ここはヨスガシティ。
結果的に、ヒカリの大スランプはここから始まった。
「…。」
ヒカリが川を眺めながら1人落ち込んでいる。
それを見ているのは、サトシ、タケシ、ノゾミの3人。
かくいうノゾミもサトシの隣で落ち込んでいたのだが。
とはいえ、1次審査で落ちたヒカリと比べ、ノゾミは決勝まで到達した。
のだが、やはりノゾミには妥協という文字はない。
…ただ、そんな事は問題ではない、この2人が悔しがる理由は根本的な問題にある。
(…1次審査で、負けちゃった…)
ヒカリは2次審査に進めないのはこれが初めて。
とはいえ、初心者コーディネーターであるにもかかわらず、
最初が決勝トーナメント進出、2回目にいたってはケンゴを破って優勝。
よくよく考えれば奇跡であり、今までがあまりにもできずぎていた感は否めない。
おそらく、どこか自信過剰になっており、
1次審査敗退によりその反動で精神的にとてつもなく大きなダメージをくらってしまったのであろう。
もちろん、負けることは人生の上で大事なことではあるのだが、
…今までが良すぎたか、もしくは時期があまりにも悪すぎたか、いずれにせよ、長くの間引きずる事になった。
(なんで、あんな奴なんかに…)
だが、ノゾミの理由はまったく違っていた。
負けることを割り切ることが出来る強さは持っている。
「ノゾミ…」
「ノゾミも、元気出せよ。」
サトシが元気づけようと励ます。が、
「うるさい、お前に何が分かる!」
「ぐっ!」
「お、おい!」
ノゾミがサトシを殴った。そして走って逃げていく。
殴られた頬をさすりながら、走り去るノゾミの姿を目で追うサトシ。
ちなみにサトシの傍らには今ピカチュウはいない、ふれあい広場で遊ばせているためである。
「だ、大丈夫か?サトシ。」
「ああ、タケシ、心配するな。」
「ど、どうしたの?」
背後の異変に気づいて、ヒカリもサトシの元へやってきた。
事情を話すと、ヒカリが口を開いた。
「うん…なんとなくわかる気がする、あたし。ノゾミがサトシを殴った理由…
あ、も、もちろん殴ったことを肯定するわけじゃないよ?」
「あ、ああ。ヒカリはそんなことしないさ。
…で、理由って?」
「…ナオシさんに負けて、サトシに慰められたから。」
「?」
サトシには意味が分からなかった。
だが、ヒカリの次の言葉で、以前ノゾミに言われたことを思い出した。
あの言葉の直後に、サトシは敗北を喫した。
『ジムでのバトルとコンテストバトルは全然違うんだ、それを思い知らせてやるよ。』
ノゾミの一番嫌いな、ポケモンコンテストに出るポケモントレーナー。
ノゾミにとって、その存在はポケモンコンテストを馬鹿にした、中途半端な適当人間。
そんな甘い人間にやられた自分が、腹立だしくてしょうがなかった。
「ノゾミ…」
「謝った方がいいんじゃない?サトシ。
そりゃ殴った方が悪いけどさ、あたし、ノゾミの気持ちもわからないことはないの。」
「ヒカリ…そうだよな、何も考えずにノゾミにあんな事…」
『沈む若者、落ち込む若者、トレーナーは十人十色
だけどその壁乗り越えれば 輝く未来が待っている』
「どわっ!ナオシさん!?」
「あわわわわ…」
突然自らの詩を歌いながら現れたナオシ。ヨスガコンテストの優勝者である。
お前が原因だよ、と思うのは、著者の俺だけだろうか。
「すみませんね、わたしが原因を作ってしまったようです。」
「ああ、いえ。直接の原因は俺の一言ですから。」
「若い方には、若い方に任せるのが一番。
本当は私が責任を取って何とかするべきなのですが、どうあがいても逆効果ですから。
お願いできますか?」
「はい、何とかしてみます。」
『ぶつかり合う にらみ合う そのどしゃ降りが晴れた時
濡れた地面は固まって 固い絆で結ばれる』
詩を口ずさみながら去っていった。
「…。」
「調子狂っちゃうかも。」
ノゾミを見つけた。
湖のほとりでボーッとしているようだ。
ヒカリとタケシは陰に隠れ、2人を見守る。
「ノゾミ、さっきは…」
「よくも殴ってくれたな、か?」
「そ、そんな風には思ってないぞ!」
「じゃあ何のために来た!」
サトシがうつむく。
ヒカリの言葉が引っ掛かり、何も言えない。
「…なんてな。冗談だ。」
「え?」
「あたしが一方的に悪い、サトシに悪気がない以上、手を出したあたしが悪いんだ。」
「だけど…」
ノゾミが立ち上がる。
「少しはわかった気がする。
ポケモントレーナーが輝くのはあくまでジム戦、
でも、ポケモンとの絆を信じて戦うって事は、コンテストもジム戦も変わらないって事をね。」
「ノゾミ。」
「ま、もっとも、シンオウリーグに挑戦するってトレーナーがコンテスト優勝なんて、
甘ったるい考えを持つのは許せないけどね。」
厳しい顔をしつつ、ノゾミが立ち去っていった。
結局、許してもらえたのかそうでないか、よくわからなかった。
「サトシ、とりあえずはあれでいいんじゃないか?
謝罪を受け取ってもらえただけでも、よしとしようや。」
「大丈夫、ノゾミは根に持つような子じゃないから。」
「2人とも…
そうだな、これはこれでよかったのかもしれないな。でも…」
「ん?」
サトシが残念そうに言った。
「ポケモンコンテストだって、みんなが楽しむ権利を持ってると思うんだけどな。」
「コーヒー、おかわり。
…ズズズ…」
ポケモンセンターのレストランでコーヒーをすすっている。
どうやらノゾミは、今日1日はヨスガに滞在するようである。
「…ふう、トレーナーとコーディネーターか。
サトシは、違いなんてないって思っているみたいだけど、
…確かに言われてみれば、違いなんてあるのかな。…ん?」
ガツガツガツ…
「お、おいサトシ、食い過ぎだろ。確かにここはバイキング形式だが…」
「サトシ、お腹壊すわよ?」
「腹ごしらえ…モシャ…腹ごしらえ!
明日はタッグバトル大会なんだぜ!?腹が減っては戦は…モシャ…」
ガツガツガツ…
「…あった、違いが。」
やれやれと思いつつ、コーヒーカップを口に運ぶ。
ヒカリもあまり料理が喉を通らない様子を見て、それとは対照的なサトシを見ると、
やはりコンテストに挑戦するポケモントレーナーは中途半端な存在に感じた。
それ以前に、あんなにがっつくコーディネイターなんていない、と真っ先に思っていたが。
「トレーナーはコンテストで負けてもどうでもいいって思えるもんな。
まあ、今回はサトシは参加していないが、あいつが参加したコトブキ大会でもサトシはそんな感じだったしな。」
トレーナーとコーディネイターの違いがはっきりと見えてこない一方、
やはりコンテストに対して甘い考えを持っているとも思えた。
「…落ち込んでてもしょうがない、特訓するか。
あいつはまだ食い足りないのか?」
サトシたちを見て呆れつつも、レストランを後にした。
もちろん、そんなノゾミの存在に3人とも気づいていない。
「カラナクシ、泥爆弾!」
「ニャルマー、シャドークロー!」
2体を戦わせるノゾミ。
各々に全力で相手を倒すための指示を出し、互角に戦わせている。その姿に妥協はない。
「(まだだ、まだ動きに納得できない!)
カラナクシ、水の波動!ニャルマー、アイアンテールで弾き飛ばせ!」
カラナクシの水の波動を迎え撃つ。
だが、タイミングがずれてしまい、完全に弾き飛ばせずに少し水の波動を受けてしまった。
「動きが甘いぞ、ニャルマー!今度こそアイアンテールだ!」
ニャルマーにアイアンテールを指示。…だが、様子がおかしい。
ニャルマーの目が変色している感じがする。
「ニャルマー、どうしたんだ?」
「ニャルルルルル…ニャー!」
「なっ!」
ノゾミにむかっと突進するニャルマー、そしてジャンプし、ノゾミに向けてアイアンテール。
「!!」
水の波動を受けて混乱し、間違えてノゾミに攻撃を仕掛けてしまったニャルマー。
あまりに突然の事に、ノゾミは足がすくんでしまい、何もできなかった。
ドカッ!!
…。
「あれ…サ、サトシ!?」
「ぐっ…だ、大丈夫かノゾミ…」
サトシがノゾミをかばい、アイアンテールが背中に直撃。
相当の運動神経を持つサトシの事なので最悪の事態にはならないだろうが、
「も、戻れ2人とも!サトシ、ヒカリ達は?」
「今は…自由時間だから、2人ともヨスガを観光してる。
俺は、ポケモンの特訓のためにここに来たんだけど、そしたらニャルマーが…」
「しっかりしろサトシ!すぐにセンターの中に入るぞ!」
「あ、ああ…」
ピカチュウとミミロルは昼からずっとふれあい広場で遊んでいる。
リフレッシュのためだったが、やっぱり一緒にいた方が良かったと後悔するサトシ。
「とりあえずこんなものだな。
サトシの連れ…タケシだっけな、あいつならもっとまともな治療が出来ただろうが…」
患部全体を覆うようにペタペタと湿布を貼った。
その状態でうつぶせに寝かせている。
「そんなことないよ。サンキュー、ノゾミ。」
「何を言うんだ、礼を言うのはこっちの方だ。
…なぜあたしを助けた?」
「え?そ、そりゃもちろん」
「危ないところを放っておけないのは分かる。
あの状況では、確かにポケモンを出す余裕はなかっただろう、
モンスターボールを投げてポケモンが出てきて技を指示して、その間に確実にあたしはやられてる。」
「おいおい、
そんな事を一瞬で見極めて判断できるわけないだろ?」
「まあ、他の奴ならともかく、サトシならそうだろう。だが…」
ノゾミが再び問い直す。
「だったらなおさらだ、なんであたしを助けた?
自分の大怪我を承知で、憎まれ口を叩いたあたしを。」
サトシがうつぶせの状態から首を回してノゾミの方を向く。
みると、怪訝そうな顔をしていた。
「あたりまえじゃないか、仲間だろ?」
「え…」
「ヒカリとは、お互い高めあうライバルであり、お互いを尊敬する仲間じゃないか。
俺とヒカリも、お互いを高めあう仲間。仲間の仲間は、仲間じゃないか。」
唖然とした。
自分はひとりで旅をしてきた。仲間なんて意識はなかった。
ヒカリの事だって、勝負の世界で戦うライバル、とはみていたが、仲間意識なんてなかった。
仲間ってのは、常に一緒にいる者同士の事を言うんじゃないのか?
…そう聞いてみた。
「何言ってんだよ、バトルをして、お互いの心が通じ合えば仲間さ。
ノゾミと俺は、コトブキで一度戦っている。
バトルをしたら、みんな仲間であり、友達さ!」
「…。
フッ、ヒカリとおんなじだな。」
「え、何がだ?」
「そのまっすぐな瞳。相変わらずあんたも可愛い事言うねえ、サトシ。」
あれだけ酷い事を言った。コンテストに参加するサトシを、批判した。
それなのに、サトシはあたしを憎みもせず、笑って仲間だと言ってくれる。
…なんだろう、この気持ち。
まだコンテストに参加するトレーナーは許せない。
だけど、サトシは、他のトレーナーとはどこか違う…あたしが感じる限りでは…
「ふう、湿布が効いたかな、サンキューノゾミ。
俺は部屋に戻るから、そんじゃ、おじゃましましたー。」
「…ああ。」
サトシがシャツとトレーナーを着て、ベッドから降りた、その瞬間だった。
ダメージの残っている背中に、痛みが走った。
「…てっ!」
「…。」
「ノ、ノゾミ?」
ノゾミが背後から抱きついてきた。
その衝撃で背中に痛みが走ったのである。
「ど、どうしたんだ?」
「不思議なものだな。あたし、トレーナーを毛嫌いしてるのにさ。あんただけは別のようだ。
あんたの、信じられないくらいまっすぐな心が、そう思わせたのかもしれないね。」
「ノゾミ…?」
背後でくっついているノゾミの方に、必死になって首をひねって顔を向ける。
サトシは気付かなかったが、ノゾミの顔は赤くなっていた。
ノゾミは目を閉じながら、そっとサトシに告白する。
「あたし結構ひねくれてるからさ、まだ気づいてないみたいなんだけどさ。
多分あたし、あんたに惚れてるんだと思う。」
「ノゾミ…。」
「…なあ、あたしまだ、あんたに礼をしていなかったな。
何がいい?」
ノゾミが提案をする。サトシは笑いつつ、
「いや、別にいいよ、ニャルマーの事なら気にしなくて。
ちゃんと応急処置してくれたんだから、気にしなくて。」
「…はあ、女の子に抱きつかれてあんな事言われて、何も感じないのかい?
あたし、女として見てもらってないようだね…」
「そんなことないだろ、ノゾミは女の子じゃないか。」
(こりゃ、ダメだ。)
まったく話がかみ合わない。
あれだけ可愛いヒカリと何事もなく旅をできるわけだと思いつつ、
「…ニャルマーの事だけじゃない。」
「え?」
「あたし、1人で旅してきてさ、
自分の周りには誰もいなくって、たくさんの敵、ライバルだけがコンテスト会場にいる。
そんなポケモン以外に味方のいない、孤独な毎日を過ごしてると思ってた。」
「ノゾミ…」
「でも、あんたは違うって言ってくれた。あたしの事を仲間だって言ってくれた。
心のどこかでさみしい思いをしていたあたしを、救ってくれた。あんた、優しいよ。」
「そうか?照れるな、ははは。
俺は当然のことを言っただけなんだけど。」
「…それでいい。それだけで、あたしはずいぶんと心が楽になったんだからさ。」
ノゾミがサトシを抱いていた腕を解き放つ。
サトシが回れ右をして、ノゾミと向かい合う。
「そのお礼をしたい。何か、させてくれないか。」
「気持ちだけ受け取っておくよ。
昼間ノゾミを傷つけた俺こそ、謝らないといけない、何かお詫びをさせてほしい。」
「…。」
ノゾミの顔が、急に不機嫌になった。
「せっかくあの事を忘れかけていたのに、本当デリカシーがないな。また思い出してしまったよ。」
「あ、あわわノゾミ、ごめん。そんなつもりじゃ…」
「そうだね、そんじゃあんたがお詫びするって言った通り、あたしの言う事を聞いてもらおうか。」
「ご、ごめん、なんでもするからさ。」
ノゾミが目を閉じて、再び口元をゆるめた。
『作っていた』不機嫌な表情は消えて、もう一度サトシの方を見つめた。
「それじゃ、言う事を聞いてもらおうかな。
それが、あたしのお礼も兼ねてるって事でいいかな?」
「え?どう言う事…!」
突然ベッドに押し倒された。
背中に激痛が走ったが、そんな事はどうでもよかった。
ノゾミにどうしたんだ、と言おうとしたが、その前にノゾミに唇を奪われた。
「ん…。」
「!!?」
十数秒のキスの後、ノゾミは唇を離した。
ノゾミの頬はすっかり赤くなっていて、目がとろんとしていた。
そのような表情を見れば、いかに鈍感なサトシでもノゾミに異変が起こったことくらいは分かる。
「な、なんだ!?どうしたんだ、ノゾミ!」
「あれ?言う事聞くんじゃなかったの?」
「いや、そうだけどさ!だけど、えっと…」
「へえー。あたしに逆らうつもりなんだー。」
声はまだ普段通りの声だが、表情は普段のきりっとした顔からとろんとした顔に。
「そう言うわけじゃ…」
「大丈夫、これはあんたにとってもいいことなんだ、だからあたしのお礼、って言ったんだ。
…なあ、頼む。このまま、あたしのやりたいように、やらせてくれ…」
先ほどの弱みに付け込む発言から一転、涙を浮かべながらサトシを見つめる。
ノゾミだって、可愛い女の子。その懇願するような顔を見せられ、さすがにサトシは拒否することが出来なかった。
もっとも、サトシには性の知識はない。
これからノゾミが何をするのか、全く想像がつかなかった。
(え?…そ、そこは!?)
「…ペロ。」
まず手始めにサトシの陰茎を舐めはじめる。
何をする、と言おうとはしたが、これがノゾミのやりたい事なら、何も言っちゃだめだ。
そう心に決めて、ノゾミのその行為をじっと見つめる。
恥ずかしかったが、大事なところを見られたくはなかったが、それが彼女の望みなのだから。
だが、サトシの中に会った抵抗感が段々なくなってきた。
陰茎部分に感じるしびれ、快感。サトシ自身もほとんど触れた事がない故、それはすごく心地よくて。
その快感をもっと味わうべく感覚を陰茎に集中させる。
「ノゾミ…もっと気持ちよく出来ないか?」
「へえ、サトシもこれのよさがわかってきたようだな。」
だがもっと快楽を味わうためにはノゾミの協力が不可欠。
それに応えるために、ノゾミは陰茎部分をすべてくわえた。
そして、頭部を動かして陰茎が口からすべてでない程度に激しく抜き入れを繰り返す。
「ノ、ノゾミ…すごく、気持ちいい…なんてもんじゃない、これ…」
「だろ?あたしも楽しいんだ。
あんたはあたしへのお詫びのためにあたしを楽しませる。
あたしはあんたへのお礼をするためあんたを気持ちよくさせる。」
ノゾミのフェラは続く、だんだんサトシの限界が近付いてきた。
「な、なんか、俺、う、うあ…」
(おやおや、どーやら自分の体にこれから何が起こるか、分かってないみたいだねー。
…ごほっ!)
ノゾミの口の中で、思い切り射精するサトシ。
ノゾミは当初飲み込むつもりだったが、ノゾミも初体験ゆえ、
その想定外の射精の勢いに不意を突かれ、ほとんど飲みこめなかった。。
「ごほっ、げほっ、ごほっ…」
「おい、大丈夫か、ノゾミ!て言うか、今、俺…」
「なあに、おしっことかじゃないから、心配するなって。ほら、白いだろう、これ。」
「…な、なんだよ、これ。」
「まあ、特殊な状況の時に出るもの、とだけ言っておこうか。」
ノゾミはすぐに呼吸を整え、いつも通りの冷静さを取り戻す。
「えっと、これでいいのか?
すごく気持ち良かったし、ありがたくお礼として」
「おいおい、もう終わりだとでも思ってるのか?
まだまだお楽しみは、これからだよ!」
ウインクしてそう言った。確かに至極当然のことではある。
もっとも、何の知識もないサトシにそう言ったところで、これからの事を想像することはできない。
なので、スルスルと服を脱ぎ始めたノゾミの当然の行為に、驚きを隠せなかった。
「な、何してるんだ、ノゾミ!?」
「なーに言ってんのさ、これが普通なんだってば。
ヒカリほどではないにしろ、あたしだってスタイルはそこそこのはずだよ。」
「そ、そう言う事じゃ…」
すべて脱ぎ終わる前にサトシが後ろを向いた。
そんなサトシを見つつ、服をすべて脱ぎ終わってから、そっと言った。
「見てくれよ、あたしの裸。
あんたに見てもらいたいんだ。サトシ…」
「ノゾミ…」
ゆっくりと、そっと、後ろを向いた。サトシの体が、固まった。
ヨスガにつく直前にヒカリの水着姿を見る機会があったが、別段何にも感じなかった。
…そんな鈍感なサトシでも、ノゾミの裸を見ると、やはり平常心でいられるはずはなかった。
見たことのなかった、女の子の体。
気にすることは今までなかったが、カスミも、ハルカも、そして今一緒にいるヒカリも。
…こんな体をしていたのか…そんな感じがしていた。
「…その顔を見て思うんだけど、あんた、不思議だね。
女の子の裸を見て、誰もが必ず、いやらしい思いが頭の中に来るもんだけどさ、」
「よ、よくわからないや。」
「あんたの場合、そんな感情じゃない、何か感慨深い想いをしてる感じがする。」
ノゾミの考えは当たっていた。
自分の知らなかった事を知ることが出来た、それが感動を呼んでいた。
「ていうかさ、ヒカリとずっと旅をしてて、裸の1つも見た事がないってのが不思議だけどな。」
「そ、そんなもの見るべきじゃないだろ?」
「でも、今あんたはあたしの裸を見ている。とりあえずさ…」
「え?」
その眼に宿る邪気のようなものを感じ取るサトシ。
嫌な予感がしたが、何か手を打つ前にノゾミが先制攻撃を仕掛けてきた。
サトシの体に覆いかぶさる。幸い背後は布団だったので、背中に激痛は走らなかった。
「逃がさないよ。あんたのお詫びと、あたしのお礼。ちゃんと済ませないと、
気が済まないからね。」
「はあ…なんなんだよー。」
「…嫌か?」
(うっ…)
悲しげな顔で見られる。
ノゾミが先ほどから時々悲しげな顔をするのは、ある理由があった。
その顔を見せられると、サトシは反撃の仕様がない。
「…そんなことないぜ。
それがノゾミの気持ちなら、俺は喜んで受け取るさ。」
「サンキュー、サトシ。
…こんなに人に惚れて、恥ずかしい気持ちになったのなんて、初めてだ。」
頬は完全に赤くなっているとはいえ、この状況でもまだ落ち着いている。
サトシがトレーナーであり、それゆえ自分のトレーナーを認めないという信念が邪魔して、
サトシに対して、好きだという気持ちをどこかで否定したいと思っているのだろう。
その事に気付いていて、自分の素直でない性格を、自分であざけ笑っているノゾミだった。
「どうせあんた、何すればいいかわかんないんだろ?起き上がりな。」
「ああ…」
ノゾミが手を差し伸べ、仰向け状態のサトシを起こす。
そして、股を開いて見せた。
「ほら、女の子のアソコって、こんな風になってんだよ。
どうだい?割れ目があることくらいは知ってるかもしれないけど、こんな風だというのは知らな…ん?」
「す、すげえ…」
サトシが股の方を頭から覗き込んで、そこに見入っている。
「へえ、サトシもやっぱり男なんだね、ま、男の性の本能がそうさせてるんだろうけど、
これで興奮しなかったら、人間じゃ…」
「すんげえ柔らかいな、ノゾミの柔軟体操…」
…な、なんだこいつは…
いくらなんでも、こいつは人間じゃないぞ!?どーなってんだ、おい!
「すげえな、どこかで体操をやってたのか?ノゾミ!」
「…サ、サトシ…」
「あ、あれ?なんでノゾミが不機嫌になるんだ…?」
「当たり前だ、もう許さない!こうなったら実力行使だ!」
当然のごとく不機嫌になる。
こうなったら、とことん色気責め、下半身責めをしてやる事に決めた。
再びサトシを押し倒し、体重をかけないように自らの秘部がサトシの口に当たるように乗った。
「んぐ、んぐう!?」
「ほら、舌であたしのアソコを舐めな?」
「ど、どうやって…?」
「筋に沿ってなめたり、中に舌を入れて掻きまわしたり…そんな風にやってみな。」
サトシが何をしていいか分からずに、口をふさがれてる状況の中何とか聞き返す。
ノゾミはいつも通りにクールに返答する。
それとは裏腹に顔は完全に日照っているが。
(こうか?)
「そ、そうだ、その調子で…」
とりあえずまずは陰茎を割れ目に沿って舐めることに。
下から上へ舐めあげるごとに、舌がクリトリスにあたり、ノゾミの体が震える。
「や、やばいな…位置を変えさせてくれないか?」
「え?」
ノゾミの下半身からだんだん力が抜けてくる。
いつサトシに全体重でのしかかってしまうか分からない。
スリムな体型とはいえ、さすがに顔に全体重がかかったら辛いものがある。
ノゾミはサトシの前で寝そべり、膝を立てて開脚した。
ノゾミの愛液とサトシの唾液で光ってとろとろに濡れている陰茎が見える。
サトシは陰唇にゆっくり顔を近づけていく。
「さっきの様にやってくれ、中も舌や指で掻きまわしてくれ。
後な、割れ目の上の方を指でめくってみな。」
「え…こうか?」
「はあん!…そうだ、そこだ。さっきお前が知らないうちに舐めてたところだ。」
「…なんか、小さくて赤くて丸いものが付いてる…」
「そこ、一番感じるところなんだ、そこをうまく活用して、あたしを気持ちよくさせてくれ。」
正直、サトシに自信はなかった。
だが、ノゾミの気持ちに答えてあげたい、その想いが、彼を無言で頷かせた。
「…ん……あっ!…ぐ……あっ!」
(気持ちいいのかな?)
筋をなめたり、舌で中を舐めまわしたり、指で中を書きまわしたり。
サトシにも少しはいたずら心があるようで、クリトリスは後のお楽しみにすることにしたらしい。
「あ、あんた、なかなかやるなあ…そろそろ、イッちゃいそうだよ…」
「い、イッちゃう?」
「快楽の…絶頂に行き付くってことさ。
この世で、これ以上の無い、…快感ってやつさ。」
「…それが、そろそろって事か?」
「あんた、あたしの一番感じるところ教えてやったのに、全然いじくってないね。
わかってるよ、限界ぎりぎりまで気持ちよくさせた後にやった方が、効果は絶大だからな。」
「へへ…」
サトシが再び指を入れて掻きまわす、するとノゾミの様子が急変した。
「んああっ!サ、サトシ、イく、イッちゃう!」
「ノゾミ!?」
クールな態度を維持していたが、ここで遂にそれが出来なくなった。
サトシの指が、偶然にもGスポットに当たったらしい。
幸い、ノゾミの様子に驚いて動きが止まったため、指はまだGスポットから離れていなかった。
「サトシ、そこだ、んあっ、頼む!
今指にあたってるそこを、思いっきり、はあっ…いじってぇ!」
突然の変わりように驚くが、ノゾミが気持ちよさそうにあえいでるその顔を見て、
もっと気持ちよくさせてやよう、という気持ちがわいてきて、
「やあっ!は、激しい、サトシぃ!」
「もっと、もっと激しくやってやるぜ!」
指の動きをフルパワーまで上げる。
サトシの心の中には、気付かないうちに「ノゾミをいじめたい」という想いが作られていた。
「あんっ!あっ!はあん…あっ!」
ノゾミの意識が段々白くなって行く。
あまりの快感に体中がしびれてきて、もはや快感以外、いや、快感すら感じないような体になっていた。
「も、もうイッちゃう!サトシィ!」
(先に、えっと、イく?…ってことになってしまったら、意味がなくなる、威力は半減だ。
効果抜群の、耐えられないくらいの気持ちよさを与えてあげるには…今だ!)
Gスポットをフルパワーでいじりながら、顔を近づけていく。
もはやノゾミは絶頂寸前。その本当に一歩手前のタイミングをサトシなりに見計らい、
…ノゾミの意識が、一気に覚醒した。
「ああああああああああああああああああああっ!」
サトシが、クリトリスを甘噛みした。
ノゾミの体がビクンと反応し、体が弓なりに曲がり、秘部から大量に潮を吹いた。
…サトシが想像した以上の、大音量の喘ぎ声とともに。
(す…すげえ、なんだ、この液体。そして今の声のでかさ…
あれ?)
ノゾミの瞳の色は失われていた。
ボーッとした様子で、力を使い果たしたように、仰向けにぐったりとしながら息をしていた。
「だ、大丈夫か?やりすぎたか…」
「サ…サトシ、と、止めるな…」
「へ?」
「す、すごく今気持ちいい快感に、浸ってるんだ…
流石に…絶頂の時よりは…劣るけどな…」
ノゾミは、とてもモノを離せそうにないはずの状態の中で、必死にサトシに訴えた。
「落ち着いたら…全てが、全ての快感が…元に戻ってしまう…
頼む、すごい快楽の中にいる今の間に…止めを、刺してくれ…」
「ど、どうやって?さっきのように?」
「ち、がう…こ、この穴に…」
陰茎をパックリと開ける。
先ほど弄られたその場所は、愛液と唾液でとろとろのぐしょぐしょになっている。
「お、まえの…おちんちんを…入れてくれ…」
ノゾミはおちんちんなんて俗語を使いたくなかったが、今の状態ではほかの言葉が思いつかず、
単刀直入な言い方でしか、サトシは分からないと思ったのである。
サトシは一瞬戸惑ったが、ノゾミの為だと言い聞かせ、疑問を振り払いうなづいた。
「…こうか?」
「そ、そうだ…そのまま一気におちんちんを全部入れろ…!」
サトシにしては物分かりがよく、ノゾミの希望通りに陰茎をあてがい、ずぶずぶと中に入れた。
そのそりたった立派な陰茎は、しっかりと膣の中に入っていく。
…が、ここで1つ問題が起きた。
それは、彼女が処女だという事である。処女膜が破られ、異変が起きた。
「ぐああっ!」
「ど、どうした?」
「な、なんでもない!そのまま、腰を動かして、抜き入れを繰り返してくれ…」
サトシは首をかしげるも、腰を打ちつけはじめた。
そのたびにノゾミは苦痛で顔をゆがめる。先ほどの快楽が、だんだん消えていく。
…だが、快楽がすべて消え終わる前に、サトシが動きを止めた。
「ど…どうした…」
「どうしたじゃねえ!血が…血が出てるじゃないか、ノゾミ!」
「き、気にするな」
「そんなわけにはいかない!ノゾミが痛みに耐える姿なんて、俺は見たくない!」
サトシが動きを止めた事により、ノゾミは少し楽になった、
サトシの陰茎が差し込んである影響で、少しづつ快楽が戻っていく。
「…わ、悪い、確かに、痛い…だが、抜かないでくれ…」
「ノゾミ?」
「最初は、こういうものなんだ…頼む!
あたしは、あんたに、捧げたいんだ…」
「…わかった。でも、それだけ痛がってたら…」
「…少しこのままでいてくれ。それだけで、大分、楽だ…」
ノゾミの言う通りに、サトシは動きを止めた。
そして、上半身を少しづつ、ゆっくりとノゾミに近付ける。
「…サ、サトシ?」
「ノゾミ、体が、冷え切ってる…」
先ほどまで快楽で熱で覆われていたはずのノゾミの体は、
処女を奪われたことによる痛みと、痛みによって生まれた恐怖で、冷え切っていた。
サトシはそのノゾミの体に自分の体をぴったりとくっつけ、温める。
(…ヒカリも、いつもサトシのこんな温かさをもらいながら、過ごしているのか…)
お互いが背中に腕をまわし、抱き合う。ぬくもりを感じる。
いつの間にか痛みは消え、体は温もり、先ほどに匹敵する陰茎から施され、それに浸っていた。
「サ…サトシ、た、頼む、…んああっ!」
ノゾミがGOサインを出す。
声を出した事により、さらに陰茎から快楽を感じ取り、喘いだ。
「ひゃあああああっ!あん、あっ!」
(今度は、痛みなんて、感じてないみたいだぜ。これなら大丈夫だ。)
激しく腰を振るサトシ、再びノゾミの視界はぼやけ、快楽以外何も感じない体に。
理性は消えていき、ノゾミも激しく腰を振り返す。
「く…こりゃきついぜ…」
「ひゃ、ああああああああああっ!
…あっ、あっ、あっ!」
ノゾミが絶頂を迎えた。だが先ほどと違い、サトシの動きは止まらない。
さらに快楽を与えられ、喘ぎ続ける。
もはや、クリトリスの甘い噛みで感じた時の絶頂を、大きく上回っていた。
ノゾミも、先ほどのが究極の快感だと思っていたのか、
「な、なにこれえ!す、すごいよお!」
普段声の低いノゾミのオクターブまで上昇し始めた。
いつものクールでボーイッシュな語り口は、純情な女の子のものに変わっていた。
「ああん、ら、らめえ、さろし、らめええ…ああっ!」
「くっ!なんか、さっきと、同じような…」
「もっろ、もっろお!」
もはやろれつまで回らなくなっていた。
ノゾミの理性は完全に吹き飛び、もう快楽を求めることだけを考える頭になっていた。
ボーッとした頭で、ひたすら快楽を求め続ける。
「ノ、ノゾミ、俺、女の子のおっぱい、飲んでみたいんだけど…」
「ひゃ、ひゃう?」
了承を得る前に、背中を折り曲げて、乳首に吸いついた。
ヒカリに負けず劣らずの膨らみかけのまな板、ましてやハルカとは勝負にもならないが、
乳首そのものはしっかりとぷっくりと丸くなっており、おっぱいそのものだった。
「ちゅうううう…」
「ひゃあううう、は、激し…あううっ!ひゃうううううううううっ!」
再び絶頂に達した、むしろ先ほどの絶頂を超えているくらいである。
またビクンと体が跳ね、背中が弓なりに曲がる。
だが、サトシは行為を止めない。
さっきノゾミに「止めるな」と言われ、止めてはいけないと感じたからだ。
乳首から口を離さず、吸い続ける。
「んんんんんっ!」
(!!?)
乳首から、何かが飛び出してきたように感じた。
まさか、そう思った。
(な、なんだ?ま、まさか、おっぱいが本当に…)
もう一度強く吸った。さっきよりもっと強く。痛いくらい強く。
歯が当たらないように注意しながら、フルパワーで吸い続けた。
「やあん、おっぱい、あたしの、サトシに、はあああん!」
(…あれ、出ないな…)
だが、さっきのように何かが飛び出したような感触はない。
あれは本当に母乳だったのか、単なる気のせいなのか。
だが、唇が疲れてきて、結局あきらめた。
その間にも腰を振り続け、サトシの下半身にもしびれが来始めた。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ…」
「くうっ、の、ノゾミ、さっきのように、出そうだ…」
「き、来て、あたし、欲しいの、サトシが、欲しいの!」
すでにノゾミは限界を超えていた。
何度も絶頂を迎えて果て、サトシの止まらない行為に再び意識が覚醒され快楽を追い求め、
そしてまた果てて、その繰り返しだった。
絶頂を迎えて満足なはずなのに、サトシが行為をやめないから、もっと快楽を期待してしまう。
そして、サトシもまた、絶頂を迎えようとしていた。
「で、出る、さっきのように、俺のが…」
「出して、お願い、サトシ、中に、たくさん、出してほしいのお!」
「わ、わかっ…くっ!」
射精した。その瞬間、ノゾミの意識が強く覚醒した。
「ああああああああああああああああああああああああああああっ!」
先ほどと比べ物にならないほど大きな喘ぎ声、部屋中に響き渡る。
いや、もしかしたら、ポケモンセンター全体にまで届いたかもしれない。
「くあっ、はあ、はあ、はあ…」
サトシも一気に自分の体力をノゾミに預けた。
が、一呼吸置いてから、再び腰を動かし始めた。
「ひゃ、ひゃう!?」
「はあ…はあ…ノゾミ、ノゾミ!」
ノゾミは驚いていた、普通ここで行為を止めるものじゃないのかと。
だが、サトシはそもそも知識なんてない。
だから、ノゾミの「止めるな」という言葉を本当にまっ正面で受け取った。
彼の頭の中で勝手に、止めてはいけない、と言う思考回路が出来てしまっていた。
「あん、あん、んあっ!もっと、お願い!」
「ひゃあん、サ、サトシぃ!」
「サトシぃ、全部、もっと、ちょうだい!ひゃあああああああああんっ!」
最初は戸惑っていたものの、途中からどうでもよくなった。
ノゾミもまた、ただ快楽だけを求める、という思考回路しか頭の中になかった。
ただひたすら、サトシからの快楽を追い求め続ける。
もはや動く元気は残っていない。
ただ、全身裸という恥ずかしい格好を、サトシにさらす、それだけ。
サトシはそれに答えて、激しくセックスをしてくれる。
絶頂に行き付くたびに、意識が失われ、
腰を打ちつけ快楽を与えられて意識が覚醒し、
さらに互いを求めあってさらなる快楽が体中を駆け巡って。
それがもう何度続いただろうか。
だが、ノゾミは幸せそうな顔をしていた。
サトシが、自分のために、たくさん気持ち良くしてくれるから。
そして、自分のすべてを、サトシに捧げられたから。
何度も何度も快楽を与えられる。絶頂に達しても体はぴくりとも動かない。
だけど、与えられる快楽だけは、変わることなく気持ち良かった。
どんなに疲れていても、自分の疲労に気付かないくらいの、快感が、ノゾミを支配し続けた。
「………っ!」
声も出ない、表情も少し笑った状態のまま、全く変化がなくなってしまった。
それでもサトシが行為を続けてくれる事が、とてもうれしかった。
他人に分かるように表現できていなくとも、快楽だけは強く感じていたから。
「…うーん?今何時だ?」
結局サトシは自分から辞めることはなかった。
サトシが疲労で意識を失うまで、ずっとその行為は続いていた。
気が付くと、時計の針は…
「あれ?8時か?
ていうか、あれだけ激しくやって、あれだけたくさんのものを出して、疲れてて、
…それでいてこんなに早く起きられるとは。」
確か5時ごろ食べ始めて、5時半ごろ食べ終わってそのあとノゾミとあって、
なんやかんやあって、いろんなことして、…すると眠りについたのは…
そんな感じで過去の事を思い出していく。
「1時間半くらいか、寝てたのは。」
意識を失うくらいまでセックスして、よくその程度の睡眠時間で起きられたものである。
サトシの体力が相当のものであるという証かもしれない。
ふと見ると、横でノゾミがすやすやと寝ている。
「おーい、起きろよ。ノゾミ。」
「…うーん、サトシ?」
ものすごく瞼が重そうである。ノゾミは感覚がなくなるほどだったくらいなので、
サトシよりももっと疲れていた。
「タケシ達が待っているから、俺、そろそろ帰るよ。じゃあな。」
「あ、ちょっと待って。」
「え?
…ていうか、さっきからどうしたんだ?」
「なにが?」
「いつもより、その、口調が違うような…」
ノゾミの声調は女の子にしては低い。
だが、今のノゾミは、先ほどの情事と同じ声、1オクターブ高い声をしている。
「…サトシの前では、これからは2人きりの時は、こんな風にして喋りたいなって、思ってるの。
あたしね、いつもクールな感じでしゃべってるけど、それは自分を強く見せるための飾り。
本当のあたしは、こっちなの。」
頬を赤くして、恥ずかしそうにサトシを見る。
正直、こんなノゾミは、見た事がなかった。
…だが、次の瞬間、すぐにいつものノゾミに戻った。
「まあいいや、今から話すことは、こっちの口調の方が何かとやりやすい、聞いてくれ。」
「は、はあ…」
いつものクールなノゾミに戻る。
このギャップは可愛らしさを通り越して、むしろ混乱する。
「あたし、あんたに惚れたって言ったよな。だけど、心の底から、好きにはなれない。」
「…?なんでだ?」
「あたしなんかより、あんたにはもっといい女の子がいる。
そもそも、さっきやったことは、本来お互いへのお礼に過ぎないしね。」
「俺に、ふさわしい女の子?」
「おいおい、わかんないのか?本当に鈍感だな。
あんたには、いるじゃないか、あんたにとっての妖精が、ヒロインが。」
「よ、妖精…?」
妖精なんて言葉、サトシは久しぶりに聞いた。
慣れてない言葉ゆえ頭をひねる。
「いつも仲良くしていて、いつも一緒にいるじゃないか。
そんな近い存在があるのに、時々しか会わないあたしのような存在は、ふさわしくないからね。」
「…いつも仲良く、いつも一緒に…」
「ま、それが過去形でもかまわないけどね。
どこかで聞いたけど、確かホウエンでも女のコーディネイターと旅してたんだっけ、あんた?」
「あ、ああ…」
「あんたにとっての理想の妖精は、そう言った奴らだよ。
ほら、聞くべき事聞いたら、帰った、帰った。」
「わ、わかった、じゃあな…」
ノゾミの言ってる事をいまいち理解できないまま、サトシは部屋を出た。
ノゾミが今にも泣きそうな、その様子に気付くこともなく。
「ぐす…サトシ、あたし、あたし…サトシの事、好きなの、それだけは、変わらないから…」
1人、部屋の中で静かに泣き続けた。
そして、先ほど無理やり起こされたこともあり、再び眠りについた。
寝ている間も、涙をこぼしながら。
「わりい、タケシ、遅くなっちまったな!」
サトシが自室の部屋を開けた。…はずだった。
「…きゃああっ!?サトシ!?」
「わ、ヒ、ヒカリか!」
「ちょっともう、女の子の部屋に、勝手に入らないでよ!」
ヒカリもサトシ同様恋には鈍感だが、きちんと性というものは分かっている。
異性に裸を見られたら、恥ずかしがるというちゃんとした正しい感覚を持っている。
「着替え中とかだったらどうするのよ!
まあ、今は幸い何もしてなかったからいいけどね。」
「ご、ごめん。」
「ダイジョウブダイジョウーブ。気にしない気にしない。
タケシもサトシの事はそんなに心配してなかったから、それも気にしなくていいよ。
ピカチュウもちゃんとふれあい広場から引き取ったから。」
「ああ、そうなのか。」
早めに起きられたのが幸いしたな、そう思いホッとした。
「そうだ、せっかく来たんだから入ってよ。ほらさ。」
「ああ、じゃあ、せっかくだし。」
一応性の知識はあるが、ヒカリもサトシ同様異性をあまり気にしない性格。
ちゃんと服を着ていれば、異性でも何の抵抗もなく部屋の中に誘う。
仲が良く、(友達として)気に行っているサトシなら、なおさら躊躇なく誘う。
「でさー、ミミロルがさ!」
「ははは!」
ヒカリがコンテストに負けた悔しさ、悲しさを紛らわせたかった。
サトシと話しているうちに、少しずつ元気が出てきた。
…と、ここでサトシが、ノゾミに言われたことを思い出す。
「どうしたの?変な顔して。」
「ああ、うん…」
「話してよー、サトシ!」
「ええっと、その…」
「気ーにーなーりーまーすぅー!」
ヒカリに迫られて、ノゾミとの事を話す。
当然情事の事は話さない。口を滑らせないよう注意しながら、ノゾミの部屋を出る前に聞いたことを話す。
「妖精?…どういうことかな。ノゾミも変なこと話すよね。」
「だろ?俺にもさっぱりわからん。タケシに聞いた方がいいかな?」
「…いや、それは絶対にダイジョバない。」
ある程度、ヒカリは勘が働く。実際かなり頭はいい。
女の子から聞いたことをタケシに話したら、ろくな事がない。そんな気がした。
「…ハルカに言ったら、なんて答えが返ってくるんだろうな…」
ふと、そう思った。
サトシにとって、女の子といえば後はハルカとカスミくらいしか思いつかない。
カスミとの旅は終わってからだいぶたつので、真っ先に思いついたのはハルカの名前だった。
「ハルカ?あ、もしかして、人呼んでホウエンの舞姫の、ハルカさん?」
「知ってるのか?」
「あったり前じゃない!こっちの地方でも、ハルカさんのファンは、すごく多いよ!」
「へえー、そうだったのか。いつも一緒にいたから、そんな意識なかったなあ。
いつか会える機会があればいいな!」
「うん!」
…その後ハルカとはミクリカップで再開した。
だがその時はこの時の事を完全に忘れており、結局聞かずじまい。
「あーっ!」
「ど、どうしたの大声出して!」
「結局ハルカに、ノゾミのあの言葉の事を聞くの、忘れてた!」
「あっちゃー、そう言えばそんな事もあったわねー。
なんでノゾミとミクリカップで会ったのに、思い出さなかったんだろ。」
ノモセシティの辺りで思い出したが、時すでに遅し。
だが、それでもハルカとは2度と会えないわけじゃない。いずれ会える時も来るだろう。
そして、その機会は、ちゃんとサトシとヒカリの元に、やってきた。