「…んっ…ふぅぅ…」  
キッサキジムの更衣室に響くか細く切ない声。  
「はっ…ぅ………コウキ…君…」  
部屋の隅に座り込み、ゆっくりと白と水色の横縞模様のショーツごしに秘所を指で捏ねる。  
はだけた状態の上着から覗くブラジャー越しに乳首をいじり、甘い吐息を漏らす。  
彼女はこのキッサキジムのジムリーダー、スズナ。  
ジム戦でコウキという少年に敗北してからというもの、  
その少年のことが忘れられず、募る想いに耐え切れなくなり…  
人がいなくなるのを見計らってジムの一室で秘め事にふける。  
この習慣の始まりは敗北した日の夜…ベッドの中で、ふとその日のことを思い出したときの事だ。  
勝負に負けたというのに悔しさが残らない、清清しい気持ち…  
これぐらいの事なら今までにも何度かあった。  
だがその日はこの感覚に加えて、今までにない気持ちの変化がスズナの胸の中で起こっていた。  
彼に…コウキ君にまた会ってみたい…  
ジムリーダーとしてではなく、一人の少女として。  
彼のことを考えると胸が少しドキドキする…しかも、それは日増しに強くなって…  
気が付けば、スズナはコウキのことを想いながら自慰行為に手を染めていた。  
もう一週間もこんな調子のままなようだ。  
いつもの元気な様子は残しつつも、なんとなくボケーッとしているスズナを見た  
彼女の友人達は、不思議に思い事情を尋ねる。  
「スズナ…なんか最近元気ないっていうかさ、上の空っていうか…」  
「心ここにあらず、って感じよねー…だいじょーぶ?何かあったの?」  
「…ん、いやいや…あたしはこのとおり、元気だよ!」  
とは言いつつも目線は別の方を向いているスズナを見ると、友人達はますます気になり…  
「もしかして…スズナ、あんた好きな人とかできた?」  
「えー、ウソ!?まぁやっぱりジムリーダーなんてやってれば、  
 かっこいい人にめぐり合える確立だって高いもんねぇ〜うらやましいなぁー」  
様子から勘ぐった二人はスズナをからかい始める。  
「えっ…あ…そ、そんなんじゃないってばッ!」  
「ホントかなぁーっ?」  
「いいなぁーっ」  
 
そうしてジムに着くと、相変わらず上の空の状態で所定位置に佇むスズナ。  
挑戦者に声をかけられてもしばらく返事がない。  
「あの…ジムの挑戦しにきたんですけど?」  
「…あっ!! は、はいはい!それじゃ早速…あはははは…!」  
勝負内容自体にはそれほど支障が出ていないようだが…明らかに不自然な彼女の様子を見て、  
ジムのトレーナーたちも心配を募らせているようだ。  
 
そして数日後、ジム閉館直前の夕暮れ…  
二人の少年がほぼ無人となったキッサキジムに入場する。  
「すーいませーん」  
「誰かいませんかぁー?」  
一人は白い変わった形の帽子に半袖衣装の少年。  
もう一人は緑の髪が特徴的な少々頼りなさそうな雰囲気の少年。  
「…ユウキさん。やっぱり時間ギリギリに来たのはマズかったんじゃないですかぁ?」  
「バッ、バッカお前…今日の朝から必死こいてあの地獄の雪原越えてきたんだぞ!?  
 こんな時間になっても仕方ないだろ!」  
「そりゃ途中でユウキさんが弱音吐いて途中で引き返そうとしたりするから余計迷ったんじゃないですか…」  
「だ、だってよお前!普通に寒いだろアレは!いくら現ホウエンチャンプだって寒さにゃ勝てねぇって!」  
「そこでホウエンチャンプの名を出されても…」  
「なんだとテメェ!」  
ジムの入り口付近でお喋りを続ける二人。  
このユウキという少年はホウエンリーグの現チャンピオンであり、  
武者修行のためにシンオウ地方のジムを回っている。  
そしてその武者修行に付き添う形で、彼を慕ってやってきたのがミツル少年である。  
今日はこのキッサキジムに挑戦するためにキッサキシティまでやってきたのだが…  
「…よし、しゃーない。勝手に中入るか」  
「えっ!?…いっ、いいんですかぁ?」  
「ドア開いてるんだし誰かいるだろ?」  
ユウキはそう言い終えると、しり込みするミツルを置いて一人ジム内へと歩を進める。  
「そりゃ確かにそうですけど…って、あ!ユウキさん!待ってくださいよー」  
ミツルも頼りない声を上げながらドンドン進んでゆくユウキを急いで追いかけた。  
 
ジム内の職員用の通路に出た二人であったが、  
流石に仕掛けやトレーナーの配置されたメイン通路とは違う通路をオ居るのは初めてらしく、  
意外と広いジムの通路で迷子になってしまっていた。  
「…おい、ここさっきも来たぞ」  
「あれ…ホントだ。迷うほどの構造じゃないような気もするんですが…っていうか」  
ミツルは何かに気づいたらしく、用心深く辺りを見回し始める。  
「…なんか声がしません?」  
「え…おいミツル君…そーやって俺を脅かそうったって」  
「いや人の声っぽいんですが…耳を澄ましてみてください」  
ミツルの発言内容にいささか半信半疑だったユウキであったが、  
試しに歩くのをやめて耳を澄ましてみた。  
 
「…………………あぁ、なんか聞こえるな」  
「でしょう?」  
「………………女の子のエッチな声」  
「ですよね、この声は………えぇっ!?」  
ミツルは思わずユウキの顔を見合わせながらも、  
この時点ではまだユウキの発言の後半の部分を冗談として受け取っていた。  
…しかし、ユウキの耳には確かに聞こえる。  
ユウキは音声を察知して再び耳を澄ます。  
「…あと、なんか足音も聞こえるぞ。…兎も角、気になるな」  
「なんでしょうね…もしかして、ハクタイの時みたいな…」  
「そーやってお前はすぐ俺の苦手な分野のネタを……って待て待てミツル君や。  
 …エッチな声あげる幽霊なんて聞いたことがないぞ?」  
「それ冗談で言ってたんじゃないんですか?」  
「…こんな話、冗談で言うわけねーってよ。…まぁ、それよりもな」  
その足音が徐々に自分達に近づいてきているのをユウキはいち早く察知していた。  
「なんですか?」  
「いや…その、なんだ…足音、がだな…近づいて…」  
「は、はは…」  
ミツルに煽られたこともあり、恐怖のあまり後ろを振り向くことすらできないでいるユウキ。  
自分で煽っておきながら怖くなって同じく振り向けないミツル。  
そしてその足音の主はユウキたちの真後ろまで寄ると口を開き尋ねる。  
「あの、スズナさんがどこにいるか…」  
 
「おわぁぁぁぁぁぁぁーーーーーッ!!?」  
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーッ!!!!」  
 
「ごっ、ご存知…ありませんでしょうか……そ、そんなに驚かなくても…」  
突然自分達の背後から声をかけられ思わず大声を上げる二人。  
その顔は恐怖に引きつり、今にも逃げ出さんばかりの勢いである。  
そんな二人の反応に驚き戸惑いつつ、その人物は二人に事情を説明する。  
「ま、待ってください!僕はコウキ。  
 このジムのジムリーダーを探しに来たんです…怪しいものじゃ、ありません…」  
 
ようやく平静を取り戻したユウキは少々安心したようなガッカリしたような様子で  
「…なるほど、同じ目的ってわけだね?…じゃあ君もジムリーダーがどこにいるかはわからないんだ?」  
「は、はい…すみません」  
その応答を見てユウキは、なんだかミツル並みの頼りなさそうなヤツだなぁ…と少し怪訝な顔をしつつ  
「じゃぁ一緒に探さない?俺はユウキ。隣で固まってる緑色のはミツルってんだ」  
とコウキに提案しつつ自己紹介を済ます。  
「よ、よろしくですコウキさん…」  
「あ、はい…助かります。それじゃ、一緒に探しましょう…!」  
ユウキは「おう」と適当に相槌を打つと、再び歩を進める。  
その途中でお互いの身の上話などをしながら、先ほどの声のした方へだんだんと近づいてゆく。  
「更衣室、か…女子用っぽいな」  
「まさか…ユウキさん!ここに入るつもりですか!?」  
彼等3人がたどり着いたのは女子用更衣室…ここから、例の声が聞こえてくる。  
「大丈夫大丈夫!ノックすりゃOKよ!」  
と調子よく返しつつ、ドアのノックをコンコンッと叩くユウキ。  
すると室内からガタッ!と激しい物音がしたあと、しばらくの沈黙の後にか細い声で返事が聞こえた。  
「…誰?」  
女性の声。ユウキはこの声を聞いて、どうやら心霊現象の類じゃなさそうだ、と一安心しつつ、  
「いやぁーキッサキジムに挑戦しにきたんスけどー!誰もいないみたいなんですよー!」  
「あっ…! そっか、ごめんごめん!…それじゃ、場所を変えよっか?」  
ガチャッ…とゆっくりドアが開き、声の主である少女が姿を現す。  
「いやいや!明日のジム戦の予約だけできればそれで!」  
「そっか…ごめんね!あたしはスズナ。…まぁ実はあたし自身がここのジムリーダーなの!  
 明日また来て!ジム戦の準備しとくから!…えぇっと」  
「あ、俺ユウキです!そんじゃ、明日開館後すぐにお伺いしますんでよろしく!」  
「オッケー!気合いで受けて立つんだからねッ!」  
二人のやり取りに無言で聞き入るミツルとコウキ。  
コウキは二人の影に隠れる形になっているためスズナの視点からははっきりと確認できないのだが、  
スズナを見てからどこか落ち着きのなさそうなそぶりを見せる。  
ジム戦の予約を取り付け、引き返そうとするユウキだったがふと同行者のことを思い出し  
「そーだスズナさんっ!」  
後ろから両手でコウキの肩をグッと掴むと、ぐいぐいとスズナの前に押しやり  
「こいつがスズナさんに用があるみたいなんで、話を聞いてやってくれませんかっ?」  
 
突然のことで思わず動揺するコウキ。  
そして、コウキの姿を確認した途端赤面して俯き、目を逸らすスズナ。  
そんな二人を変に思いながらもユウキはミツルを連れてその場を後にする。  
「よし、帰るぞミツル…帰ったらトレーニングでもやろーぜ!」  
「はいっユウキさん。 …そーいえば、あの声ってスズナさんの声…だったんですよね?」  
「まぁ、な…いいじゃないかンなこたぁ!」  
「そーですかぁ?僕は色々と気になりますけど……あ、それより忘れ物はないですか?」  
「あるワケねぇだろー…あぁ、そーいやコウキのヤツが喉渇いたって言うから水筒渡したままだったな…」  
「…あの中にはハクタイの森で取れた変な蜜が入ってるんじゃなかったんでしたっけ?」  
「そーだったか?…まぁいいや!また取れるだろーしあれぐらいコウキにくれてやるさ!」  
「…なんか心配だなぁ」  
 
 
再び場所は更衣室前に戻り…  
残されたコウキとスズナの二人は暫くの間、沈黙を守り続けていた。  
何か言い出したいけどなかなか言い出せないコウキ。  
耳まで真っ赤になり、目を逸らし続けるスズナ。それから更に数分おいて…  
「用って………何かな」  
先にスズナが沈黙を破る。  
コウキはきっかけを掴むとようやく口を開き、  
「スズナさん、これ…」  
スズナに向かって包みに入った何かを手渡す。  
「これって…月の、石…?」  
「スズナさんに以前会ったとき、見たことが無いから一度は見てみたいって言ってたから…  
 掘ったヤツをペンダントに加工してもらった品なんですけど…よかったらもらって頂けませんかっ?」  
銀のペンダントに丸く切り出され研磨された月の石が埋めこまれたその品。  
 
「綺麗…」  
薄っすらと静かに輝く研磨された月の石。それを受け取ったスズナは暫く顔を真っ赤にしたままその品に魅入っている。  
「気に入って…もらえましたでしょーか」  
動機はあくまで純粋な好意。スズナの喜ぶ顔が見たかった…ただそれだけのようだ。  
「これを、あたしの為に…?」  
「…ハイ」  
「!……ありがとうっ」  
スズナは照れ交じりながらも飛びっきりの笑顔でコウキに応える。  
「よかった…! あの…またいつかバトルしましょう! それじゃ、僕はこれで…」  
「待って!」  
背を向け、帰ろうとするコウキを引き止めるスズナ。  
どうしたらいいのかはわからない…だが、少しでも好きな人と長く一緒にいたい。  
その思いが抑えきれず思わず出た言葉。  
…だが、呼び止めはしたもののどうしていいかわからない。  
彼に気持ちを伝えたい…しかし、頭が真っ白になって言葉が出てこない。  
「…?」  
コウキは振り返りスズナを見る。  
顔を真っ赤にし、相変わらず俯いているスズナ。  
小声で何か言っているようだが、コウキの耳には届かない。  
コウキはいまいち事情を理解できていなかったが…片手に水筒を持っているのを思い出すと、  
気を利かせてスズナに声をかける。  
「あの…よかったらコレ、飲みますか?おいしいですよ」  
緊張して強張り、喉すら渇き始めていたスズナ。  
きっかけは何でもよかった。とにかく会話ができれば何でもいい。  
スズナは「…うんっ」とだけ答え、水筒を受け取る。  
水筒を開け、中を覗くと虹色の液体がスズナの目に映りこむ。  
見たことの無い色の液体に多少躊躇したものの、今の彼女がコウキの言うことを疑うはずはなく…  
…最も、コウキはその液体に隠された効果を知る由はなかったのだが。  
スズナは勢いよくその虹色の液体を喉に注ぎ込む。  
そして半分ほど飲み干すと蓋を閉めてコウキに返した。  
(よく飲むなぁ…喉、渇いてたんだな…)  
スズナの一連の動作に多少驚きつつ、笑顔は絶やさないコウキ。  
「…ありがとう、おいしかった!」  
相変わらず顔を赤くしつつも、なんとか元気に振舞おうとするスズナ。  
だがこのとき、まだスズナは自分の体内で起こる異変に気づいていなかったのだ…  
 
再び場所を変えポケモンセンター。  
「ユウキさん!大変ですよ!」  
分厚い書物を持ったミツルがユウキの元へ駆けつける。  
「どーしたー?」  
ロビーのソファーに腰掛け、気だるそうに応えるユウキ。  
「こっ、これ!このページ見てくださいよ!」  
そう言うとミツルはその分厚い書物を開き、とある植物の欄をユウキに見せる。  
「…おい、この木ってあの蜜を取った…!」  
「そうです!…で、この蜜のことが詳しく載ってたんですが…」  
「何々?…この木の蜜はポケモン達の暮らす環境において〜…あー、いやそんなことはどーでもいい。  
 で?…この蜜は別名『惑いの蜜』と呼ばれ、人間の女性にのみ強い催淫作用をもたらすことで知られ…」  
「…これをもし、コウキ君がスズナさんに分け与えちゃったら…」  
「いやお前…それは…大丈夫、だろ?…っていうか待てよ!じゃーなんで俺等は飲んでも大丈夫なんだ?」  
ミツルは無言で『人間の女性にのみ』の部分を指でなぞり、ユウキの目を見ながら『のみ』の部分を指で突付く。  
それを見てみるみる血の気が引いていくユウキ。  
「ハ、ハハハ、ハハ… ま、まぁ、いいんじゃないか!?……彼女、欲求不満だったようだし」  
「欲求不満?何の話です?」  
「…あ、いや……なんでもない。忘れろ」  
「…まぁ、いいですけど…それじゃ部屋に戻りましょうか」  
「おう」  
二人は、これから起こるかもしれないことに一抹の不安を覚えながら、  
今日のことは一切触れないで明日のバトルに臨むことを誓い自室へ戻っていった。  
 
 
三度場所を戻し、キッサキジム更衣室前。  
カツーン…と水筒が床に落ち、その角ばった衝撃音を響かせる。  
更衣室のドアを背にしたコウキ。そしてそのコウキの唇を奪うスズナ。  
あまりの事態に思わず持っていた水筒を落とし、顔を耳まで真っ赤に染める。  
二人の体重がかかるとドアがゆっくりと開き、そのまま二人は更衣室内へ入る形となり…  
コウキはひとまずスズナから離れると後ずさりし、  
「ど、どうしちゃったんですか…っ!? スズナさん…」  
「わからない…わからないけど…体が熱くて…!」  
コウキはとっさに先ほどの水筒のことを疑う。…が、しかしすぐに自分の体には異変が無いことを思い出した。  
スズナは更衣室の鍵を閉めると胸のリボンを解き、自らのブラウスのボタンをはずし始める。  
その瞳はとろーんとし、何かに取り付かれたかのような有様になっている。  
「はぁっ…はぁっ…コウキ、君…なんだか、体が熱くて…ごめん、あたし…我慢できない…みたい…」  
そういうとブラウスをはだけさせ、淡い青のブラジャーが露になる。  
それを見てコウキは顔を高潮させたまま目を逸らしながら必死に懇願する。  
「やっ、やめてくださいスズナさん!はっ、は、は、恥ずかしいです…!」  
 
スズナから距離をとるように後ずさりをしていたコウキは、程なくして何かに足を取られ躓いた。  
尻餅をつき、臀部に痛みが走る。  
しかし、今のコウキにとってはそんなことはどうでもよい小事に過ぎなかった。  
ただひたすら、尻餅をついたまま後ずさりを続ける…自分の足を取ったモノを片手に掴みながら。  
呼吸を荒げ、ゆっくりとコウキに歩み寄るスズナ。  
その恍惚とした瞳は少し虚ろながらもコウキだけを視界に捉えて離さない。  
「ごめんね、コウキ君…ご、めん……ね…?」  
その言葉にはわずかに残っている彼女の理性が垣間見られる。  
本当ならいきなりこんなことはしたくなかった…こんな形でこんなことをしたくなかった。  
スズナはそう思いながらも、今はふつふつと湧き上がる情欲と体の火照りに身を任せるしかなかった。  
 
はだけたブラウスから覗く彼女の下着…そして白い肌。  
それらがコウキの理性を徐々に溶かしていく。  
だが、コウキは一度も家族以外の女性の肌を見たことがない上、人一倍「こういう雰囲気」が苦手だった。  
それに、純粋な好意を持っていたスズナ相手に、そういう本来なら女性の嫌がるようなことをしたくない。  
だからこそ、歩み寄るスズナを必死に止めようとし、とりあえずその場から逃げ出そうと後ずさりを続けていた。  
冷静に考えれば、逃げられるはずのない状況に陥っているということはすぐにわかるはずだった。  
二人の居る更衣室の唯一のドアはスズナによって施錠されている。  
そしてコウキは後ずさりをすることでその唯一の出口からどんどん離れていく。  
このことに彼が気づいたのは、更衣室のドアとは正反対に位置する壁に背が当たった後だった。  
「あっ……」  
だんだんと距離を詰めるように歩み寄るスズナ。  
コウキ少年はこの場から何とか上手く逃げ出すことだけを、焦りに焦った状態の頭脳で考えようとする。  
…が、しかし。逃げようと思えばいくらでも逃げようのある状況ではあったが、  
冷静さを失っている彼に取ってはその為の行動に移ることすら困難だった。  
コウキはふと先ほどから自分の手に握っていたものに目を向ける。  
(この、白い布切れはさっき僕が足を取られて転んだときの……あっ、こ、これって…!)  
彼が足を取られた白い布切れ。それはよく見ると純白のブラジャーだった。  
これを見てコウキはますます冷静さを失うことになる。  
ふと自分が転んだ辺りに目をやると、倒れ、中身が散乱した荷物入れが目に入る。  
「それ…あたしの代えの下着…?」  
 
コウキの目の前まで迫ったスズナは、彼が掴んでいるものを見て口を開いた。  
彼女は既にブラウスを脱ぎ捨て、今にもコウキに向かい倒れ掛かろうかと言わんばかりの様子で立ち尽くす。  
それを聞き、耳まで顔を高潮させ思わず手に持っていたものを投げ捨てるコウキ。  
「すっ、すみません…! そうとは知らず、その…! とっ、とにかく服を着てください…は、恥ずかしいです」  
「…そんなことは、別にいいの…今は、ただ…」  
コウキの必死な懇願はスズナの耳には届かず…彼女はゆっくりとコウキに近づき、座り込んだままのコウキに抱きつく。  
「まっ、待って…! やめてくださ…うわっ!!」  
抱きつかれた瞬間、フワッと香りたつスズナの匂い。その甘美な香りはコウキを徐々に誘惑していく。  
(うわ…スズナさん、すっごく良い匂い…じゃなくて!ど、どうしよう…このままじゃ僕、大きな間違いを犯しそうで…!)  
苦悩するコウキを尻目に、彼の唇を再び奪うスズナ。  
今度は先ほどよりも深く口付けし、ゆっくりとコウキの口の中に舌を進ませていく。  
コウキはどうすることもできずにスズナの舌を受け入れる。  
受動的ではありながらも、容赦なく進む彼女の舌に合わせるように舌を動かす。  
「んむ……ちゅぷ…ふ…ぅ…  ふぁ…や、やめてくらふぁい…スズな…さ…」  
唇を奪われながらも、言葉でだけは抵抗を試みるコウキ。  
だが、スズナの行為はますますエスカレートしていく。  
濃厚な口付けを交わしつつ、彼女は右手をコウキの股間の辺りへ動かす。  
そして、彼のズボンのジッパーを下ろし…  
「ッ!? …や、止めてください!そんなところ…!」  
思わず唇を離し、コウキは先ほどよりも強く抵抗する。  
だが彼の心の中では、このままスズナさんにされるがままに…という欲求が頭をもたげていた。  
理性と欲求がぶつかり合い、苦悩し続けるコウキ。そんな彼を尻目に、スズナは再び唇を奪う。  
「んっ!!む…んふ…ちゅぷ…スズナさ…ひゃめ…て… …あっ…」  
コウキの下着の中に手をいれ、探り…そしてソレを見つけると、スズナはソレを優しく触り始める。  
「ッ!? …んっ……」  
自分の股間を中心に未知の感覚が走り、コウキは思わず動揺する。  
「あった……これ、が…………どう?コウキ君…気持ち、いい…?」  
一度唇を離すと、恍惚とした瞳でコウキを見つめ、息を荒げたまま尋ねるスズナ。  
彼女はまだ皮を被ったままの彼の息子を、優しく上下させる。  
「…あ…き、気持ちいい…ですけど、その…」  
 
次第にコウキの息子が大きくなり始めているのを確認すると、スズナはソレを彼のズボンから露出させ、先ほどよりも速く手を動かす。  
「こんなに息を荒くして…気持ちいいんだ?…それじゃ、今度はこうしてあげるね?」  
そういうと彼女は身を低くし、コウキの息子を目の前に据える。  
そして、おもむろにソレを口に含み…少しだけ出ている皮の中の本体を舌で擽る。  
「!!! …やっ、やめ……スズナさんっ、僕…なんか出ちゃいそうです…」  
その言葉を聞いたスズナは、かまわず行為を続ける。  
「ダメです…だ、め……んっ!!」  
コウキは体をブルッと震わせると、息子の先端から白濁液を噴出し…絶頂に達した。  
口の中に暖かい何かの感触を感じたスズナはソレを咥えるのを止めたが、  
彼の息子はまだ液体を出し切っておらず、残りの液体が彼女の顔に勢いよくかかる。  
「ん…たくさん出た、ね…へへ」  
コウキの白い液体を顔中にかぶりながら、スズナは艶やかな笑顔で彼を見つめる。  
「うぁ……はぁ、はぁ…」  
初めての快感に悶絶し、返事もせず肩で息をするコウキ。  
そんなコウキを見てクスッと笑い、スズナは自分の唾液で濡れた息子を再びゆっくりと握る。  
ソレはたくさん液体を吐き出しながらも、先ほどまでの勢いは無いもののやんわりと直立している。  
彼女はそんな息子を少し強めに握ると、少しずつ握った手を下に下ろしていく。  
すると彼の息子を覆う皮がだんだんと剥け、本体があらわになっていく。  
「んぐっ…す、スズナさん、何を…」  
それに気がついたコウキはスズナを見下ろし問いただすが、  
彼女はそれに答えることもなく、コウキの剥けたばかりの息子を一度回りにあったタオルで拭き、  
その後再び口に咥えた。  
「!!…す、スズナさん、もう、やめてください…」  
顔を真っ赤にしたままコウキはか弱い声色で懇願すし続けている。  
スズナはソレを咥え、口の中で舐めたり吸い付いたりしながら、両手で器用に自分のブラジャーを外していき…  
そのよく育った形のよい双丘をあらわにすると、おもむろにコウキの息子を挟んだ。  
「今度は胸でしてあげるね…」  
そう言うとスズナはコウキのソレを胸で挟んだまま上下させ始める。  
彼女の白い胸を見た時点で再び元気に直立していたコウキの息子は、  
その彼女の双丘がもたらす快感に応えるかのように震え、先頭を薄っすら濡らしている。  
「うぁっ…くぅぅ……気持ち、いい…です…」  
彼女の胸でしごかれるコウキのそこそこの大きさの息子は、まさに怒張の二文字で表せるような…  
今まさに再び絶頂を迎えんとするほどになっていた。  
 
その先走り汁はスズナの胸にも薄っすらとこびり付き、息子越しに彼女の唾液も付着したその胸で彼の息子をしごく度に、  
くちゅっ…くちゅっ…といやらしい音を立てる。  
「また元気になってきたねっ?…じゃあ、そろそろ…」  
そう言うとスズナはスカートを捲くり、ゆっくりと白と水色の横縞模様のショーツを下ろしていく。  
彼女とショーツの間には一筋の透明な糸が垂れ…  
ショーツを下ろし片足に引っ掛けたまま、彼女は身を乗り出しコウキの腰の辺りの上に乗る形になる。  
これから何が起こるか理解したコウキは、  
「ダメですよ…スズナさん、ダメです…こんなこと…いけませんっ…」  
と、ここまでされながらも最後まで理性を振り絞り、何とか思いついた言葉を吐き出す。  
しかし彼も内心では既に、スズナさんといたしたい…そんなことしか考えていなかった。  
(スズナさんとこうなれるのは嬉しい…! けど…)  
彼の生まれついての真面目な性格から来る理性が、その欲求を阻む。  
「ごめんねっ…もう、止まらないみたいなんだ、あたしっ…!」  
相変わらず顔を高潮させつつも、強気な笑顔でコウキをけん制するスズナ。  
そして目を閉じ首を横に振って小声で何か言い続けるコウキを尻目に、ゆっくりと腰を下ろしてゆき…  
コウキのいきり立った息子がゆっくりとスズナの秘所に入り込んでゆく。  
「んっ…ぐ、うぅぅぅぅぅ…ん……」  
破瓜の痛みに、スズナは思わず涙を浮かべ唸る。  
「…んはっ!…ふぅ…入った…」  
限界まで身を落とし、コウキの息子を奥深くまで迎え入れる。  
スズナは強気な笑みは絶やさないものの、目じりに涙を浮かべてそのままコウキに抱きかかる。  
「ごめんっ…ちょっと、このままで…いさせて?落ち着くまででいいからっ…」  
この時点で、コウキはスズナの様子が少し先ほどまでと違うような…と感づき始めていた。  
しかし今はそんなことはどうでもいい…とりあえずスズナを抱き、涙をぽろぽろこぼす彼女の背中をさすりながら  
「大丈夫…大丈夫ですよ。落ち着いてからで…僕のことは気にしないでください」  
と優しく声をかけた。  
そして少しの間、二人はそのまま何度か言葉を交わすなどして時間を過ごし…  
「んっ、もう大丈夫…そろそろ、動くよ?」  
「…わかりましたっ」  
スズナの問いに、笑顔で応じるコウキ。  
それを聞いてスズナははにかみつつもニコッと笑い、ゆっくりと腰を動かし始める。  
「うっく…はぁぁぁ…」  
怒張した息子を締め付けられ、コウキは思わず声を漏らす。そんな彼を見てスズナは  
「ごめんっ…辛い、かな?」  
と彼を気遣う。  
 
「あははは…いやいや、気持ちよくて、つい…!」  
「そっか!なら…いいの。それじゃ……んっ」  
再びスズナは腰を動かし始める。  
始めは、続いていた苦痛に耐え顔を歪ませていたものの…  
次第に彼女の感じている苦痛は、快楽に取って代わられてゆく。  
くちゅ…ぬちゅ…  
いやらしい音を立て擦れあうお互いの秘所。  
それは互いの分泌液に濡れ、ますます動きを早めていく。  
「はぁっ、はぁっ…んん……」  
「くぅっ…だ、だめぇ…これ、気持ちいぃ…! あたし、あたし……あぁんっ…」  
コウキはただただひたすらスズナに身を任せ、その快楽に酔いしれる。  
スズナは一生懸命に腰を動かし、彼を愛す。  
その動きが激しくなるにつれ、二人の息遣いもますます荒くなり…  
「はっ、はっ、はっ……あっ、あたしっ…おかしくっ、なりそう…っ!」  
スズナの腰の動きに合わせ揺れる彼女の白い双丘。  
彼女は汗などの分泌液まみれになりながら、行為に没頭してゆく。  
「ぼくもっ…うぁぁっ…また、なんか出そうです……!」  
コウキも彼女にあわせて動く内、既に怒張し続けていた息子が再び限界を迎えはじめてゆき…  
「あんっ!あっ…きゃうっ!はぁっ…やぁんっ……ダメぇ…!」  
全身を駆け巡る快楽に夢中になる。  
「スズナっ、さんッ…あ、あの…こういうのってその…」  
行為も佳境、というときにコウキはスズナに尋ねた。  
「はぁっ、はぁっ…これはその…そとに、出した方が…いいんですよねっ…? …んっく…」  
どうやらそのこともあって、彼は今まで我慢していたらしい。  
それを聞いてスズナは彼に向かいクスッと笑いかけ、  
「んっ…ふ…コウキの…好きなように、していいよっ?…」  
と応える。  
「えっ?あ…わっ、わかりました…それじゃ…!」  
気がついたらスズナはコウキのことを君付けするのをやめていた。  
彼女にとって、コウキが友達以上の存在となったことの現われだろう。  
「あっ、あんっ!…コウ、キっ…あたしっ、もうっ…!!」  
「ぼ、僕もっ…………うぁっ…くぅぅぅぅぅぅぅ…っ!」  
「あっ…! …はぁぁぁぁぁぁんっ……………」  
コウキはブルッと腰を震わせると、スズナの中に熱いモノを吐き出し…  
それと同時にスズナも体を震わせ絶頂に達した。  
 
スズナはコウキにもたれ掛かり、言葉も無くそのまま暫く肩で息をしている。  
それを受け入れつつ、上を向き同じく息を荒げるコウキ。  
そんな状態が暫く続き…  
 
その後、スズナは一旦コウキから離れ、  
行為の事後処理をした後、服を着ながらコウキに尋ねる。  
「ねぇコウキ?…今日、あたしん家に泊まっていかないっ?」  
その言葉を聞いた未だに汁を滴らせた息子を出しっぱなしにして呆けていたコウキは、思わず正気を取り戻し  
「…えっ!? い、いいんですかっ?」  
と聞き返す。  
「もっちろん!今日はママもパパもちょうど旅行に行ってて居ないし…よかったら、家で…」  
「…家、で?」  
なんとなく聞き返すコウキ。  
そんなコウキを見ながら、スズナはニコッと笑い  
「…この続き、やろうっ?」  
と続けた。  
それを聞いたコウキは一瞬ポカンとした顔をした後、すぐに笑顔になり応える。  
「は、はいっ!よろしく、お願いします…!」  
「よろしい!…そんじゃ、早速今から家に帰ろっ!」  
 
 
翌日…  
「ユウキさーん、昨日の本、もーちょっと読み進めてみたんですよー!」  
まだベットの中で夢見心地のユウキを無理やり起こすミツル。  
「…あー…?」  
ユウキは明らかに不機嫌な顔をしてゆっくりと起き上がり、  
「なんだよ、あのことは忘れようって話だったじゃねーかよー…なんでまだ…」  
寝起きでイライラしていた彼は、約束を違えたミツルを責めるように文句を言いながら睨む。  
「いや、それがですねぇ…ホラ、ここです。見てみてください」  
「あーあーわかったよ…ん?…その、催淫効果についてであるが…効果については前述の通り、かなり強いものとなっているが…  
 …個人差はあるものの、あまり効果は長続きせず…持って15分程度である…と」  
「そうなんですよ!だから、15分ぐらいなら別に大した事態には陥らないでしょうし安心ですよね!?」  
嬉しそうに語りかけるミツルに対しユウキは不機嫌な面を崩さず  
「…で? …俺の貴重な睡眠時間を返上してまで言うほどのことかよ、これは…」  
「…うーん…で、でも!これで色々と心に痞えた不安も消えて一安心で 痛ッ!…な、殴ることないじゃないですかぁー…」  
ポカッ、とミツルに一発くれると、ユウキは無言のまま再びベッドの中へ潜ってゆく。  
「9時になったら起こせ」  
 
その後、ようやく10時頃起きたユウキとミツルはジム戦に備えてのトレーニングを始めたのだが…  
仲よさそうにイチャつくスズナとコウキを見て思わず顔を見合わせたそうな。  
 

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