朝食をとると、俺は薫子と買い物に行くことにした。
さすがに、下着をつけてない女の人がいるのはまずい。
たとえ昨晩、いかがわしいことをしたとしてもだ。
薫子も買い物はしたことがない様で、町に入ると物珍しそうにいろいろな物を見ていた。
俺は薫子にコダックじょうろを買ってやった。
薫子が来る前までは俺は毎日、水汲みをしていた。
水汲みは結構な重労働だ。しかし、薫子が来てからは毎日薫子がするようになった。
俺も女の人にやらせてしまい気が重かったが、薫子は一日も休まなかった。
だが、カメックスなら罪悪感はない。
あのポケモンは常時、体内にかなりの水を溜め込んでいいる。
後半の洞窟などの飲み水は大抵はカメックス頼りだった。
どうせ、自分の中の水を汲み出した後に川で補給しているのだろう。
頼りになるやつだ。
「その…、ありがとうございます。」
「気にするな。いつもよく働いてたからな、お前は。さてっ、下着を買いに行くぞ?」
「はい。」
とは言うものの、困ったものだ。俺は、薫子一人で買い物が出来るとは思ってない。
だからとはいえ、婦人用の下着売り場に入りたくない。
と、思ったら薫子は婦人用の下着売り場に俺の手をぐいぐいと引っ張っていく。
薫子にとってはたいした力じゃないんだろう。
ただあいつは、滝を逆走する体力と双子島の大岩を動かす怪力を持っている。
当然、そんな力の持ち主に人間の俺は逆らえる訳がない。
そこで今、俺は下着売り場にいる。
はっきり言って周囲の視線が痛い。薫子がいなければ俺は変質者だろう。
薫子の手を握り締める俺。やわらかくって、温かった。
俺は、なるべくその場から早く離れるようにした。
適当にその場にあった青のブラとショーツをとって薫子に手渡す。
下着のやわらかい手触りを一生、忘れることはないだろう。
レジで会計を済ますと、俺は一目散に逃げ出した。
「何かあったのでしょうか、マスター?」
このドンガメめ。
「あのなぁ…。」
俺は怒りを通り越して、呆れていた。
まぁいいや。
適当な試着室を見繕って、薫子に下着をつけるように指示する。
そして、しばらく時が経過する。
いきなり開けてやろうかとも思ったが、焦らされるのも悪くない。
そうやって思考をめぐらせると、不意に声がした。
「こんなものでしょうか…。」
恥ずかしそうに、カーテンを開ける薫子。
「上に、服を着てから開けような。」
薫子の行動は予想範囲内だった。むしろ期待していたくらいだった。
だから落ち着いて言い払うものの、少し目のやり場に困った。
どうやら、ブラもショーツもどうやらサイズが少し小さかったようで
ブラは上と下がよく見えたし、ショーツの方もパンパンだった。
恥ずかしそうにする薫子は、からかって面白い物がある。
「はい…。」
素早く、カーテンを閉める薫子。さっきの仕返しだ。
後で俺は下着に関する説明をした。
「先にしてくださればよかったのに…。」
文句を言う薫子。
「はっはっは。ごめん、ごめん。」
その後、俺は薫子に何着か買うように言った。
さすがに、さっきのを見てたから買い物のやり方くらい分かるだろう。
待つこと、30分。薫子はきっちりと役割を遂行してきたようである。
それなら、木の実の換金も済ませてきたことだし帰るとするかっと思うところ、
缶入りのポケモンフードを置いている店があった。
その中にデボンカンパニー製の水ポケモン用のがあるのを見つけた。
昔は薫子のあれが大好物だった。
少し、シルフカンパニー製よりも割高なんだがな…。
「薫子、あれでも食うか?」
「…!!、いっ、いえ、いいです。そっ、そんなものっ、」
冗談で言ったつもりなんだが、まんざらでもなさそうだ。
薫子は自分の人としてのプライドを守るので精一杯だ。
それをよそに俺はそれも買ってやった。
まぁ、いっか。今日くらい。
「いいって言ってるのに…。」
「まぁまぁ。いいじゃないか。」
俺と薫子は帰路を歩んでいった。
その時は、あんなことになるなんて考えてもいなかった…。