-----なんなの?これは。  
激しく軋むベッド。荒い息。飛び散る汗。揺れるアッシュ・ブロンドの艶やかな金髪。  
「んんっ、んあっ、あっ!そこっ、いい・・・っ!」  
-----そこには『女』と『男』がいた。  
姿形こそは少女が見知った、尊敬する女性と信頼する・・・少なからず異性を意識していた、大切な友達の筈なのに。  
(知らない・・・こんな二人、知らない・・・!)  
少女は----ヒカリは足から崩れそうになるのを懸命に堪える。頭が上手く働かない。全身から変な汗が噴き出す。  
自分は、チャンピオンに勝負を申し込みに来た筈だ。四天王を何とか下し、やっと辿り着いたチャンピオンルーム。  
あの女性(ひと)と闘える。・・・やっと、彼に追いつけるかもしれない。  
そんな思いを胸に足を踏み入れたのに、中(フィールド)には誰もいなかった。代わりに奥の部屋から聞こえたのは、苦しげな声。  
荒い息と、入り混じる嬌声。ぎし、ぎし、と何かが軋む音。  
「や、だ・・・こんな」  
息と共に吐き出される、震えたような微かな声。  
ただその淫靡な光景から目が離せなかった。  
-----僅かに開かれた扉の隙間から、視線を逸らせなかった。  
 
****  
 
「はぁっ・・・あぁうっ、気持ち、いっ・・・」  
「んっ、・・・もう・・・きそう?」  
『女』が腰を動かしながら、『男』に優しく、しかし何処か艶かしく微笑む。  
大人の余裕か、或いは男を独占する快感に酔いしれているのか、定かではない。  
「うん、もう・・・限界っ・・・」  
それを聞くと、『女』----シロナは馬乗りになったまま、その白く細い指で快感に喘ぐ『男』の頬を撫でた。  
その分身を己の肉壷で包み、慈しむ様な、愛しむ様な眼差しのまま・・・。  
「一緒にイキましょう・・・『コウキ』」  
妖しく囁いた。  
腰を浮かせ、最奥まで差し込んでいた肉棒をゆっくりと引き出す。これまでの激しい交わりの証が糸を引き、結合部から大量の白濁がどろりと滴り落ちた。  
若さ、とでもいうべきか。もう何度もお互い絶頂を迎えただけあって、その量は半端ではない。  
だがコウキの肉棒はなお萎えるどころかそそり立ち、先端からは先走り汁が滲み出ている。  
最早、いつ爆ぜてもおかしくはなかった。  
 
何度精を吐き出しても飽き足らない、まだ足りない。-----そう主張するかの様に。  
「ふふ・・・」  
流れる金髪を?きあげて、唇の端を上げて微笑むシロナ。  
最早、シンオウリーグの気高きチャンピオンの姿はそこには無い。  
 
その普段の姿を知る者達も想像し得ない、ただ好きな男----自分が唯一認めた男----に一心不乱に快楽を求める、淫らな女の姿。  
女の本性を曝け出した姿だけが、そこにあった。  
 
シロナは肉棒を茂みに導き、割れ目にあてがう。女が快楽を貪るのに最も適した体位----つまり、いつも通りの騎乗位の体勢で----。  
そして、ゆっくりと焦らす様に何度か先端同士を擦りつけた。  
ヌチュ、クチュ…そんな形容しがたい厭らしい水音がコウキの耳を侵し、より一層敏感な部分を刺激した。  
早く、早く。そんな哀願が聞こえてきそうな少年の切ない表情に、シロナは今度こそ満足したのか・・・一気に腰を下ろした。  
「はあぁあんっ!」  
一際甲高い嬌声。最初こそ軽い抵抗があったものの、あとはずぶずぶと膣内(なか)に吸い込まれていった。  
と同時に名器を思わせる膣が、先程の優しさが嘘のような締め付けでコウキ自身にぴたりと張りつき、締め上げてうねる。  
「うっ、くぅ、ああっ・・・」  
肉棒を強烈に扱き上げ、たちまち射精に導こうとする粘膜に----初めは一分も持たなかった。  
だが回数を重ねた今は----。  
細く括れた腰を掴み、最奥を抉る様に突き上げた。初めはゆっくりと、そして徐々にピストンのスピードを速めていく。  
「あぁっ!イイっ・・・んぁああっ!そこ、はぁっん、もっ、とぉ・・・」  
激しいピストンに合わせ、成熟した乳房とツンと上を向いた薄桃色の乳首が少年の眼前で不規則に揺れた。まるで、触って、と自己主張するように。  
ごくり、とコウキは唾を飲むと、手を伸ばして、乳房を下から掴んだ。最初は円を描くように、こねる様にゆっくりと揉みしだく。  
「あん!ふっ、んあぁ・・・!  
揉むだけじゃ足りない。コウキは腹筋で体を起こし、今度はピンク色の突起にむしゃぶりついた。  
「ああっ・・・!!」  
赤ん坊の様にチューチューと吸い付くかと思えば、舌先で転がし、ねっとりと全体を愛撫する。左右の乳房を寄せて、片方は舌先で愛撫し、もう片方は指で摘んだり転がしたりを繰り返す。  
-----『彼女』は胸を扱われるのが、一番好きらしい。これまでの交わりでコウキが覚えたことの一つだ。  
艶やかな金髪を振り乱し、コウキの動きひとつひとつにシロナは喘ぎ、弓なりに体を反らした。まるで電流が流れているかのように、小刻みに震えている。  
「あぁぁっ!はっ、ん!ぅん・・・!」  
「いい?こーされるの・・・?」  
「ええ・・・、いいっ!凄く、気持ちいいっ・・・!」  
ハスキーな声に混じる甘い声が、コウキの快感を余計に煽り立てていった。  
高まる射精感を必死に抑えながら、懸命に腰を突き上げる。奥まで突き上げては膣口まで引き抜き、それを一定のリズムで繰り返していった。  
「あああぁんっ、は、ぁぁっ・・・!」  
結合部は大量の愛液と白濁で泡立ち、一突きするたびに飛び散っていく。  
(ぐちゃぐちゃだ・・・)  
肉棒だけじゃない。視覚、聴覚、全ての感覚がコウキの理性を削いでいった。  
なによりも、『チャンピオンを滅茶苦茶に犯す』という倒錯が、彼の快楽をより煽っていた。  
「あぁぁっ、はっぁんっ、あっ、ぁあっ・・・!」  
シロナは頭を左右に振って身悶えながらも、快楽を貪ろうと腰を上下に激しく動かし続けた。一種の生物の様に絡みつき蠢く膣内。  
(シ、シロナさん・・・今日は一段と、凄、い・・・っ!)  
すると突然、頬を掴まれた。そのまま力任せにぐい、と引き寄せられると、快楽に顔を歪めたシロナの顔がコウキの視界に広がった。  
上気した薄桃色の肌、熱を帯びて妖しく潤む切れ長の瞳、歪んだ柳眉に、絶え間なく喘ぐ真紅の唇。  
深い快楽が刻まれた艶かしい表情は、普段の凛然とした美しさとのギャップをより際立たせた。  
 
そして、ふっと微笑んだかと思うと、そのまま口付けた。  
舌が絡みつき、口内を這い、犯していく。時折唇が離れては間には淫らな糸が掛かり、一息つくと、また貪るように唇を重ねる。  
「んっ、・・・ちゅっ、はぁっ・・・」  
上の口と、下の口。両方でコウキは攻められ、愛されていた。コウキもそれに応えようと、懸命にシロナの芯を貫き続けた。それこそ下半身が痺れるほどに。  
「・・・好きよ、んんっ、あっ!好きっ・・・!はぁんっ、あぁっ」  
喘ぎ声に混じる一言一言が呪文の様に、倒錯の快楽に酔いしれる少年の脳に突き刺さる。  
そして、シロナの舌が歯列をなぞった時-----それは訪れた。  
「あっ、あ、イク、で、出る・・・っ!」  
耐えていた熱い白濁が睾丸から一気に肉棒を駆け上がる、眩暈のする様な衝動。  
「くぅっ、あぁっ!・・・はああぁぁっあああ!!」  
-------びゅしゅっびゅるるるっ!ごぷっ、びゅるるるるっ!----------  
耐えていた熱い白濁が一気に肉棒を駆け上がり、とてつもない量の精液が噴き出した。  
「ああぁぁぁぁ------っ・・・!」  
叩きつける白濁の濁流に、シロナも一際大きな嬌声と共に絶頂を迎えた。背筋をピンと張った状態で身体を反り返し、痙攣を繰り返す。  
何度も何度も収縮しながら精を放出する肉棒を、尚も逃すまいとするかの様にきゅっ、きゅっ、と締め付ける肉襞。  
--------びゅるっ、びゅぶっ、びゅっびゅるるるっ--------  
「ぁ、あぁ・・・ぁ・・・っ」  
白い頤(おとがい)を反らし、膣内射精の快感に浸るシロナ。しばらくして精を吸い尽くすと、目を虚ろにしてコウキの胸に倒れこんだ。  
その豊満な乳房に顔を埋める形となったコウキも、次第に意識を手放していく。  
結合部からこれまでの交わりで入りきれなくなったドロドロの白濁が逆流して零れだして----純白のシーツを汚していった。  
 
 
 
----もうどれだけの時間(とき)が経っただろう。  
チャンピオンルーム、正確には、その奥----プライベートルームの前に、ヒカリはうずくまっていた。  
何かに耐えるように。声だけは漏らさないように、ジッと耐えていた。  
「・・・ゃ、だ。こんな、ぁっ・・・」  
まだ誰も触れたことの無い、うっすらと茂みの覆い始めたばかりの場所。----そこはいつの間にか生暖かい液体で濡れていた。  
それは徐々に溢れ出し、ヒカリの秘所を覆う下着にまでシミを作っていく。  
「ん-----っ、あ、ぁっ・・・」  
体が熱い。二人の嬌声と喘ぎ声が耳を侵し、頭の中で響く。聞きたくない、見たくないのに、目も逸らせず耳も塞げない。  
いや、正確には『逸らそうとも塞ごうともしていない』のだが。  
ヒカリのそこは、二人の痴態に感じていたのだ。だが少女の羞恥心と、純粋ゆえの<性>への嫌悪がソレを否定する。  
パタ…。  
「-----っ!だ、め・・・っ」  
遂に床に、零れだしてしまった。  
慌てて手で秘所を押さえるが、愛液は指の隙間をどんどん伝わっては落ちていく。止まらない。  
パタ、パタ…。  
(-----神聖なチャンピオンリーグでこんなこと!)  
当のチャンピオンすらも遵守していないのに?  
 
「ふ、ぅ・・・っ」  
頭がくらくらした。愛液を止めようとする手の動きすら、刺激になりかけていた。  
(帰ら、ないと・・・っ!このままじゃ、私・・・)  
ガクガクと震える足で何とか立ち上がろうとするヒカリ。淫靡な糸がツ…と垂れるのを、手で必死に押さえる。  
扉の向こう・・・ベッドの上で乱れている二人は、ヒカリの存在に気付いていない筈。  
早く、早く引き返して・・・。  
その瞬間。  
(-----------------------っ!!)  
目が、合った。扉の向こうで、快楽に興じていた筈のシロナと。  
ほんの一瞬のことだったが、確かにシロナの視線がヒカリの瞳を射抜いた。  
美人で博識で、冷静沈着で、ポケモントレーナーの憧れで・・・そして誰よりも優しかったチャンピオン・シロナ。  
だが、その眼差しは。  
 
『女』が『女』を牽制するかのような、光を持っていた。  
 
****  
 
「本日の業務を終了します」  
素肌の上にワイシャツを羽織っただけの姿で、室内に備えられた無線に向かって短く告げた。下着も一切身に着けていない、あまりにも扇情的な姿である。  
するとチャンピオンルームまでの扉が、次々と自動的に閉じられていく。  
これでもう挑戦者はおろか、直属の部下である四天王すらもチャンピオンのもとには辿り着けない。  
それを見届けるとシロナは踵を返し----ある場所で足を止めた。  
『あの』扉の前。美しい琥珀の瞳は、ジッと床を見つめていた。  
もう乾きつつある、点々としたシミ。-----何かをこぼした?いや、違う。  
「・・・やっぱり」  
特に驚く様子も無く、ポツリと呟いた。シロナには全て分かっていた。分からないわけが無かった。  
その『液体』の正体も、何故そこにシミを残したのかも。  
 
必要最低限の家具しか置かれていない、殺風景なチャンピオンのプライベートルーム。  
『今度は』きちんと扉を閉めると申し訳程度に備えられたキッチンに立ち寄り、そして先程まで激しく交わっていた場所へと向かう。  
ベッドの上には、欲望を放出しきった満足感と疲れから、少年がすやすやと寝息を立てていた。  
(シャワー空いたけど、起こすのは無理そうね)  
側に腰掛けると、すらりと伸びた長い脚を組む。肉付きのいい太股も露になった。  
その付け根の更に奥----『女』の部分は、今日何度白濁を受け入れたか分からない。  
(現役チャンピオンが『挑戦者』と偽って、男を連れ込んで淫行----ね。とんだスキャンダルになりそうだわ)  
一応、シロナにも自覚はあった。  
こんなことが協会に知れたらタダじゃ済まないことも-----ソレを分かっていながら、止める気など到底ないことも。  
淹れたてのブラックコーヒーを片手に思いを馳せる。(特に習慣にしているわけでもないが、少年との激しい交わりの後はいつも飲むのだ。)  
 
全ては、あの激戦からだった。  
生まれて初めてだった。あんなに興奮し、白熱した闘いは。  
冷静さも失うほどに、熱く燃え上がった。それこそ、自分がこれまで纏い続けた『完璧なチャンピオン』のベールを脱ぎ捨ててしまうほどに。  
出逢った頃の幼さが消え失せたかの様な精悍な顔つき。険しい旅で結ばれたポケモン達との確固たる絆。そしてそれを信じて勝利を信じる熱い瞳。  
トレーナーの誰もが欲してやまないモノを、彼は既に手に入れていたのだ。  
全てを賭けて、そして出し切った闘いは----彼に軍配が上がった。シロナにとってもそれは、微塵の悔いも残さない清清しい敗北だった。  
闘いの後、喜びと共にシロナの強さを讃え、握手を求めてきたコウキ。  
照れながらも、おずおずと差し出された手。はにかんだ笑顔。それを目にした瞬間。  
----まさか、自分が。いや、そんなわけが無い。  
シロナは自分の胸の奥深くに、火が灯るのを感じた。  
----こんな、年下の男の子に・・・?  
それは、最初こそプライドに賭けて認めたがらなかった、恋情の火だった。  
 
いつか年齢(とし)の離れた妹が言ったことを思い出す。  
-----「お姉ちゃんってさぁ。ちっちゃい頃からポケモンとか神話とかばっかりだったよね。恋愛とか、興味ないの?」  
ないわね。・・・悪い?  
----「悪いとかじゃなくて。ただ、凄そうだなって思っただけ」  
何が?  
----「お姉ちゃんみたいな人ってさ。いざ誰かを好きになったら、ストップが利かなさそう。なんていうのかな、盲目?みたいな・・・今迄溜めちゃってた分が、一気にーみたいな」  
成程ね。まさしくその通り。  
血の繋がった妹は周囲から「姉に似ない」と言われながらも、誰よりもその姉のことを理解していたのかもしれない。当の本人よりも。  
----「それでさ、嫉妬深くなっちゃいそう。・・・って、想像したらこわっ!」  
失礼ね。  
でも、こうなったら否定も出来ないわ。  
 
現に自分は。  
自分を少なからず慕ってくれていたであろう少女に、見せ付けたのだから。  
わざわざ、彼女が勝負を挑みに来るという日を選んで、彼と交わった。  
そしてわざとに扉を開けて、自分たちの痴態をその純粋な瞳に見せ付けた。  
・・・何故?  
 
----「昨日、ナナカマド博士のとこに行ったんだ」  
博士、お元気だった?  
----「うん。すっごい久しぶりだったけど、皆元気だったよ」  
そう、何よりね。  
----「ヒカリがさ、なんか手作りのお菓子くれて・・・ちょっと驚いたな。いや、女の子らしいとこもあるんだーって・・・。あ、こ、これ絶対あいつには言わないで」  
ふふ。さぁ、口が滑っちゃったらどうしようかしら。  
 
----「ヒカリ、なんか最近大人っぽくなった気がする」  
・・・そう。  
----「なんていうか、この間コンテストの応援に行った時に見て思ったんだ。ドレス着たり化粧したりしてたからかな」  
・・・・・。  
----「シロナさん・・・?どうし、うわっ」  
・・・無粋ね。私といる時に、他の女の子のことを話すなんて。  
今なら分かる。あの時はからかってみせたけど、内心決して穏やかではなかったのだ。  
大人げないにも程がある。十分に分かっている。でも、どうしようもない。  
 
見せ付けて、どうするつもりだったのか。  
「近寄るな」とでも言いたかったのか。----きっと、そうだ。  
 
窓から差し込む月の光が二人を照らす。いつもならばその美しい眺めに暫し黄昏でもしただろうが、今日はもう眠ってしまいたかった。  
----自己嫌悪が襲ってくる前に、早く。  
ベッドに横たわり、その白い指で、そっとコウキの髪を梳く。  
男の子のものとは思えない程、柔らかくてサラサラした黒髪。シロナの輝くような金髪とは対照的だ。  
「んー・・・・」  
コウキはくすぐったいのか少し身じろぎしたものの、またすぐに安らかな寝息を立て始めた。-----明日はリーグが開催される前に起こして、家に帰さなければならない。  
艶やかな唇が、小さく呟いた。  
「ごめんなさい」  
その端正な顔は、自嘲気味に歪んでいた。まるで、自分の感情をどう扱っていいか分からない幼子の様な、泣きそうな顔。  
きっと、コウキは知る由も無い。ヒカリが全てを見ていたことも、それをシロナが仕向けたことも。そして何よりも----自分のこんな醜い部分を。  
「私、相当に嫉妬深いみたい」  
自分が、こんな女だったなんて。  
先程の『男』の表情が嘘のように消え失せたコウキの額に、軽いキスをする。  
起きる様子がないと分かると、ふっと溜息をついて----ゆっくりと目を閉じた。  
 
その脳裏に、ヒカリの怯えと----僅かな興奮の入り混じった表情を浮かべながら。  
 
 
 
To be continued…  
 
 
 
 
 
 

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