さて、どういうことかは知らないが、もう3年も前の話になるらしいので、覚えてない人も多いと思う。  
そのことを踏まえて、もう一度自己紹介をさせていただこう。  
 
そんなわけで、やあやあ、みなさんこんにちは。  
俺はシンオウ地方四天王、炎使いのオーバ。  
真っ赤なアフロがトレードマークで相棒はミミロップ。  
もう一度念を押すが炎使いだ。  
色々言いたいことはあるだろうが、仕様なんだ。あきらめてくれ。  
 
自己紹介がすんだところで、今度は、俺の今の状況を説明しなければならんらしい。  
あらすじ、もしくは、前回のおさらいってやつだ。わずらわしいだろうが聞いてくれ。  
何故なら、現在の自分の状況を把握するってのは非常に大切なことなのだ。  
ましてポケモンバトルにおいては、それができるかできないかで、かなりの差がでる。  
シンオウ地方四天王炎使いのオーバ。  
俺はいつだって自分の状況を把握し、それをもとに行動することで、そこまで登りつめたのだ。  
 
確か前回、俺はデンジのせいで風邪をひき、デンジのせいでヒカリに問い詰められながらも、  
どうにかこうにかファーストキスを終えたはずだ。  
キスした後のヒカリはかわいかった。それは覚えている。間違いない。  
その後、どうなったのか。答えはすべて目の前にある。  
 
さて、目をあけてみよう。これが今の俺の現状だ。  
 
とりあえず簡単に説明すると、ヒカリと俺が向き合って座っている。  
右手におっぱい、左手におっぱい、ちんちんにヒカリの手。  
そんなとこだ。  
 
…。そんなとこだ。  
 
 
真っ暗になった目の前が、今度は真っ白になりそうになりながら、俺はどうにかこうにか頭をはっきりさせようと試みる。  
だがしかし、男なら誰しも経験あるだろう。  
俺の今の主導権は脳にあらず、ヒカリが触る我が第二の脳に存在せし…って、それじゃダメだろ。  
やわらかく弾力のある小ぶりな胸を弄びながら、拙く俺のものにさわるヒカリの手を感じながら、  
この年でお縄にかかるわけにはいかないと、必死でどうでもいいことに意識を集中する。  
思い出せ俺、「そーれ勃起勃起♪」という、いつか誰かをEDへと導いた伝説のちんこーるを。  
名残惜しいがおっぱいとはお別れだ。ありがとうちんこーる。  
 
おっぱいをさすってた手をとめて、どうにか意識を別へと飛ばす。  
突然動きを止めた俺に、ヒカリも気付いたらしい。  
物欲しそうな顔を俺に向ける。ちょっと見ていられなくて目をそらす。  
 
「ヒカリ」  
 
声がかすれてる。そういえば俺は風邪をひいていた。  
 
「俺、風邪引いてるから、これ以上するとうつしてしまう。」  
 
「だから、もうやめよう。な。」  
 
「ほら、また次があるから。」  
 
じりじりと後ずさりしながら、何とか言葉を紡ぐ。  
続きの行為はまた今度。君がもう少し大人になってから。  
 
やる気満々の俺のハートを、手早くズボンにおしこめて、やっと主導権は第一の脳にもどったようだ。  
まだまだ、血液循環中だが、これだけ距離をとれば何とかなるだろう。一息ついてヒカリをみた。  
 
「な」  
 
泣いていた。まっすぐ俺をみつめて、大きな瞳をさらに大きく見開いて、頬に大粒の涙をこぼしながら。  
 
ぽたり。  
 
涙が床に落ちると、今度は唇が震えだした。  
その震えは瞬く間に全身にひろがり、やがて彼女は俯いて嗚咽を漏らしき始めた。  
泣いているのを見るのは初めてじゃないし、泣くのも覚悟はしていた。  
でも、こんな泣き方をするなんて知らなくて、どうしてよいのかわからなくなった。  
抱き締めるべきか迷って、少しだけ近づく。小さな声が聞こえた。  
 
「オーバは、」  
 
本当に小さな声だった。それを言うのが怖くてしょうがないのが一目でみてとれた。  
 
「私じゃだめ…なんだよね。」  
恐々とヒカリが言葉をつむぐ。  
自分ではだめなんだと。俺にとって大切な人にはなれないんだと。  
自分はどうやっても子供でしかないのだと。  
 
いつかバクが言ってた言葉を思い出す。  
「兄貴がヒカリを思うように、ヒカリも兄貴のこと思ってんだよ。」  
あの時はどういう意味だかわからなかった言葉が、沁みるようにはいってくる。  
 
俺は彼女に女になってほしくなかった。  
子どもの頃ってのは存外短い。それは俺が通り過ぎたからこそ実感している。  
子どもには子どもなりの、大人には大人なりの、時間ってのがあるのだ。  
俺は、俺のせいで、彼女のその時間が永遠に奪われてしまうのが嫌だった。  
彼女にとって俺は、彼女の未来にいる誰かのための通過点にしか過ぎないかもしれない。  
その程度である俺が、どうして彼女のその時間を奪えるだろう。  
だから、俺はなるべく彼女と恋人みたいに過ごせなかった。  
子どもという不安定な存在を、大人が簡単に弄んではならないのだ。  
俺は大人だ。子どもだったことも勿論ある。  
当然、大人の大きさと子どもの不安定さを知っている。  
彼女にとって、俺は永遠のものじゃない。いつかきっと別れは訪れ、きっと彼女は後悔する。  
それが、俺は怖くて怖くてはぐらかし続けていたのだ。  
彼女を俺の時間につきあわせてしまうのを。  
彼女を恋人という鎖でつなぎとめておいて、偽善者ぶったのだ。  
けれど、それは彼女にとって酷なことだったのだろう。  
結局は同じことだったのだ。  
彼女もまた、自分のせいで俺が俺の時間を過ごすことができないのが−−−−−−−−  
 
ぎゅっと抱きしめてキスをした。  
もういいよ、って耳元でささやく。  
17回も俺をぶっとばし、17回もあの手この手でキスをせまってきていた、  
あの元気な女の子が、すっかり弱弱しくなって、俺の腕のなかで震えている。  
 
「ごめん、痛いと思う。」  
 
体重を優しくかけて、俺はヒカリを押し倒した。  
 
 
 

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