対等
「♪〜♪〜」
クロガネジムに勝利し、鼻歌交じりに道を歩く少年。
「嬉しそうだなー、サトシ。」
「そりゃそうよ、あんなに強いヒョウタさんに勝っちゃったんだもの。カッコよかったわよーサトシもピカチュウも。」
「ピカピカ。」
その傍らで少女とそれより少し年上の少年、そしてポケモン1匹がはしゃぐ。
「次はヒカリのコンテストだな。今度は俺が応援するからな!」
「う、うん、ありがとう・・・。あ、そうだ、今度はサトシが学ラン着て応援してくれるっていうのはどう?」
いつも以上のサトシの気迫に、多少のたじろいを見せながらもヒカリはとんでもない提案をするのだった。
「いぃ?やっ、やだよ!そんなの!。」
突然の提案に驚きながらも当然、少年は断固拒否。
「ぷくく、いいぞサトシっ、是非っ、是非今度のコンテストでは、くくっ、学ランを着て、くくくっ。」
「ぴーかちゅっ!ぴーーピカ!」
ヒカリの発言に、タケシとピカチュウはサトシの学ラン姿を思い浮かべ笑いの渦を巻き起こす。
「笑いすぎだぞ!2人とも!」
ムスっと、少年は不機嫌にそう答える。
「冗談♪冗談♪、別に学ランなんか着なくても十分サトシの熱血は伝わるわよ。」
(逆を言えばそれしか特技が・・・。)
「へへっ、そうかな?」
先程の不機嫌な態度とは一変して、笑顔で返す。
ヒカリにとってその喜怒哀楽の変化は、とても先輩のそれとは思えなかった・・・。
他にもある。
人一倍おしゃれに気を使う彼女にとって、サトシはあまりにもださいこと。
朝起きれば髪などセットもせずに帽子をかぶっただけで終わり・・・。
またコンテストでは周りがおしゃれをしているにもかかわらずサトシ一人だけ普段着・・・。
ポケモンの差、おしゃれの差。
だからこそ2人は対等に感じるのだろう・・・。
少なくとも少女にとっては・・・・。
いつからだろう、その対等な2人の関係が妙に嬉しく感じたのは。
「♪〜♪〜。」
先程のサトシの鼻歌につられてか、ヒカリも鼻歌で道を歩く。