…目の前に、天井が見える。白い、白い天井。  
「…ここは…」  
体を、ゆっくり起こす。  
「…僕は…」  
そして、コウキは清潔感のある部屋でふかふかのベッドで寝ていることを確認する。  
「…。  
 確か、僕は…」  
思い出した。そうだ、大爆発を自らに発動した。確かにそのはずだ。  
…その時に喰らったはずのダメージは、感じない。  
それより、なぜ自分がここにいるのか、ここがどこなのか、その理由を知りたかった。  
 
ドアが開く。可愛らしいナース姿の女性が近付いてくる。  
「あ!起きられましたか?」  
「…あなたは?」  
「ナナです。  
 私はナース、ここは病院です。」  
「ここは、病院…なぜ僕はここに?」  
「…なぜって…  
 あれだけ、体に負荷がかかってダメージを負ってて、あのままだったら死んでたんですよ?」  
わかってはいたが、  
いざその現実を知らされると、やはり平常心ではいられない。  
「でも、もう大丈夫です。  
 数週間安静にしていれば、元通り歩けるようになりますよ。」  
「数週間!?」  
「ええ。お忙しいとは思いますが、ナナカマド博士からも、ゆっくり休め、と。」  
「…はあ。数週間か…  
 だれか遊びに来ないかなあ…」  
「まあ、面会が可能になるのも一週間は先になりますけどね…」  
「そ、そんなあ…どうにかならないんですか?」  
看護婦が困った顔をする。  
コウキも、面会をさせる権限のないナースに言っても困らせるだけ、ということには気づいたので  
これ以上は何も言うことはなかった。  
「では、点滴をしますね。  
 …あのー…」  
「は、はい?」  
今度は何かを頼むような目で見る。  
 
「あの、サイン下さい!」  
「は?」  
「ポ、ポケモンリーグのチャンピオンの担当になれるなんて、めったにないチャンスですから!  
 さ、サイン下さい!あと、写真も!」  
コウキはしばらく自分の立場を忘れていた。  
チャンピオンになってからポケモンリーグには一度も足を運んでないが、自分はチャンピオンなのである。  
「えへへ、ありがとうございます!」  
とりあえず、サインとツーショットに快く応じ、点滴を打ってもらった。  
そして、今後の予定と、また何かあったら読んで下さいと言い残し、部屋を出て行った。  
 
ふう、とため息をつく。  
暇だな、と感じつつ、点滴の残量がゆっくりと減っていくのを目に移す。  
ふと、コウキの眼から涙が出てきた。  
「一週間、か…」  
ヒカリに会えない。そんな寂しさが募り、涙が流れる。  
コウキは、強い心を持っている半面、寂しがりで、人恋しい性格でもある。  
Jと戦う日の朝にも、ヒカリに甘えていたのは、優しいゆえの副産物であるこの性格がそうさせたのだ。  
「はあ…」  
ため息が自然と出る、が、そのため息で気付いた。  
 
(ヒカリのため息も、こういう寂しさから来たんじゃないのか…?)  
ヒカリがため息をしていた原因は、まだはっきりとは分かっていない。  
ヒカリがおびえる悪夢は、あくまでそれを具現化させたものにすぎないからだ。  
だが、その原因が、ようやく分かった気がした。  
(何かが原因で、ヒカリをさびしがらせている…  
 でも、僕は努めてヒカリのそばにいるように意識してたし、  
 そもそも、そんなこと意識しなくたって離れて行動することがなかった。)  
コウキが考えを巡らせている間に、部屋のドアが開いた。  
 
「あれ?今ナースの人に来てもらったばかりなんですけど…」  
後ろ姿のまま、後ろ歩きで入ってくる青く長い髪のナース。  
「…。」  
「あの、ナースコールも別に押してないんですけど…」  
「コウキくんの心が、ナースコールを押してましたよ?」  
「え?」  
後ろ歩きのままコウキに近づいてくるナース。  
その青く長いきれいな髪、そして、コウキのよく知るはずの雰囲気をたたえていた。  
「…まさか…」  
くるっと体を半回転させ、腰を九の字に負けて顔をコウキに向けた。  
ナース姿のその女の子は、まぎれもない、コウキの愛しの女の子、ヒカリだった。  
 
「ヒ、ヒカリ!」  
確かにコウキはヒカリに会いたかった。ヒカリの言う通り、心の中でナースコールを押していた。  
…ただ、ヒカリは、こんなことを言い出した。  
「いいえ、あたしは、ヒカナースです。この病院で働く清純ナースの、ヒカナース、です。」  
「…ひ、ひかなーす?」  
ヒカリとナースを適当にくっつけただけの、ネーミングセンスゼロの異名である。  
とりあえず、いつものヒカリじゃありません、ということを言いたいのだろう。  
コウキもあっけにとられて、会いたい女の子に会えた喜びが、なんかうやむやになってしまった。  
「はあ、で、そのヒカナースが僕に何の用ですか?」  
「ナースのお仕事は、患者の世話をしたり、治療したりすることです。」  
「後者は医者の仕事だと思うんだが。」  
何気に突っ込んでみる。  
ヒカリのナース姿は非常に可愛く、コウキの頬も自然と赤くなるが、どこかリズムを狂わされる。  
「で、僕のどこを治療するんですか?ヒカナースさん。」  
「いいえ、治療するのはあなたです、コウキくん。」  
「…はあ?」  
なんかもうわけがわからない。漫才をしている気分だ。ツッコむ事しかできない。  
ヒカリはこんな子じゃなかったはずだ。誰だこいつは?本当にヒカリか?  
 
…ヒカリだ。  
自分の看護服のボタンを、1つ1つ取り始めた。  
そして、成長期に入った膨らみかけの胸をあらわにする。  
「最近、心臓が苦しいんです。どんな病気か分からないので、脈拍を見て下さい。」  
もう何をさせたいかはコウキにもわかった。  
だが、なぜがボケずにはいられない。  
「えっと、聴診器を貸して下さいな。  
 もしくは、手首で脈を図りたいのですが。」  
「いいえ、あなたの手であたしの心臓のドキドキを見て下さい。」  
やっぱり。  
案の定だ、やれやれとそう思っていると、ヒカリからコウキの手を持って乳房に運んだ。  
「!!」  
わかっていても、わかってはいたんだけど。  
それでもドキドキする。心臓が高鳴る。  
なあ、ヒカナースさん。心臓がおかしくなってるのは、君じゃなくて僕の方なんだけど。  
 
…ヒカリ、おっぱいが大きくなった気がする。だからドキドキしてるのかな。  
ヒカリも、女、なんだよな、女になりつつ、あるんだよな…  
 
ヒカリも目を閉じて、コウキの手の感触を感じている。  
コウキの手のぬくもりを、少しでも多く感じ取れる様に、自分の胸に触れるコウキの手を意識する。  
「…。」  
「…ヒカリ?」  
さっきから何も動かない。  
ボケることも忘れて、コウキがヒカリに呼び掛けると、口を開いた。  
 
だが、ヒカリはヒカナースのままだった。  
「あれ?コウキくん、様子が変ですよ?病気かもしれませんね。ちょっと見てみましょう。」  
「見るってどこを…わわっ!」  
ヒカリは布団をガバッと剥がすや否や、ズボンとトランクスをいっぺんにずらす。  
そして狭い空間から解放されたようにぴょこんと顔を出すコウキの陰茎。  
無論、ヒカリのおっぱいの影響により、カチカチに膨れ上がっている。  
コウキは声も出せず、ただただ固まっていた。  
 
「ふあ…」  
ヒカリが驚きつつコウキのそれを眺めているが、すぐさまこんなことを言い出した。  
「いけません!」  
「…へ?」  
「こんなに腫れ上がっています!これは病気ですよ、コウキくん!  
 今すぐに治さないといけません!」  
「…はい?ほっといても治るけど…」  
ヒカリが慌てるように、真面目そうにそう言う。コウキもつられてボケを忘れて真面目に答えた。  
だが、ヒカリはさらに続ける。  
「だめです!これは病気です!今すぐヒカナースが治してあげます!」  
「な、何を…ま、まて!止めて!  
 ここは病院だよ!」  
何とヒカリは、コウキの陰茎を口にくわえた。  
それだけならいつも夜にはヒカリがやってくれることではあるが、今は昼で、なんといってもここは病院である。  
そしてヒカリが、モノを咥えながら言い放つ。  
「病院は、病気を治すところです!」  
「そりゃそうだけど!ヒカリ!何か違うぞ!」  
「違います!ヒカリじゃありません!ヒカナースです!」  
「違うのはそこじゃなーい!」  
 
最初は反論していたが、次第に反論する余裕がなくなってきた。  
その快楽に、体がしびれてきた。  
「どうですか?楽になりましたか?」  
「ヒ、ヒカリ…」  
ヒカリはエッチが本当にうまくなった。  
ハードマウンテンではかなりぎこちなかったが、今ではプロのような手つき、舌の扱いで、  
コウキを快楽の絶頂へと運んで行く。  
「それじゃ…これはどうですか?」  
「ヒ、ヒカリ!?」  
陰茎をしゃぶっていた口を離し、胸の真ん中に陰茎を押し当てる。  
そして、まだパイズリをするには十分ではない発達途上の胸を、必死になって寄せて陰茎を挟む。  
挟むというよりは、擦り付けると言った感じだが、  
コウキはヒカリの懸命な姿を見てまた感じた。  
「き、気持ちいいよ、ヒ、ヒカリ…」  
「あ、あたしは、ヒカナース…です…」  
「いいや、君は、僕の大好きな女の子、ヒカリだよ!」  
 
ヒカリが十分にパイズリを行った後、また陰茎を口に戻す。  
そろそろコウキの陰茎に限界が来ていた。  
「だ、出すよ、いい?」  
「い、いふれも、いいれふよ!」  
口にモノをくわえており、うまくしゃべれない。  
だがコウキは何を言ったかちゃんとわかっていた。それに安心して、気がゆるんで、  
 
一気に出た。  
コウキが何日間眠り続けていたかは分からないが、相当溜まっていたのは間違いない。  
ヒカリも何とかすべて飲み込もうとするが、あまりの量に口からあふれだした。  
「んんっ!んんんん!」  
「うあ、ヒカリ…」  
長い間縛られていたものが、すべて解き放たれた。  
そのあまりに強い解放感と反動による体のしびれで、ベッドにあおむけに倒れこむ。  
ただ、陰茎はまだまだ元気にびくびくと脈を打っている。  
 
口からあふれた精液を指で口に運び、ようやくすべての精液を飲み干す。  
…すると、まだまだ元気な陰茎に眼前まで顔を寄せ、息を吹きかける。  
「うふ、まだまだ元気ね。」  
「うるさいな。」  
「とりあえず、患部のはれはおさまりましたね。  
 病気の元だった毒も、ある程度吸い取りましたから。」  
「毒って言うな。その毒を、ヒカナースが全部飲みこんだだろ。」  
「ええ、だから、今度は…あたしが病気になっちゃいました…」  
「へ?」  
「性欲を追い求める…病気です…」  
「…はあ!?」  
「私の病気を治すには、コウキくんに注射をしてもらわないといけません…」  
とろんとなったヒカリの目。そんな目でコウキを見つめる。  
そして、何を思ったか、立ち上がる。そして、  
 
「…わっ、ま、まさか!」  
「うん、…そのまさかだよ、コウキ!」  
「コ、コンドームなんてないぞ、今は!ていうか、口調が元に戻った!」  
「そんなものいらないよ、コウキ!」  
スカートを脱ぎ、そしてゆっくりとショーツも脱ぎ始めた。  
まだまだ子供っぽいその股間は濡れていて、あきらかにコウキのモノを求めていた。  
注射の意味を、コウキはしっかりと理解した。  
 
だから、コウキはかたくなに拒否する。  
確かにプロポーズはした。だが本当に結婚するのは最低でも15才になってから。  
それまでにもし何かあれば、2人とも不幸になり、周りにも迷惑をかけ、大変なことになる。  
だから、ヒカリの中には絶対に出さない、そう決めていた。  
現に、225番道路でもハードマウンテンでも、コウキは射精寸前で陰茎を抜いていた。  
コンドームを手に入れてからは、必ずそれを着用していた。  
ヒカリもコウキの思いは重々承知していた。だが、それでも彼女は行動を止めない。  
 
「やめろ!絶対にダメだ!」  
「…あたしが…いや?」  
「そ…そんなんじゃないけど…」  
といったところで後悔。嘘をついてでも嫌だと言えば、ヒカリもあきらめたかもしれなかった。  
「…ヒカリ?」  
ヒカリがすすり泣いている。コウキが慌てる。  
「ごめん、きつく言いすぎた…」  
だが、ヒカリは首を横に振る。  
 
「そんなので泣いてるんじゃない、あたしは、怖かった…  
 だって、1週間、コウキはずっと目を覚まさなかったんだよ!?」  
「え…」  
「あんなにダメージを受けて、死にかけて、あたしが!どれだけ心配したか!」  
「ヒカリ…」  
「…あ、ごめん、絶対に、心配かけたって、言わないつもりだったのに…  
 あたしね、コウキが目を覚ましたってナナさんから聞いた時、飛び上がって喜んで、すぐに駆けつけて…  
 でもね、あたしがそこで泣きついたら、コウキ、優しいから、反省するに決まってる…」  
「だから、あんな風に…」  
ヒカリがあっけにとられるようなセリフを言ったのは、そのためだった。  
ヒカリに会えた嬉しさが、どこかうやむやになってしまったが、  
ヒカリがコウキに会えた喜びをうやむやにしなければ、心が持たなかった。  
 
「ごめん、泣いちゃった。大丈夫、もう泣かない。」  
涙を拭うヒカリ、コウキに向かって笑顔を見せる。  
…が、また涙が頬を伝って流れてきた。  
「…。…寂しかったんだよ!あたしは、ずっとさ!」  
コウキに泣きついてくる。やはり、涙は止められない。  
「ごめん、やっぱり、あんな無茶するんじゃなかった。  
 覚醒した僕が、戦うことを止めようとはしなかった…」  
「ちがう!  
 コウキは、あたしのために戦ってくれた!  
 それで死んだとしても、あたしのためだもの、…それでも耐えられはしなかっただろうけど。」  
「じゃあ、寂しいって…なんで…」  
「…。  
 今なら、言えるかな。」  
「え?」  
ヒカリはコウキに抱きついていたその腕を離し、少し距離をとってゆっくり口を開く。  
「以前聞いたよね、あたしが苦しんでいる、理由。  
 どうしても言えなかったけど、今なら、言えると思う。…でも…」  
「でも?」  
「コウキ、あたしを、蔑んだりしない?怒ったりしない?  
 …あたしの想いを、受け止めて、くれる?」  
「…。」  
ヒカリの懇願の目。  
コウキは大きくうなずき、そして、ヒカリの想いを受け止める覚悟をした。  
…たとえそれが、自分の意思を挫くものであろうとも。  
 
「…あたしは、コウキがほしいの。」  
「僕が…欲しい?」  
「コウキが、欲しい。そして、あたしのすべてをコウキの物にして欲しい。」  
「それって、まさか…」  
「コウキの…その…えっと、あの…」  
急に顔を赤くし、どぎまぎさせる。ただ、コウキには何を言いたいかはわかった。  
 
「中に、出してほしいって事?」  
「…。」  
「それで理由が言えないって言ってたんだね。  
 僕のことを優しい人間だと思っているからこそ、ヒカリの事を考えて100%拒絶すると決まってると。」  
「…。」  
ヒカリが中に出してほしいと言ったことは1度もない。  
出してもいい、とは言ったことはあったが、コウキがかたくなに拒否をした。  
それ以来、ヒカリはその願望を口にすることはなかった。だが…  
 
「ずっと、そう願ってた。  
 最初は、しょうがない、って思ってたんだけどね。」  
「…どう言う事?」  
「でも、不安だったの。あたしの一番悪い癖、悪い方に、悪い方に考える癖。  
 そんなことはあり得ないのに、想像してしまったの。」  
「何を?」  
「コウキが、あたしと本当の意味でつながらない理由。  
 …コウキは、あたしを大切に思っているから。それはわかってる。だけど…」  
ヒカリが言葉を詰まらせる。  
正直、口にすべきではないと思っていた。  
だが、コウキの真剣なまなざしを見て、言うべき時だと覚悟を決めた。  
 
「それでもコウキは、私の前からいなくなろうと思ってるんじゃないかって…」  
「なっ!?」  
「だから、あたしとつながろうとしないんじゃないかって。  
 もっと別の人に、コウキののものをあげたいんじゃないのかって!  
 コウキは多分、人生でコウキのものをあげるべき人間はただ1人って決めてる気がするから…」  
「ヒカリ…」  
「だから、あたしじゃない、別の女の人を選ぶんじゃないかって!」  
 
人生はまだまだ長い。いくらヒカリが好きだと言っても、2人ともまだ子供。  
大人になってそういう人を決めるものだから、今の2人の関係は一時的ではないのか、そう感じでいた。  
コウキはそんな人じゃない、と分かっていながら、それでもヒカリは怖かった。  
 
「…。」  
「あたし、酷いよね。あたしのために、プロポースまでしてくれたコウキに、  
 一方的にありもしない疑いを掛けて…」  
「でも、ちゃんとあり得ないって思ってくれてるんだろ?」  
「それでも!心の片隅でそんな想像をすること自体が!コウキの彼女として失格なの!  
 あたしのために、あれだけ優しくしてくれるコウキに、そんなひどいことを考えてたのよ?あたしは!」  
ヒカリが泣き叫ぶ。  
コウキは、何も言えなかった。  
「すべてあたしが悪いの!コウキは何も悪くないのに!  
 中に出してほしいなんて言った願望も、全部あたしがそんな酷い事を考えていたから!  
 叱ってよ!殴ってよ!こんな酷い人間を、軽蔑してよ!」  
 
沈黙が流れた。  
聞こえるのは、ヒカリがすすり泣く音だけ。  
すべてを言ってしまい、ヒカリは後悔した。黙っておけばよかったのに。  
これですべてがおしまいになった。この後コウキは、別れようというか、二度と口をきかなくなるだろう。  
本当にコウキは、自分から離れていってしまう。  
…悪夢が、現実に、なる。  
 
「あれだけ言わないと言ってた理由、話してくれたね。」  
「…。」  
「ありがとう。」  
「…。」  
これでありがとう、と聞くのも、最後になるのかな。  
コウキも、これであたしと離れることに何の未練もないだろう。そう、感じた。  
 
「そこまで僕を信頼してくれてる女の子を、僕は一生手放しはしない。」  
「…え?」  
コウキが笑いをこらえられず、笑い出す。  
「だって、めちゃめちゃひどいこと言ってるじゃん。  
 そんな酷い事、ふつう誰だって言えないよ?」  
笑いながら言う。  
わざとじゃないのか、自分の罪悪感を紛らわせるためか、ヒカリはそう思っていた。  
だが、長い事コウキと見て来たヒカリ。この笑いはわざとじゃない、そう感じた。  
 
「なんで…あたしは、こんなに酷い事…」  
「だからこそさ。  
 普通に適当に付き合ってたら、理由なんて言わずにセックスレスだといって普通に分かれると言ってる。  
 ていうか、そんな事言ったらぶん殴られると思って、言おうにも言えないよ。」  
「だから、殴っていいって、言った…」  
「違うね。逆だ。  
 殴らないと信じたからこそ、殴れと言ったんだ。」  
「え…」  
「僕が優しいと信じているからこそ、酷いとわかってても本当の事を言えたんだ。  
 本当のことを言うべきだと思ったんだ。…信じているから。」  
ヒカリははっとなった。  
そうだ。確かに酷い事を言いはしたが、嘘は言っていない。本当の事をまっさらに話した。  
別れたいから嘘を言ったとか、そんなんじゃない。コウキに、本当のことを言いたかった、それだけだった。  
「違うか?  
 確かにそんな風にヒカリは思ってはいなかったと思う。  
 でも、心の中をのぞいてごらん。…どこかに、そう思っているヒカリがいるはずだよ。」  
「…。」  
ヒカリが黙り込む。唇をかむ。  
しだいに、また涙が流れだした。  
 
「…どうして?」  
「ん?」  
「どうして、どうしてコウキはそんなに優しいの?  
 そんな風に言われたら、何も言い返せないよ…」  
「どうしてって?そんなの、きまってるじゃないか。」  
コウキは笑顔で、ヒカリに語りかけた。  
「ヒカリと、つながりたい。ヒカリの中で、僕を解き放ちたい。」  
あれだけ中に出さないように、気を配り続けたコウキ。満たされなかったヒカリの想い。  
すべての違和感が、今すべて消えた。  
「…おいで。」  
「…ううん、あたしは、抱きついたりは、しない。」  
「え?」  
コウキが怪訝な顔をする。  
今度はヒカリが、涙を流しながらも笑顔で言った。  
 
「あたしはコウキくんの病気を治す、コウキくんだけのナース、ヒカナースです。  
 ナースは、取り乱しては、いけないのです。」  
「…あれ。  
 でも、今回治療してもらうのは、君じゃなかったかい?ヒカナースくん。」  
「あ、そうでしたね。  
 その前に、治療に際してこれを飲まないといけません。」  
と言って取り出したのは小さな紙箱。  
その中にある錠剤を取り出して飲むのだが、  
 
「それ…まさか…」  
「うん、とりあえずこれで、赤ちゃんは大丈夫…」  
ヒカリが取り出したのは避妊薬、通称「ピル」だった。  
それを水と一緒に飲みこんだ後、コウキが恐る恐るたずねる。  
「えっと、僕がもし拒否しなかったら、それを飲まずに、中に出してたって事?」  
「うん、なんか、コウキが目を覚ました喜びで、思わず赤ちゃんが欲しくなっちゃってさ…  
 もう、飲まなくてもいいやって…」  
とんでもないことを言い出すヒカリ。  
コウキは優しいからこそヒカリを怒ろうかと思ったが、  
それ以上にそんな事を考えるヒカリが愛しく見え、そんな気もなくなってしまった。  
 
「やれやれ、まったくお前ってやつは。  
 完敗だ。」  
「えへへ…ごめんなさい。」  
「…だけど、やっぱりちゃんとけじめをつけないといけない。  
 いい?今日だけだよ?」  
「えー?これからも、もっと中に…」  
ヒカリは笑って言い返したが、コウキの顔は真面目そのもの。  
今日のことに気を良くして調子に乗ってたら、今後万が一、ということもあり得る。  
 
「うん、わかった。今日は、特別、だね?」  
「ありがと。ヒカリのそんな素直なところが、僕はすっごく大好きだよ。」  
「うん…」  
「そんなヒカリには、ご褒美。  
 さっき結構口の中に出しちゃったけど、今日だけは、たくさん、何度でもヒカリの中に出してあげるからね?」  
「うん!」  
中出しは今日だけ。だから、満足するまで思い切り出してやろうと思った。  
終わったころには、僕はもう精根尽き果ててるだろうな。  
「それじゃ、お注射開始ィ!」  
 
コウキは仰向けに寝たまま動くことはできないので、そのままの体勢、すなわち騎乗位でつながる。  
ヒカリはすでにさきほどのフェラチオで感じたせいか、濡れていた。前戯がなくてもスムーズに入る。  
もっとも、コウキはJとの戦いでのダメージからまた回復していない病み上がり状態のため、  
体を激しく動かす体力はないため自分から前戯をする体力はない。  
今回は、ヒカリにすべてを任せることにし、腰を打ちつけるヒカリをただ見つめる。  
 
「気持ちいい?」  
「んあ!久しぶりの、生だよお!」  
コウキはまだ幼いため、自動販売機という販売手段を知るまではコンドームを売ってもらえなかった。  
なので、生で限界ぎりぎりまで行為をし続け、出る直前にヒカリから引き抜く、という形をとっていた。  
コンドームを買ってからは、1度も着用を忘れたことはない。  
 
コウキは、できるだけヒカリを気持ち良くするために、我慢する。  
幸いヒカリが動いてくれるためにコウキは動く必要はない。持ってる力すべてを我慢に使う。  
「んあ!ああん!いい、いいよお!」  
「ヒ…ヒカリ…」  
我慢は、2ターン何もせずに、食らったダメージを倍返しにする技。  
コウキの陰茎からも、我慢をしたら2倍の精子が出るのだろう。ふと、思った。  
(中だししていいとは言ったが…本当にいいのか?  
 薬を飲んだとはいえ、もし、本当に…)  
今更ながら戸惑う。  
そうだ、今ならまだ間に合う。今なら引き抜いてもいい。  
 
しかし、今日を逃せば、またずっとヒカリに中だしすることを拒否し続けるだろう。  
そんな事をすれば、ヒカリをまた絶望の淵に陥れる。二度とヒカリを悪夢から救えない。  
中出しをすることが、ヒカリを苦しみから解放することになる。ヒカリを救うことになる。  
そう、つまり、ヒカリを守ることになる。  
 
覚悟を決めた。そんなとき、コウキの眼が変色した。あの、赤い瞳に。  
 
「…ちょ!?コウキ!?」  
ヒカリが腰を動かしつつも、驚く。  
「ヒカリ!俺はヒカリを守る!ヒカリのために!ヒカリを救う!」  
「いや、そうじゃくて!今覚醒する必要ないでしょ!?」  
「ヒカリ…!…あ、あれ?」  
コウキの全身から、一瞬力が抜けた。  
コウキの眼も、いつもの優しい目に戻る。ヒカリは腰を動かし続けつつ、  
「だ、大丈夫?」  
「な、なんか、覚悟を決めたとたん、強い意志に意識が支配されて…  
 一応意識はあったけど、…前にもこんなことがあったような…うあっ!」  
「そ、そろそろ限界?」  
「う、うん!出しても、いいよね!」  
「うん!お願い!コウキのすべてをちょうだい!そして、あたしのすべてをあげる!」  
「ああ!ヒカリは、僕だけの、もの…うあああっ!」  
 
解き放たれた。  
コウキの陰茎を覆う薄いゴム状の膜は、無い。  
コウキとヒカリの、正真正銘、完全につながった部分から、コウキのモノがどっと流れ出る。  
コウキのモノが、ヒカリの中に、たくさん、たくさん、入っていった。  
 
「…はあ…はあ…騎乗位って、シロナさんからきいていたけど、本当に、すごいね…  
 …コウキ?」  
(すう…すう…)  
「…んもう、何度でも出してあげるって、言ってたのに…」  
コウキが眠っている。  
行為の前から体力がほとんどなく、1回の行為ですべて使い切ってしまった。  
そもそも、大ダメージを受けて入院して、先ほど起きたばかりの患者にすることではない。  
ヒカリはコウキの横に寝転がり、微笑む。  
 
「でも、大満足だよ。このお腹の中に、コウキのモノが、入ってる。  
 …あたしの、一番の、宝物。」  
クスクスと笑う。その笑顔にはもう迷いはない。これで悪夢に苦しめられることはもうないだろう。  
「コウキは、あたしから、離れない。あたしを、一生、守ってくれる。  
 あたしは一生、コウキに甘えるね。そして一生、コウキを甘えさせて、あげるね。」  
ヒカリはふと時計を見る。  
時間は12時57分を指していた。  
「いけない!1時にナースターミナルに戻らないといけないんだった!  
 ご、ごめんね、コウキ!」  
自分の仕事場に戻るため、眠っているコウキにさよならを言うヒカリ。  
とおもったが、さすがに大事なところを丸出しのまま行くのはまずい。  
「…コウキは、あたしだけのもの!」  
大急ぎでズボンを元通りにし、掛け布団を元に戻して、猛スピードで部屋を出て行った。  
コウキに起きて見送ってほしかったが、そこまでのわがままを言う時間はなかった。  
 
しかし、なぜこの少女はナースの服を着てナースの仕事をしているのだろうか。  
結論から言うと、コスプレではない。  
 
午後7時。  
コウキがようやく目を覚ます。白い天井が見える。  
その1秒後、おなじみの顔がいきなり視界に入ってきた。  
「どわっ!」  
「お・は・よ!コウキ!」  
「は・い・よ、ヒカリ…」  
「まったく、いつになったら起きるのか、心配してたよ!」  
「まったく、いつになったら成長するか、心配してるよ…」  
やれやれと言った様子で、体を起こす。  
よくみると、ヒカリが何か持っている。  
 
「…晩ごはん、たくさん食べて、体力つけて、早く元気になってね!  
 食う寝る子供は、よく育つ!たくさん食べたら、元気になれるよ!」  
「…ヒカリはもうちょっと内面をなんとか…  
 体は女になりつつあるけど…てか、女にしただろ!昼に!」  
「ヒカリは大人の階段を上りつつあります!」  
「…。」  
ついていけない。もうそんな事はほっといて、ヒカリの晩御飯をありがたく頂くことに。  
大きめのコガネ風お好み焼きを、ヒカリが食べさせてくれる。幸せ。  
 
しかし、いつまでも何も聞かないわけにはいかない。  
Jとの戦いで気絶した後、いったい何があったのか、聞いてみた。  
「なあ、ヒカリ。  
 …あのあと、Jと戦った後、何があったか、聞かせてほしいんだ。  
 …僕が今日起きるまでの、すべてを。」  
「うん。ちゃんと全部話すよ。  
 それじゃ、ちょっと長くなるけど…」  
ヒカリが一呼吸を置き、話し始めた。  
 
「まず、あたしが発動した技マシン30。あれは、直前にナナカマド博士から渡されたの。  
 コウキがシロナさんに呼ばれてる間にね。」  
「なんで博士はマシンの事を僕には言わなかったんだろ。」  
「技マシンの正体を知ったら、きっとあたしだけを脱出させようとしたからじゃないかな。  
 危険なJとの戦いに、あたしを巻き込まないために。」  
「で!あの技マシン30、あれは一体何だったんだ?  
 技マシン30はシャドーボールのはず、なのになぜ、あんな不思議な事が?」  
コウキは技マシン30の発動直後に気絶したが、自分とヒカリの体が光ったことは覚えていた。  
 
「あの技マシン30はね…テレポートなの。」  
「…は!?」  
「昔の技マシンは、今の技マシンで覚えられる技とまったく違っていたの。  
 種類も、92種類じゃなくて50種類だったの。知らなかったでしょ。  
 時代の流れで、次第に作られる技マシンの中身が2度3度変わっていったの。例外もあるけど。」  
「へえ…」  
「昔ナナカマド博士がタマムシ大学にいた時に、持っていたものだったんだって。  
 今となっては絶版マシンだけど、ちゃんと使えるの。」  
これで合点が行った。  
つまり、テレポートで機内を脱出し、外に出ることに成功したのだ。  
 
「そういえば、Jの乗ってた機体は…」  
「あのときJの部下が言っていた通り、爆発したわ。機体は粉々、瓦礫の山。  
 ただ、爆発の前に安全圏に逃げ込んだから、あたしもコウキも、無事だった。」  
「じゃあ、ポケモン達は…」  
「それが、遺体も、ポケモンも発見されなかったの。  
 いまもJの行方は分かっていないわ。」  
ちなみに真相はというと、ポケモンのカプセルが入っていた、そしてJと戦っていたあの部屋。  
あの部屋そのものに機体とは別に動力が付いており、脱出ポッドになっていた。  
爆発直前にロケットのようにその部屋そのものがジェット噴射で飛んで行ったが、  
ヒカリ達にそれを知る術はない。  
 
「とりあえず近くの岩場に逃げ込んで爆発をやり過ごして、  
 幸いすぐそこにジュンサーさんがいたから来てもらったんだけど、コウキは本当にぼろぼろだった。」  
「頼むから泣くなよ。」  
「うん…」  
涙が出そうになったが、泣いたらコウキに迷惑がかかる。何とかこらえた。  
「ヘリを使って大急ぎで病院に急行したの。  
 …本当に、もう少し遅かったら、危なかったんだって。」  
「そうか、…無茶しすぎたかな。」  
「うん、無茶苦茶し過ぎたよね。」  
「フォローは?」  
「ないよ。」  
「…ごめんなさい…」  
漫才のようなやり取りが続いた。  
 
「それで、とりあえずは容体は安定したんだけど、コウキは目を覚まさなかった。  
 だから、当分は面会謝絶。少なくともコウキが目を覚まして、しばらくはね。  
 目を覚ませばもう安心だったらしいんだけど、それまでは予断を許さない状況だったの。  
 だれも部屋にいない時も、心電図を常にナースターミナルでモニターしてたの。」  
「え?心電図を?…あ。」  
そう言われた瞬間、胸のあたりに違和感を感じた。  
そういえば、下は脱がされたが上はまだ脱がされていない。  
パジャマのボタンを1つ外して下着のシャツの襟を広げると、何かが貼られていた。  
ついでにそこからなにか白い線がつながっている、おそらくこれが心電図につながっているのだろう。  
「でも!あたしはね、コウキに会えないのがいやだったの。  
 だから何度も病院側に掛け合ったんだけど、病院関係者以外はダメだって。」  
「…まさか…」  
「そう!だったら、病院関係者になればいい!」  
「はあ!?んな無茶が通るか!」  
「へっへ〜、実はね、この病院のオーナー、シロナさんなの!」  
「シロナさんが!?」  
「実はね、ここは病院であり、孤児院でもあるの。子供たちのために、シロナさんが建てたんだって。  
 そしてそのシロナさんが、院長にお願いして、あたしの要望を通してくれたの!  
 シロナさんに、あたしのためにコウキ自身がJと戦ったことを話したら、力を貸してくれたんだ!」  
「でも、ヒカリはそんな資格や免許は持ってないはず…」  
「うん、だから、仕事内容はもっぱら掃除とかの雑用。  
 医療、食事面には一切携わらないという条件で、働かせてもらうことになったんだ!」  
驚いた。  
そんな事が、自分がのんきに寝ている間に起こっていたのかと。  
「院長も、誰かがコウキのそばにいた方が安心できるって言ってたし、  
 普通のナースにはない長所、コウキに付き添い続けるのを苦にしない、  
 むしろ楽しむことができるあたしの存在には、すごく助かったらしいの。  
 他人のそばに居続けるのは、ハッキリ言って大変らしいからね。」  
「ハハハ、そりゃそうだ。」  
「とはいえ、あたしだってずっとコウキと一緒に入れるわけじゃなかった。  
 病院関係者である以上、最低限の仕事はしてもらう!ってさ。  
 各部屋の掃除、蒲団の架け替え、慣れない仕事でくたくただったよ〜。」  
「…。  
 僕のために、そこまで?」  
「もう、そんな顔しないで!コウキに会えない苦しみと比べたら、全然大したことないんだから!  
 それに、やってたのはだれもいない部屋や、コミュニティルーム、廊下とかの掃除。  
 患者さんと直接携わる仕事はなかったし、精神的には楽だったよ。  
 人とかかわるのは、大変らしいから。」  
「へえ…」  
いろいろ貴重な事を聞く。病院とは、そういう場所なのである。  
病気に対するストレスを受ける患者に、対応しなければならないからである。  
 
「で、コウキのへやの担当もあたし!」  
「…あれ?でも確か、ナナさんって人が担当じゃなかったっけ?  
 病院って、1部屋に2人担当が付くの?」  
「他の病院がどうか知らないけど、ここは1部屋に担当は1人だよ。  
 コウキの場合はあたしの存在に考慮して、特例にしてもらったんだ!  
 医療、食事面はナナさん、掃除とか雑用は、あたしがやってたんだ!」  
「そういえば、確かに俺が起きた時にナナさんは点滴用具を扱ってたな…」  
…ふと、思った。  
 
「…なあ、清拭はどうしたんだ?」  
ふと気になった。  
もしヒカリ以外に大事な部分を見られたら、ヒカリに申し訳ないというか、自分の心がなんかこう…  
「大丈夫!  
 清拭もぜーんぶあたしがやったよ!」  
「ホント?よかった…」  
安心する。  
自分は、ヒカリだけのもの、そして、ヒカリは自分だけのもの。  
ヒカリは患者と直接かかわってはいないと言ってたし、他人の清拭もしていないだろう。  
これで、どこぞの馬の骨に、ヒカリを、自分を奪われずに済んだ…  
 
「いやー、本当によかったよ。  
 あたし、思ったんだ。もしこのままほっといたら、他の人にコウキの裸を見られちゃうって!  
 そのことをシロナさんに言ったら、大急ぎで院長に頼んで…あ。」  
「…なあ、ヒカリ。  
 さっきシロナさんは僕がJと戦う話に感動したって言ってなかったっけ?」  
「あ、うう…」  
「はあ…あの人らしいや。」  
よくよく考えれば、シロナがそんな話で心を打たれるとは考えにくい。  
かよわい少女の清純な願いに、心がくすぐられたのだろう。  
ヒカリの前で、くすくす笑ったに違いない。  
ヒカリも、自分のためにナースになったことは間違いないだろうが、  
(そっちの意味かい!)  
そう、強く感じた。  
 
 
…まあ、それだけならよかったのだが。  
「…ん?メールだ。」  
「病院内でポケギアを扱っていいのか?」  
「このポケギア、ペースメーカーに影響しないタイプだから。」  
最近は科学の進歩で、バリアフリーの一環でそういうポケギアも売られている。  
ちなみに、メール機能を持たないポケギアは時代遅れといわれている時代でもある。  
 
「…!」  
「どうした?ヒカリ?」  
「な、なんでもないよ!  
 …まったくもう、こんな時にメールを送らないでよ!」  
「なんだ?気になるな、見せろよ!」  
「ちょっ、コウキ!女の子のプライバシーを…」  
コウキが素早くヒカリのポケギアに手を伸ばす、  
奪い合いになったが、コウキがヒカリのポケギアを奪取し、メールの内容を見る。  
…驚愕の内容が書かれていた。  
 
『今日の課題・眠れるコウキくんに30分の授乳プレイ♪』  
 
…。  
んなんじゃこりゃあ!?  
心の中でそう叫び、表情にもそんな風に出ていた。  
 
「もう、だから見ないでって…」  
「…ここ一週間の受信リスト、同じくらいの時間に同一人物から…」  
「わーっ!わーっ!」  
 
『今日の課題:眠れるコウキくんにおま○こをしゃぶらせてあげよう♪』  
『今日の課題:眠れるコウキくんを責め立てて口内射精!』  
『今日の課題:眠れるコウキくんの前でいやらしい声と音を立てながらM字開脚オナニー♪』  
『今日の課題:眠れるコウキくんの亀頭をヒカリちゃんの秘裂に擦りつけよう♪』  
 
…。  
そして、極めつけは、もう想像に難くないが、送り主。  
 
『ヒカリちゃんの性のティーチャー・シロナ』  
 
「…なあ、一応聞くが、全部その通りにやったわけじゃないよな、な!?」  
「ううん…Jと戦う日の朝にあたしたち2人でやってた行為をその目で見てそそられたらしくって…  
 言う通りにするなら、ナースにしてもらえるよう働きかけるって…」  
「…表面上だけ、やると言っといて、何もしなければよかったんじゃないのか?」  
「そ、それが…それもちゃんと念を押されて…  
 ちゃんと指定された時間分ビデオカメラで撮影して中身を届けろって…」  
「…はああ!?  
 じゃ、じゃあ、僕たちのす、全てが…」  
「シロナさんの手中にあるって言うこと…」  
 
…その後、仕方なく、授乳プレイに励む2人であった。コウキは仕方なく寝るふりをして。  
面会が可能になる1週間後まで、毎日メールが着続けたのであった。  
「よりによって、よくまあこんな毎日いろいろアイデアが浮かぶよな…」  
「うん…」  
まあ、これを脅迫材料にされることは、ないだろうが。  
 
1週間後、容体が完全に安定し、面会、外出許可が下りた。  
まあ外出と言っても、病院の周りの庭をゆっくり歩くだけだが。  
車いすをヒカリが押しながら、ポケモンたちがのんびりしているのを楽しむ。  
四方を山に囲まれた静かな場所なので、マスコミが押しかけることもなかった。  
 
退院は1ヵ月後。その間にいろんな人と面会した。  
ナナカマド博士に無事を報告し、ジュンサーさんはコウキに陳謝した。  
コウキとヒカリのママも来てくれた。そして、この人も。  
 
「あら、元気そうね。」  
「そう見えるとしたら、だいぶボケが来てますよ、シロナさん。」  
「ふふふ、そういうセリフが言えるのなら、元気な証拠。」  
「はいはい、そうでしょうね。」  
「それじゃあ、…私がここに来た理由は、分かってるわね?  
 一応聞いてるけど、あなたの口から、もう一度報告をお願い。」  
「ヒカリの苦しみを解放するため、きっちりと精子を送り込みました。」  
はっきりと報告。  
かなり恥ずかしかったが、ヒカリを救うのに力を貸してくれたのは、なんだかんだ言ってこの人だった。  
「よし、合格!  
 …それじゃ、私は行くわ。もう当分会うことはないでしょう。」  
「二度と会いたくもないですがね。まあ、また会うはめになるか。」  
「それじゃあね。  
 あのアダルトビデオでのオナニーは、気持ちよかったわよー。」  
「な!?」  
ドアのしまる音。  
入れ替わりにヒカリが入ってきた。  
 
「どうしたのコウキ?  
 …今シロナさんが出て行くのが見えたから、何となく何があったかは…」  
「な、なにもねえよっ!」  
「…。  
 (うん、何かあったんだね。あたし、見つからなくてよかった、シロナさんに。)」  
 
そして、退院の日。  
約束通り(だったらしく)ヒカリも同時に病院の仕事から退職した。  
ありがとうございましたという感謝の言葉を残し、ムクホーク、トゲキッスに乗って2人は飛び立った。  
「トゲキッス、例の場所にお願い!コウキ、ちょっとついてきて!」  
「う、うん。ムクホーク、2人についていってくれ!」  
空の旅を快適に楽しむ2人。そしてついた場所は、  
 
…普通の家だった。  
「ヒカリとコウキでーす!おじゃましまーす!」  
「お、おじゃまします…博士?」  
「おお、よくきたな、待っておったぞ。」  
玄関を入ると、家の中で博士が立っていた。  
「一体、何の用で…あ、お前は!」  
ナナカマド博士の足元に、背中を丸めた1匹のポケモンがいた。  
あの時の、Jの乗ってた機体にいた、ヒノアラシだった。ヒノアラシが駆け寄り、抱きついてくる。  
「ヒノ、ヒノヒノヒノー!」  
「わわっ、お、おまえ、どうしてここに…」  
「うむ。実はな…」  
 
どうやら、このヒノアラシはここの家の主人のポケモンだったらしい。  
1人暮らしで身内や親せきの人もおらず、ヒノアラシが唯一にして最高の友達だったらしい。  
その主人がつい最近、死んだのである。  
「そうだったんですか…」  
「でも、ご主人さん、喜んでたよ。  
 ご主人さん、ヒノアラシがいなくなってから、体調を崩して、  
 そして、もう死ぬ寸前までいったんだけど、最後の最後に、コウキくんがヒノアラシを救ったんだよ!」  
「ぼ、僕が…?」  
「うん!ヒノアラシの持ち主をすぐに割り出して、危篤状態の男性と分かって、病院に急行。  
 死ぬ直前、意識が途絶える寸前、最後の最後に間に合ったんだよ!」  
「そうなのか…」  
おもず顔がほころぶ。  
人の役に立てたのかと、実感した。  
 
「でね、その人、言ってたの。  
『その勇敢な少年によろしく。一目会いたいが、それはわがままというもの。  
 ヒノアラシに最後の最後に会えて、もう思い残すことはない。  
 私が死んだ後のヒノアラシの身も案じていたが、これでもう心配ない。  
 その少年さえよければ、このヒノアラシを、その少年に託したい。』って。」  
「僕が…」  
「ヒノ!ヒノヒノ!」  
ヒノアラシが笑っている。  
「いいんですかね、博士。  
 …そういえば、ヒノアラシを僕に渡すって言ってたけど。」  
「ああ、いや。そのヒノアラシとは別。人のヒノアラシをアテにするわけがなかろう。  
 ジョウト地方のウツギくんという人が、ジョウトの初心者用ポケモン3匹を私にくれてな。  
 コウキが炎タイプを欲しがっているというのをヒカリから聞いたから、お前にあげようと思ったのだ。」  
「そうだったんですか。」  
「だが、ウツギ君がくれた、まだ会ったことのないヒノアラシより、  
 コウキとそのヒノアラシの方が、深い深い絆で結ばれているだろう。  
 ヒノアラシはいいパートナーに巡り合えたな。」  
「…はい!僕、このヒノアラシとともに、これから頑張っていきたいです!」  
「ヒノー!」  
「…あちっ!」  
背中の炎がいきなり燃えあがる。  
危うくやけどしそうになり、ヒノアラシを抱えていた両手をいっぱいに前に伸ばす。  
「ヒノー…」  
「あはは、大丈夫、大丈夫…」  
「うむ、じゃあ、これがヒノアラシのモンスターボールだ。」  
「はい!  
 よし、戻れ、ヒノアラシ!」  
 
ヒノアラシをボールに戻す。  
手持ちポケモンはなぜか5体しかいなかったので、6体目としてベルトに装着した。  
「やったね、コウキくん!」  
「ああ、よしヒカリ!僕のヒノアラシとヒカリ…ちゃんのアチャモ、勝負するか?」  
「うん、やろうやろう!」  
「それでは、この家の主人にささげるポケモンバトルだ、  
 この家の裏庭を使って、思いっきりやるがよい!」  
「はい!博士、審判を頼みます!」  
「うむ!」  
 
裏庭に向かって駆け出すヒカリとコウキ。  
ヒカリがコウキに追いついて並んだのを見ると、コウキは手を差し出した。  
もちろん、ヒカリも手を差し出し、ギュッとその手を握る。  
博士は、その二人のあとを、歩きながらゆっくりと追う。  
 
「シンオウは、あの2人のような有望な若者の時代に突入していくのだろうな。」  
 
ギュッと手を握り締めた2人を待つ明るい未来。  
どこかで、その姿をエムリットも見守っていることだろう。  
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!