「……っしょう!」  
 少年は地団駄をふむ。  
「どうして、どうして勝てないんだよ!」  
 目の前の倒れたカメックスを、じっと睨みつける。腰の鞄からボールを  
取り出すと、しゃがみこみカメックスを中に入れた。  
 少年に勝利した少女は「頑張ったね」と自分のパートナーであるリザー  
ドンの頭を――といっても、リザードンは首を彼女の届く位置まで下ろし  
ているのだが――背伸びしてなでる。そして、彼女もまたボールにのスイ  
ッチに指をあて、パートナーを中へ入れる。  
 そして、じっと少年を見た。  
 
「……あのねー……。いい加減にしようよ、ケン」  
「いーや、絶対勝つまで俺はやるんだ!」  
 少女の顔を、勢いよく指差すと少年は叫んだ。少女は、じっと少年を見  
て、そしてしばらくしてはぁ、とため息をつく。  
「あのねー……、オーキド博士からこの子をもらった……初めてのバトル  
の時からすでになん十回バトルしてもあなたバトルに勝ったことはなかっ  
たじゃない?」  
「ぐっ……」  
「それに、リーグでは私にコテンパンにされてあなた走っていっちゃった  
し、その後もう一度、強くなったリーグで四天王のみなさんと戦ったあと  
でぼろぼろ……ってときになってもあなた負けてるし。  
 ……とうとう、リザにタイプでは優っているのにあなたのカメックスは  
私に負けるようになったでしょう? もう、いい加減にあきらめようよー」  
 にこり、と笑いながら少女は言った。少年――ケンは言葉を失っている。  
それでもぐっと拳を握りしめて少女に向かって口を開いた。  
 
「それはそれ、これはこれだ、マミナ! 絶対勝つまで俺様は諦めないん  
だ!」  
「もうー……」  
 いきまいているケンにマミナと呼ばれた少女は帽子を掴むとため息をつ  
く。そして、ぽん、と手をたたきケンに向き直った。  
「そうだ、こうしない? これからバトルする度に勝った方は賞金じゃな  
くてね、負けたほうに好きなことをしていいの」  
「は?」  
「つまり、負けたほうは相手のいう事をどんなことでも聞くの。。  
 うん、決めた。だって私が負けることなんてこれからないだろうしさ。  
そーだよ、そうしよっ!」  
 にこにことはしゃぎながら、そしてなにげに酷いことを言いつつケンに  
微笑みかける。  
 
 ぽかん、とあきれていたケンだったが、ふと考えマミナを見上げて、  
「……そうか、何でも……だな?」  
「うん、何でも!」  
 にこにこと少女は答える。少年はにっと笑うと、立ち上がり少女に向かう。  
「何でも、だな。いいぜ、受けてやろうじゃないか!」  
「オーケー! じゃあ決まりね!」  
 にこにこと笑っている少女を、ケンはじっと下から上まで舐めるように  
して見つめていた。  
 
 
 ――その後数ヶ月……いや、数年たっても、彼は彼女に負けつづけ、そ  
の約束がいつのまにか一度から1日になっていた。  
 そして、負けるたびにじっと少女を見つめる――負けるたびににやりと  
笑っている少年がいたのだが。  
 

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