように服を脱いでいき、ブラジャーに手をかけたところでまたストップがかかった  
「お〜、今日も白か」  
しげしげと、しゃがみこんで顔を近づけてゴールドは感心したように言う  
私は羞恥心か、やはりまともに顔を見ることが出来なかった  
昨日は水着を見られている程度に思えたが、こうまで注目されると話は別だ  
「……あ、ここはこんな風になってんのか。知らなかった〜」  
ゴールドが私の背後に回り、ブラジャーのフック部分を観察している  
そこにほんの少し手をかけるだけで、私の上半身は一切を身に纏わなくなる  
そう思うと、そう一度感じてしまうと、全神経が背中の方に集中してしまい……見られているところが熱くなる  
 
そこで、ゴールドの観察が終わったらしい  
「じゃ、もういいわ」  
またそうさらりと言うと、ゴールドは鞄を引っさげさっさと帰ってしまう  
ひゅうと冷たい風が、私の熱くなった背中をなでた  
 
いったい、あいつは何を考えているのだろう?  
 
 
…  
 
 
ゴールドのお願いが始まって、今日で3日目  
私は自分の教室で、理科総合の授業を受けていた  
挽回策も逆転劇も何も、未だに思いつかないでいる  
 
私は今更ながら、ゴールドが私を使って何をしたいのか考えてみることにした  
とりあえず、されていることは私のつけているブラジャーを眺めているだけ  
それだけで、私の身体には一切触れようとしない  
「(腑に落ちないなぁ)」  
ただ生下着を見るだけなら、更衣室を覗くなり何なり……犯罪行為でなら可能なのだ  
ゴールドのような不良ならその程度のこと、簡単に叶うだろうに  
「(それとも意外とうぶとか?)」  
不良ぶってるだけで、あの時はただノリで条件を言ってしまって……どうしたらいいのかわからないとか  
それか、ただ本当にブラジャーに興味があって、とりあえず私の身体は二の次になっているとか……  
「(わけわかんない)」  
何だか悩むのが馬鹿らしくなってきたように思える  
「この辺は次のテストに出す予定だ。問題集で言うと……」  
カツラ先生の声で我に返り、黒板を見るとだいぶ先に進んでいた  
予習はしっかりしてあるので置いてかれることはないが、ノートはきちんと取っておかないと後々困るかもしれない  
私はシャープペンシルをかちかちと鳴らし、新しい芯を出した  
 
ただ、私の写真がまだ向こうの手にあることだけははっきりしている  
それと、本当のメール送信者だってわかってない  
今日や明日以降にゴールドがどんなことを要求してくるか、送信者は何をしているのか  
私の平穏は、まだ訪れてくれそうになかった  
 
その日の昼休み、私はシルバーの姿を見た  
ただ見かけただけで声をかけなかったけれど……元々声をかける理由も無かったけれど  
それでも気になった  
ゴールドとの写真じゃなくて、本当になんとなくなのだけれど  
 
自意識過剰だったのかもしれないけれど、向こうがこっちを見ていた気がしたから  
シルバーは私がそちらを見た時、ふいと顔をそらせて隣の教室に戻っていった  
 
 
下校のチャイムからしばらくしてから、私は屋上へ向かう  
ドアを開ければそこにはゴールドが寝転んでいて、欠伸をひとつしてからこちらを見る  
「来たわよ」  
「ん。服脱いで」  
また昨日おとといと同じお願いだった  
私は何だか服を脱ぐときの恥じらいが無くなってきて、どんどん潔くなってきた  
もうやけくそが入っていたのかもしれないし、どうせ同じ願いならさっさと済ませてしまいたいからもあった  
「……なぁ、他に下着ねーの?」  
「放っといてよ」  
私はまた白のブラジャーをつけていた  
決して、断じて言うけれど、替えていないわけじゃない  
そもそもこういうものには興味が無かったから、安売りしていたものをまとめ買いしたのだ  
「なんつーかさ、黒とかは持って」  
「ません。あんなの、似合うわけないじゃない」  
ああいうのは大人の女性が選んで、つけるものだと思う  
いい加減、飽きてきたか  
そりゃ同じものを観察してれば、そうなるとは思うけれど  
「まーいっか」  
本当にどうでもいいことなのか、それとも私にそういう色気を求めるのを諦めたのか  
ゴールドは、昨日おとといと同じように私と同じようにしゃがんで観察を始めた  
よくよく見ると、その顔はおかしいくらいに真剣なものだった  
「(ますますわけわかんない)」  
「あ、脇の方見えねーや。両手ばんざい」  
私は渋々両手を上げてやる  
正直言えば、あまり注目されたくない箇所だ  
ていうか、これも今日のお願いに入っているのだろうか  
「ん? いやなのか?」  
「普通はね」  
ゴールドはへぇと意外そうな声を出した  
脇をまじまじと見られるなんて、女の子なら誰でも嫌がると思うんだけれど……  
そういうもんかなとゴールドが首をかしげつつ、私の脇を観賞する  
「……あ、もういーや。ごちそうさまでした」  
「はいはい」  
いい加減、この台詞にも慣れてきた  
こんなので、本当に満足しているのだろうか  
いや、私は10日間後にあの写真を消してくれさえすればもうどうでもいいのだけれど  
 
「じゃーな」  
ゴールドはそう言って、さっさと屋上の階段を駆け降りてしまう  
お願いはあと7回だ  
 
 
…  
 
 
4回目のお願いは、これまでのとは違っていた  
 
「今日は、上、全部脱いで」  
 
とうとう、ついに来たか程度にしか思えない私自身が何となく怖い  
どんどんこの状況に、奇妙な逢引もどきに慣れていってしまっている  
しかし、やはりブラジャーまで脱ぐのは流石に躊躇われた  
 
ここで思い出したのが、私がゴールドに言う1回限りの「お願い」のことだ  
それなら、このお願いは回避される  
けれど、明日以降……私を守ってくれるものが無くなってしまう  
まだあと5回も残っているのに、使ってしまっていいのか  
今日をしのいでもまた明日以降、それ以上のお願いをされたらどうする  
もう、約束違反以外の断る手段が無いのだ  
約束を破れば、私の写真は……私自身が……  
「(……使うに使えない)」  
これは少々やられたかもしれない  
1回限りのお願いなんて、最後の10回目のお願いでしかまともに使えない  
「(不良のくせに、意外ときれるじゃない)」  
それとも本当に送信者との共犯で、その入れ知恵だろうか  
もしくは、ただの偶然か  
「ん?」  
ゴールドがこちらの顔をうかがっている  
私は意を決し、昨日おとといと同じように座ったまま服を脱ぎ始めた  
ブラウス、シャツを脱ぎ、昨日と同じ白のブラジャーとスカートの姿になる  
 
それから、それから私は背中に手を回し、ホックをはずした  
留めておくものが無くなり、肩ひもがずり落ちる  
私はその肩ひも手をやり、するりと腕から抜いた  
 
露わになった私の……私の小さなふくらみ  
まだ成長途中かと思われるそれの全貌をさらしてしまった私は、思わず顔を伏せた  
そうして伏せれば、何もつけていない現実がいやでも目に入ってしまう  
途方も無い現実感と喪失感、私は脱いでしまったのだ  
外気に当たり、少し肌がきゅっと引き締まるように緊張した  
もしかしたら、異性に見られるという羞恥心の所為かもしれないけれど  
それでも、私は両腕で乳首などを隠すことはしなかった  
 
「……うわ」  
ゴールドは気恥ずかしそうに、そう呟いた  
一番恥ずかしいのは、私なのに  
同級生の乳房を生で見たからか、ゴールドは何も口にしようとはしなかった  
「……」  
白く淡く光が私の身体を反射し、余計に恥ずかしい  
もはや私の顔は見るに耐えないほどに真っ赤になっているだろう  
「……すげーな。すげーきれいだ」  
ゴールドは感動したように、惜しみも無くそう言った  
私の身体はたったそれだけのことに反応し、じんわりと汗をにじませる  
ぴくっと身体がうずいてしまった時は、どうしようもなく恥ずかしかった  
「うん、まじですげぇよ」  
「おせじはやめてよ。こんなの、そんなんじゃないんだから」  
「いや、俺はいいと思う」  
そう真剣な表情で言われてしまうと、余計に恥ずかしい  
誇れない自分が、惨めだった  
「…うん、俺はもうこれで」  
立ち上がり、くるっとゴールドは回れ右してしまう  
「あ、うん、また明日」  
私は思わずそう言ってしまうと、ゴールドはへっと笑った  
 
ゴールドは、この状況でも私の身体には触らなかった  
 
 
…  
 
 
今日は土曜日だけどいつかの振り替えか何かで午後まで授業があり、今はマチス先生の英語の時間  
生まれながらのと本人の口では言っているが、限りなく怪しいアメリカン  
関係無いけど、外国帰りなら男女関係無く『帰国子女』って……変だよね  
「……はぁ」  
私は昨夕のことで、頭を思い切り悩ませていた  
はっきり言って、屋上に行きたくない  
「(よく考えれば、私、すごいことしちゃったんだ)」  
どうして、せめて両腕で隠すようなことくらいしなかったのか  
「(やっぱり馬鹿だ、私……)」  
これ以上、学年一の不良とうたわれるゴールドを刺激したら、本当に襲われかねない  
だけど、私は放課後になったら屋上に行かなければならない  
今日で5回目、あと半分だ  
……その半分が、今になってすごく怖い  
「(今からでも遅くはない)」  
何か、挽回策を思いつこう  
私はそう決心し、テープによる会話英語の聞き取りに専念することにした  
 
「クーリスッ、どーしたの?」  
「あ、ブルーさん」  
廊下で出会ったのは先輩のブルーさん  
スタイル良し、成績良し、顔良しの才色兼備を誇る女性  
性格には少々難があるかもしれないけれど基本的に姉御肌なので、皆から慕われている  
一部ではファンクラブもあるって噂だけど、彼氏などの話は聞いたことがない  
「なんか悩み事?」  
「いえ、別に……」  
いくらブルーさんでも話せるわけがない  
「そ。じゃあ、自分で頑張るのよ」  
ブルーさんはそれだけ言うと、ぱたぱたと廊下をかけていく  
その走り姿、というか大きな胸がその度に揺れるので皆……主に男子が振り返る  
…たまに聞く噂に、彼女は常にノーブラノーパンなんじゃないかというものがある  
ブルーさんのスカートはノーマルな私と違って、膝上15cmぐらいかそれ以上はカットしてあるというのに  
だが、それを確かめようとする猛者はこの学校にはいない  
それを試みようと考えただけで、何故か不慮の事故に遭うという噂まで流れているからだろう  
体育などの着替えの時間は皆と更衣室ではせず、どこか別のところでするらしく……同姓でもその真偽を確かめられないという  
……話は大幅にずれたけど、ブルーさんはたまに冷たく素っ気無い  
でも、それはあくまで本人の力で乗り切ってほしいことだからこそなのだ  
本当に、どうしようもなくなった時だけ助けてくれる  
謎の多すぎる彼女が慕われ続けるのも、多分、その辺なんかじゃないかと思う  
「……」  
それにしても、上級生である彼女がどうしてこんな下級生のいる階にいるのだろう  
多分、弟分のシルバーにでも会いに来たのだろうけど  
「私には関係無いよね」  
何故か、声に出てしまった  
 
 
「……来たのか」  
ゴールドは意外そうで、少しほっとしたような声を出した  
本当なら、来たくなかったのだけれど……  
「ねぇ、聞きたいんだけど」  
「ん?」  
「明日は学校に来るの?」  
私の問いに、ゴールドはきょとんとしている  
それから、盛大に笑って返した  
「ほんっと真面目だな。いや、来なくていいって。そん代わし、お願いもだけど……これは期間延ばした内に入ると思うか?」  
「ううん。当然だと思う」  
私がそう返すと、また意外そうな顔をした  
ここで期間を延ばすことだと言えば、もしかしたら……押し切れたのではないかとふと思った  
それはある種の『挽回策』ではなかったか  
本来、10回聞くはずのお願いが9回に減るというのに  
どうも今の私は、うまく頭が働いてくれなかったようだ  
「あ、今日も……昨日と同じように頼むわ」  
「……。……わかった」  
ゴールドのお願いに従い、私は座って一枚一枚服を脱いでいく  
それがもう当然のような、それでいてまだ逆らいたい気持ちでいっぱいだった  
ブラジャーもはずし、風で飛ばされないようにしっかりと鞄で押さえておく  
ゴールドが私の目の前に座った  
「……」  
「……」  
お互いが無言だった  
何を話しかけたら…語りかけたらいいのか、わからない  
ただゴールドの目は、いつもと同じで真剣そのものだった  
あまりのまっすぐさに、私はまた顔を合わせることが出来なかった  
至近距離で、見られている私の身体  
びくんびくんと身体中の血液が駆け巡り、熱くなっていく  
「……うん、もういい」  
ゴールドはそう言った  
今までで、一番時間が短かった  
「次は月曜日?」  
私はそう口に出して聞くと、ゴールドはああと答えた  
 
たった一日だけ空く  
 
 
…  
 
 
「触っていいか?」  
そう聞かれた  
私は何も返さなかった  
 
月曜日の放課後だった  
ゴールドは「上だけ全部脱いで」とお願いし、これであと4回となった  
私はまだ1回限りのお願いをしていない、していなかった  
それを行使することなく言われるままに脱ぎ、私は先週と同じようにゴールドに見せた  
 
手を伸ばせば私の身体に届いてしまう距離  
今まで抑えられていた方が不思議だった  
 
私が無言でいると、ゴールドがすっと右手を伸ばした  
そして、私の左の乳房を下から持ち上げた  
「あっ……」  
今まで以上の反応に、ゴールドの右手がこわばった  
それで更に持つ指に力が入り、私は逃げるように上体をひねる  
ゴールドは今度は両手を差し出し、それぞれ私の乳房を上から覆うようにして握った  
私の顔は情けないくらいに、感じ入っていたと思う  
「ん……っ、あ…」  
どうしようもなく抑えきれない声、ゴールドにはどう聞こえているのだろう  
ゴールドはゆっくりと私の乳房を揉みしだき、少しずつ乳首の方を攻め立てていく  
どうやらここが気持ちいいものらしいと、判断した上で  
反応を見るかのようにくりくりとこねるように回すと、もう私の方も限界だった  
「ぅ……くっ…ぁ、ああっ!」  
軽く達してしまった  
ゴールドの手は、好奇心はそれでも止まらない  
彼の指先が私の乳首をぎゅっと強くつまみ、更に伸ばされる  
私の頭の中はじんじんと響き、上体を支えるだけの力を失っていく  
 
このまま、押し通され…流されてしまうのだろうか  
 
もはや、私の方にゴールドを止める力は残されていない  
ゴールドは今度は乳房全体を粘土のようにこねくりまわし、刺激を強めていく  
乳首の方の攻めも忘れず、指と指の間に挟んでつねる  
がくがくと腰が震え、乳首はもうビンビンに立ってしまっている  
その変化に気づいたのか、ゴールドはたまにそれをしげしげと覗き込む  
見られることが、羞恥心がまた私を上へ上へと押し上げていく  
「……ゃぁ、ッ…」  
ゴールドが、ぎゅっと乳房を押しつぶすばかりの勢いでつかんだ  
……こうしていじるのは自分でもやったことはあるのに  
異性にやられているというだけで、こんなにも違うのか  
 
「あ、ぁ……っ、ぅんっ…あぁ」  
 
私が達し、そのまま地面に倒れこむ  
その瞬間に、ゴールドの手が離れた  
 
勝手に、1人で倒れた私を、ゴールドが上から見ている  
指のあとがついた乳房が呼吸に合わせて上下し、乳首はまだ先程までの刺激を忘れられないでいるようだ  
「ハァッ、ハァッ……」  
お互いの荒い息遣いが聞こえてくる  
ぼたぼたっと汗も滴っているようだ  
「…ワリぃ。俺、帰るわ」  
「……うん」  
そんな気がした  
多分、止めてくれて良かった  
 
ゴールドが屋上から出て行った後、私は人知れず……目から水が滴った  
多分、汗だ  
 
 
…  
 
 
その翌日は、相当に響いていた  
私の頭は呆けている  
授業も、クラスメートの声も届かなかった  
 
ただ、放課後を待つだけだった  
 
「……よっ」  
放課後に屋上に上がれば、そこにはゴールドがいた  
そして、更にもう一人いた  
「シルバー……」  
私はそう呟いた  
どうして、ここに彼がいるのだろうか  
ゴールドは言った  
「今日のお願いだ。こいつを、今日からここに置かせてくれ」  
「えっ……」  
何の話なのか、さっぱり読めない  
「シルバーにゃまだこっちの事情は話してない。俺にお願いするなら、今だ」  
どうして、そんなことを急に……?  
「別に1人こちら側に増えたからって、お願いや期間を増やす気は無ぇ。ただ、考えてみればこいつも被害者だから、教えるのが筋だと思った」  
「……」  
ここに連れてこられたシルバーは、当惑しているのか何も話さない  
 
私は今、岐路に立たされているのだろうと思った  
 
ゴールドの真剣な表情は変わらない、本気なのだ  
ここで私がお願いすれば、シルバーを巻き込むことはしなくてもいい  
元々、私の写真を知っているのはゴールドと謎の送信者だけなのだ  
なのに、わざわざそれを知る者を増やすことはない  
 
「構わない……」  
なのに、私はお願いしなかった  
 
ゴールドはシルバーと向き合い、今までの経緯を話し始めた  
私は、2人が帰るまでその光景を見続けていた  
 
 
…  
 
 
シルバーが加わって、お願いも今日で8回目だ  
そう、もうすぐ終わるのだ  
 
「今日も頼むな」  
ゴールドがそう言うと、私は素直にまた脱ぎ始めた  
その光景を、シルバーはどう見ているのだろう  
彼は私とゴールドの距離と同じぐらいのところで、屋上のドアに寄りかかっている  
私は座って服を脱ぎ、乳房を露わにした  
羞恥心はあるけれど、もはや隠そうという気は微塵にも無かった  
シルバーはこうして、こんな半裸の私を見るのは初めてだったっけ  
流石に、目を見張っている  
まさか、本当にやるとは……そう思っているのかもしれない  
もう軽蔑するなら、してくれればいい  
 
私は、私の写真を消す為に……  
 
ここで、私は正面に座るゴールドが何かもぞもぞと動いているのに気づいた  
何をしているのかはすぐにわかった  
 
学生ズボンのファスナーを下ろし、中の一物を取り出した  
既にそれは勃ち上がっており、私の方こそ目を見張ってしまった  
「…逃げてもいいんだぜ。別に見ててもいいけどな」  
そう言って、ゴールドはそれを右手でこすり始めた  
半裸の私を目の前に、抜こうというのだろう  
傍観するシルバーと半裸の私、怒張させ抜こうとしているゴールド  
奇妙な構図が、屋上に出来上がった  
 
私とシルバーは、ゴールドのことを何故だか見守っていた  
荒い息遣い、苦しそうに漏れる声  
必死に動かす手は、段々と早くなっていた  
視線はいつも私の方を見て、時折うめている  
昨夕のことを、昨夕のあの感触を思い出しているのかもしれない  
シルバーが何を思っているのかわからないが……呆然としているのは確かだ  
同性の、その自慰行為を目の当たりにするのは初めてなのだろう  
 
「……く、ぁッ、出る……ッ!」  
 
ゴールドがそううめいたと同時に、白濁汁が一物から勢いよく抜き飛び出た  
その勢いは凄まじく、離れて見ていた私の足下まで被弾した  
どろっとした汁が屋上の、コンクリートの床を汚す  
抜いたはずのゴールドの息はまだ荒く、整っていない  
 
私は初めて見る、男の自慰にあてられてしまっていた  
 
「……っふ、ふぅ……すっきりしたぁ」  
ゴールドはいつものゴールドに戻り、晴れやかな笑顔を見せた  
1回抜いた所為か縮み始めた一物を、ティッシュで拭き取る  
そうしてこすると、またそれが少しだけ大きくなった  
「いけね」  
ゴールドは慌ててパンツ、ズボンの中にしまいこんだ  
私はぽけーっとそれを見ていると、シルバーが口を開いた  
「何をやるかと思えば……馬鹿の上に包茎か、貴様は」  
それだけ言うと、ふいっと屋上のドアを開けて行ってしまった  
あんにゃろうと憤るゴールドをいさめようと、クリスが立ち上がった  
わずかながらふるんと震える乳房を見て、ゴールドが言った  
「あ、もう今日はいいから。服着ろよ」  
「え、あ、うん……」  
ゴールドはちゃっちゃとファスナーを上げると、シルバーの名前を大声で怒鳴りながら階段を駆け降りてしまった  
シルバーが加わって、どうなるのかと思ったら……何なんだろう、これ  
 
あとゴールドのお願いは2回だけ  
 
 
…  
 

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