リングタウンから大凡100kmは離れた場所に、原始のまま眠りに着いている島がある。  
島一帯の殆どがシダ植物に覆われ、異常成長したヤシやソテツ等が群立し、  
その中を獣やモンスターが徘徊する。この島が発見されたのは大体15,6年前だそうで、この島の発見者は「大発見だ」と狂喜乱舞したらしい。それ以来、ここには採掘者が後を絶たない。  
 
だがこの島は、いわば天然の要塞、切り立った崖に囲まれ、海に逃げ込んだとしても  
不定期的に発生する海嘯に飲み込まれるか、巨大な渦潮に海の藻屑とされるか、はたまた鮫の餌になるか、の三択しか無い。  
よって、殆どの人が空路を取る。未だに島で発掘を続ける者達の手によって、小さな村落の様な物が形成され、  
その中には空路を取る者への考慮として飛空挺の技術者が多く住むため、空路が最も安全なのだ。  
そしてこの島には、この世界に定着した歴史を根底から覆す事が出来るかも知れない程の遺跡や宝が眠っている、と言う噂がまことしやかに流れていた。そのオマケとして  
「生きて帰った人間は居ない」と言う、お約束と言えばお約束なのだが、何とも不吉な噂もついでに付き纏っている。  
 
そんな場所にポケモンレンジャー・ヒナタは降り立っていた。  
 
今回の任務は、人畜に多大な被害を及ぼしているモンスターの駆除と言う事で、レンジャーランク7のヒナタにしてみれば  
何時もよりも楽な仕事だと、タカを括っていた。事実、バンギラスやギャラドス等、  
俗に「凶悪」と呼ばれ畏怖されているポケモンの討伐に向かった事もある彼女は、  
それら以下のポケモンに遅れを取る筈がない、そう自信を持っていた。だからこそ、  
確実にポイントが取れるこの任務を引き受けたのだ。  
その判断が、命取りとなる事も知らずに……。  
 
 
「やっぱり、暑いわね……。」  
村の人達が言っていた事だが、このジャングルは言わば天然のサウナ、昼は50℃を優に越え、夜は逆に0℃近くまで下がる。  
その点で、人間にとっての地獄、と言うのは正に正解であると思った。  
 
半日は歩いただろうか。そうして時計を見てみると、まだ出て30分も経っていない。レンジャーになるための講習会で、  
こんな風に感じる事は度々あったがこんなにラグを感じた事は無かった。それ程までに私の身体は疲れていたのだろうか。  
歩いている最中に、体からどんどん水分が抜けていくのが判る。カラッとした暑さよりも、ムシムシした暑さの方が多く体力を奪うそうだ。  
長々とここに居るべきではない、そう私は判断した。  
……前から長居癖がある私は、任務が終了した後その周辺をブラブラと歩き回るのが、ほぼ習慣となっている。  
特に遺跡や廃墟、古代の神殿等は歳不相応にワクワクする。そして、壁画や像等を見つけるとそれを写真に収め、帰って来る。  
そうして出来たアルバムは既に3冊を越える。我ながら良く出来たなぁ、と思うし良くやるよなぁ、とも思う。  
 
最初の内はそんな事を考えながら歩いていたが、30分程度歩いた時点で私はヘトヘトになっていた。体力には自信があったが、こうも簡単にその自信を砕かれ、少々自暴自棄になりながら足を動かす。こんな時、バイクがあればどれだけ楽だろう、そう思った。  
 
村落を出てもう三時間。用意していた水は既に底を付き、酷使された彼女の体の節々が悲鳴を上げる。そして不運は重なる物で、最も恐れていた事が近付いていた。  
そう、日没だ。この島の生物は夜行性の物が多く、恐らく今の彼女で太刀打ち出来る相手では無い。更に前進したとしても方位が解らなくなってしまっては意味が無い。  
今は一旦前進を止めよう、そう思い立った彼女はテントを張り、そこで一夜を過ごした。  
 
二日目。  
疲れが取れない。頭がボーッとする。だが、前進をしなければならない。  
今、彼女を支配するのはレンジャーとしての彼女のプライドと仕事を終わらせる事への切望、そしてこの任務を選んだ自分への自己嫌悪だった。  
もっと早くにこのミッションは諦めようと思った事は何度もあったが、それは彼女のプライドが許さなかった。同じ時期に入ったレンジャーに負けたくない、と言うのもあるし、先輩に認めて貰いたいと言うのも彼女の中にはあった。  
今では、そんな事を考えた自分を恥ずかしく思う。  
そんな事を考えているうちに、日はすっかりと昇り、ジャングルは灼熱地獄へと姿を変える。今ではもう汗すら出ない。彼女の体から、水分の一滴も無くなってしまった、と言う所だろう。だんだんと「死」が近付いているように感じられる。  
ハイエナのように狡猾に、ハゲワシのように輪を描きながら、自分をその仲間として引きずり込もうとしている「死」に、彼女は直面しているのだと感じ取った。もう何時命を取られても可笑しくないな、そう思ったその瞬間。  
 
「あ……?」  
目の前に、水が現れた。本来ならその場所にありもしない物を移す蜃気楼。だが彼女はそんな事には気付かず、必死に「水」を追いかける。  
勿論、水は逃げる。追いかけても追いかけても、水に追いつく事は無い。  
「あと少し……あと少し行けば……」  
その時、何かに足を取られた。草にでも足を掛けたのだろうか。そうして体を起こしてみると、目の前に広がったのは、  
「水………」  
オアシスだった。  
「ウソ……ウソじゃ、ないよね……?」  
当然ながら、彼女は目の前の光景を信じる事は出来なかった。あれ程までに切望した水が、今、私の目の前に広がっている。その事実を。  
それを確かめようと、泉に近付く。そして、掬い上げると、零れる音がした。  
これは、水だ。私は、助かったんだ―――  
 
「ああ……」  
ため息とも歓声とも言えない声が、喉の奥から出る。体が、水を吸い込んでいる事が直に感じられる。  
私は、ジャケットを脱ぎ、キャプチャスタイラーを外し、そして水に飛び込んだ。  
水が、こんなに良いものだったなんて。今まですぐそばにあったから、気付かなかった。あって当たり前、そう思っていた。  
そして、水のせせらぎの音の中で、彼女は眠りへと身を落とした……。  
 
 
数時間経ち、彼女はハッと目を覚ました。  
「ッ!?」  
背中をピリピリと駆け抜けるものがあった。彼女が感じていた物は、殺気。それも、普通のポケモンでは考えられない程、巨大な。  
とっさに泉から身を離し、いざと言う時の為に持って来ていた「兵器」に手を掛ける。  
スタンスティック。それを彼女は持っていた。  
最大出力ならば、一撃で象をも葬り去るこの兵器、ジャングルには危険が付き物だと言うカヅキから無理矢理渡された物だ。まさかこんな所で役に立つとは。後で感謝しなければならない。  
無論、生きて帰れるならば。  
 
水面に泡沫が一つ、弾けた。そして、一つ、また一つと、数は段々と増えて来る。水中には、巨大な黒い影。  
だがそれは一向に動こうとしない。獲物の様子を伺っている、そんな所だろうか。  
そして、泡沫は遂に止まった。そう、それが戦闘開始の合図でもあった。  
「………来るッ!!」  
 
激しい水柱が立つと同時に、数本の触手が彼女を襲った。捕まる訳には、いかない。後ろに飛びずさり、体勢を立て直す。次々と触手が彼女に迫るが、これを最小限の動きで避けて行く。  
無論、今は反撃の時ではない。まずは相手の情報を整理しなければ。  
 
外見は、シェルダーやパルシェンのそれと同じ、ぶよぶよとした身体を硬い外殻が囲う。だが、それらとは大きく異なる点がいくつもある。  
それの体色は紫なのに対し、こちらは黄土色。向こうは、陸上では活動出来ないはずだが、こっちは巧みに触手を使い歩行している。  
そして何より、パルシェンやシェルダーは触手など持ち合せていない筈だ。  
ならば、これは何なのだろう。そんな事を考えている内にも、触手はどんどん迫って来る。  
「くっ……!」  
避け切れない。そう判断した私は、退く事を選択せず、逆に突進した。予想外の行動に、化け物は狼狽え、回避の判断が一瞬遅れた。  
その刹那に、スタンスティックを叩き込む。  
凄まじい火花が弾けて散り、化け物の体が青白く発光する。その光が、私を青白く照らす。  
数秒経ってから、敵からスタンスティックを離し、後退した。敵は、動かない。いや、動けないと言った方が賢明か。  
 
今の内に、トドメを。私はそう思ったが、頭の中では警鐘が鳴り響く。  
カヅキの声だ。  
(罠に、気を付けろ!)  
少しも躊躇いもなく、全身にばねを使い、急制動を掛ける。とっさに掛けられた逆向きの力に、関節がギシギシと軋む。  
だが、そんな痛みは無いかの如く跳躍する。その直後、彼女の居た場所には触手が突き立てられていた。  
これで得た情報は、奴には電撃が効かない、と言う事だ。多分、化け物自身がアース体となっており、周りの草木に電撃を散らしてしまうのだろう。  
私は、獲物を持ち替える。これもまたカヅキに持たされた物だが、決闘用の棍。  
乱戦には不向きだが、一対一では恐るべき破壊力を秘めるこの武器。  
持ち心地は悪くないが、一撃の破壊力は無いに等しい。  
相手の身体はクッション体のため、打撃では分が悪いからだ。だから、ここはチクチクと削るような攻撃をするに限る。  
接近して殴っては跳び、殴っては跳び。学習能力を持たないこの化け物には、これで充分通用するのだ。  
だが、相手も黙っては居ない。美味しそうな獲物が居るのに、それを捕まえられない苛立ちと怒りから、咆哮を上げ、我武者羅に突撃しようと身構える。  
そこにヒナタは突撃し、己が全てを一撃に乗せ、叩き込んだ。鋼鉄の牙は狙い違わず、敵の身体深くへとめり込む。肉の繊維を断ち切る感覚が、棍を通して彼女に伝わる。  
激痛に、柘榴の様な眼を歪ませる。水辺の王として長く君臨して来たこの化け物には、初めて味わう苦痛。  
こんな小さな獲物に。馬鹿な。濁った思考で考える。ヒナタへの恐怖の余り、のた打ち回って彼女から離れようとする。だが、追撃の手を緩めない。  
ぶよぶよとした軟体の裂け目から、汚濁汁が撒き散らされる。もはや、虫の息であるかのように思われた。  
 
「これでッ!!」  
 
勝利を確信し、最後の一撃を叩き込もうと接近した。だがその瞳に、信じ難い物が映し出される。  
 
汚濁物に塗れた口の中から、巨大な舌の様な肉塊が飛び出して来る。それは、激しい勢いで振り回された。  
「っぅぅ……!」  
一撃目は何と避けられたものの、二撃目が間髪入れず襲い掛かって来る。慌てて体制を持ち直そうとした彼女を襲ったのは―――  
「きゃあぁぁぁっっ!!」  
肉塊の先端から高圧の水流が発射される。例えるならば「ハイドロポンプ」と言った所か。  
激流はヒナタの身体を巻き込み、そのまま背後の樹へと叩き付ける。二枚貝から異形へと進化したこの怪物は、水管が備わっていた。  
そこから生み出される激流は、獲物の動きを止めるには充分な破壊力を持っている。  
「かはっ……」  
前からは高圧の水流、後ろからは叩きつけられた激痛。衝撃がほぼ同時に彼女を襲う。全身の骨が砕けてしまったのではないかと思われる激痛に、一瞬呼吸が止まる。  
「げふっ……かはっ……な、何よ……これ……」  
ずるずると幹に寄りかかるように崩れ落ちてしまう。激しく咽込みながら、何とか立ち上がろうとするが身体が言う事を聞かない。  
必死にもがく彼女に、ゆっくりと化け物が近付いて来る。その赤い瞳は、傷付けられた怒りと憎悪とで怪しく揺らめいていた。  
「……あ……」  
憎しみと恐怖。二つの感情がぐるりと反転する。滾っていた血が急速に冷めていく。狩る者と狩られる者の立場が逆転した事に、化け物は歓喜の声を上げる。  
その雄叫びが、彼女の心臓を鷲掴みにする。冷たい汗が全身に流れる。  
「や……嫌……」  
奥底から込み上げて来る恐怖に翻弄され、思わず眼を閉じそうになった。だが……  
(相手も、苦しんでいる……)  
 
ヒナタは、レンジャーの中でも随一の冷静さを誇る。だからこそ、このような任務を引き受ける事が出来た。  
彼女の最強の武器は、敵を切り裂く剣でも、甲殻を打ち砕く棍でも、象をも麻痺させるスタンスティックでもない。その、窮地に陥っても決して乱す事の無い、冷静な判断力である。  
ヒナタは、もう一度棍を握り締める。一度は恐怖に飲み込まれた眼が、再び輝き出す。樹に捕まりながらも、ゆっくりと身体を起こす。  
化け物は本能で危険を察し、それ以上の接近はしなかった。何かがおかしい。先程まで脅えて縮こまっていたのに、今は途方も無い覇気を発している。  
「――はぁぁぁぁッッッ!!」  
叫ぶなり、一気に化け物に飛び掛った。もう、動けない筈なのに。前よりも更に激しく攻撃の手を繰り出して行く。  
飛び交う触手を打ち払い、隙を見ては懐に飛び込み、苦悶の声を上げる本体を殴りつける。  
無論、四方八方から迫り来る触手全てをかわす事は出来なかった。直撃する度に彼女の身体に激痛が走る。  
 
ここで一旦、彼女は距離を取って防御に専念する事にした。もしかしたら、このまま動かなくなるかもしれない。そう期待を込めて。  
彼女の選択は、普通ならば決して誤りではなかっただろう。しかし、ヒナタはここ数日の睡眠不足と食欲不振、そしてジャングルの中を彷徨った事によって、衰弱し切っていたのだ。彼女の体力は、触手全てを受け流せる程もう残ってはいなかった。そして……。  
「しまっ……!」  
両手の棍が弾き飛ぶ。その勢いで飛んで来た第二打に、彼女は強か打ち据えられ、地面に落ちてもその勢いは止まず、大木に激突するまで止まる事は無かった。  
「くうっ……」  
目の前が霞む。頭が重い。腕を動かそうにも、動かない。足も。体中が石になってしまった様だった。  
そこに、化け物はゆっくりと歩を伸ばして来る。チェックメイト。その言葉が彼女の頭を駆け抜けた。  
「いやっ……来ないで……!」  
怯える彼女の身体に、遂に魔の手が伸ばされた。ぬらぬらと粘液を纏わせた触手が、以前倒れたままの彼女に巻き付いて行く。  
べちゃりと言う冷たい感触に、全身に鳥肌が立つ。息を飲む娘の身体を味わうかのように、ゆっくりと触手が肌の上を這いずり回った。  
その動きは、おぞましいだけでなく明らかに女性を甚振って楽しもうと言う愉悦が感じられ、ますます彼女を震え上がらせる。  
化け物は巻き付かせた触手に力を込め、引き寄せようとする。  
「なっ……いや……!!」  
必死に雑草を掴み、土を掻き毟る。無力だと言う事は解っていた。  
だが、この化け物にタダで蹂躙なんてさせやしない。せめて最後に足掻いてやる。そう思い、この行動に走った。勿論、効果なんて期待していない。  
軽々と彼女の身体を持ち上げ、眼前に化け物の本体が迫って来る。  
「嫌……お願い……離して……!」  
 
ここでヒナタは三つのケースを考えてみた。  
一つ目は、クレバーなヒナタさんは突如反撃のアイデアを閃く、と言う物。だが、これはすぐ不可能だと判った。それを思い付いても、身体で実行する事が出来ないのだ。  
二つ目は、カヅキ達レンジャーの仲間が助けに来てくれる、と言う事だが、これも不可能である。何故ならば、スタイラーは既にこの化け物に叩き壊されている。村の人達にもこの叫びは届かない。外部からの救援が来る可能性は限りなく零だった。  
そして、最後の三つ目は………  
「何も出来ない……運命は、残酷である……」  
運命は、残酷である。先輩がよく言っていた言葉だ。人間は既にレールが引かれており、その上を進む電車の一つに過ぎない、とよく言っていた。その通りだ。  
絶望の淵に叩き落された私を待っていたのは、地獄の饗宴だった―――  
 
脱力した獲物をゆっくりと味わおうと、化け物は行動を開始した。だが、ここで一つ障害が起きる。  
服が、破けないのだ。隙間から入り込んだは良いが、全く動かない。引っ張ろうにも、引っ張れない。  
困った化け物は、ある秘策を思い付いた。それは、自分の体液で溶かすと言う物だった。  
ジャングルの獲物は毛深い物が多く、それらを食す上で毛は大きな障害となる。  
そこで身に付けた力が、角質形成物のみを的確に溶かす溶解液だった。これをこの娘にも試してみよう。  
ヒナタは、少量の優越感に浸っていた。レンジャーの服は耐火・耐水性であり、斬撃や銃撃にも耐えうるよう設計されている。  
こと耐久力に関しては、ちょっとやそっとじゃ破けないようになっているのだ。  
人間の技術を思い知ったか、そう思っていた矢先、彼女の身体に液体がかけられる。臭いこそ無いが、粘液性で色は白濁、気色の良い物ではない。そして、何より。  
「服が……!」  
煙を上げて溶けている。微弱な優越感はあっと言う間に潰え、再び恐怖が彼女を支配する。  
粘液はジャケットからタイツ、シャツへを侵食し、ブラジャーをも溶かしていく。下半部は言うまでも無く、ホットパンツと薄いショーツ程度、10秒と持たずに溶かされてしまった。  
 
これで邪魔する物も無い。彼女の身体を触手が這いずり回る。巻きつけた触手を蠢かし、丹念に粘液を刷り込んでいく。  
滑らかな女の肌と、触手の粘液との間で泡立つ。その感触が心地良いのか、触手はますます勢いを増し、彼女の身体を蹂躙していく。  
「やだっ……気持ち、悪い……!」  
ヒナタにとっては拷問でしかない。何より、初めてをこんな化け物に奪われる。その事だけでも恐怖であるのに、これ以上恐怖を上塗りして何がしたいと言うのか。  
そもそも、何故私がこんな目に……。思わず、涙が頬を伝う。  
それを、触手が拭う。無論、その行為に優しさなど存在しない。泣いても無駄だ、助けは来ない……そう、自己表示したいだけなのだろう。  
この触手は、冷たい癖に妙な熱気を持っており、恐怖しか彼女に与えなかった。ぬるぬるした得体の知れない触手で体が汚されていく自分の体。  
早く終わって、それが彼女のたった一つの願いだった。  
しかし、この程度で終わる筈が無かった。メインディッシュ所か、まだオードブルも平らげていない。そう思い、豊満な胸へと触手を伸ばす。  
「あっ……」  
剥き出しになった白い双丘を、執拗に捏ね繰り回す。触手が動く度に形を変える乳房に、化け物は更に興奮し、這わせる触手の数を増やす。  
ヒナタは歯を食い縛り、この恥辱に耐える。胸全体にじんじんと熱感が伝わって行く。乳首を攻め立てられると、流石に我慢出来ず、甘い吐息が少しずつ漏れ始める。  
それを聞き取った化け物は、乳首に触手を伸ばし、ぎゅうっと締め付けた。  
「ふぁぁっ!」  
思わず声が出てしまった。こんな触手に、私は快楽を感じている――  
そんな私の思いなど知る由も無く、私の胸はどんどん蹂躙されていく。乳輪、乳房に触手を這わせ、乳頭を攻め立て、その行動に私の身体は自然と熱を帯びてくる。  
気持ち悪い、と言う感触は未だ拭えないが、私の中では段々と別の感情が生まれていた。  
ほんの小さな芽に過ぎないが、「もっと触って欲しい」と言う願望が、私の中では出来ていた。  
 
足に大きな力が掛かる。その事で、この後何をされるのか解った私は必死に抵抗したが、結局何の効果も生まず、私はカエルのように足を開かされた。  
むき出しになった秘所に、痛いほど視線を感じる。  
「嫌ぁっ……もう、やめて……!」  
そんな叫びも虚しく、無造作に触手が股間に伸ばされた。びくっとなった背筋が大きく反り返る。  
秘裂に押し付けるように潜り込んだ触手は、粘液を塗しながらゆっくりと前後に動き始める。  
「あぐぅぅぅぁぁぁっ!!」  
破瓜の痛みが全身を貫く。今までで味わった中でも、恐らく一番の激痛だった。  
「もう……やめてぇ……こんなの……!」  
触手は私の秘部を弄り続け、小さな肉豆を擦り、包皮を剥く。  
「ひどいよ……ひどすぎるよぉっ!!」  
どれだけ哀願しても止まる事は無い、触手の狂宴。  
触手は更に奥へ潜り込み、膣前庭をくすぐって肉襞を掻き分ける。会陰をつつき、またゆっくりと戻って行く。その繰り返し。  
何時しか染み出した透明な愛液が混じり、くちゅくちゅと聞くに堪えない淫らな音を奏でる。耳を塞ぎたくとも、拘束された身体は動かない。  
「そんな……私、こんなのに犯されてるのに……なんで感じちゃってるの……?」  
実は、この化け物の粘液には媚薬効果があった事にヒナタは気付かなかった。だが、その事実を知らなかった事で、彼女の精神崩壊へのスピードは更に早まる事になってしまった  
 
「わた……ひ……まけな……わたひ……は……ぽケ……モんレンじャーの……ヒな……タ……」  
もう限界だった。それでも理性と快楽の狭間で踏ん張り続ける。  
膣口ぎりぎりまで引き抜かれ、また最後まで突きこまれる。その柔軟性を生かし、胎内全てを埋め尽くさんとするかの如く触手は暴虐に暴れ回る。  
抽送が繰り返されるたびに、ヒナタの身体はガクガクと揺さぶられた。触手が一段と大きく動き、勢い良く引き抜かれる。  
掻き出された愛液が宙に舞い、淫靡なきらめきを添える。  
「ひゃうううっ!はっ……きゃふぅぅぅっ!や、だぁ……も……やだぁ……あああぁぁっ!!」  
更に触手が捻じ込まれる。前から丹念に弄られていた菊の蕾に、遂に触手が挿入される。  
「ひ……ぎぃぃぃぃっっ……!」  
二本刺しの形となった私の身体は、もうボロボロだった。身体は粘液、泥に塗れ、体内も同じく汚濁液に塗れている事だろう。  
触手は、その動作を止めない。外気に晒された肉豆は触手に巻きつかれ、伸ばしたりつつかれたり。口では触手を咥え込み、胸の谷間にも一本。  
もう、ダメ。そう覚悟した時、突然異変が起こった。  
「………!?」  
触手が、一本残らず身を引いたのである。私の体からは触手の拘束が解かれ、何時でも逃げ出せる状態になった。だが、私は……。  
 
「おねがい……」  
ぽつりと呟く。  
「おねがいぃ……わたし、もうがまんできないのぉ……」  
その瞬間、彼女のプライドは全て砕け散った。ポケモンレンジャーであると言う誉れも、かつての栄光も、全て。  
触手が、ヒナタを縛り上げる。だが、もう抵抗は無い。やっと満たされる。やっと……。  
 
散々掻き回された膣内で、愛液と粘液が混じり合い泡立つ。ぐじゅぐじゅと、聞くに堪えない淫らな音を立てて触手は抜き差しされた。  
「くひゃあああんっ!あうっ!きゃふっ!……いい、いいのぉ!そこぉっ!」  
秘所が熱くて堪らない。入り口周辺の肉襞を擦られると電撃の様に快楽が駆け抜けていく。ヒナタは背筋を逸らせて悶える。  
「ふぁぁぁん!ああっ!そ、そこぉ!んんっ!」  
すると、一本の触手が動きを休めた。その途端、それを掴んで  
「ほらぁ……もっとぉ……もっといじってよぉ……」  
胸に押し付ける。それが動く意志が無い事を確認すると、今度は自分でそれを動かし、自分を快楽の海に浸らせていく。  
「はぁ……はぁ……ぬるぬるしたの……すきぃ……もっと、ちょうだいぃ……」  
その時、一際深く突きこまれたかと思うと、潜り込んだ触手がぶるりと震えて膨れ上がる。次の瞬間、大量の白濁液がヒナタの胎内に吐き出された。  
子宮口に熱い汚液を叩きつけられ、目の前が白くなるほどの刺激に、折れるほど背を逸らせて絶叫する。  
「あああああぁぁぁぁぁっっっ!!!」  
彼女の体がヒクヒクと痙攣する。声も出せずに震えるだけの娘から、ズルリと触手が引き抜かれた。溢れかえった白濁液が太股を伝い、地面に溜まっていく。  
触手の拘束が解かれ、淫水の水溜りにくず折れてしまった。  
「あは……ははは……あははははははは……」  
彼女は、笑い続けた。力無く、虚ろな眼のまま。  
 
するとその前に、通常の触手よりも何倍も太い物が姿を見せた。そう、それは産卵管だった。  
だが彼女にもう拒絶する力は無い。自分からだらしなく股を開き、それを向かい入れようとした刹那。  
 
「んなろぉぉぉぉぉッッッ!!」  
化け物に、強烈なカヅキの蹴りが入る。完全なる不意打ちだ。受身を取る事も出来ず、怪物はそのまま水中に倒れ込む。  
ヒナタが擦れた眼で確認出来たのは、それがレンジャーだと言う事と、私のよく知っている人物だと言う事のみ。  
だが、それは「私は助かったんだ」と言う安心を与えるには充分だった。  
 
「ヒナタ、大丈夫か!」  
反応は無い。まさか、本当に殺られたのでは……? 一抹の不安が過ぎる。  
「くっ……とりあえず、まずはコイツを何とかするのが先か。」  
水中から身を起こす化け物。その目には、再び殺気が篭もる。だが、感じていた。先程の獲物とは明らかに違う。気迫、覇気、そう言った「闘争心」の全てが。そして、極めつけは彼の右手に冠する物。それは……  
「コイツに気がついたな?これは大分昔に作られた大砲を、近代科学で復活させた物なんだそうだ。名前は……えっと、正式名称は、電磁投射砲……だっけな?まぁ、最も長過ぎるから「モンスメグ」って、俺らは呼んでるけど」  
それを構えた瞬間、触手が彼を襲う。無論、ヒナタの時とは訳が違う。そのまま突き穿つ破壊力で彼を捕らえる。が、  
「まぁ、普通は対艦用の武装なんだけど、この際だから借りて来ておいたんだ。対怪物としては、これ以上無い破壊力だってよ!  
爆ぜなッ!!」  
発射トリガーを引いた直後に、勝負は決まった。一撃で化け物の体が消し飛んだのだ。まさに跡形も無く、雲散霧消と言うのがベストだろう。  
電磁レールガン。理論は電磁誘導を利用したリニアモーターカーと同じだが、発射する物の体積によっては、威力もスピードも前述の物とケタ違いとなる。こちらが発射したのは、実は何でもない、ただの椰子の実であった。  
それですら、あの巨体を吹き飛ばすには充分過ぎるほどだった。  
 
獲物を仕留めた後、ヒナタの方に振り返る。  
「おい……お前、何て格好……」  
全裸で精液の中を泳ぐ彼女の姿を発見したのだ、そう思うのは普通だろう。  
「とりあえず、一旦身体を洗うか」  
そう言って私の肩に手を掛けたカヅキを、私は  
 
押し倒していた。ジャケットのジッパーに手を掛け、一気に引きずり下ろす。  
「ヒナタ、お前……!」  
「おねがい……わたし、がまんできないから……」  
まだ粘液の精神影響が消えていないのか、私は錯乱していた。ズボンのチャックを歯で噛み、少しずつ開けていく。すると、そこから出て来たのはたくましく隆起した男根だった。  
「待て、待てって!もう、止めてくれ!このまま続けられたら、俺、間違いを起こしそうで……!」  
私はカヅキの面前まで顔を持って行き、問いかけた。  
「まちがえって、なに……?わたしは、カヅキのこと……だいすきなのに……カヅキは、わたしのこと……きらいなの……?」  
その発言に、カヅキも折れ、  
「……いいんだな、本当に。」  
「うん……きてぇ……!」  
巨大な男根が侵入してくる。だが、これ以上ない程に濡れそぼっていたので、入れるには全く苦労しなかった。  
触手とは全然違う男根の温かさに喘ぎ、ヒナタは身体を激しく動かす。カヅキは半ば呆然と、ヒナタの行為に身を任せていた。  
「ん……むねも、おねがい……」  
カヅキの手を、自分の胸に添わせる。最初はぎこちない動きだったが、カヅキも観念したのか、自分が弄りたいように胸を変形させて行く。  
乳首を重点的に責めたり、乳輪をなぞったり、はたまた揉みしだいたり。  
そんな事をしてる内に、絶頂に近付いて来た。  
「くっ……ヒナタ、俺……もう……!」  
「はぁっ…うん、いいよ…わたしの、なかに……!」  
普通は、外に出す物だと認識していたカヅキは、予想外の返答に半分困惑したが、「中で良いんだな」と聞き返す他なかった。  
「いいよっ……カヅキぃ……イクなら……いっしょにぃっ……!」  
耐え切れず、全てヒナタの中にぶちまけてしまった。  
「くぅぅっ!!」  
「ああああああああああっっっっっ!!!」  
 
 
ヒナタが目を覚ましたのは、レンジャーベースの医務室だった。その時入って来たのは、  
「ヒナタ、もう体は大丈夫なのか?」  
「……カヅキ。」  
私は色々と聞きたい事があった。まずは……  
「今回の事、どうなったの?」  
「絶体絶命のピンチを俺が救った、って事で終わり。安心しろ、あの事は誰にも言ってないから」  
「あの事……?」  
うっすらと記憶が蘇る。そう、私は、カヅキと……  
「え……嘘、もしかして、私……」  
カヅキを見上げると、彼は  
「迫ったのは、お前だからな」とだけ言い残して、話題を変えた。  
「何で俺が駆けつける事が出来たか、解るか?」  
首を横に振る。レスキュー信号を出す前にキャプチャスタイラーは叩き壊されてしまったし、私の叫び声が届いたとも思えない。  
「実は、キャプチャスタイラーは破壊されたり、持ち主から長時間離れたと解ると、自動で一番近いレンジャーに連絡が行くんだ。で、その時一番近くにいたのが、」  
「……カヅキだった、と」  
一応、納得は出来た。だが、カヅキは一つ腑に落ちない点があるらしい。  
「なぁ、ヒナタ……もし、お前を助けに来たのが俺じゃない、他の男だったとしても、あんな態度を取ったか……?」  
聞き辛そうにしていたとは解った。でも、どうやって返答したら良いのか解らない。だから、素直に胸中を打ち明ける事にした。  
「貴方じゃないと、させなかったわよ……」  
小声でそう言って、さっさと毛布に包まった。  
「おい、ヒナタ?今なんて……」  
「いいからさっさと出てってよ!アレはあんな状況だったから仕方なかったけど、普段じゃ絶対にさせないんだから!」  
「わーった、わーったから!怒鳴るなっての……ったく、お前って年食ったら絶対口うるさいオバサンになるぜ。」  
「えーえー、口うるさいオバサンで結構よ!いざと言う時にしか役に立たない貴方よりはよっぽどマシだわ!」  
「何だとぉ!?」  
「何よ!」  
 
医務室から聞こえる論争に、結局、この二人は進歩しないんだな、と、半ば呆れ、半ば尊敬したシンバラ教授だった。  
 

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