時間は少しさかのぼる。  
今度はユウキ、ヒカリペアの方を見ていくことにしよう。  
 
こちらはどんな状況かを少し説明する必要があるだろう。  
現在、ヒカリはトゲキッス、コウキはボーマンダで飛行中。  
「どこに行くんですかー?」  
「そらのはしら、ってところだ。  
 内部の野生ポケモンは相当のレベルに達しているところだ。  
「今まで入ったことあるんですか?」  
「俺も一度だけ入ったことがあったが、あの時はポケモンリーグに挑戦する前でさ。  
 1日もしないうちに手持ちポケモンも薬も壊滅状態になったよ。」  
殿堂入り前とは言え、チャンピオンのコウキも相当苦しめられたダンジョン。  
今回は相当の装備で挑むことになり、少しの手抜かりも許されない。  
ヒカリも今回ばかりは今まで育成のために手持ちに入れていたアチャモをパーティーから外した。  
 
「そろそろ着くよ、下降しよう。」  
「トゲキッス、ついていって。」  
まるで海の上に浮かんでいるような感じの茶色の塔が少し先に見える。  
空を突き刺すようなその高さは、『そらのはしら』の名に恥じないものである。  
伝説によれば、伝説のポケモンが塔の一番上で体を休める、と言われているらしい。  
 
「でも、そんな伝説があるなら、最初から空から一番上に行けばいいんじゃないですか?」  
「身も蓋もない事を言うな…  
 途中に結界が張ってあって、外側から塔の頂上に行くことはできない。」  
「じゃあ、やっぱり内部から頂上まで登っていくしかないんですね。  
 …どれくらいかかるんだろう。」  
「塔自体は細いから、何もなければ3日くらいで頂上に着くんじゃない?  
 …何もなければ、ね。」  
途中にハイレベルな野生ポケモンがいる、これが問題なのである。  
確かに1人では行かせられないというオダマキ博士の考えは正しい。  
 
いつポケモンが襲ってくるか分からないので、常時1体はポケモンを出しておくことに。  
現在ヒカリはサーナイト、ユウキはヘラクロスと一緒に歩いている。  
「…ところでさっきから気になってたんだけど、その腕につけている鎧は?」  
ヒカリもコウキと同様にバトルアーマーを装着している。  
とにかく可能な限りのことをやっておかないといけない。  
出現するポケモンのレベルだけならハードマウンテンより苛酷だ。  
 
「あ、これはバトルアーマーと言ってですね、これをつけてると、ポケモンの技を出せるんです!」  
「へえ、どんなふうに…」  
「危ない!」  
ヒカリの声で振り向くユウキ。  
見ると、すぐそこまでゴルバットが迫っていた。  
「へ、ヘラクロス、ストーンエッジだ!」  
ヘラクロスがストーンエッジを発射、しかしゴルバットは旋回してかわし、毒を吐き出す。  
「しまった、毒毒か!」  
ヘラクロスに直撃、ヘラクロスは猛毒状態に…ならなかった。  
 
「あ、あれ、ヘラクロス?大丈夫か?  
 毒を浴びているようには見えないが…」  
「えへへー、これがバトルアーマーですっ!たまたま技マシン20を装着していて助かりました。」  
マシンを装着した状態でも、バトルアーマーにどの技マシンが差し込まれているかは分かるようになっている。  
ヘラクロスのストーンエッジがかわされた瞬間、バトルアーマーに一瞬だけ目をやっていたヒカリ。  
たまたま技マシン20が差し込まれているのをみて、とっさに神秘の守りを出したのである。  
「よし、もう一度ストーンエッジ!」  
ゴルバットが毒毒が効かないのに驚き、怯んでいる隙をついた。  
見事に命中し、ゴルバットは地面に倒れこんだ。  
 
「ふう…助かったよ。」  
「ユウキさんのポケモンが倒れちゃ、困りますからねっ!  
 あたしはコウキほど強くないから、補助的な技でサポートしますから!」  
コウキが攻撃的な技マシンをチョイスする一方、ヒカリはもっぱら守備的な技マシンを選んでいる。  
タッグバトルの時も、コウキが攻め、ヒカリが援護するスタイルで戦っている。  
もっとも、最近あまりコウキと組んでタッグバトルすることもないのだが。  
 
何十階か上へと上がり、そろそろ疲れてきたのでお昼にする。  
とはいえ、トウカの森はポケモンの出現率は低いがそらのはしらはそうはいかない。  
しかもコウキ、ハルカペアの時とは違い危険かつ強力なポケモンがいつ出てくるか分からない。  
料理を作る暇はなく、水のはいったペットボトルと携帯食料だけを出して食べる。  
「…ユウキさんは、普段は旅の途中で料理とかするんですか?」  
「ああ。今回は無理だが、機会があれば作ってあげるよ。」  
「あたし、料理が全然だめで。コウキと一緒に行動する前は、いっつも携帯食料ばっかりで。  
 今回のような危険な場所じゃなくても、ですよ?」  
「ははは、まあ、みんながみんな料理が得意とは限らないさ。」  
幸い食べている間にポケモンが襲ってくることはなく、何事もなく昼食を終えてまた歩き出した。  
 
「そう言えばユウキさん。  
 このそらのはしら以外に、ホウエンで伝説のポケモンにまつわる場所とかあるんですか?」  
「旅をしていると、結構そう言う話を聞いたことはあるよ。  
 たとえば、ルネシティの南にある海底洞窟に、伝説のポケモンが眠っているって話を聞いたことがある。  
 カイナシティにいるクスノキさん、って人から聞いたんだ。  
 確か名前は、えっと…カイ…なんだっけ、忘れた。」  
そのほかにも、えんとつやまの内部にいると言われている大地をつかさどるポケモンや、  
ホウエン地方のどこかに眠っている『6つの点』のポケモンの話などをしてくれた。  
 
「えっ、ヒカリは伝説のポケモンに会ったことがあるの!?」  
「目の前に現れたんです。パルキアってポケモンで、はっきりとその姿を見たんですよ。  
 悪い奴らが無理やり呼び出したんだけど、コウキがその悪い奴らをやっつけて、  
 …で、パルキアはコウキを試すかのように、コウキと対峙していたんですよ。あたしはその場にいたんです。」  
「し、信じられない…」  
さしものユウキもこれには驚いた。  
バトルをしていないとはいえ、伝説のポケモンとある意味互角に渡り合ったのである。  
しかも、同じような出来事、ハードマウンテンで起こったヒードランとの出来事を話すと、  
もはや正気を保つことすら難しかった。  
 
「い、一度だけじゃなく、二度までも…?  
 見ただけでもすごいというのに、コウキは伝説のポケモンに認められた…!?」  
「まだありますよ。  
 …さすがにこれは信じてもらえるか分かりませんけど。」  
「ま、まだあるのか!?聞かせてくれ!」  
コウキはただ聞かされた現実に驚いたが、そこから目をそむけ疑うような事はしなかった。  
ユウキは、ある程度の嘘を見破れるだけの力を持っている。  
だからこそ、驚きもひとしおなのである。  
 
「…可愛らしい伝説のポケモン、エムリットと友達なんですよ、彼。  
 一応あたしも友達ですけど。」  
「ト、友達…!?伝説のポケモンとか?」  
「エムリットは、テレパシーでしゃべったりしてたんです。  
 あと、人間にも変身することが出来るんですよ!  
 人間の姿なら口から言葉を喋られるみたいで、いろいろ楽しくお話をしたんです。  
 一緒に3人でお風呂や温泉に入ったり、一緒に3人でベッドで寝たんですよ!」  
傍から見たらどう見てもおとぎ話。  
だが、ユウキには、ヒカリが嘘をついていないことはしっかりと分かっていた。  
 
「エムリットの性別って♀だったんです。それでコウキったら、あたしと言う恋人がいながら、  
 あたしがいない隙をついて、人間の姿をした時のエムリットを襲ってセックスしてたんですよ!」  
「…それはウソだろ。」  
「あは、ばれちゃいましたか。」  
怒り口調で嘘をついたが、コウキはしっかりと見破った。  
そもそも、本当だとしたらヒカリは間違いなくコウキと別れて、口も聞かないはずである。  
あまりにもばればれの嘘に、流石に呆れていた。  
 
「ストップ。  
 …ポケモンたちがたくさんいる。」  
「え?」  
曲がり角の先に、強そうなポケモン達がうじゃうじゃいた。  
「以前も同じような事があって、無鉄砲だった俺は奴らを全員倒そうと真っ向勝負を仕掛け、  
 結果的に手持ちが壊滅状態になった。  
 その時は何とか脱出したが、…今回はバトルは最低限にとどめる。  
 今回の目的は、このそらのはしらにどんなポケモンがいるかという調査と、」  
「頂上には何があるか、ですよね?  
 で、今回はどうするんですか?」  
「いったん戻ってくれヘラクロス。でてこい、バシャーモ。」  
バシャーモが出てくる。  
 
「バシャーモ、手の中で火の球を作れ。」  
「え?」  
「簡易爆弾を作って、ポケモン達をおびき寄せて気を取られさせるんだ、その隙に突破して上の階に上がる!  
 よし、行け!」  
バシャーモが火球を投げる。  
火球が小さく爆発を起こし、ポケモン達は何事かと爆発した場所に集まってくる。  
「よし、今だ!」  
合図と同時に走り出す。  
ポケモン達が気付く前に、上の階に上がることに成功した。  
 
 
その後も順調に歩を進める。  
野生のポケモン達と戦うのを最小限にとどめ、ほとんど戦わずに進み続ける。  
そして日も暮れた頃、今日はここまでにしておこう、と言う事になった。  
「とにかくいつ何に襲われるか分からない。  
 常に荷物はまとめておいて、なるだけ荷物からモノを出さないようにね。」  
「はーい。」  
ポケモン達に見つからないような岩場に影をひそめて身を隠す。  
周りにポケモンの気配は全くないが、気を抜くことはできない。  
とりあえず携帯食料で栄養を摂取した後、荷物から寝袋を出す。  
 
タオルを水で濡らして体をふきたい気分だったが、  
ハードマウンテンの時と違いコウキではなくユウキがいるのでそうもいかない。  
それにそんな悠長な事をしていたらポケモンに襲われる。  
「とりあえず交代制で行こう。  
 とはいえ、ヒカリの方がだいぶ疲れてるみたいだ。先に休んでて。」  
「あ、ありがとうございます。」  
そんなことないですよ、と言おうとしたが、なぜか言えなかった。  
疲れていたのも事実だし、相手が年上と言う事で遠慮はしない方がいいと思ったのだろうか、  
もしくは、素直に言う事を聞いた方がユウキの足を引っ張らずに済むと思ったのかもしれない。  
もちろん、コウキ相手なら間違いなくこんな考えには至らなかっただろう。  
 
(すやすや…)  
「ぐっすり寝てるな。」  
岩場の影から周りを見張って警戒するユウキ。  
ヒカリの安らかな寝顔を、守ってあげないといけないという使命感がそこにはあった。  
「可愛いよな…本当に、守ってあげたいくらいに可愛い。  
 …だから、絶対に守ってあげないと。」  
ヒカリがコウキのものだとは分かっていたが、今はコウキがいないのでヒカリを独り占めできる。  
もちろん手を出すつもりはないが、今だけは自分がヒカリを守る男だと感じていた。  
「やれやれ、俺の下心が丸見えたな。」  
可愛い女の子を守るのは、男の子の希望であり、夢である。  
 
「…本当に可愛いなあ。」  
岩場のそばから一時的に離れ、ヒカリの傍に寄る。  
…この閉じていても可愛い目、頬、唇、さらさらの髪。自分のものにしたくなってきた。  
「…いかんだめだ、コウキのモノなんだってば!」  
だが、年がいかんせん離れ過ぎているハルカには、恋愛意識がずっと持てなかった。  
ホウエンの旅の途中でも、惚れた相手はいなかった。  
コウキと同様、ユウキの初恋の相手もヒカリになってしまった。  
 
「ヒカリちゃん、寝てる?」  
(すう…すう…)  
「…いいよね、ヒカリちゃんさえ気づかなければいいんだから。  
 だ、だめだだめだ!コウキがいるんだ、ヒカリには!」  
理性と本能が戦っている。だが、ついに我慢しきれなくなり、  
「い、いいよな、うん、ヒカリに気付かれなければ、何もなかったことにすれば…」  
そっと顔を近付ける。  
唇が段々近づいてくる。  
互いの距離が残り10cmを切った。  
 
「ん…あ、あれ?ユウキさん?」  
「どわああああっ!」  
ヒカリがいきなり目を覚ます。眠たそうにして体を起こした。  
「どうしたんですか?顔を近づけて。」  
「あ、えっと、いや、その…」  
普段が冷静沈着なユウキなだけに、その様子に疑問を持つ。  
もちろんユウキとしては、死んでも本当のことを言うわけにはいかない。  
 
「ああ、えっと、そろそろ時間かなって、あはははは…」  
「え、もうそんな時間ですか?」  
ヒカリがポケッチを見ようとする。  
それを必死になって止める。  
「いや、やっぱりヒカリは疲れてたんだよね、ちょっと起こすのが早過ぎたね。  
 ほら、明日もあるし、速く寝て!」  
「ちょ、ちょっと、ユウキさん!?」  
ポケッチを見ようと動かすヒカリの腕を止め、ヒカリを再び寝袋にしまいこみ、ジッパーを閉める。  
「大丈夫大丈夫、俺はまだ眠くないから、ね?  
 おやすみ、ヒカリ!」  
逃げるように、再び岩場に寄り、見張りを再開する。  
そんな様子を不思議に思いながらも、さっきまで寝ていた故寝ぼけており、  
再び寝込むのにそう時間はかからなかった。  
 
数日後、ついに頂上についた。  
「やっと着いたー!」  
「さて、今までだれもついたことのない頂上には何が…!!!」  
「あ、…あれは!?」  
緑色の細長いドラゴンのようなポケモン。とぐろを巻いて眠っている。  
「あれは…」  
2人ともポケモン図鑑を見る。  
シンオウタイプもホウエンタイプも、しっかりとそのポケモンの事が乗っていた。  
 
レックウザ。空を制す、伝説のポケモン。  
「俺も…俺も、ついに伝説のポケモンを拝めたぞ…!」  
例えようもない感動と感慨にふける。  
しばしその姿に見とれていた。  
「ゲ、ゲットしようかな…幸い、手持ちはほぼ無傷だし。」  
「もしゲットするなら、あたしも手伝いますよ?」  
「ほんとか!?よーし…」  
モンスターボールに手をかけ、レックウザにバトルを挑もうとした、との時。  
 
ドッパーン…ドドドドドド…  
 
「な、なんだ!?」  
「なあに、今の音!?」  
音のした方、東の方角を見る。  
見ると、ずっと向こうの方の海上で、大きく高い水柱が立っていた。  
「な、なんだあれは!?」  
「あそこって、どのあたりですかね!?」  
「少し北にルネの島が見えるって事は…ま、まさか海底洞窟か!?」  
「か、海底洞窟って確か、伝説のポケモンがいるって言う…」  
嫌な予感がした。  
もしユウキの言っていた伝説が本当なら…ヒカリはパルキアの時の事を思い出していた。  
 
「ギャアアアアアアアアス!」  
「なあっ!?レ、レックウザが起きた!」  
レックウザが何と目を覚ましてしまった。  
そして、水柱の方角へ飛んでいった。  
「…お、俺たちも行こう!」  
「で、でも、ここから降りるには最低でも1にちはかかる…」  
「ここからポケモンで飛んで行くんだ!  
 結界は侵入者を拒むものであって、出ていくものを拒むことはない!」  
 
直ちにトゲキッスとボーマンダに乗って飛び始める。ユウキの言うとおり結界にははじかれなかった。  
何かとんでもないことが起こりそうな気がする。  
そんな予感がしたヒカリは、一人でも仲間が多い方がいいと感じ、  
…そして、一番信頼できる、恋人に助けを求めた。  
 
「…もしもし、コウキ!?」  
 
また時間を少しさかのぼらせる。  
コウキとハルカは、ジム戦の真っ最中だった。  
「キノココ、吸い取る!」  
コウキとの特訓のおかげで、なんとかバトルは形にだけはなっていた。  
だが、バトルでは素人の上、相性が不利なゆえにアチャモはあっさりとやられた。  
キノココも相性はいいのだがイシツブテ相手に大苦戦。必死に技の指示を出すも、  
 
「イシツブテ、かわして下さい!」  
あっさりかわされ、  
「体当たりです!」  
かわせ、という指令を出す暇もなく、直撃した。  
ハルカが思わずキノココのもとによる。だが、目にはもう力がなかった。もう立つ力もないようである。  
「キノココ、戦闘不能!」  
「そ、そんなあ…ごめんね、キノココ…」  
ジムリーダー・ツツジとイシツブテがハルカ達のもとによる。  
コウキはと言うと、備え付けのベンチから離れて見ている。  
 
(…ハルカ…)  
「残念でしたけど、いいバトルでしたね。  
 またいつでも、挑戦しに来て下さい。」  
「は、はい…」  
ハルカが涙をこぼす。申し訳なさそうにハルカを見るキノココ。  
「キノココ、気にしないで、わたしが、まだまだ未熟だから…」  
「キ、キノ!」  
「ありがとうね、…そして、負けちゃって、ごめんね。」  
「キ、キノ…」  
キノココはせつない顔をしている。  
…キノココ自身も、自分が情けないと思っていた。ハルカを悲しませる自分の無力さが、悔しかった。  
 
…そしてその想いは、奇跡を呼んだ。  
「あ、あれ、キノココ!?」  
キノココの全身が光る。そして、どんどん姿が大きくなる。  
ハルカの腕で抱えられるくらいだったのが、ハルカの身長に匹敵するくらいに大きくなっていった。  
 
「し、進化!?」  
(ハルカのやつ…ポケモンとの絆を、繋げやがった!)  
「キ、キノガッサに、進化したのですか!?」  
先ほどのよわよわしい姿から一転、一気にたくましくなった。  
眼光も明らかに鋭くなり、戦う目、戦う顔をしている。  
「…審判。さっきの戦闘不能は、取り消しなさい。」  
「え?」  
「進化して、体力が回復したようです。  
 それならば、ポケモンの進化という、最大限の力と戦うのが、ジムリーダーです。  
 …なにより、このキノガッサの闘志、先ほどと打って変わって、比べ物にならないくらい強い。」  
「わ、わかりました!バトル続行!」  
 
両者が元の立ち位置に戻る。  
「キノガッサの技は、わかりますか?」  
「え?ええっと…」  
「しっかり調べて下さい、わたしは待ってます、隙を突くような事はしません。  
 すべての力を出してもらうためにね。」  
「は、はい!!」  
ハルカが必死になってポケモン図鑑を調べる。  
そして、インプットして、バトルに臨む。  
「えっと、キノガッサ、マッハパンチ!」  
「イシツブテ、かわして…」  
 
一瞬だった。ツツジも、イシツブテも、反応しきれなかった。  
直撃。  
「は、速い!イシツブテ!」  
「す、すごいよ、キノガッサ!」  
イシツブテは目を回して倒れている。  
コウキもツツジも、その速さにただただ驚かざるを得なかった。  
「い、イシツブテ戦闘不能!」  
 
ツツジがイシツブテを戻す。  
「見事です、ポケモンのあなたへの信頼を、見せてもらいました。ならば、この子はどうです?」  
モンスターボールから出てきたのは、ノズパス。  
ツツジのエースポケモンである。  
「ノ、ノズパス…」  
「ガンバレ、ハルカ!おまえとキノガッサなら、絶対にいけるはずだ!  
 (…あれ?ポケギアから電話?)」  
「…うん!(あれ?電話かけてる…)」  
 
コウキがポケギアのスイッチを押す、声の主は、ヒカリだった。  
(…もしもし、コウキ!?)  
「お、久しぶりだな!どうしたんだ、ヒカリ。」  
コウキは嬉しそうな顔をするが、ヒカリはそれどころではなかった。  
空の柱から見えた、水柱。それが、伝説のポケモンが眠ると言う海底洞窟のあたりで見えたという事。  
…その事がパルキアの事件と重なり、嫌な予感がしたという事。  
 
パルキアの事はコウキにもヒカリにも深く刻み込まれている。  
ヒカリのその予感は当たっていると感じた。黙っているわけにはいかない。  
「パルキアの時と同じ感じがしたの…なんだか嫌な予感がするの、すごく不安なの!  
 ねえ、お願い、力を貸して、コウキ!」  
「ああ、わかった、すぐ行くからな!」  
スイッチを切る。  
そしてキノガッサとノズパスが激突しようとしたその瞬間、  
 
「ス、ストップ!」  
「「え?」」  
その声に反応して、ポケモン達の動きも止まる。  
そしてコウキは一目散にツツジのところへ走る。  
「ごめんなさい、急いで行かなきゃならないところがあるんです、  
 ジム戦を、中止してはもらえないでしょうか!」  
「え?」  
必死の懇願。審判は困ったように言う。  
 
「あのですねえ、勝手にそんな事言われては困りますよ。」  
「…いいでしょう。わかりました。」  
「つ、ツツジさん!?」  
コウキの必死の思いが、ツツジには伝わっていた。  
「どうやら、ただ事ではないようです。それも、何かの危機を感じ取っているような。  
 …行ってください、その危機を乗り越えるために。」  
「あ、ありがとうございます!行くぞハルカ!」  
「え、ど、どうしたのコウキ!?」  
「本当にごめん、理由は走りながら話す!」  
とにかく、飛行ポケモンがいないと話にならない。  
ムクホークを転送してもらうために、ポケモンセンターに向かって走る。  
 
「…て言う事なんだ。ハルカは、ポケモンセンターで待機してくれ!」  
「嫌だ、わたしも、ポケモンと一緒に戦うかも!」  
「ダメだ、危険すぎる!」  
コウキがハルカを止めようとする、だが聞かなかった。  
「わたしだって、伝説のポケモンと戦ってみたい、コウキだって、好奇心が大事って言ってたかも!」  
「そんな問題じゃない!」  
「そんな問題よ!それで危険な目に会ったって、ポケモン達を信じて、一緒に乗り越えていく!」  
「ハルカ…」  
「それに、みんなが戦ってるのに、わたしだけ何もしないなんて、いやだ!  
 わたしだってポケモン達を信じてる、乗り越えていける自信があるの!」  
「…。」  
何も言えなくなった。コウキ自身がそう言ったのもあるが、  
何より、強い意志を感じるその瞳に、大丈夫だという強い信頼感を覚えた。  
 
コウキが笑った。  
「よし、行こう!一緒に伝説のポケモン達と戦おう!  
 でも忘れるなよ、ハルカがどんなピンチに陥っても、必ず僕が守ってあげるって事を!」  
「うん!」  
 
ポケモンセンターにつき、すぐさまナナカマド博士に連絡。  
ヒカリが手際よく博士に連絡を取って手を回してくれたらしく、すぐさま必要なポケモンを送ってくれた。  
そしてハルカと一緒にムクホークに乗り、128番水道に向かって飛び立った。  
(待ってろよヒカリ、すぐに助けに行くからな!)  
 
こうして、ホウエンを揺るがす大事件が始まった。  
 

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