時は流れ−ある都会でのこと。
この周辺で一番高いと言われるビル。
完成した当時は世界一だと持て囃されたが、その記録もすぐに塗り替えられた。
しかし、この都会を見渡すには絶好のスポットだった。
それは今避雷針の上でマントをはためかせる彼にとっても。
あの研究所で、彼は唯一生を受けた。
成長するにつれあどけなさを失い、眼光は鋭くなった。
彼自身を作り出した人間を憎んだこともある。
その後この地を見つけるまで苦難の日々を歩んだことも−それはまた別のお話。
声が聞こえてきたのはその時だった。
『…ミュウツー…』
どこかで聞き覚えのある少女の声。
彼が顔を上げたがそれらしき姿は見あたらなかった。
『忘れちゃったかな…』
声が消え入りそうになる。
『…お前は誰だ、姿くらい現せ』
『覚えてないか…まだあなたは小さかったもんね』
青い髪の少女が目の前に浮かび上がる。
ミュウツーが目を見開いた。
『……!ゴーストか?悪い冗談はよせといつも…』
『ここにゴーストが住んでるの?素敵!お友達になりたいな』
白いワンピースの裾をひらひらさせながら少女は無邪気に笑った。
『本当に、アイ、なのか…?』
少女が両側の裾をつまみ上げて"ご挨拶"をする。
『あの時、消えたはずだ…』
『ここにはね、アイのオリジナルの記憶が残っているの。そして私の記憶を持っているあなたがこの都会に訪れた…とっても不思議でしょ?』
『……』
『ね、久しぶりにいっぱいお話しましょう?生まれてからのお話、聞かせて』
『ああ…』
ミュウツーがかすれた声で頷く。
『ありがとう…』
夜風にアイの長い髪が流れている。
あの日と同じだった。
幼い時、つたなく交わったあの日と。
ビルの屋上にちょこんと腰掛けた少女とその隣で低く落ち着いた声で語るポケモン。
やかましいクラクションもここまでは届かない。
今まで訪れた土地のこと、危うい所を救ってくれた人間の少年のこと−
アイは目を輝かせながら聞いてくれる。
幼かった自分もそうだったのだろうか。
ミュウツーがそう考えながら話していると、一陣の風が吹いた。
『きゃっ…!』
彼は素早く彼女の身体を抱え、マントの中に入れさせた。
『…今夜は冷えるな』
そのまま立ち上がると、非常ドアの前まで"移動"し中に入る。
中には誰の気配も感じられなかった。
風がドアに当たり唸り声をあげている。
静寂の中、アイが口を開いた。
『いつも、あったかいんだね…』
『ん…?』
彼女はマントに身体を埋めたまま答える。
『初めて会った時から思ってた…あの時もね』
身体が震えていた。
『本当は一緒に生まれたかったの。お姉さんに、お婆ちゃんになれなくてもいい…でも私はだんだん冷たくなって…』
『もういい…』
止めようとすると、少女は顔を上げた。
年齢の割に大人びた表情をしている。
『ここにいるのは、女の子の私だけなの。貴方に分けて貰ったから…』
きょうは、おれいに。
その言葉を合図に、少女はポケモンを押した。
ポケモンも抵抗せず、そのまま倒れ込む。
お互いの衣類を外し合い、彼女は彼自身を優しくさすった。
彼の丸みを帯びた指が彼女の小さな胸を弄んでいく。
わずかに彼女の声が漏れ始めた。
その隙に床に垂れたままだった彼の尾が彼女の背中を撫で上げる。
『…ぁ…!』
電気を流されたように身体を反らせたが
『…わたしも…』
と彼自身を口に含み始めた。
『…うぁ…っ』
甘く噛み少し舐め上げ刺激を与えられる度、彼自身も悦びに震えた。
彼の手は徐々に下がっていき、ある所で手を止める。
『…そのまま、おねがい…』
彼女が手を導いた。
既に濡れているその場所に指が触れ水音が響く。
その中心に触れる度に彼自身に彼女の熱い息がかかった。
『もう、いいか…』
『ん…っ』
彼は彼女の震える腰を抱え上げ、彼自身に座らせるように支えた。
彼女が腰を徐々に落としていく。
『…ぁ…あ…』
彼はそっと手を離した。
『…あつい、ね?』
汗ばみ頬を上気させたまま、彼女が微笑む。
『ああ…』
彼も潤んだ紫の目を細めた。
…いこう。
その合図と共にほぼ同時に達した。
早朝。
服を整えたアイはミュウツーに別れを告げ、摩天楼に立ち込める霧に消えていった。
再び会う日は、そう遠くないのかもしれない。
大人編 完