〜第四章 "彼我"〜
今、ジュンはハクタイジムの裏口の前に立っている。
実際彼には未だ彼女に合わせる顔がないと思う部分があるのか、そこで佇んでいるだけだ。
時々、窓の中を覗く。ナタネがいる。ただ、彼女は後ろを向いているので、存在が確認できる程度だ。
暫く時間が経って、ジュンはようやく裏口の扉の戸をノックする。
「はい・・・どなた?・・・・はっ・・・!?」
ナタネが扉を開ける。そして、驚きのあまりに息を飲む。
爾後、ナタネは黙って逃げてしまう。
「待ってよ!ナタネさん・・・・・」
「なによ・・・人の気も知らないで・・・あたし、さみしかったよぉ・・」
ナタネが後ろを向きながら告白する。
ジュンはその様子を見て、未だ許可が下りていないのにも構わず、部屋に上がっている。
そして、後ろからナタネの肩に手を乗せる。
「ごめん・・・一人にさせちゃって・・・」
「もぉ・・・ほんとに、さみしかったんだから・・・」
そう言って、ナタネはジュンの唇に自分の唇を重ねた。
「んんん・・」
接吻による愉悦を謳歌した後、ナタネはジュンの体を押し倒した。
「おわっ・・・ナタネさん・・・」
予想外なほどに主導権を誇示するナタネに、頗る驚いているようだ。
「ナタネさん・・・酒でも飲んだの・・・?」
「うふっ、ちょっと、飲みすぎちゃったかな・・・ほんとは、まだいけないんだけどね・・・」
莞爾とした表情をほろ酔いの掛かった顔に浮かべながらを答えるナタネ。
その笑顔が、ジュンにとって今まで以上に大人っぽく、そして妖艶に感じられた。
次に、ナタネはジュンのズボンの出っ張りに手を添える。
「ジュンくん・・・やっぱり、おっきくなってる・・・・」
そんなことを言って、ナタネはチャックを下ろし、トランクスもずり下ろす。
そして、熱く充血しきったジュンの肉棒を外に解放する。
「ご奉仕いたします、ご主人様、なんてね・・・ふふっ」
冗談めかした台詞を吐いて、ナタネはジュンの亀頭の先端部分にちゅっ、とキスをする。
「あうッ・・!」
たったそれだけで、ジュンは声を漏らしてしまう。それほどの、絶妙なタッチだった。
「んんン・・・」
うっとりとした声をあげて、ナタネが、ジュンのペニスを口に含んだ。
まず、一気に喉奥まで欲望を侵入させようとする。しかし、ナタネの唇はペニスの半ばまでしか到達しなかった。
その到着点から、ナタネの唇はゆっくりと後退する。彼女の口から這い出てきたペニスは、さらなる唾液にぬめり、何か別の生き物のように見えた。
ナタネは目を閉じ、ゆっくりと頭全体を動かしながら、フェラチオを始めた。
「ううン・・・ふン、んン、んン、んン・・・・」
動きそうになるジュンの腰を両手で押さえ、ナタネが、リズミカルにジュンの一物を刺激する。
生温かい口腔粘膜が亀頭の表面を滑り、舌がシャフトに絡みついた。
溢れた唾液がピンク色の唇の端からこぼれ、それをじゅるじゅるとすする音が、ジュンの獣欲をますます駆り立てる。
しかし、ナタネは出し抜けに『ご奉仕』を中止してしまう。
「あぐっ・・・」
いきなりだったせいか、ジュンが短く声を漏らす。彼のペニスはびくっ、びくっ、と跳ね上がる。
そして、ナタネは改めてジュンの肉棒を凝視し、それに対する畏敬の念をその顔に示す。
「すっごい、ぴきぴきになってるよぉ・・・」
「そっ、それは・・・」
いつの間にか主導権を我が物にしてしまったナタネは、文字通り鉄の如く硬く屹立した一物にその白い頬を寄せる。
玩ばれた影響で赤黒くなったジュンのペニスと、ナタネの大人びた美顔との対比が、おぞましいほど強烈な印象を二人に齎す。
「あっつい、ヤケドしちゃいそう・・・」
そんなことを明け透けに言われ、ジュンは耳朶まで赤くしてしまう。
「ジュンくん・・・あなた、顔までまっかっかにしちゃって・・・かわいい♪」
「うっ、うる、さいなぁ・・とっとと、つづけてくれよッ・・・!」
ジュンがナタネの頭を両手で抱えて、抗う余裕も与えることなく、口腔愛撫を催促する。
「いやぁっ、ちょっ、とっ、あン、んン・・」
かぽ、かぽ、かぽ、という些か滑稽な音を出しながらナタネの『ご奉仕』は続く。
「ダメだ、ナタネさん・・・も、もう・・・い、いっ、イクっ・・・出るっ・・」
フェラチオを再開して間も無く、絶頂が間近に迫っていることを告げるジュン。
「うん・・・いいよ、ジュンくん・・・いっぱい・・だひてぇ・・・」
そう言って、ディープスロートのスピードを極限まで速める。
「はう・・・ッ!」
ジュンはきつく目を閉じ、ナタネの頭を自分の腰に押しつける。そのまま彼女の喉の奥めがけ、思いきりスペルマを発射する。
びゅううッ! びゅううッ! びゅうううッ! びゅううーッ・・・!
恰も体中の力が吸い取られたかのような快感。一時的に呼吸がままならなくなる。
「っは・・・はぁっ・・はっ・・・はぁぁ・・」
「んへッ! げほ! えほっ! けほッ・・・!」
やっと口が自由になったナタネは、猛烈に咳き込む。流石に、ちょっと心配になってきたジュンは声をかける。
「だ、大丈夫?ナタネさん」
「けほっ・・うん・・大丈夫。ごめんね・・・まだ、あたし、口でやるのは慣れてないからさ・・・」
「気にすんなよ。俺が、エッチなナタネさんをちゃんと調教してやるからさ」
そう言いながら、ジュンがナタネの腰を撫で回す。
「きゃうっ・・! もう・・・ジュンくんったら・・・うふふっ」
以前と違い、互いに安堵の表情を隠すことなく、二人は強く抱きしめあっていた。
だが、この再会の宴は未だ始まったばかりである。
〜第四章 "彼我" 完〜