――その日も216番道路はテンガン山から吹き下りる寒気の影響で天候は大雪であった。――
この周辺はテンガン山の影響で不思議なことに一年間ほとんど雪が止むことはない。長年降り積もった雪が、道行く者の足の動きを鈍らせる。
…こんな悪天候の中、ポケモンバトルを繰り広げている一人の少年がいた。防寒具はマフラーだけ。随分ラフな格好をしている。見てる人が寒くなりそうな位の服装である。
この少年、名前はコウキ。年齢はまだ10歳である。出身地はフタバタウン。そしてこの世界では有名な世界的権威・ナナカマド博士から「ポケモン図鑑」の作成を依頼された選ばれしトレーナーである。
そのコウキが繰り広げているバトルにも決着がつこうとしていた…。
「ユキノオー!!」
「勝負ありだね。僕の勝ちだよ。」
とコウキが対戦相手のボーダーを打ち負かしたその時。どこからともなく炎をまとったポケモンが現れた。
「よくやったゴウカザル。また強くなったね!」
とコウキは相棒・ゴウカザルの頭を撫でる。ゴウカザルはとても嬉しそうだ。ほほえましい光景である。誰が見ても最高のコンビネーションだ。
そこにボーダーが駆け寄る。
「完敗だ。君もそのゴウカザルもかなり強いね。オレもまだまだ修業が必要だよ。」
「ありがとう。このゴウカザルはヒコザルだった時からずっと育てた最初の相棒なんだ。」
「そうなのか。このユキノオーもユキカブリだった時からオレが育てた最初の相棒なんだぜ!」
ボーダーは軽く微笑む。
「このユキノオーに与えた一撃…。もしかして…。」
「そう。フレアドライブさ。体への反動は大きいけど、僕らがいつでも全力で戦う証なんだ。」
…このバトルの決め技はフレアドライブだった。この技は炎タイプの中でも高い威力を持つ。それ故に体への負担も大きい。すなわちこの技を習得しているポケモンは必然的にレベルが高いことを示している。
「君は年齢以上にたいしたやつだよ。気に入った!名を聞いておこう。」
「僕はコウキ。フタバタウンのコウキ!そして…。」
「シンオウ地方ポケモンリーグの新チャンピオンさ。」
「チ…チャンピオン!?嘘だろ…。」
「じゃあ僕は用があるから…。またね!」
―そういってコウキはボーダーの前から去っていった…。この時、これから待つ事態を誰が予想しただろうか…。
ボーダーとのバトルに勝利し、別れたコウキは自分がチャンピオンになった時のことを思い出していた…。
―1週間前―
ポケモンリーグ・チャンピオンルーム。ここではかつてないハイレベルな戦いが繰り広げられていた。
チャンピオン・シロナとポケモントレーナー・コウキの戦いである。
共に残りポケモンは1匹ずつ。
シロナのガブリアス、コウキのゴウカザルがフィールドに残っていた。
相性的にはゴウカザルのほうが悪い。2匹とも体力は残り僅か。
2匹は最後の攻撃に出た…。
「とどめよガブリアス!ギガインパクト!!!」
最後の力を振り絞った強烈な一撃を繰り出す。それはまるで空を切り裂く刃の如き一撃であった。
「負けるなゴウカザル!インファイトォ―!!!」
こちらも最後の力を振り絞った強烈な拳を突き出す。まるで空気を切り裂き、風をまとった不死鳥の如き一発であった。
ドガ―――ン!!!!!
…結局、結果はほぼ互角だが、僅差でコウキの勝利だった。そしてチャンピオンの職を受け継ぐその際にシロナから頼まれたことがあったのだ。
「ねぇコウキくん。キッサキシティにある神殿を知ってるかしら?そこにはね、伝説のポケモンがいるという噂があるの。そこを調査してくれないかしら?」
「キッサキのジムリーダーのスズナちゃん。彼女に言えば神殿を開けてくれるはずだから、今度彼女のところに行ってくれないかしら?私からスズナちゃんにいつ来てもいいように連絡をしておくわ。それがあなたのチャンピオンとしての初仕事よ。」
と断る暇もなく半強制的に仕事を依頼されて、チャンピオン・コウキはシンオウ地方最北端のキッサキシティ。その町のジムリーダー・スズナを尋ねる途中、ここ216番道路を通り掛かっているのだ…。
426 名前:コウキ×スズナ4 投稿日:2006/11/24(金) 21:35:33 ID:03o+0x6j
(…ここを通るのも久しぶりだな…。前回はギンガ団の悪企みを食い止めるため。シンオウを守るためにエイチ湖に向かう途中、ここに来たんだよな…。)
そんなことをコウキは考えながら歩いていた。
しかし、しばらくするとコウキは自分の体がおかしいことに気がついた。
(…ゲホッ!…ゲホッ!…頭が痛い…寒気がする…。)
どうやら防寒具がマフラーだけのコウキは当然のことながら、風邪を引いてしまったようだ。
熱があるようだ…。おまけに咳も出ている…。
何処かに…休める所はないだろうか…?
…そんな時にコウキの目に看板が止まった。【ロッジ・ゆきまみれ】である。
ここは自由に寝泊まりの出来るトレーナーにとっては心強い場所である。コウキはしばらくロッジで休むことにした。
ロッジの中に入ると、誰もいなかった。とにかく体が熱っぽいのでコウキはロッジ据え置きのベッドにしばらく横になろうとした。
暖を取り、机の上にモンスターボールと荷物を置いてコウキはベッドに横になり、すぐにコウキは寝息をたてた。
――どれだけの時間が経ったのだろう。コウキが目を覚ましたとき、時計の針は9時を指していて、辺りは既に暗くなっていた。
(まだ体はだるいけど、今日中にはキッサキシティに着ける…かな?明日、スズナちゃんに会って神殿を調べないと…。リーグに間に合わないんだ…よね…。)
動かない体を酷使し、コウキは起き上がった。しかし、ここで大変な事が発覚した。
―…モンスターボールが…ない!?―
コウキは慌てて身辺をさがしてみたが、どこにも見当たらない。それどころか荷物も入っているバックもない!
…ということは、自分が寝ている間にモンスターボールが盗まれた。ということである。
もちろんこのロッジには常日頃から管理人がいるわけではないので、電話も通じない。夜遅いので人も来ない…。食料おろか水も、凍結を防ぐ為にストップされていた。
…まさしく絶体絶命である。
しばらくコウキは考えた。
(ヤバイ…このまんまロッジに居てはいずれ死んでしまう…。でも今から外に出ても、また体調が悪化してしまう…。どうしよう。)
どちらを選ぶにしてもリスクは大きい。けど、どちらかしか選べない…。
そんな時、頭の中にはこんな光景が浮かんでいた…。
(――数ヵ月前。幼なじみのジュンと一緒にシンジ湖ヘ行き、最初の相棒。ヒコザルに出会ったこと。
お互い強くなってチャンピオンを目指す決意をしたこと。
ナナカマド博士の依頼をうけて、ヒカリと一緒に図鑑を作り上げる約束をしたこと。
ジム戦に備えて、相棒と特訓をした末にヒコザルがモウカザル、さらにはゴウカザルへと進化をした時のこと。
旅の途中に出会った沢山の相棒達のこと。
チャンピオン・シロナを始めとするシンオウの四天王、ジムリーダーなどのつわものに相棒と共に勝ち抜いていったこと…。)
苦渋の決断の末、コウキは決心した。
―ここを出てキッサキに向かおう…。
と。それは自分の体の心配ではなく何より奪われた大切な相棒を見つけだすことが決め手となった。強い決心を胸にコウキはロッジを後にした…。
――午後9時。216番道路。気温は0℃を下回り、人の体温を奪うには充分すぎる気温になっていた。日中と比べると雪の降り方も激しくなっていた。
そんな悪天候の中を失った相棒を見つけだす決心を胸にコウキは着実にキッサキシティに向けて歩みを進めた…。――
(そろそろ217番道路か…。)
疲労が蓄積している足を引きずり、朦朧とした意識の中。ついにコウキは217番道路にさしかかった。しかし、キッサキシティまではこの217番道路。そしてエイチ湖を通り抜けなければ辿り着けない。
(…くっ、キッサキシティまではまだ先か…。)
しかしコウキは着実にキッサキシティに近づいている。歯を食いしばり、頭の中を駆け巡る猛烈な痛みに耐えながら歩みを進めていた…。
すべては大切な相棒の為に。
そんなときコウキはあることに気がついた。
(…ここは…何処なんだ…??)
いつの間にか、天気は吹雪に変わっていた。視界は悪く右か左かも分からない…。
…そう、コウキは遭難してしまったのである。
テントを立てようにも道具はない。体を温めようにもポケモンはいない…。
体温の低下が疲労困憊した体を蝕む。食料はない。…絶望感が込み上げた。
(…どうして?どうして僕はこうなんだ!シンオウのチャンピオンにまでだって上り詰めたのに…。ジムリーダーだって打ち破ったのに…!!コンビネーションでは負けなかったのに…。
どうしてなんだ!何で僕がこんな目に…?)
…ついにコウキの目から一筋の涙がこぼれおちてきた。チャンピオンといえども、まだ10歳の少年。
この状況に耐えられず、泣いてしまったのだ…。
「みんなゴメン…。僕が…こんな弱い人間だから…。
…うわぁぁっ!!」
…その瞬間コウキの背中に強く冷たい風が当たり、同時に激痛が走った…。
――ザグッ!!――
(…っ!!ぐはぁ…!!うぅ…。)
コウキはその場に倒れ込んだ。右肩からは血が流れている。
…一体誰がこんなことを?
敵は目の前に現れた。コウキは敵に目をやった。
…鋭い刃のような爪、不気味に輝く赤い尻尾、そして全身を包み込む紺色の体毛。
なによりもその鋭い眼光が見るものを凍り付かせる。
野生のマニューラである。
コウキはその姿の恐怖に怯え、動くことすら出来ない…。
マニューラはコウキに近寄る。コウキは恐怖のあまり声を出すこともできない…。マニューラはついにコウキの首に爪を当てた。
野生のマニューラは相手にとどめを刺すときに、相手の首に自らの爪を軽く押し付ける習性がある。
まるでその姿はチェスで言えば、
…チェックメイト。
マニューラは腕を振り上げた。ものすごい勢いでコウキに目掛けて腕を振り下ろす…。
コウキは抵抗することができない…。そして…!!
――ドガッ!!――
――コウキは目の前が真っ暗になった…。――
――ここは…何処…?…確か僕は…みんなを見つける途中に…野生のマニューラに…襲われて…。…あれ?肩が何ともなっていない…。体も軽いぞ…??
…あぁ…夢だ。コレ…。夢って分かるものなんだな。夢なら何かいいことがあればいいのに…。
…コウキくん…。
…え?
…コウキ!
…誰なの…?
「何やってんだよコウキ!ここでくたばってどうすんだ!オレたち一生のライバルだろ!フタバを旅立った時から誓ったはずだ!早くオレたちとバトルするために。お互い強くなるために!お前が相棒を助けなくてどうすんだよ!!」
…ジュン。
「そうだよコウキくん!奪われたあなたのポケモンたちだってあなたを待っているのよ??あなたがいないとあのポケモンたちは幸せになれないんだよ?ここで諦めてどうするのよ!目を覚まして!!」
…ヒカリ。
みんな…ありがとう。…探しにいかないと…。…みんなを…探しにいかないと!…でも、僕もしかして…死んじゃってるのかも…?目が…覚めるのかな…??――
「…う…うぅ〜ん…。」
―コウキは目を覚ました。―
つまり、コウキはまだ生きている。コウキは一命を取り留めたのだ!!しかし不思議である。コウキの目にとまった光景は、マニューラに襲われた凍てつくような雪の大地ではなかった。
どうやら木の温もりが溢れている温かい家の中のようである。前方には暖炉があり、パチパチと音を立てながら燃えている…。窓の外を見ると、しんしんと雪が降っている…。そしてコウキは気がついた…。
(ケガの手当をしてくれている…!!)
ふと自分の右肩に目をやると、包帯が巻かれている。不思議なことに全く痛くない…。おそらく薬が塗られているのだろう。
熱はまだ完全に下がってはいないが、良くなってきているようだ。体がそれを証明している。
ここで気になるのが、誰がコウキのケガを治してくれたのか?である。
この部屋には誰もいない。おそらく留守なのだろう。コウキはその場でしばらく安静にしていた。
およそ20分が経過した。その時である。ガチャッと扉の開く音がして、一人の少女が部屋に入って来た。
とても美少女で、おそらく年齢は15〜18歳ぐらいだろう。髪は彼女の胸あたりまで伸びている長髪であり、髪が湿っている。風呂上がりなのだろう。
色っぽい表情に思わずコウキは頬を赤らめた。この感情も生きている証拠である。その少女は入ってくるなり
「あっ!目が覚めたんだ!!」とコウキに話し掛けた。
「もしかして僕のケガを手当てしてくれたのは…もしかして…?」コウキは尋ねた。
(…この女の子…。何処かで見たことあるかも…??)
「あたしだよ!感謝してよね!えへっ…。」
と彼女は軽くウィンクをして見せる。
「でもまさか、シンオウのチャンピオンであるコウキくんが、野生のマニューラに襲われていて抵抗も出来ないなんてね…。大丈夫なの??」少女が立て続けに疑問を投げ掛ける。
「どうして僕の名前や僕がチャンピオンだってことを知っているの?」コウキは聞いてみた。すると少女は少し不機嫌にな顔をして言った。
「ひっどぉい!あたしを忘れたの??あたしはあなたにあってその日から忘れた日なんてなかったよ!特にあたしが負けたあの日からね!」
「あたしが負けたあの日から…??…え…ひよっとして…もしかして!!」
コウキの頭の中で彼女の正体がわかった。髪形こそいつもとは違うものの、情熱を持った性格…。間違いない!!
「スズナ…ちゃん!?」
「えへっ…。思い出した?そう!キッサキシティのジムリーダー・スズナとはあたしのことよ!!」
実はコウキの手当をしてくれたこの少女こそが今回のチャンピオンの任務に欠かせないキッサキシティの神殿を守る重要人物であり、ダイヤモンドダスト・ガールの異名を持つキッサキシティの氷使い。熱いハートの持ち主であるジムリーダー・スズナだ。
普段は髪を三編みにしているのだが、今はほどいている。服装も白のスウェットを着用している。
「…スズナちゃん。ありがとう。髪を結んでなかったけど、…可愛かったよ。」
コウキは正直にいった。
「えへっ…。ありがと♪」
スズナは照れていたらしく、頬を赤らめた。
「ところで、ここは何処なの?」
「ここはあたしの家だよ!!私、もう一人暮ししているの。」
とスズナは言った。
「じゃあ僕はスズナちゃんに命も助けられたのかな…?」
「間一髪だったよ!あとちょっとで本当にコウキくん死ぬところだったんだよ!!」
そしてスズナは詳しいことを話始めた…。
―午後10時。キッサキジムの仕事を終えたスズナは、エイチ湖のほとりの近くにある自宅への帰路を歩いていた。
(…今日も防衛成功!あたしも強くなったのかな…?えへっ…何てね!)
とスズナは心が踊るような気分で歩いていた。と、そこへ…。
――ガサッ。ガサッ。ザッ!フィォォォッ――
と、スズナの前を物凄いスピードでポケモンが走り抜けて行った。ただのトレーナーならそれで終わりだろう。しかしスズナはある感情を読み取っていた…。
(…かなり殺気立った雰囲気だった…。それも凍てつくような…。…行かなきゃ!)
スズナはそのポケモンの後を追い掛けて行った…。
――217番道路に来た頃、スズナはそのポケモンを見失っていた…。――
(何処にあのポケモンは行ったんだろう…??もういいかぁ〜。帰ろう〜っと。)
とスズナが戻ろうとした瞬間…。
――ザグッ!!――
と、猛烈な吹雪に乗せられグロテスクな音が辺り一面に響き渡った。その直後、スズナの前の視界が開けその光景を目の当たりにした。
…あれは!!マニューラ!!
スズナの目の前にいままさに野生のマニューラが腕を真上に振り上げたところであった。マニューラが見せるこの仕草は獲物にとどめをさすときによく見られる。そして今回の獲物は…10歳前後の少年だった。
「助けなきゃ!お願い!チャーレム!」
スズナはチャーレムを繰り出した。
マニューラは腕を振り落とし始めた。とどめである。
「チャーレム!とびひざげり!!」
(…お願い!…間に合って!!)
マニューラの爪が少年の首に当たろうとしたその瞬間…!!
――ドガッ!!――
チャーレムのとびひざげりがマニューラに当たり、マニューラは遠くに飛ばされた…。間一髪、間に合ったのである。
スズナは少年に駆け寄り、
「大丈夫?もう心配ないからね!」
と声をかけた。少年は意識を失っているようだ…。
(家まで運ばなきゃ…。この子死んじゃう!!)
スズナは少年を背中にしょい込んで帰路についた…。
――そして今、ここにあなたがいるの。
スズナは全てを話し終えた。コウキは何度もスズナに御礼をくり返した。
「家に帰って来て改めて顔を見たら、コウキくんだったからあたしビックリしちゃった。どうしてあんなところにいたの?あなたのポケモンで倒せないことはないでしょ??」
…スズナはついにこの疑問をコウキに投げ掛けた。
「………」
コウキは黙りこんでしまった。
「…??」
スズナは不思議そうな顔をしてコウキの顔を覗き込む。
「…ふぅーっ…。」
…コウキは一呼吸置いて口を開き、全てをスズナに打ち明けた…。
チャンピオンの任務でキッサキに向かっていてスズナに逢いにいく途中だったこと。途中で体調を崩してロッジで休んでいたこと。
寝ている間に大切なポケモンを何者かによって奪われたこと。自分の荷物も奪われたこと。吹雪の中で遭難したこと。全てである。
「…はい。よろしくお願いします。失礼します。」
ガチャッ。
「コウキくん…。キッサキのジュンサーさんに電話はしておいたから。後は警察に任せよう?」
「嫌だ!警察なんかに任せられない!!」
「どうして分からないの!警察の協力なしじゃ、手持ちがいないトレーナーが見つけるのは無理に決まってるじゃない!ちょっとは冷静になりなさいよ!」
いつものスズナとは違う。表情が険しい。スズナも本気で怒っている…。
…コウキは黙り込んで下を向いていた…。握ったこぶしが震えている。しばらくしてコウキは口を開いた…。
「…こんなんで僕、トレーナーのチャンピオンとして…やっていけないよ…。……。」
コウキの目には一筋の涙が流れていた。悔しかったのだ。ポケモンを奪われたことが。命の恩人に八つ当たりした自分が…。
すると、スズナは立ち上がりコウキの側に座りコウキの頭を撫でてあげて、喋り始めた。
―あのね。あたし、コウキくんのポケモンはみんな大丈夫だと思うの。みんな力強いし、戦ったあたしならわかる。そして何よりみんなあなたを信頼していてあなたを待っているはずじゃない?―
そしてスズナは自分の胸にコウキをそっと抱き寄せてこう言った。
―あたしも一緒に探してあげる。何だって協力する。ね、今日だけは泣いてもいいよ。あたしの胸貸してあげる…。だからもう泣かないで。―
「…ぐすっ…。…うっ…うわぁぁぁぁ〜。」スズナの気持ちのこもった一言一言が、深い傷を負ったコウキの心を癒している。凍てついた心を溶かすような温もりがコウキを優しく包み込んでいた。
コウキはスズナの胸でついに泣き崩れてしまった。
「…コウキくん。辛かったでしょう?もう一人じゃないから。何でも抱え込まないでね…。」
スズナはコウキをまるで自分の弟のように優しくしてくれた。コウキも今はチャンピオンとしてのプライドを捨てて、思いっ切り泣いていた。
―あれから夜はさらに更け、ようやくコウキはようやく泣き止んだ。―
「…スズナちゃん。ありがとう…。」
長い時間泣いていた為、目元が赤く腫れている。
「ううん。それにしてもよく泣いたね。バトルの実力はあっても…コウキくんってまだまだ子供なのね…。」
スズナはコウキの頭を撫で、穏やかな表情でコウキに優しく語りかけた…。
「さ、夜も遅いよ。もう寝たほうがいいわ。」
いつしか時計の針は午前1時を回っていた…。
「うん…。ありがとう。じゃぁ、おやすみなさい。スズナちゃん。」
コウキはベッドに入って寝ようとした。
と、ここでスズナが突然こんなことをいい始めた。
「…ねぇコウキくん…。…もうちょっと奥に詰めてくれない?」
「…え…?」
コウキには理解が出来なかった。奥に詰める…?え…どういうことだろうか?
不思議そうな顔をしてコウキは固まっていた。するとスズナは再び話し始めた。
―…だから…さっきあたし一人暮らししているって言ったでしょ?…ベッド…1つしかないの。あたしの寝る場所はここしかないの。でもあなたは怪我をしてるでしょ…?もちろんあなたをベッドから追い出したりはしないよ。…でもあたしもベッドで寝たいのね…。
人呼吸置いてスズナはゆっくり、そしてはっきりとこう言った…。
―だから…今夜は一緒に寝よう…??―
と。コウキも状況を理解したのか、だんだん顔が紅くなってきて、流石にコウキもテンパり始めた。年齢的にも、あっちの知識は乏しいが多少、女を意識はする。
もちろんこの年になれば‘同じベッドの中で若い男女が一夜を共にする’なんてことはどのようなことかぐらいは多少分かるはずだ。
本当は断るべきである。とコウキは自分に言い聞かせた。しかしコウキにとってスズナは命の恩人だ。もちろんコウキには拒否権がなく、当然断ることも出来ずに…。
「…どうぞ。」
と、ベッドの半分をスズナに譲った。
「じゃあ…失礼します。」
スズナはベッドに入って来た…。そして、
「…おやすみ…。コウキくん…。」
とそれだけを言い、スズナは部屋の電気を消した。
――「おやすみ…。」――
…とはいってもコウキは寝ることが出来なかった。どうしてだか心臓の高鳴りが治まる気配がないのだ。いや、治まるどころか時間の経過と共に激しくなるばかりだ。
(…どうしてだろう?何で緊張しちゃうのかなぁ…。…隣に居るのが女の子だから…?…いや違う。そんなはずはない。小さい時にはヒカリと一緒に寝たことだってあるんだから…。その時は緊張なんてしなかった…。なら…どうして?…。)
と、ベッドの中でコウキは自問自答を延々と繰り返していた…。そして…。
(…!!…)
コウキの考えは、ついに一つの結論にたどり着いた。
…コウキの脳裏には今日の出来事が電光のように浮かんでは消えて行った。
…ボーダーとバトルしたこと。マニューラに襲われたこと…。いろいろあった。しかし、コウキの脳裏にはもっと鮮明に残っているものがある。
―――それは…他でもなくスズナという一人の少女の存在だった。
自分をマニューラから助けてくれたこと。
自分の手当をしてくれたこと。
自分を慰め、胸を貸してくれたこと…。
例を挙げればキリがない。それほどまでにスズナを想う気持ちが強くなっていた…。
コウキはスズナが好きになっていたのだ!
「…ど、どうしよう…。」
「…どうしたの…?コウキくん…。」
「わわっ!!」
突然、スズナが話し掛けて来た。
「えへっ…。眠れないね♪」
「そ…そうだね…。」
先程までは何でもないように思えたスズナの表情さえも愛おしく感じられる…。コウキはじっとスズナの顔を見つめていた…。
「あれ…?コウキくん…顔が真っ赤だよ…?」
「ぇ…!?ぁっ!!…な…何でもないよっ!」
と、まるでコウキは照れ隠しをするように背を向けた。
「なぁ〜に。恥ずかしいことなのぉ―?」
と突然スズナはコウキにの背に抱きついてきた。コウキとスズナは密着状態である。おそらくコウキの心拍数は最高潮に達し、その鼓動はスズナにも伝わっていたことだろう…。
「…好きだよ…。」
「…え…?」
「…僕…スズナちゃんの事…好きだよ…。」突然、コウキは意中を告白し始めた。
「あのね…。僕。今日、分かったんだ…。」
「…自分の気持ちが、分かったんだ。」
「…上手くは言えないけれど…。」
「…嬉しかったんだ。‘泣いてもいいよ’って言ってくれた時…。ありがとう。すごく嬉しかった。」
「…初めてなんだ。人を心から好きと思え…」
…スズナはコウキの口をふさぐように…そっと口づけをした…。
――スズナの口づけにコウキは今にもとろけてしまいそうだった…。今でもこの信じられない光景を。この現実を思わず疑っている。――
「…はぁ…はぁ…うぁっ!」
スズナとコウキ…。二人とも息が荒くなっていた。そして顔を赤らめて見つめあっている…。
「…覚えてる?あなたと初めて戦った時のこと。あたし…こういったの。
――あなたのこと尊敬しちゃう。――って。
ポケモントレーナーとしてのあなた。もちろん尊敬してる。
だけどね…。あたし、もっと心から尊敬してるあなたがいるの。
――1人の男の人としてのあなたを…。――
…好きだよ。コウキくん。」
スズナは満面の笑みを浮かべてコウキを見つめていた。
「スズナちゃん…。」
…チュッ。
再びスズナはコウキと口づけを交わした。
「…えへっ。スズナでいいよ。…コウキ。」
スズナはコウキをぎゅっと抱きしめた。コウキもスズナを抱きしめていた…。
「…ねぇコウキ…。あたし…。もっと…もっとコウキの心のキズを癒してあげたいの。」
と、いつもとあどけない表情のスズナとは違う色気を含ませた声で耳元でそっと囁いた。
「…スズナ…?もしかして…。」
コウキも男だ。スズナの色気を含ませた声に過敏に反応している…。
「…実はあたし…まだ初めてなの。でも…。頑張って、コウキを大人にしてあげる…。だから…。」
「…えへっ…あたしのこと…貰ってくれる?」
コウキにはその一言がついに起爆スイッチとなったようで、今まで心の奥底に秘めていた男の本性を。そしてスズナへの愛情の全てを爆発させた。
今度はコウキから動いた。いつの間にか強引にスズナを押し倒して、口づけを交わし始めた。しかし先程のキスとは違い、濃厚な大人のキスである。
舌でスズナの歯茎を刺激したり、お互いの舌を絡めさせたりとその姿は1人の少年、1人の少女ではない。
もはや1人の男、1人の女の姿そのものである。
「…っ!…はぁっ!あんっ。」
スズナは恥ずかしいのか顔を真っ赤にしていた。
「…スズナ。可愛いよ…。」
「…もぉっ。恥ずかしいじゃない…。」
「…そんな所が可愛いよスズナ。…もっと気持ち良くしてあげるから。」
「…あたしだって!コウキをあたしの虜にしてあげるんだからっ!!」
…………。
「ふふふっ。」
「きゃはは!」
二人とも思わず笑ってしまった。お互い初体験だというのに…。この雰囲気は2人の緊張を解きほぐして幸せの時間を作り上げていく…。
最初に行動に出たのはスズナだった。何の前触れもなくいきなりコウキの服を脱がし始めたのだ。
「…なっ!止めっ…スズナッ!!」
そしてついにコウキのズボンに手をかけ、コウキの半勃ちしたペニスを露わにさせた…。
「うわぁ!こんな大きさになるんだぁ―!!ビックリ!きゃはっ!」
スズナは興味津々の様子。何しろ男のモノを見るのは初めてのことだからだ。
「ねぇコウキ…。これからどうすればいい?」
「…スズナに任せるよ。」
スズナはますます悩んでいた。考え抜いた末、慎重にそのグロテスクな一物を握り、上下に擦り始めた…。
「…うっ…あっ…。うわっ!」
コウキは想像を上回る気持ち良さに思わず喘ぎ声を出してしまった。ぎこちない手の動きが妙にコウキを興奮させる。
「…えへっ。コウキのあそこ…だんだんかたくなってくるよ…。それになんか…ネバネバしたものが…。不思議…。」
そしてついにコウキの我慢も限界に近づいていた…。
「…スズナ!ダメだ…僕もう出ちゃう!!」
「…えっ!出ちゃうって!?ねぇコウキってば!!」
スズナは動揺していた。実は先程のキスぐらいは知っていても、エロ知識に関しては全くの無知なのだ。
「…あぁぁぁあぁぁっっ!!」
コウキは白濁色の精液を辺り一面大量にぶちまけた。もちろんその一部はスズナにも降り掛かった…。
「きゃぁぁっ!!」
スズナは悲鳴をあげていた…。頬のあたりに精液が付着している…。
「…ゴ…ゴメン。」
コウキはハンカチを取出してスズナの顔を拭いている。
「…いいの。最初に始めたのはあたしだから…。いっぱい出たね♪…気持ち良かった?」
コウキは言葉では言わなかったが、そっとスズナを抱きしめた。
「…えへっ。ありがとうコウキ。あたしうれしいよ。」
と、スズナはこう言った。
「…今度はあたしを…気持ち良くして…。」
…そう言ってスズナは自ら自分の服に手をかけ始めた。まずはスウェットを脱ぐ。コウキはその様子をじっと見ていた。
「…あんまり見ないでぇ…。恥ずかしいよぉ…。」
スズナはコウキに言いつつも下着姿になった。キャミソールとショーツを着用している…。そしてついに下着に手をかけ始めた…。
――スズナの裸体は否の打ち所がない。まさに完璧なスタイルだった。――
胸は服の上からでもその大きさは確認は出来るが、想像よりも膨らみを帯びている…。
この世代でこれほどの乳房を持っているのはおそらくそういないだろう。決して垂れることなく重力に逆らって形を作っている。
相当な大きさの乳房だがそれとは対象的にその先端にはまるで荒野に咲く一輪の花のようにピンク色の小さな乳首がついている。
腰のくびれはまるでモデル顔負けだ。まさに絵に書いたという表現が相応しいだろう。
スズナの大事なところは僅かに陰毛が生い茂り、美しい…。
無駄な脂肪は無く、身体は引き締まっている。肌も色白でキメ細かい。
その姿はまさに「ダイヤモンド・ダスト」…いや「白雪の妖精」と呼ぶに相応しい…。
こんなスズナが未だに処女だということが今でもコウキは信じられなかった。
「…綺麗。」
コウキはこれ以上ない賛辞を送りたいが、その一言しか出ない…。
「……ありがと……。」
スズナも恥ずかしさのあまり小さな声しか出せないようだ。
「…じゃあ。いくよスズナ…。」
「…うん…。」
まずコウキはスズナの胸を揉み始めた。片手では到底掴めないほど大きい…。
それに弾力もあり、コウキの指の動きに合わせておもしろいようににその形をかえる。コウキもその胸の大きさにはとまどいの色を隠せない。
「…やぁっ!あんっ!…あぁっ…!!」
「…スズナのおっぱい大きいね…。柔らかいよ…。」
「…やっ!そ…そんなことないっ…ひゃぁつ!!」
「…感じてるの?スズナ…。」
「…バ…ばかぁっ…何言わせるのよぉ…ひゃぁん!!」
「スズナはエッチだね…。おっぱい揉まれただけで変な感じになっちゃうなんて…。くすっ。」
とコウキは軽く微笑んでいる…。何処からこの心の余裕が生まれたのか…。考えると恐ろしい。
「…だっ…だってぇっ…。コウキがあたしの…胸揉んでるからぁ…あぁん!」
コウキは片方の手を乳房の先端にある乳首に手を伸ばし、捻ったりしてみた…。
「…いゃぁっ!あぁあっっ!!そこらめぇっ…!!」
「…ひゃあん!あっ…あっ…あんっ!!イクッ!イクッ!イッちゃうぅっ!!」
相当感じている様子だ。スズナは喘ぎ声を発している。それも部屋中に響くような声で…。自分とは思えないこえが部屋中に響き渡り、更にスズナは興奮していた…。
「…いやぁん…。ひやぁっ!あっ!あぁぁあ〜んっ!!」
喘ぎ声を部屋中に響かせてスズナは快感の絶頂に達し、気を失った…。
「…スズナ…?…大丈夫?」
スズナが快楽に溺れ気を失ったことでコウキは少し心配になっていた…。
「…うん。大丈夫…。…気持ち良かったよコウキ…。ありがとう…。」
…チュッ。
いつの間にか2人はお互いのことが愛しくて堪らなくなっていた。
コウキにはスズナが、スズナにはコウキが欠かせない存在になっている。自然と手をつなげる。自然と抱きしめられる。自然とキスが出来る…。
当たり前かも知れないけれど、2人にとっては何事にも代えられない大切な時間…。
「…コウキ。また大きくなってるね…。あたしに当たってるよ。」
「…え?…あっ!」
コウキは自分の下半身を見た。自分のものはスズナのお腹に当たっていた。何だか無性に恥ずかしさが増して来た…。
「…そっ…その…えっと…。」
コウキは顔を真っ赤にしている。先程と変わらない10歳の少年の顔で。
「…もう…可愛いんだから…。…いいよ、コウキ。」
スズナは覚悟を決めてベッドに仰向けになった。
「…えっ?」
「本番よコウキ…。これであなたもあたしも大人になれるんだから…」
スズナの目は澄んでいた。もう迷いはない…。
「…で…でも初めては…痛いかもしれないんだよ!!僕、スズナに酷いことしたくない…。」
「…あなたの下半身は正直者よ。それに痛くたって構わない。初めての相手がコウキなら…。だから…。」
――あたしのオマンコにコウキのオチンチンを…挿れてください…。――
コウキはついにスズナに乗せられたのか、軽く頷いた。コウキにも迷いはなかった。
スズナの下半身は既に愛液で濡れていた。女性の性感帯の中枢・クリトリスも充血していた。これなら前戯の必要もないだろう…。
コウキはスズナの左足を持ち上げて股を開かせる。そして自らのペニスをそっとスズナの割れ目に当てた。そっと腰を動かして、彼女への小さな入口を見つけた…。
「…スズナ…挿れるよ…。でも…無理しないで…。」
「来て…コウキ。」
コウキはゆっくり慎重に腰を落とし始めた…。亀頭が膣の中に沈んでいく…。その時だ。
「…っくぅっ!?」
コウキの肉棒に電撃のような衝撃波が走った。スズナの膣内は想像していたよりも締まりが強かったのだ。
思わずコウキは声にならないような叫びをあげた…。この衝撃に耐えていたのはコウキだけではなかった。
「…あああぁっ!ぃっ…。コウキっ…。くぅっ!」
スズナの表情は歪んでいた。決して弱音は吐かなくても、処女を失うことは相当な痛みのだろう。
「大丈夫!?ゴメン!いま抜くから…。」
「…ダメっ!抜かないで!大丈夫だから…。」
「…で…でもっ…。」
「…大丈夫よ。しばらくすれば…だんだん痛みに馴れると思う…から…。」
コウキはスズナに制されて、必死に昇天しないように堪えていた…。
「…もう大丈夫。痛くないよ…。」
スズナは処女を…自分の初めてをコウキに捧げた。破瓜の血を流しながら。
「…じゃあもう少し奥まで挿れるよ…。」
…ズプッ…ズプッ…ズプッ…。
「…ぁあぁあうんっっ!!」
スズナに先程の痛みとは違う快楽の波が押し寄せてきた。
「…スズナ。全部入ったよ…。」
コウキとスズナの恥骨が当たっている。スズナはコウキの物を受け入れたのである。
「えへっ…嬉しい。あたしたち…一つになったのね♪…」
「…腰…動かすよ。スズナ。」
コウキはゆっくりと腰を動かし始めた。亀頭が外界に出るか出ないかの微妙な位置まで引き抜き、素早くスズナの膣の最深部。つまり子宮への入り口まで挿し込む。この上下運動を繰り返し、徐々にスピードを早めていった…。
――パンッ!パンッ!パンッ――
「…あっ!あっ!ひゃん!…あっ!いやぁん!!」
「スズナっ…気持ちいいっ!気持ちいいよっ!」
お互いは快楽の波に身を任せ、部屋には二人の喘ぎ声と肌が触れ合うことによって生じる音が反響していた。
お互い恥ずかしがっていたのに、いまは理性を失うくらいに腰を振っていた。
「…あんっ!ひゃぁんっ!!」
コウキは追い撃ちをかけるように腰を降りつつ、腰の動きに合わせて大きく揺れるスズナの豊満な胸に刺激を与えていた。
「…あうっ!きゃぁっ!!」
「スズナの乳首…たってるよ?オマンコとおっぱいと2箇所も僕に弄られてて感じてるなんて…スズナって淫乱なんだね…。」
快楽のあまりコウキはこんな淫語も平気で口にするまでになっていた。
「…い…淫乱なんかじゃないわよバカっ!…あっ!…コウキに…コウキと一つになれて…嬉しいだけなんだからぁっ!…ひゃぁっ!」
こんなことを繰り返しながら二人にも快楽の絶頂が訪れようとしていた…。
「スズナっ…もう出るッ!!」
「…あ…あたしもっ!…イッ…イッちゃうっ!!」
「…もう…中に…中に出して!!」
「…あたしの中にっ、あたしの子宮にコウキの精子ぶちまけてぇぇぇっ!!」
「うっ!うわああああっっっ!!」
「きゃああああぁぁぁぁんんんんっっっっ!!!!」
ドクッ!ドクッ!ドクッ!ドクッッ!!!
二人にも同時に絶頂に達した…。そして二人とも快楽のあまり、気を失っていた…。
―――朝7:00。昨晩からの吹雪はおさまり、この217番道路には滅多にないのことだが日差しが差し込んでいた。
この道路の外れにある小さな木の家にも、いつもと何も変わらない爽やかな朝が迎えにやってきた。――
「――…うぅーんっ。朝かぁ。寒いなぁ。」
コウキが起き上がろうとした時…。
…ガバッ!!
スズナがコウキに抱き着いて来た…。
「おはよっ!コウキ!」
「おはよスズナ。」
「…。」
二人ともその後の言葉が出てこない。気まずい雰囲気が流れていた。二人の脳裏には昨日のことが蘇ってきた。
「…えへっ。あたしたち…ヤッちゃったね♪」
「…うん。あの後そのまま寝ちゃった見たいだから…。まだお互い裸だね…?」
「…あっ!」
スズナは頬を赤く染めていた。昨日の大人の表情のスズナとは違っていてあどけない表情をした少女だった。
その後、二人は一緒に風呂に入ってお互いの身体を洗いっこし、いつもの服装に着替えた。まさにそのとき一本の電話がかかった。
「…はい!分かりました。」
その電話はコウキにとってこの上ない吉報だった。キッサキ警察がコウキのポケモン達を保護したのだ。犯人はギンガ団の残党だったらしく、テンガン山あたりからコウキを尾行していたらしい。
「さぁ行こうコウキ!キッサキシティへ!みんなが待ってるよ!!」
二人は一路、キッサキシティに向かった…。
[キッサキシティ]
「ありがとうございました!!」
コウキはジュンサーさんからボールと荷物を受け取った。こうしてゴウカザルとコウキは無事に再会を果たした。頬を緩ませて最高の笑顔を見せている…。
誰が見ても二人の絆は深い。
(…あたしもこの人のように…。強くなれるかな…?バトル実力も強い。けど…あたしのことを…受け止めてもくれるかな…??)
スズナの乙女心にはコウキに傾いていた。心の底から甘えたいと思うようになっていた。一生をこの人に任せてもいいと思うほど…。
「…ねぇ。コウキ。」
「何?スズナ。」
「…あたし。あなたに任せていいかな…?」
「…え…何を?」
「…あたしの一生を…あなたに任せてもいいかな??」
「…えぇ?」
スズナはいつの間にかプロポーズ(?)みたいな事をしていたらしい…。
「…ゴ…ゴメンッ!…何でもない!何でもない!!…さぁ行くよコウキ!キッサキ神殿に!」
スズナは雪の上を走り始めた。
「…僕がスズナを守る!今も、そしてこれからも…!!」
コウキはまるでキッサキ中に響く程の大声でスズナに向かって叫び始めた…。
「…コウキ。あたし…!」
「さぁチャンピオン・コウキの初仕事。行こうスズナ。キッサキ神殿へ…。」
コウキはキッサキ神殿に向かい走り始めた。スズナの手を握りながら…。
すっかり昨日までのの立場は逆転していた。何故だかコウキは一回り成長したような気がする。背丈だってスズナよりも高く見える…。いつの間にかコウキの心にスズナを…一人の女の子を守り抜こうとする強い気持ちが生まれていた。少年はまた一歩大人の階段をのぼった。
辛いことがあっても、もう泣かない。強い意思を心に刻みコウキの目は遥か未来に向いていた…。
[FIN]