「だー、ちきしょう!!」
当てもなく俺は手に持ってたバッグを部屋の中へ放り投げる。
外は暗いがそれでもわかる様な量の雪が降っている。しかも今日は何日だ。カレンダーでは12月24日となっている。日付チェックの間違いであると信じたかったが、リモコンでつけたテレビではバッチリとクリスマス特集なんかしていやがる。
俺が子供の頃はこの日が待ち遠しかった。そして毎年が楽しいクリスマスだった。楽しかった―――あぁ楽しかったさ。
だけど成人になって普通の会社員になってみろ。巣立ちしたから祝ってくれるヤツがいない、プレゼントくれるヤツがいない、外ではバカップルがイチャイチャしながら街中歩いてる。やってらんねぇよ全く。
そんな中唯一安心して見れるサイトがある。なんていうかまぁ、仲間―――というか同類(?)がいる。ホント、こんな毎年送ってから俺は必ず心の中で吼えている。
『クリスマスなんて中止になっちまえばいいんだ!』
と、今日、この時まで思っていたのだ。
―――俺の部屋の窓に何かが当たる様な音がした。
最初は風に煽られた雪がガラス窓を叩いているのかと思った。だがそうではないらしい。その音は一定間隔で鳴らされているのだ。誰かがノックをしているのだろうか。でもいったい、誰が。
俺は気になって窓を開けた。視線の先には誰もいない。次に視線をスライドするように下げる。
・・・いた。
顔の部分から右上方、左上方へ白い角のような物が生え、顔から下は憎きサンタの様な蓄えたヒゲ、目は太い丸ツールを使ったようなまん丸な目で、目尻は黒い。鳥のような、例えるならインコみたいな嘴。
体は丸い体系で真ん中に白いボタンのマーク以外は全部赤で覆われていてやはり恨めしいサンタの格好をしていた。白い袋だって呪ってやりたいサンタを思わせた。ただ黄色い足と外見を見たらどう見てもペンギンにしか見えなかった。
間違いない、こいつはデリバードだ。
窓を開けると、さも我が家のように土足でフローリングへ上がりこみ、部屋の真ん中まで移動すると体を揺らして水分を―――ってやめろよコラ!!
「んで、ノックしてまで何しに来たんだ、お前」
ただでさえその姿を見ると消してしまいたいほどのイベントを思わせるのに、それをさらに悪化させる気かこいつ。
するとデリバードは思いついたように袋をまさぐり始めた。
「デリッ!」
そして取り出した包みを俺へと差し出した。
・・・まさか。
ゆっくりと自分を指差して、首をかしげる。デリバードはさも当然とでも言うように頷いた。
「よっしゃああああああああ!!」
両手でガッツポーズを組んで俺は天井に向かって吼えていた。
「それでよぉ、最近の若いモンはちょぉっと怒られた位でビビって辞めていっちまうしよ。度胸がなってねぇっての」
プレゼントもらってうれしかった俺は、デリバードと一緒に酒を飲む事にしたのだ。デリバードは首を横に振っても俺が無理矢理引きとめ、今俺の正面で酒に付き合ってくれている。
俺としてはただ話を聞いてくれるだけで良かったんだが・・・。
「デリデリッ!!」
正面のデリバードは腕を組んでうんうん頷いている。
デリバードはちょっと酒を含んだら、酔ってしまったらしくて、今じゃコップに酒をダボダボ入れてそれを一気に飲み干している。
コイツ・・・何上戸だ?
まぁ俺は気にせず自分の中に溜まっていた物を吐き出せればどうでも良かった。
「それに、女」
その言葉にデリバードは何か反応していたが酒を飲んで酔っていた俺にブレーキなんてものは存在していなかった。
「最近の女なんてよぉ、化粧で上書きしないと可愛く見えないなんて考えはおかしいよな。化粧なんてケバいっつうの」
俺はデリバードの表情なんてお構いなしにさらに続ける。
「なんで素で美人な女性が少ないって言うか皆無に近いんだよな。なんだ、もう美人の女は漫画やゲームの世界にしか存在しないのか? それはねぇだろう」
俺の横の机に積んであるOケースに包まれたゲームの山は会社の同僚から借りたものだが、本当に女性が繊細に描かれている。性格も容姿もバッチシ。最近のイラストレータはいい仕事をしている。
「今日会社でも茶髪の女が書類を渡してくるときだって、『はい、これヨロシク〜』だぞ。何だあの態度は、『○○ですけど〜』みたいな間延びした口調。やる気がそがれるわ」
そして俺は締める。
「今の女は最低なやろうばっかだ。どっかの政治家が言ってた『女は産む○○』なんて今の女性にはピッタリの言葉じゃねぇか。なぁデリバード、同じ男としてそう思うだろ?」
デリバードの性別なんてぜんぜん知らないが、まぁ男であるだろうと思った。がぶ飲みしてるしな。
ところがデリバードは「デリィ」と愛想笑いを浮かべていただけだった。しまったなぁ、政治家の言葉がまずかったかなぁ・・・。
「ま、まぁ、余り気にするな。最近の女性の態度がなってないって話だからな」
俺は言い終えてコップに半分入っていた酒を空にするまで傾けた。
「でもさ、結局・・・」
俺は声を落として本音を愚痴として零す。
「『彼女』・・・欲しいんだよな」
目尻に涙が溜まっているのを気づかずに零し続ける。
「会社から帰る時にな、見たんだよ、たくさんのカップル。街中を歩いていたり、店でプレゼントを選んでいたり、素通りをする公園でもベンチでキスしていたりとかな。
それを見ていると、『あぁ、なんで俺一人彼女もいないでこんな道を歩いて帰らなきゃいけないんだろうなぁ』とそんなこと考えてしまって。すると哀しくなるのを抑えるために怒りに感情転換をして、自棄酒複数買って、家で嫌な思いを忘れようと思ったらお前が来て・・・」
俺はデリバードを見る。デリバードも悲しい目でこっちを見ている。
「ありがとうな、無理矢理つき合わせちまって。クリスマスなのにも関わらずプレゼント配ってるお前を見て仲間だと思ったんだ。プレゼント、ありがとな。サンタにもよろしく言っといてくれ」
「デリ・・・」
デリバードは何かを迷っていたようだが、覚悟を決めたらしく、立ち上がって俺のほうへ歩いてくる。
「慰めて・・・くれるのか?」
俺の顔に手を当てて、顔を上げさせる。それによって正面にデリバードの顔がある。
顔が、ゆっくりと近づいて・・・て、え?
―――デリバードは目をつぶって、俺と口付けた。
何がなんだかさっぱり分からず、俺はびっくりしてすぐに顔を離す。デリバードもその行動に驚いてこっちを向いている。
「な、なにするんだデリバード。た、例え相手がポケモンでも・・・男同士だろ!!」
デリバードは首を横に振って床に座り込む。
首を横に振ったって・・・ま、まさか。
デリバードは両足を開いて両手を付け根に触れ、左右に広げた。
女性特有の秘所が口を開いていた。
「メス―――だったのか」
デリバードは顔を赤くして俺から目を背けてしまった。
・・・と、いうことは、今までの暴言は全てデリバードに当てはまってしまったという事で。
「スマンッ、デリバード!!」
手を付いて頭を地面にぶつける事ぐらいしか俺は彼女に詫びる方法が思い浮かばなかった。
「俺、オスだと思ってずっと悪口言ってて、だからその、決してお前に向かって言った訳じゃないんだ!!」
「デリデリッ」
「ホントゴメン! 何十回謝って済む問題じゃないけど、俺にはこれしかできないから」
「デリデリィ!」
「だから―――」
と、上げたその頭に、デリバードは抱きついてきた。デリバードのお腹は暖かかった。
「デリバード・・・」
そして俺に、もう一度口付けをしてくれた。嘴は硬かったが、暖かさを感じた。
「デリ・・・」
デリバードはまたしても顔を赤くして、両手を互いに押し合いながらもじもじしていた。
その表情って・・・もしかして。
「したい・・・のか?」
するとデリバードは顔全体を服よりも赤くして、ゆっくりと縦に頷いた。
「こんな俺でも?」
もう一度―――頷いた。
ベッドは無いので寒い床になるけど、俺もデリバードも全く構わなかった。
三度目の口付けは、舌を出してみた。デリバードもがんばって俺の舌に自分の舌を絡めてくれた。
キスしながら体を触る。触れる部分が少なかったが、火照っていた。
顔を離し、我慢できずにズボンを下ろす。下着で絞めつられていたモノを脱いで解放させた。既に俺のモノは大きく硬くなっていた。
「デリバード、いいか?」
デリバードはゆっくりと俺のモノに触れる。今まで他人から触られた事が当然のように無かったので、それだけで気持ち良くなるなんて思わなかった。
しごいて大きくする必要も無かったので、デリバードは舌を出して先を舐めた。その瞬間に体の中を電気が通った。
「くっ」
思わず声を漏らす。
デリバードは大きく口を開けて俺のモノを咥えた。
全てを飲み込むことはできなかったが、残った部分を手で包み、上下に動かし始めた。それに加えてデリバードは必死に俺のモノを上下左右に舐めまわしてくる。
この口撃にとても耐えられそうに無かった。
「デリバード、離れてくれ!」
だがデリバードは離れるどころか、さらに深く咥えたのだ。
「デリバ―――」
俺のモノからはきだされたそれを口の中へ含んでいく。
やがて一通りだし終えたのを確認して、デリバードは口を離す。いつもと変わらないようだ。まさか、あの量を全部飲んだのか!?
「デリィ・・・」
デリバードは床に座り、秘所を開いてモノ欲しそうにこっちを見た。秘所からはトロトロと液体がこぼれている。もう舐めてやる必要はなさそうだな・・・。
俺のモノも未だ硬くなったままだ。
「デリバード、いいよな」
デリバードは頷いた。
俺はデリバードに四つん這いになってもらい、自分のモノをデリバードの秘所に当てた。
「行くぞ、デリバード」
「デリ」
ゆっくりと腰を前に出し、割れ目を掻き分けて俺のモノを挿れていく。舐めてもらった時よりも更なる快感が襲ってくる。
途中、デリバードが締め付けたのか、急にきつくなってきた。
「デリバード、固くなってる。力を抜いて」
デリバードはゆっくりと力を抜こうとしているのが分かる。だけどどうも抜けきれないようで、俺は仕方なくデリバードの胸に触る。
「デリッ!!」
と、両手の力が抜けて上半身が落ちた。
「あ、ゴメン」
「デリィ・・・」
こっちに訴えるような目で一瞥した後、また元の体勢に戻った。今のが効果あったようで、とても入りやすくなっていて、俺はさらにデリバードの中へ埋めていった。
デリバードの上の口とは違い、下の方は俺のモノを全て呑み込んだ。
「動かすぞ」
恍惚な顔をしているデリバードに一言言って、ゆっくりと腰を前後し始めた。
デリバードの中はとても暖かく、快感が押し寄せてくる。
「んくっ、き、気持ち、いい」
さらに俺のモノを締め付け、すぐにも果ててしまいそうな快感が体を走らせる。
デリバードも嬌声を上げながらも、俺を受け止めてくれている。
卑猥な音が家の中を支配する中、腰の動きがだんだんと速くなっていった。それに併せて俺とデリバードの呼吸の間隔が短くなっていく。
「デリバード、俺もう、イきそうだ」
「デリ、デリィ」
息を荒げながらもデリバードは答えてくれた。正直、もう果ててしまいそうだった。
「デリ、デリ、デリ。デリイイイイィィィィーーー!!」
「んはあああああああっっっ!」
デリバードの奥までモノを埋め、中に溜まっていたのを一気に放出した。その放出したものがデリバードの中へどんどん注がれていく。
「はぁ・・・はぁ」
全部放出し終えたのを感じ、俺はゆっくりとモノを引き出した。コポ、と秘所から白濁物が溢れでていた。
「ありがとう、デリバード」
「デ・・・デリィ」
デリバードは、微笑んでいた。
太陽の光が、俺の顔に刺激をあたえた。
ゆっくりと、目を開ける。それと同時に体の所々が痛む。
「いつつ・・・」
どうやら床で寝ていたせいで打ち身になったらしい。
痛いのをこらえて上半身を起こす。そして周りを見渡す。いつもの私生活と変わらない。
「夢・・・だったのか」
それにしてはやけにリアルだったような気がする。
ふと頭を抑える。ズキズキ痛む。ただの二日酔いかもしれない。今日は仕事が休みなので、ちょうど良かった。
「昨日は飲みすぎたかな」
俺はため息をついた。
押入れから布団を取り出し、床に広げた。そこから舞い上がったホコリに耐え切れず、俺は換気にと窓を開けた。
雪が積もっていて、ほとんどの場所が白に塗りつぶされている。冷たい冷気が顔をさす。当然だ。冬は寒いものだ。
しばらくは風で誇りを流してもらうことにし、俺は布団へ潜り込んだ。
布団はとても暖かい。二日酔いの俺でも夢の中へと誘うことができる。そして時間さえも忘れさせてくれるのだ。
俺は少しの間眠ることにした。
しばらくしてからだった。誰かがしきりに俺を起こそうと体を揺するのだ。
俺はわかっている。ここは俺一人しか住んでいないのだから誰かが体を揺するなんて事、あるわけが無いのだ。
実際にほら、もう体が動かされる事は無くなった。もう少し夢を見ていよう。
すると今度は何だ・・・唇に何かが触れて・・・。
俺はゆっくりと目を開ける。そこにはぱちっとした目が俺を見ていた。
「うわぁっ!!」
背中にバネでもあったかの様に俺は跳ね起きた。そして振り向く。その姿は、間違いなかった。
「デリバード!?」
「デリッ!」
デリバードが右手を上げて元気に答えた。
―――それからデリバードは、毎日の様に俺の部屋へ遊びに来るようになった。