「どうしよう……みんなとはぐれちゃったよぉ」
ここはとある洞窟。
ポケモンセンターでぽけっちのアプリをもらおうと近道をしたヒカリ達であったが、ゴローニャ達に襲われはぐれてしまった。
「こんなところで何をしている」
「きゃっ」
突然の言葉に驚いてヒカリが振り返ると、そこには幾度か見かけた少年が立っていた。
「シンジ!」
心細かったヒカリは、普段良い印象を持っていない人物とは言え、顔見知りに出会え、喚起の叫び声を上げた。
「誰だお前?」
だが、その少年の言葉はヒカリの創造していたものとはかけ離れた冷たいものだった。
「ヒーカーリーでーすー」
「ヒカリ?誰だそれ?」
「しっつれいねー!何度かあってるでしょ?」
「覚えていない」
向きになるヒカリとは裏腹に少年は冷淡かつめんどくさそうに返す。
「ほんとしっつれいしちゃう!サトシト一緒に」
「あ〜」
「思い出してくれた?」
「そう言えばそんなのいたな」
「そんなのって!」
「で?こんなところで何をしていると聞いている」
反論しようとするヒカリには取り合わず、シンジは再び出会ったさいの質問を繰り返す。
「ゴローニャに襲われて……サトシ達とはぐれちゃって……」
機先を制されたヒカリは口ごもりながらも、現在おかれた状況を説明する。
「それで道に迷ったってわけか。つかえないな」
シンジは冷たく言い放つ。
「なによ!?そう言うシンジはどうなわけ?
あなたも迷ったんじゃないの!?」
「ふん、お前と一緒にするな。
なんなら俺が案内してやろう」
「えー!?ほんとう!?」
相変わらずの無愛想な言葉であったが、その申し出にヒカリは喚起の声を上げる。
だがシンジはそんなヒカリの様子を見やると冷笑を浮かべ続けた。
「快楽の世界へな」
シンジはそう言うとヒコザルに勝るとも劣らない敏捷さでヒカリに襲い掛かる。
「きゃっ止めて!何するの!?」
シンジはヒカリの抗議を無視して、彼女の唇に自らの唇を重ねようとした瞬間
「くっせーんだよ!」
ヒカリの見事なまでのカウンターパンチが顔面にヒットした。
数分後、目を覚ましたシンジは洞窟に一人取り残されていた。
『くっせーんだよ!』
最後に聞いた光の言葉を思い出しながらシンジは寂しげにつぶやいた。
「餃子……大好きなんだよ」