「すごい灰……ハードマウンテンはいつも火山灰が落ちてきてるってきいたことはあるけ  
ど、テントの窓枠とかにもこんなに簡単に灰が積もるなんて」  
「うん……最初に来たときはここまで酷くはなかったんだけど。多分火山活動が活発にな  
ってるってことだろうから……。  
 大丈夫かな……噴火で洞窟が入れなくなったりしなければいいけど」  
「ダイジョーブ……って言いたい所だけど、どうかな。  
 とにかく明日になれば、ふもとというか、入り口まではたどり着けるだろうから……そ  
こで考えるしかないよ」  
 ハードマウンテンをはるか先に臨む、227番道路とハードマウンテン外周部のちょう  
ど、境界線にあたる地域。  
 今ここに、二人のトレーナーが、降り注ぐ火山灰を瞳に映しながら、心配そうな表情で  
あえかな月明かりに照らされたハードマウンテンの威容を見つめていた。  
 一人は、コウキと言う少年トレーナー。多少大きめの帽子に、赤の長いマフラーが特徴  
的である。  
 もう一人は、ヒカリと言う少女トレーナー。白い帽子に、コウキと揃いのマフラーが、  
これまた印象的である。  
 彼らは今回、ペアを組んで、シンオウ地方の難所の一つ、ハードマウンテンへと挑もう  
としていた。その目的は、伝説ポケモンの一匹にして、ハードマウンテンの主、ヒードラ  
ンの調査、そしてできることならば、ゲットすることである。  
 先日、ひょんなことからハードマウンテンに、うわさはあったものの、姿を見せたこと  
のないヒードランの生息が確認された。  
 その結果、全国のトレーナーがこぞってヒードランを目当てにハードマウンテンを目指  
そうとしているのだ。事実、彼らのテントの窓から見える範囲でも、同じくヒードラン目  
当てと思しきトレーナーチームが多くテントを張っているし、彼らが設営する場所から少  
し離れた登山道には、深夜にもかかわらずハードマウンテンを目指す足音が時折響いてい  
るのだ。  
 だが、この狂騒も仕方はないだろう。伝説ポケモンは、その存在こそ記録されているが、  
捕まえるどころか映像記録すら殆ど存在していない、まさしく名前の通り「伝説」なのだ。  
 ゆえに、その伝説ポケモンの目撃例があった場所や、伝説ポケモンが姿を見せそうな場  
所には、常に多くのトレーナーが足を運ぶ。  
 目撃し、記録をしただけでも、一目置かれるトレーナーになることは間違いない。まし  
てや、それに勝利し、心を通わせたとなれば―――歴史に名を刻むことも夢ではないのだ。  
 ただ……この二人はともに、過去にも伝説ポケモンを巡る戦いに巻き込まれたりはして  
いるし、目撃もしている。ただ公的な報告はしていないだけで。  
 特にコウキに至っては、ギンガ団との対決の際に、伝説ポケモンの中でもとりわけ強大  
な存在の一匹、パルキアと対峙・対決していたりもする。若輩二人のコンビではあるが、  
見た目よりもはるかに多くの経験をしているのだ。  
 ついでに蛇足ながら付け加えておけば、十代とはいえ男女でこうして一つ屋根の下とい  
うのはよろしくない気もするが、一応一線は越えている仲ゆえに、別の意味で問題はある  
が、まあ二人でいることは特別問題ではなかったりする。  
 
 ―――閑話休題。  
 そんなコウキは、ハードマウンテンから視線をはずすと、帽子を取り、髪に入り込んだ  
火山灰を無造作にはたく。灰色の粉が、テント内の空気をふわふわと漂う。  
「でも、この火山灰は勘弁して欲しいよ。幾らなんでも」  
「ホント……これが終わったら、シャワー浴びたい……まあ、今は我慢するしかないけど。  
こう火山灰が多くちゃ、ふもとの湖もすごいことになってるだろうし」  
「住んでるポケモンには関係ないとは思うけどね……飲み水以外の水を、無理して持って  
来てよかった。せめて体は拭いておかないと気分が悪くなりそうだし」  
「だよね……そりゃ調査の時だって数日お風呂とかに入れないことはあったから慣れてる  
けど―――さすがに限度はあるよね」  
 二人とも、服や髪に付いた火山灰に辟易した様子で言葉を交わす。  
 肌の露出している首筋や腕も、テント内の小さな明かりでもうっすらと灰色がかってい  
るように見えてしまう。  
 ヒカリは舞い上がった火山灰に軽く噎せながら、水の入ったポリタンクの口を開くと、  
わずかに傾け、手にしたタオルに水を浸す。  
 絞らないでもタオル全体に水が浸る程度だけ水を使うと、すぐに口を閉じる。一応、道  
具の洗浄用や、怪我をしたときの洗い流しのための、飲料用以外の水である。ただそれで  
も、どれだけ調査に時間を要するかはわからないし、最悪の場合はこの水を一時しのぎの  
ための飲料用としても使うので、無駄にすることはできない。  
 ポリタンクを見つめながら、コウキはハードマウンテンの調査は何日間までは大丈夫か  
を頭の中で思い浮かべ―――  
「ね、ねえ、コウキ……あたしが拭いてあげるよ」  
「へ……?あ、い、いやその、自分で―――」  
「いいの、あたしが拭きたいの……前のお返し。ほら、服脱いで」  
 コウキの思考は、ヒカリの掛けてきた言葉に途切れ、そして言葉の内容を理解すると顔  
を赤くし、焦った表情で首を振る。  
 が、ヒカリも頬を紅潮させ、恥らうような表情を見せつつ、体を摺り寄せてくる。  
 そして、強引にコウキの上着を脱がせると、はだけた胸元や首筋を、丁寧に拭いていく。  
 引き締まった胸板や手足を拭き清めていくうちに、ヒカリの目の色が熱を帯びていき、  
息が荒くなる。それとともにヒカリの吐息が首や頬を這い回り、コウキの身体の芯が、そ  
の感触に焼けるように熱くなっていく。  
「あの時も思ってたけど……コウキって、見た目よりも逞しいよね」  
「そ、そうかな……自分では特別意識して鍛えてるわけじゃないんだけど……って、ヒカ  
リ、そこは―――」  
「だめだよ、ズボンも脱いで。どうせ服の中にも火山灰が入り込んでるんだし」  
 が、今度はヒカリは、コウキのズボンにも手を掛け、それに対してコウキが焦り気味に  
なり、さすがにまずいと否定する。けれども、そのコウキの焦り具合に表情がヒカリは妙  
に楽しくなり、コウキの手を振り切ってズボンを下ろす。  
 すると、ヒカリの視界に、コウキのトランクスが大きくテントを張っているのが入って  
くる。ヒカリに身体を弄られたり、傍で吐息や体温を感じたことで、コウキの男性として  
の本能が刺激されまくったからだ。  
 それを興味深そうにヒカリはまじまじと見つめ、ちょっと意地悪そうな表情でコウキを  
見つめる。  
「あ、これを見られたくなかったの?もしかして」  
 
「だ、だってそりゃ……」  
「そんなこと言ったら、私だってコウキに全部見られちゃってるんだけど……  
 いいから、観念してってば」  
 若さゆえなのか、思い切り膨らんでいる股間をヒカリに見られて、慌てふためくコウキ。  
だが、ヒカリはその反応が楽しくて仕方ないようだ。トランクスの上からコウキのペニス  
をなでまわし、指の腹で亀頭を刺激する。  
「う……ちょ、ちょっと待って……ま、不味いってば……」  
「嫌?でも、こういうふうに、男の子のここを触ると喜ぶって言ってたけど」  
「い、嫌じゃないけど……じゃなくて!だ……誰に聞いたんだよ、そんなこと……」  
「え?ええと……シロナさんがね……んとね……あたしがまだ出発の準備してる時に、博  
士のところに来たことがあって……せっかくだからお礼と言うか、お返ししてあげろって。  
 だ、誰にも言ってないんだけど……シロナさんだけにはばれちゃって……雰囲気が女っ  
ぽくなった、って……  
 でね、男の子が喜ぶこととか、安全日のこととか、役立つことを少しずつ教えてあげる  
って……そのとき習った方法で測定したら、今ぐらいは安全日みたい」  
 コウキは恥ずかしそうに説明するヒカリに、内心頭を抱えつつ―――あの人ならばやり  
そうではあると内心納得はしていた。  
 チャンピオンであると知る前からたびたび助言を貰っていた相手だが、チャンピオンに  
なった後は、いろいろと色っぽい冗談でからかわれることも多かったからだ。  
 キクノ曰く「男女問わずかわいい子をからかったりするのが好き」だそうだ。  
 そんなことを思い出しながら、大人の色気を漂わせながらも、どこか子供の無邪気さを  
併せ持つシロナが、とても楽しそうにヒカリに色々な事を囁いている図を容易に想像して  
しまい、心の中でコウキは頭を抱えた。  
 だが、その思考もすぐに途絶える。コウキが別のことを考えているとヒカリは察したか、  
ちょっとむくれた表情になり、トランクスを引き剥がす。  
「ヒ、ヒカリ!?」  
「……なんだかコウキ集中してないみたいだから、やっぱり直の方がいいみたいね」  
「そ、そういうことじゃなくて―――」  
 コウキが別のことを考えているのを見て、あんまり真剣じゃないと思ったのか、ヒカリ  
は内心は焦ってはいるが、それを隠すように不満げな視線をコウキに向けつつ、何か言い  
たげなコウキを無視してシロナに言われたことを自分なりにやってみる。  
 だが、言われたことをきちんと記憶して実行できるほどヒカリも冷静ではない。実際に  
は、結ばれた相手とはいえまだ見慣れていないコウキの男性器にどぎまぎしながら、竿や  
カリ、あちこちの部分をぎこちない手つきでつついたり軽く押してみる。  
 が、その拙い仕草でも、ヒカリの手の感触や、ヒカリが自分のペニスに触れているとい  
う事実だけで、コウキは激しい興奮を覚え、見る見るうちに限界まで膨らませてしまう。  
 
「うわ……」  
 思わず声を出し、目を丸くするヒカリ。  
(こ、これがあたしの身体の中に入ってたんだよね……信じられない)  
 そして、心の中で妙に冷静に目の前のコウキのモノを見つめる。ただ、身体のほうは、  
いわゆる正直というべきか、彼女も知らず知らずのうちに興奮しているらしく、ショーツ  
が湿り気を帯び、膨らみかけてきたクリトリスが布とこすれて股間が熱く疼く。  
 ヒカリは内股になって必死に膝をこすり合わせて我慢しながら、コウキのペニスを自分  
の手で慰める。そして―――根元の前立腺に近い部分を刺激した時、コウキの腰がびくり、  
と一瞬跳ね上がり、同時に先端部から透明なカウパー液がこぼれ、先端部分を濡らす。  
「あ……こ、こことかもしかして、き、気持ちいい……?」  
「う、うん……」  
 ペニスに反応があったことを見て、思わずヒカリがたずねると、事実快感を覚えたコウ  
キは、おずおずとうなずく。  
 コウキの反応にちょっと自信が出たヒカリは、ペニスの根元を中心に、コウキの反応を  
視界の端で盗み見ながらいろいろな部分を触れてみる。つついたり押したりだけでなく、  
擦ったりの動きもあわせると、コウキの息が荒くなっていき、カウパー液の漏れる量も多  
くなってくる。睾丸の部分も、心無し硬くなっていき、コウキは徐々にではあるが、射精  
感が強まってくる。  
 ヒカリもそのコウキの表情を感じ取ったか、根元の部分と、カウパー液でぬめっている  
先端部分を重点的に攻める。コウキは徐々に我慢が利かなくなり―――ヒカリに喘ぐ様な  
声で尋ねる。  
「ヒカリ……も、もう……」  
「いいよ……おもいっきり、して……」  
 コウキの言葉に、ヒカリは興奮と期待を込めた様子で生唾を飲み込み、うなずく。同時  
に、我慢させないで一気に開放させてあげようと、多少きつめに手を動かす。  
 コウキの下腹部が熱くなり―――次の瞬間、勢い良く白濁した精液が放たれる。  
 数度迸った液体が、ヒカリの顔や手、胸元を汚す。  
「あ、ご……ごめん、大丈夫……?」  
「うん、平気……でも、なんか男の子って、すごいんだね……」  
 いくら許されていても、さすがに顔にまで飛び散らせてしまったのは不味いと感じたか、  
快感の余韻に浸る暇もなく平謝りになる。だが、ヒカリはうっとりとした様子で自分の手  
や胸元と、いまだ脈打つコウキのペニスを見つめて、息を吐く。  
 が、それだけではやはり、ヒカリ自身の疼きは解消できないようで、もそもそと自分の  
足を動かしながら、ヒカリはすがるような視線でコウキを見つめる。  
 コウキはすぐにはその視線の意味を理解できなかったが、盛んに足をすり合わせている  
様子に、ヒカリが今度は我慢できなくなっていると察する―――のだが、コウキはヒカリ  
に攻められたことのお返しをしようと考える。  
「……じゃあ、今度はヒカリの番だよね。僕が汚したし」  
「え……あ、う、うん」  
 ヒカリは自分の身体の火照りを我慢するのに精一杯で、コウキの言葉にも生返事を返す。  
 その反応に、コウキはちょっと悪戯してみたいという意地悪な考えを思いつき、別のタ  
オルに水を含ませてから、ヒカリの身体の火山灰や精液を拭う。  
 一通り拭き終わると、今度は後ろに回り、服を脱がさずに直接手をもぐりこませると、  
火山灰を拭き取りながらヒカリの肌に指を這わせる。  
 
「や、コウキ、ちょっと……」  
 ヒカリが声を上げるものの、お構いなしにコウキは肌を拭く―――とともに、片方の手  
で乳房を軽く刺激する。  
 すでに熱くなっており、乳首も硬くなっているために、コウキが軽く胸や乳首を愛撫す  
るだけでヒカリは声を漏らす。  
「う……コウキ……あ、あんっ……」  
「拭いてるだけなのに、ずいぶん気持ちよさそう」  
「そ、それはっ……な、なによ……意地悪しないでよっ……」  
 切なげに不満の声を漏らすものの、すぐにコウキの愛撫に、あえぎ声が漏れる。  
 コウキは別に床上手とかそういうわけではないのだが、ポケモンを観察し、その反応で  
相手の求めるものを察するということは常に行っていたことではあるし、その辺りの機微  
を掬い取ることが、ほかのトレーナーよりも上手だった。ゆえにチャンピオンとなれるほ  
どにポケモンとも心を通い合わせることができた。  
 その経験を、ヒカリの反応を掬い取り、できる限り相手を不快や不安にさせないように  
することにも応用しているのだ。だから、拙い愛撫や攻めでも、きちんとヒカリの求めて  
いるものを与えられるので、コウキの愛撫にヒカリは強く反応するのだ。  
 ……まあ、性交渉にポケモンとの交流を応用するのはいかがなものかという意見は、こ  
の際棚に上げる。  
 しばらく胸の辺りを攻めていたコウキだが、ヒカリの声が艶っぽくなって来たことや、  
息が荒くなってきたことを感じ取り、頃合とばかりに下半身へと手を伸ばす。  
 ショーツの布越しに秘部に触れると、じっとりと生暖かく濡れている感触が指に伝わる。  
初めてヒカリと結ばれたときの感触を思い浮かべ、さらにペニスを硬くしながら、ショー  
ツの布越しにクリトリスと小陰唇を愛撫する。  
「んうっ……いやぁ……コウキぃっ……」  
 ショーツ越しに伝わる、痺れる様な快感に、ヒカリが身もだえしながら歓喜の悲鳴を上  
げる。口がだらしなく開き、わずかに覗いた舌が行き場を失って唾液を滴らせながらふら  
ふらと揺れる。その快楽に支配された横顔に、コウキの理性が崩れた。  
 一旦愛撫を止めると、すぐに正面に回る。そして、コウキはヒカリの唇をふさぐと、舌  
でヒカリの口腔内を愛撫する。  
 同時に上着とブラをずり上げ、片手で胸を愛撫し、もう片方の手をショーツの中にもぐ  
りこませ、膨らんだクリトリスを撫ぜ、摘む。  
「んうううっ……ううんっ!……ふぁっ……はぁっ……ああっ……」  
 口と胸と性器を同時に弄られ、すでに愛撫で精神が弛緩していたヒカリは、唇を重ねた  
まま絶頂に達してしまい、くぐもった声を上げる。が、コウキはまだ許さないとばかりに  
攻めを止めず、ヒカリは休む間も無く再度快楽に沈む。  
 コウキもコウキで、ヒカリの声や感触、反応にたまらなくなったのか、ペニスの先から  
カウパー液を溢れさせながらも愛撫を続けている。  
 重なった唇が離れると、二人の口から涎が糸を引き、垂れた雫がコウキの足やペニスを  
伝わる。だが、コウキはそれにはお構いなしに唇を何度も重ね、愛撫を続ける。  
 ヒカリが二度目の絶頂に達して、ようやくコウキは手を止める。同時にヒカリは緊張の  
糸が切れたか、完全に弛緩しきってその場にへたり込む。  
「も……もう……コウキのバカぁ……」  
「だ、だって……ヒカリが悪いだろこればっかりは……。いきなり変なことしてきて……」  
「うう……ご、ごめん。で、でも、不意打ちのほうがコウキが喜ぶって……思って」  
 涙目でコウキをにらむヒカリだが、コウキに反論されて謝りつつもごにょごにょと弁解  
を漏らす。コウキはちょっとあきれた様子になりつつも―――そのちょっといじけたよう  
な顔が可愛くて、宥めるように頬や唇に軽くキスをする。  
 
「ヒカリ……可愛い」  
「あ……な、何言ってるのよ……んう……」  
 耳元で優しく囁かれ、ヒカリは顔を真っ赤にするが、コウキの唇の感触に、再び身体の  
芯が熱くなり、秘部から愛液が止め処無く溢れる。すでにショーツが完全に濡れそぼるど  
ころか、割れ目にかぶさるスカートの布にも愛液の染みが広がり、ヒカリは最初に結ばれ  
たときよりも激しくコウキを求めたくなる衝動に駆られる。  
「……コウキ……の……ばかぁ……変なこと言うからまた我慢ができない……」  
「う、うん……ぼ、僕もそうみたい……」  
「もう……」  
 ヒカリはそう言うと、自分で身につけたものを脱ぎ去り、生まれたままの姿になり横た  
わると、顔を真っ赤にしながらもコウキに視線を送る。  
 コウキもやはり初めてじゃないにしろ、動揺を完全に抑えることはできない。  
 が、それでも、最初と同様に、ヒカリを歓ばせることを第一に考えて、すぐに挿入には  
及ばずに、指を入れることからはじめる。この辺りはやはり、コウキの優しさというか、  
気遣いというか。  
 とりあえず、コウキは人差し指をヒカリの中に沈め、反応をうかがう。今度は前回と違  
い、すんなりと指が根元近くまで吸い込まれ、中の肉が指を絡めとろうとする。  
「ふぐうっ……ああん、コウキッ……もっと強く……」  
 二度目故か、ヒカリは指一本はすんなりと入るらしく、恥ずかしさをごまかすように目  
を瞑り、途切れ途切れに懇願する。  
 コウキもそれで大丈夫と感じ、右手の人差し指と中指を沈め、左手でクリトリスを愛撫  
する。左手の親指で押しつぶすように刺激したり、指の先で軽く摘んで動かしたりすると、  
ヒカリが堪えきれずに大声を出す。  
「ぐぅっ……んんっ……!ああっ!コウキ、コウキぃ……」  
「どう?痛くない?」  
「う、うん……最初に意地悪してくれたから、多分だいじょぶ……  
 だから……も、もう―――お願い……」  
「う、うん―――わかった」  
 コウキはヒカリの言葉どおりに指を抜くと、ヒカリを起き上がらせて、足を開かせたま  
ま向き合うように抱きかかえる。ヒカリの膣内に深くゆっくりとコウキのペニスが吸い込  
まれていき、中の敏感なスポットが擦れてヒカリが鳴き声を上げる。  
「あああああっ!」  
「大丈夫……?」  
「う、うん……ごめん、ちょっと……イッちゃうっていうのかな……そうなっちゃった」  
「あ、い、いいよ。痛くないんだったら……その、何度でも……いいよ。  
 ヒカリ……動くよ」  
「うん……コウキ、お願い。あたしも……動いてみるから、一緒に動いて」  
 声に一瞬驚くコウキだが、それが快感から発せられたとヒカリから聞かされ、安堵の表  
情を見せる。そして、お互いにぎこちなく腰を動かす。  
 コウキはヒカリを抱きかかえながら何度も唇を重ねて舌を絡める。ヒカリもコウキの背  
中に両手を回しながら、自分からもぎこちないながらも積極的に腰を動かし、コウキの唇  
を求める。  
 
 言葉も出ないほど互いに快感に溺れながら、二度三度とヒカリが達する。そして、コウ  
キも限界が近づく。  
「う……や、やばい、ヒカリ―――そろそろ離れて……で、出るっ……僕も……」  
「え……あ、あたしはべ、別に―――」  
「そ、そういう問題じゃ―――だ、駄目だヒカリ、ごめんっ!」  
 コウキはヒカリを抱え上げて自分のペニスを引き抜き、自分から腰を引かせる。  
 その直後に、先ほどよりも勢い良く精液が放たれ、ヒカリの大腿部やお尻にべっとりと  
コウキの迸りが張り付く。  
「う……ふう……ああっ……はあっ……」  
「……もう、良いって言ってるのに……。安全だって……」  
「でも……やっぱり中は不味いってば……  
 本当はそういう道具買えればいいんだろうけど、売ってくれる訳ないし……」  
 ヒカリは不満そうに呟くものの、やはり万が一のことを考えると、今はまだ何かあった  
ら二人とも不幸になるだけなので、ヒカリの言葉はかたくなに否定する。  
 ただまあ、それならば生でするなと言われてしまうだろうが、コウキの言うとおり、ま  
だ幼い二人相手に売ってくれる店が無い。  
 ましてや、二人とも有名人なのだ、変なことをして妙な噂が立つのは避けたいだろう。  
 その辺りの事情を察し、ぺたんと床に座り込みながら、ヒカリは謝る。  
「そうだよね……ゴメン、コウキ、気を使わせちゃって」  
「あ、いや……それはいいよ、一緒にこうしていられるだけで」  
「……ホント、コウキって優しいね。あたし、コウキのそういうところが一番好きだよ」  
 が、それでもヒカリを気遣い、温かい言葉を掛けてくれるコウキに、ヒカリははにかみ  
ながら呟く。その言葉にコウキは照れながらも、情事の後処理を手早く行う。  
 そうして、二人とも明かりを消してから裸のまま携帯用の寝具にもぐりこむと、首筋や  
うなじにお互いの痕跡を残し、眠りに就く。  
 
 だが、その眠りは思いもがけない形で破られることとなってしまった。  
 ハードマウンテン方面を中心として、まだ空が白みかけたころだった。突如、大きな振  
動が周囲一帯を襲う。  
 強烈な地響きにコウキもヒカリも目を覚まし、周辺の茂みや木々から、たくさんのポケ  
モン達の鳴き声が響き、一斉に飛び出してその場を離れていく。  
「な、何!?何が起こったの!?」  
「わからない……でも、外のポケモンの様子から、ただ事じゃなさそうな気がする……  
 急いでハードマウンテンに向かおう!」  
「わかった!」  
 コウキもヒカリも、昨夜の余韻を楽しむ暇もなく、手早く用意をし、テントをたたみ、  
携帯食料と水分を無理やり流し込むと、急ぎハードマウンテンの入り口へと駆け出す。  
 周囲も同様に急ぎ出立するチームの姿が見られ、中継らしいヘリもあわただしく動く。  
 ヒカリと共に一直線にハードマウンテンへと向かうコウキ。だが、彼の脳裏には、ある  
疑念が渦巻いていた。  
(ヒカリには言わなかったけど……あの振動……記憶がある。  
 確か……ギンガ団の使った、リッシ湖を吹き飛ばしたギンガ爆弾とか言う……  
 もしかしたら……ギンガ団の残党か、その関係者が……!?)  
 そう。コウキは振動に揺り起こされたとき、真っ先にそれを考えたのだ。  
 リッシ湖に甚大な被害をもたらし、ユクシー・アグノム・エムリットの三体の伝説のポ  
ケモンを無理やり目覚めさせた、悪夢の力。  
 そして、そこから、やりのはしらで姿を消し、今も行方知れずとなっているアカギをは  
じめとしたギンガ団幹部の姿が思い浮かんだのだ。  
 が、それを憶測の段階でヒカリに告げて不安がらせたくは無いと考え、あえてそのこと  
については沈黙したのだ。もっとも、ヒカリも気づいている可能性もあるが、それでも今  
は不確定要素を議題に上げてあれこれと論じるよりも、一刻も早くハードマウンテンへと  
到着する必要があると考えて、足を進める。  
 自転車と足を使い、太陽が完全に昇り始めたころ、予定よりもだいぶ早くコウキたちは  
ハードマウンテン入り口前の開けた部分へ到着する。  
「うわ……すごい人。それに―――」  
「ああ……入り口が崩落してる……やはりあの振動が影響してるんだ」  
 彼らが、入り口に差し掛かった瞬間、入り口付近が無残に崩落し、ふさがっている光景  
と、その周囲で大騒ぎをしている多数のトレーナー達、加えてリーグなどから派遣されて  
いるのか、ポケモンレンジャー達の姿も見受けられる。  
 彼らは他のトレーナー達と協力し、入り口を封鎖している。その様子を付近でコトブキ  
テレビのリポーター達が盛んにカメラに向かって状況を早口で説明している。  
 コウキ達も人垣を掻き分けて、立ち入り禁止のロープが張られている傍まで近寄り、入  
り口を見つめる。  
「こりゃひどい……それに、中の様子も見えないのか……」  
「ここって、たくさんポケモン達がいるのよね……大丈夫かな」  
「……内部の崩落は確認されていませんから、そこまで被害は無いと思います。  
 それに、入り口付近を今、他のレンジャー達が潜り込んで被害状況の把握などに努めて  
いますので……今しばらく待っていてください」  
 コウキとヒカリが、現場の惨状に思わず声を漏らし、それに対して傍のレンジャーが彼  
らに説明をする。  
 
 説明を聞いた二人は、どうやら今はやれることは無いと理解し、早々に人が集まってい  
る入り口付近を離れると、多少離れた場所にテントを張り、事態が動いたときには何時で  
も自分達も動けるように用意を始める。  
 コウキもヒカリも、もって来た道具や食料などで、何日ほど滞在ができるかを考えなが  
ら、手持ちのポケモンを確認する。  
 コウキは、ドダイトス・ユキメノコ・ムウマージ・ムクホーク・エルレイド・ガブリア  
スを、ヒカリはトゲキッス・サーナイト・ミミロップ・エンペルト・ピクシー・ビーダル  
を連れてきており、二人で状況に応じた行動を取れるようにはしている。  
 テントで待っていると、そのうちに周囲にも事態が動くまでは待つチームも多いのか、  
コウキ達以外のチームもテントを設営し始めたり、テレビ局の人間も簡易的なプレハブ小  
屋を作って事態を見守る方向で決定したようだ。  
 正直動きにくいという思いはコウキもヒカリもあったが、それは他のライバルも同じ思  
いであると理解はしているため、何も言わずに見守ることにする。  
 だが、やはりコウキは胸の奥で、ギンガ団の関与の可能性が捨て切れていない。それを  
気がかりに思い続けていた。  
 そうして夜が更けていき―――深夜。コウキは不意に目を覚ますと、外を覗く。  
 いくつかの明かりが照らされており、真の闇ではないが―――人は少ない。ヒカリは寝  
息を立てており、目を覚ます気配は無い。  
(何だろう……気のせいかな)  
 特別不審なものは感じないし、外には目に見えた異変は無い。  
 気のせいか―――そう考え、再び寝床に就こうとしたそのとき、コウキの視界の端に、  
小走りに広場を駆け抜けていく影が複数見えた。  
 その方向に視線を転じると、暗闇の中に溶け込むような、黒装束姿の人影が、3つ。  
 コウキは直感的にほうっておくわけには行かないと感じ取り、上着を手早く着ると、モ  
ンスターボールを手にして外へと駆け出す。着替えている間に、ヒカリが寝ぼけ眼を擦り  
ながら目を覚ます。  
「ん……コウキ……どしたの?」  
「変な連中が居た。―――ちょっと様子を見てくるから、ヒカリはここに居て」  
「え!?だ、大丈夫なの?!」  
「大丈夫、危険なことはしない。最悪偵察してくるだけで済ませるし」  
 コウキの言葉に意識を覚醒させ、不安な表情を見せるヒカリ。だが、コウキに言われ、  
仕方なくうなずき―――コウキを見送る。  
 ヒカリも何かがあったときのためにすぐに飛び出せるように最低限の支度は終えてから、  
コウキの向かったほうを心配そうに見つめる。  
 そしてコウキは、全力で走りながら、不審者を追う。訓練されているのか、闇の中の足  
場の悪い道でも速度があまり落ちない。コウキはやっとのことで付いて行きながら、背中  
を見失わないようにし……一時間ほどその追跡を続け、コウキの体力も限界に近づいたこ  
ろ、突如、前の三名が足を止める。その場所は……  
(ちょうど、ハードマウンテンの西側の麓か……連中、ここで何を……?)  
 コウキは相手に気取られぬように、慎重に岩陰から岩陰へと移り、そして観察を続ける。  
 三名はなんやかやと話しているようにも思えるが、声は聞こえないし表情も暗がりでわ  
からない。コウキはせめて声だけでもと考えて、もう少し近づこうとし―――その時、コ  
ウキの足が、乾燥しきった枯れ枝を踏み抜く。―――静寂の支配する闇に、乾いた木が砕  
ける音が、思いのほか大きく響く。  
 
(しまっ……)  
「ぬ!?」  
「何者だ!」  
「つけられて居たとは……そこの、出て来い!出てこねば―――ただでは済まん!」  
 その音は無論不審者三名の耳にも届いていたらしく、動揺と敵意をむき出しにした声が  
響き―――三者ともポケモンを取り出す。  
 アゲハントにゴルバット、そしてドクケイルが空に舞い、コウキの居る場所をにらみつ  
けている。  
 コウキも逃げるわけにも行かず、モンスターボールを握り締めて岩場から出てくる。  
「お子様が、こんなところにこんな時間、何をしに来た?  
 ワレワレの計画の妨げをしようとする、貴様の目的は何だ!?」  
「別に……怪しいからつけてきただけだ。  
 それに、昨日の早朝のあの落盤騒ぎが、人為的かもしれないからな。その犯人じゃない  
かと思ったんだ」  
 声を荒らげる不審者の一人に、コウキも怒りの色を顔に浮かべ、自分の考えを述べてか  
まをかけてみる。すると、案の定というか、三名から同様の気配が広がっていく。  
「な……なんだと!?い、いや、その証拠がどこに!?」  
「リッシ湖で過去に使われたものと同じ振動だったから……人為的と思ったんだ。  
 よく覚えてるさ……嫌な思い出だからな」  
「!?お、お前まさか―――」  
 コウキの追い討ちの言葉に、さらに三名が同様を示し―――携帯していたらしい明かり  
をつけて、コウキへと向け―――闇の中にコウキの顔が浮かび上がる。  
 その顔を見て、三者共に大きくどよめき、憎憎しげな視線を向けた。  
「やはり!このお子様は、我らがアカギ様達を負かし……!」  
「何度も計画をご破算にした……!」  
「やはりお前達、ギンガ団の残党か!!  
 ギンガ爆弾まで持ち出して……ハードマウンテンで何をたくらんでいるんだ!!」  
 黒装束の言葉に、コウキも相手がギンガ団残党と確信し、彼には珍しく怒りをあらわに  
して叫ぶ。無理も無い、彼らにはかなりひどい目にあっているし、非道な行いの犠牲者の  
姿も見ている。  
 が、ギンガ団残党三名も、怒りをむき出しにしてコウキをにらみつけている。  
「黙れ黙れ!お前がワレワレの計画をかぎつけてしまったからにはただでは済まさん!  
 ええい、やれ、奴をボロボロにしてやれいっ!ドクケイル、むしのさざめき!」  
「アゲハント、しびれごな!」  
 ドクケイルが強力な超音波をコウキに放ち、同時にアゲハントも風上から麻痺効果のあ  
る粉を撒き散らす。コウキは口を押さえながらその場を飛びのく。隠れていた岩場が粉で  
黄色く染まり、そこに超音波が直撃し、岩が砕ける。  
 
 このままでは危険と判断し、コウキも遠慮なくモンスターボールを開放する。  
「行け、ムウマージ!ユキメノコ!」  
 闇に浮かぶ、二つの影。妖気を漂わせて、二匹のポケモンがギンガ団とそのポケモン達  
に怒りのこもった視線を向ける。彼らも、コウキの怒りを感じ取り、また、過去に対峙し  
た相手でもあるために、やる気は十二分だ。  
「ええい、ゴルバット、エアカッター!!」  
 コウキもポケモンを出したことで、ギンガ団はまずポケモンに狙いを定める。  
 ゴルバットが指示に従い、真空の刃を生み出し、ユキメノコとムウマージに放つ。が、  
二匹ともまともに直撃するが、多少よろめいただけで、ダメージは少ない。  
「何ィ!?」  
「ユキメノコ、吹雪でアゲハントとドクケイルを凍りつかせろ!  
 ムウマージ、10万ボルトでゴルバットを攻撃!!」  
 ユキメノコは両手に冷気をためるとそのまま前にかざし、頭部と両手から冷気の嵐を開  
放し、ドクケイルとアゲハント、そしてそれを出したギンガ団二人を冷気で包み込む。  
 直撃を受けた二匹と二人は、そのまま冷気で動けなくなり、戦闘不能となる。  
 それに残りの一人が驚いている隙に、電撃の直撃を受けたゴルバットが、目を回して体  
中から煙を出し、あえなく気絶する。  
「ぬ、ぬうううっ!?」  
「さて、観念しろ!!お前達全員、レンジャーと警察に突き出してやる!」  
「そ、そうはいきません!ここは―――逃げます!!」  
 一気に戦力の大半を破られ、残る一人は歯軋りするが―――突如懐から何かを取り出す  
と、そのまま地面に叩きつける。  
 突如閃光と煙が噴出し、ギンガ団とそのポケモン達を包み込んでしまう。  
「くそっ!?」  
 コウキは顔を抑えながら煙をかき分け、ギンガ団を捕まえようとするものの、視界が煙  
で塗りつぶされている上に、そもそも闇の中だ。加えて、出しているムウマージとユキメ  
ノコでは、煙を吹き飛ばすには向いていない。ムクホークでも出しておけばよかったのか  
もしれないが、後の祭りである。  
 しばらくして煙が消えるが、もちろん―――ギンガ団三名の姿は見えない。ただ、戦い  
の痕跡だけが残っていただけだ。コウキは舌打ちしながら周囲を見渡すが、闇は深いし、  
そもそも満足な明かりも無い。  
 口惜しげにポケモン達をモンスターボールへ戻すと、来た道を戻っていった。  
 
 その後、コウキはハードマウンテン入り口のレンジャー達に話をし、すぐにレンジャー  
と駆けつけた警察が、ハードマウンテンの捜索に入る。  
 テレビも今回の崩落事故が人為的なものであるという可能性が出てきたことを、盛んに  
カメラに向けてまくし立てている。無論、広場のトレーナー達も騒然としている。  
 ヒカリも、テントの中で朝食をとりながらその話を聞いて、表情をこわばらせる。  
「まだ懲りてないの……あいつら」  
「だろうね……幹部が雲隠れしているから、余計に暴走しているのかも」  
 携帯食料を口に運びながら、ヒカリは嫌な顔をする。コウキも外に出したポケモン達に  
食事を与えながら、不安の色を隠せない。  
「とりあえず、今は捜索してくれてはいるけど……どうなるか」  
「そう……。でも、無事でよかった、コウキ。今度は私も、一緒に行動するからね。  
 コウキは強いとはいえ、一人じゃ限度があるんだし……」  
「うん、今回は済まなかった。突発的なこととはいえ……。次は気をつけるよ」  
 お互いにそう言い、朝食を済ませ―――コウキはおもむろにヒカリに提言する。  
「僕達も、もう一度西側を探索してみようか」  
「大丈夫なの?他の人も捜索しているんだろうし……」  
「うん。でも、個人的には……あいつらのことは、僕が決着をつけたいって気持ちもある  
んだ……だから」  
 コウキの言葉にヒカリは不安そうな声を漏らすが、コウキは頷きながらも、ギンガ団相  
手ならば黙って居ることはできないか、そうヒカリに告げる。  
 彼の言葉に、ヒカリもコウキの気持ちはよく理解していることもあり、また、最愛とも  
言えるパートナーの意志を尊重したいと言う気持ちもあった。だから、それ以上は何も告  
げずに、ヒカリはコウキの申し出に同意だけを示す。  
 
 そのころ、カントー地方でも、異変が発生していた。  
「なんや……!?」  
 ナナシマは一の島に訪れていた、ジョウト出身カントー在住の、ポケモン預かりシステ  
ムの管理者マサキが、空を見て顔色を変える。  
 青空を茜色に染める巨大な炎の塊が、悠々と大空を渡っていく。それは―――カントー  
地方に住まうと言う伝説のポケモン、ヒードランやエンテイと並ぶ炎の神、ファイヤーだ。  
「なんでファイヤーが姿を……というか、北のシンオウに、何しにいくんや……  
 ヒードランが現れたっちゅうニュースと関係が―――」  
 一の島の他の住民も、ファイヤーの姿に騒然となる。だが、それだけでは終わらなかっ  
た。しばらくし、ファイヤーの隣にも、二匹のポケモンが並び、空に舞ったのだ。  
 氷の王たる伝説ポケモン、フリーザー、そして暴風雷電の主たる伝説ポケモン、サンダ  
ー。カントーの伝説の三鳥が、そろって姿を現し、シンオウを目指しゆっくりとはるか上  
空を飛び去っていくのだ。  
 傍で誰かがカメラをもってこいと騒いだり、リーグに連絡をしろと叫ぶ中、マサキは漠  
然とした予感を感じていた。  
「シンオウのハードマウンテンで、何かが起こるってことかいな……」  
 
 
 昼過ぎ―――  
「やっぱり誰も居ないね……」  
「うーん、調べつくされたみたいだけど、何も出てこないから別を探してるってところな  
のかな……」  
 夜中にギンガ団とことを構えた場所まで足を運んだ二人は、戦いの痕跡がまだ残るその  
場所を、丹念に探索していた。  
 だが、既にレンジャー達が辺りをくまなく調べつくした後ゆえに、やはり二人が探して  
も、何の手がかりも残っていなかった。  
「この辺りだよね、消えたの」  
「うん……でも、何か隠し通路とか、そういうものはなさそうだね」  
「何か鍵みたいなものが必要とか……」  
「でも、夜だったし……単純に道をもっと先まで逃げただけかもしれないからね……  
 まあ、それならレンジャー達が見つけるだろうけど……」  
 一通り周辺を調べてみたものの、うんともすんとも言わず、怪しい痕跡も見つからず、  
疲れて二人とも座り込む。  
 見上げた空からは、相も変わらず降り注ぐ火山灰と、ハードマウンテンの頂上から噴出  
を続ける煙が空を灰色に染めている。  
「……ふう、調査もこの分じゃ足踏みだし、どうすればいいのかなあ」  
「そうだよね……とりあえず待つしかないのかな」  
 そう言いながら、コウキもヒカリも溜息を揃って吐き―――辺り一帯が揺れ始める。  
「え!?こ、これ、まさかまた爆弾……」  
「違う!これは―――爆弾の振動じゃない、地震だ!まさか―――」  
 ヒカリが顔色を変えるが、コウキはそれを否定し、視線をハードマウンテン頂上へと向  
ける。すると、火口部から盛んに灰と煙が吹き上がり―――ついに、わずかだが溶岩が吹  
き上がる。  
「噴火……!?」  
「火山の置石を戻していない状態の上、ギンガ団が爆弾を使ったことで、もしかして……」  
 噴火を始めたことによる地震が発生し、二人の顔色が青ざめる。が―――揺れがひどく  
なっていき、彼らの傍の壁に複数の亀裂が入る。そして―――揺れが収まると、彼らの傍  
の岩が崩れ、ハードマウンテンの内部へと続いていると思われる穴が口を開ける。  
「コウキ……」  
「……地震で、入り口が開いたってことか。巧妙に隠してはいたけど、これでは意味は無  
い……な」  
「―――行く?」  
「ああ……この状況になっている以上は、連中をとっ捕まえて抑えないと。  
 何を考えているか知らないが、また内部で爆発物を使って刺激を与えて大噴火にでもな  
ったら、とんでもないことになりかねない」  
 コウキの言葉に、ヒカリも覚悟を決めた様子で頷き、入り口へと滑り込む。  
 
 内部は人一人がやっと立って通れる程度の狭い通路である。人為的なものではなく、人  
の目に触れていない抜け穴のようなものであると推測される。  
 狭い上にかなりの急勾配の部分もあり、二人とも気をつけて進み―――約二時間ほど経  
過し、急に視界が開ける。  
 かつてコウキがバクと共に足を踏み入れたハードマウンテン大空洞部へと出たのだ。  
「ここが……ハードマウンテン内部……すごい広い」  
「ああ、大きな街も一つ丸ごと入るほどだから……  
 でも、崩落とかでポケモンも避難したのか、気配は無いね」  
 初めてハードマウンテンに足を踏み入れたヒカリは、眼前に広がる巨大な空間に目を奪  
われる。溶岩が冷え固まったと思われる起伏があちらこちらに存在しており、天然の迷宮  
と化している。広さも、コウキの言葉どおり、シンオウの大都市に匹敵するほどの巨大さ  
を誇っている。が、その広大な空間が、今は静寂に包まれている。  
 正確には、噴火活動による地響きで、空洞部全体が不気味なうなり声を上げているのだ  
が、空洞部のいたるところに以前入ったときには見受けられたポケモン達の姿がまったく  
見当たらないのだ。どこか安全な部分にでも潜り込んでしまっているのか、それとも逃げ  
ているのか……  
 が、呆然としていても始まらない。コウキは自分達は空洞部のどこら辺に位置している  
のかを、ポケッチや以前突入したときにある程度書き記しておいた地図などで確認する。  
「どう?わかりそう?」  
「うん。今崩落している入り口からの道を入ってくると、ちょうど……見えないけど真南  
の方角から出てくるはずなんだ。  
 で、今僕達が出てきたのは、南西部だ。ここをまずは一番下まで降りれば、道があるは  
ずだから……」  
 コウキはそう呟き、自分の周囲を見て、通ることのできる道があるかを確かめる。  
 ちなみに、彼らは南西部のかなり高い場所にぽっかりと開いた小さな穴から顔を出して  
おり、一歩足を踏み外せば数十メートルにわたって滑落することになる。そうすれば、硬  
い岩に叩きつけられてただでは済まない。  
 そして、確認した岩場―――ところどころに擦れた痕跡があり、ギンガ団の連中が通っ  
たと推測される―――を二人で慎重に降りて行き、平らな場所へと降り立つ。  
「さて、どうするの?」  
「あの三人を捕まえる……ただ、行き先が不明だからどうするべきか……」  
「当ては無い?」  
「……一応ある。置石があった場所……そして、ジュンとバクがヒードランと遭遇した場  
所……あの場所はおそらく、ハードマウンテンの中心部だ。  
 何かをするんだったら、そこが一番向いていると思う。火山を噴火させるために、振動  
で刺激を与えるにしろ。あるいは、ヒードランを求めているのかもしれないし」  
 コウキは彼方の高台部分にある中心部の広場に通じる穴に目をやる。周囲に人影は見当  
たらないが、あの場所に足を運ぶのは無駄ではないだろうと判断し、ヒカリと共に駆け出  
す。途中の崖をポケモンの力を借りて上り、隆起している部分にたどり着き―――  
 再び、噴火の影響と思しき自身が発生し、大きく空洞内が揺れる。  
「きゃあっ!?」  
「うわっ!」  
 二人とも悲鳴を上げ、その場に膝を付く。そして―――近場の岩が小さくだが剥がれ落  
ち、次々とひび割れが空洞の至る所に発生する。  
 
「ちょ、ちょっと……!」  
「これはぐずぐずしてる場合じゃないな……ヒカリはトゲキッスを呼んで。僕はムクホー  
クで一気にヒードランの場所まで行く。ギンガ団をどうにかして脱出しないと、こっちの  
身も危険だ」  
「わかった。トゲキッス、来て!!」  
「出て来い、ムクホーク!!」  
 コウキとヒカリが、共にポケモンを出し、その背中に乗る。  
 ムクホークとトゲキッスが揃って地面を蹴り、ふわりと宙に浮く。そして、一直線にヒ  
ードランの場所へと向かう。  
 が、彼らが地面を離れた直後に、彼らの居た場所が大きくひび割れ、崩れる。同時に近  
場から溶岩が噴出し、光ごけだけがあえかな光を放っていた空洞の中に、赤々とした炎の  
色が溶け出す。  
「コウキ……!」  
「本格的に不味いな……置石でヒードランが目覚めてたところに、刺激を与えたものだか  
ら、マグマが活発になってしまったのか……?  
 とにかく急ごう!」  
「ええ!!」  
 溶岩の熱が広がりつつある空間を切り裂き、二つの翼が高台の穴へと吸い込まれる。  
 短い通路をポケモンに乗ったままに通り抜け、そのままヒードランの居るであろう広場  
へとたどり着き―――  
「あっ!?」  
「こ、こいつら!?」  
 コウキとヒカリの視界に飛び込んできたのは、四名の男。無論―――コウキが夜中にや  
りあったギンガ団残党だ。だが一人多い。  
 コウキの姿を認め、三人が驚いた顔になる。その彼らを厳しい目でにらみつけながら、  
コウキとヒカリも地面に降り立つ。  
 だが、残りの一人は、あまり動揺の気配は無い。代わりに、鋭い敵意を二人に向けてい  
る。どうやら―――リーダー格か。  
 長い銀の長髪と、鋭い三白眼。ギンガ団のマークを刻んでいるレザースーツにプロテク  
ターを身に付け、殆ど軍人のような出で立ちと物腰だ。  
「……偉大なるギンガ団の妨げになった少年か……見たことがある。  
 サターン様と行動を共にしたときに……あの湖で」  
 その男は、静かに冷たく呟く。その声に、コウキとヒカリの背中が冷える。明らかに、  
他の三名とは毛色が違う。  
 が、コウキも多くの戦いを経て来た猛者ではある、背中にヒカリをかばいつつ、強い視  
線を向ける。  
「お前達、何をするつもりだ!?」  
「決まっている……ヒードランの捕縛だ。  
 ギンガ団復興の為には、強い力が多く求められる。空間を統べるものパルキア、時間の  
操者ディアルガ、世界の狭間に住まう虚ろなる龍王ギラティナ、心つかさどる3つの魂。  
 他にも、この山に在りし灼熱の王ヒードランをはじめ、暗黒の神ダークライ、月の化身  
クレセリア、巨人王レジギガス等、まだまだ世界には伝説と呼ばれるものたちが居る。  
 そして、奇跡を生み出してきた、幻のポケモン達……それらの力を束ねて、我等は再び  
栄光を取り戻す。そうなれば……アカギ様もお戻りになられ、元通り、我等は世界を、そ  
して銀河を手にすることができるのだ!」  
「そのために、再び爆弾を使ったのか……そうすれば、ヒードランが現れると踏んで!」  
 
「察しがいいな。だが、そこまで解っているのならば……」  
 男はコウキの言葉に頷いきつつそこまで述べると、懐からモンスターボールを取り出し、  
開放する。表情が鋭くなり、殺気が膨れ上がる。  
「貴様達にこれ以上邪魔はさせん!!  
 出て来い、クロバット、メタグロス!!お前達、その女の相手をしておけ!」  
『はっ!』  
「ヒカリ!」  
「大丈夫!!負けるもんですか!!コウキの背中を守らせてもらうわよ!」  
 全員がモンスターボールからポケモンを放ち、それぞれ対峙する。  
 コウキがギンガ団残党リーダーの男と、ヒカリはそれ以外のギンガ団残党とにらみ合う。  
 コウキの前にはムクホークとムウマージが姿を見せ、ヒカリの前にはサーナイトとエン  
ペルトが睨みを利かせている。  
 ギンガ団の三名も、ドラピオン、ギャラドス、フライゴンを取り出す。どうやらこちら  
が本気の手札らしく、気迫が違う。  
 コウキとヒカリが背中合わせにポケモンを展開し、それを4名のギンガ団残党のポケモ  
ンが取り囲む格好になっている。  
「我等が怨敵よ、この場で叩き潰させてもらうぞ!!アカギ様に代わり、粛清する!」  
「やってみろ!!お前達こそ、今度こそぶっ飛ばしてやる!!」  
 

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