翌日になっても、ハキは途方に暮れていた。
ポッタイシやポニータがポケモンフーズを食べているのを、ボーッと眺めている。
あまりの落ち込みように、ポケモン達も食べるのをそこそこに、ハキを見ている。
「お前たちは食えよ。…僕は、食えない。」
ラナに甘えたいなあ、そんな事を想っている。
あの柔らかい肌、自分を受け止めてくれる心。あれが自分に一番必要なものなのに。
「わわっ!」
あまりの落ち込みようにしびれを切らし、ポッタイシがあわをハキに吹きかける。
「な、何をする!…え?」
ポッタイシがじっとハキを見ている。
そこからポッタイシが何を言いたいかを、ハキは感じ取った。
ポケモン達をボールに戻し、決意した。
「そうだ、そんなに必要なのに、なんで僕はあきらめてるんだ?
たとえ前より嫌われたとしても、そうだ、どれだけしつこいと思われたっていい!
それが、…ラナに、甘えるためのものなら…。」
ラナがどこにいるのか分からない。だが、キッサキのどこかに入るはず。
いや、世界のどこに行こうと探し出す、そう決意して。
ハキが今まで出会ったトレーナーの中で、一番特別なトレーナーだから。
その頃。
「エ、エレキブル!」
「どーしたの?これで2対1、あなたのポケモンはあと1体。」
「ぐ…か、勝てばいいんでしょ!?」
「でも、あたしの2体目、ユキノオーはほとんど無傷よ?
あなたは確かに強い、でも、何か心に変なもの抱えてるみたい。そんな感じがする。
そんな気合いの入ってない状態で、あたしに勝つって方が、無理ってハナシ!」
ラナとスズナが戦っている。
だが、かなり苦戦しているようだ。
「負けるもんですか、絶対に!」
「あなた、何のためにバトルしてるの?まあ、いろんな理由でバトルするんだろうけど。
今のあなたは、何かをバトルにぶつけてる気がする、そんな目的で、あたしは負けないよ!」
「うるさい!
(タイプ相性では、ゴウカザルは圧倒的に有利なんだ!負けるもんですか…あっ!)」
ゴウカザルのモンスターボールに手をかける。
が、ボールのスイッチを入れる前に手を滑らせ、鞄の中に入ってしまった。
「あ、もう!」
「あはは、こりゃ相当重症ね。」
「もう、小さい状態で落ちたら、探すのが面倒なのにー。…あれ。」
鞄をあさると、あの無線が出てきた。
別にハキに対して怒っていたわけじゃない。ハキの事を忘れる事が出来ない。
だから、捨てようにも、捨てることが出来ずに、入っていた。
(ハキ…
あの時、無理言っても、ずっと一緒にいてって言えてれば…
ハキに迷惑ばっかりかけて嫌われ続けてもいい、あたしを嫌うハキとでも、一緒にいたい…)
「どうしたの?まだ見つからないの?」
(ハキの想いを無視してでも、一緒にいたい、守りたい、甘えさせてあげたい…
それがハキに取って迷惑で、一方的な、歪んだ愛だとしても、それでもあたしは、構わない…!)
手が震え、涙が止まらなくて。
全てが分からなくなって、…ラナの心は壊れかけていた。
―ラナ、どこにいるんだ!―
「…え?」
突然聞こえてくる、自分の求める愛しい声。
それは紛れもなく、無線から聞こえてくる、ハキの声。
(聞こえたら、返事してくれ!どこにいるんだ!)
「ハキ…ハキ、なの?」
(ラナ!聞こえるのか!?)
「き、聞こえるよ…」
何が起こっているのか、よくわからない。
スズナは、ははあん、と言った顔で。
「あらん、なーんとなく、わかっちゃった♪
どうする?ジム戦、放棄する?」
「ジム戦!?キッサキジムだな、よし!」
通信が切れる。
もしかして、本当に来てくれるのだろうか。しばらく途方に暮れていた。
「もしもーし、チャレンジャーさーん?
ジム戦の最中に、ちょっと失礼じゃないんじゃな…!」
直後、バトルフィールドのドアが開く。
もちろん、そこに立っていたのは、ラナの愛しい男の子。
「え…ハキ…」
「よかった…ラナが、見つかって…
探そうと思って、まず最初にジムに行ったと思いつつ、ダメもとで無線に連絡をかけて見て…
ちょうどラナが、いま僕が向かっていたジムにいたから、もう夢中で…」
1歩ずつ、ゆっくりラナの元へ近づき、そして…
…先に口を開いたのは、ラナの方だった。
「ねえ、お願い、あたしに抱きついて!
どんなにあたしの事が嫌だと思われたっていい!抱きついてって言いたいの、して欲しいの!
後悔してる…あの時、無理矢理でもハキにずっと一緒にいてほしいって言えなかったことが…」
「…ラナ。」
「どんなにハキに迷惑をかけたっていい!ハキが嫌がったっていい!ハキを傷つけたっていい!
お願い!」
傍から見たら、とんでもない事を言っている。
完全にヤンデレ状態になっているが、ハキは優しく見つめている。
ラナの心が壊れかけていることに気付いていたから。
「ちょっと、ジムリーダーのあたしは無視ですかー?
恋にうつつを抜かす、失恋で精神崩壊する、ほんとーに気合が入ってないねー。」
「…悪い、ジムリーダーさん、
ちょっとあんたに気合を入れなきゃなんねーみたいだな。」
ラナの心を元に戻す。
そのための劇薬を服用させてやらないと。効くかどうかは知らないがな。
「ハッキリ言っとくが、失恋なんかじゃねーぞ。
それに、ラナは失恋程度で精神崩壊するほどやわな子じゃねえ。
ラナは、大切な人を守れる、強い心と力を持ってんだよ、あんたなんかには負けない。」
「ハキ…?」
「ラナ、見せてくれ、僕を守ってくれる、その力を、僕とあのジムリーダーにさ。
僕はその力を信じる。…信じるから、ずっとラナのそばにいる。」
そばにいる、と言ってくれた。
力の抜けていた脚に力が入り、立ち上がった。
そして、先ほど鞄に落ちたゴウカザルのモンスターボールを取りだす。
「スズナさん、言ってましたね。バトルも、おしゃれも、恋愛も、気合いだって。
あたしは、ハキがそばにいる限り、心が折れることはありませんから。」
「…ふう、よーやく熱い試合が出来るわね!
そう、あなたの言う通り、ぜーんぶ、気合いなのっ!」
「ハキ、あたし、スズナさんに勝って、あたしの強さを見せてあげる。
ハキがこれからも、ずっと、永遠に!安心してあたしに守られるようにね!」
「頼むよ。
僕は、君に守ってもらわないと、生きていけないから。」
自分の力を必要としてくれる人。
その人からもらった勇気は、大きな力となる。
「バッジ、8つ。」
「とれたよ、ありがとう。」
「ラナは、すごいよ。」
「ハキは、2つだもんね。」
「うるさいな。」
短い言葉をお互いにかけ合う。
あのあとゴウカザルで逆転勝ちし、見事にグレイシャバッジをゲットした。
「さっきの言葉、本当だよね?
これからも、僕を、ずっと守り続けてくれる、って。」
「うん。…ハキを、一生、守ってあげる。」
ポケモンセンターの部屋で、ベッドに腰掛けながらお互い恥ずかしそうに話している。
そっと、ハキがラナに寄り添い、甘えたそうにする。
ラナはエヘヘ、と笑いながら、そっと抱いてあげる。
「あたしね、…うん、あたしの秘密、教えてあげる。
トバリに住んでたんだけど、よくスモモさんのところに遊びに行ったの。」
「スモモさん…ああ、トバリジムのジムリーダー。」
「弟と一緒にね。
…お父さんもお母さんも、あたしに冷たかったから。」
「そ、そんな…」
驚いて、思わず抱いていた腕を離し、ラナを見つめる。
「…お願い、ハキを抱いたままでいさせて。あたしの可愛い、ハキ…」
「う、うん。」
再び抱きつくハキ。
だが、勢い余って、布団の上に押し倒す形になってしまった。
「…もう、甘えんぼ。話、続けていいかな?」
「あ…う、うん。」
「お父さんもお母さんも冷たかったけど、弟と、スモモさんがいるから、楽しかった。
弟と、すっごく仲が良くって、いつも一緒で、
お風呂にも一緒に入って、一緒に寝て、いっつもあたしに、くっついて。」
まるで、ハキとおんなじである。
ハキを嬉しそうに抱きしめる理由が、ここにあった。
「…なんだけど、ある日ね…」
…。
「ラナ、あなたがいると、コウジ(=弟)がおかしくなっちゃうのよ。」
「コウジに二度と、かかわるな、仲良くするな。
コウジが迷惑している。」
ラナの部屋の中で、そう冷たく言い渡される。
両親がかばうように、弟のコウジの手をつないでいる。
「そ、そんな!コウジも、あたしも、すごく仲がいいのに!
コウジがいなかったら、あたし…」
「そうは言っても、コウジは迷惑しているって言ってるぞ。そうだな?コウジ。」
「そ、そんな…そんなはずない、そうよね?コウジ!」
…だが、ラナの想いは、裏切られた…
「お姉ちゃん…嫌い。」
「え…?」
「そう言う事だ、わかったな?」
両親とコウジが、ラナの部屋から姿を消した。
ラナの目の前が、真っ暗になった。
何が起きているか、わからなかった。コウジの言葉が、信じられなかった。
「なんで…なんで?
そうよ、コウジは、あの2人に、無理やり言わされたのよ、そうよ!」
ラナはそう信じていた。そう、全ては、両親が悪い。そうにきまってる。
…事実、あの時、コウジの後ろには銃が突き付けられていた。
…。
その後この事をスモモに打ち明けると、『そんな酷い家族と一緒にいることなんかない』と言われた。
そしてヒコザルとお金を渡され、トレーナー修行の旅に出ることを勧められ、今がある。
「ひ、酷い…」
「今思えば、あたしが仲良かったと思い込んでいただけだったのかも。
あたしが勝手に思い込んでただけで、弟は、あたしの事1つも気にいっちゃいなかった。」
「そ、そんな…
弟さんはそんな事思ってないって、僕には分かる!」
「いいのよ、ハキ。
仲良しだと思わせていてくれただけでも、あたしは嬉しかった。
弟は、コウジは、あたしがそばにいるのが、迷惑だった」
「そんなことないよ、お姉ちゃん!」
…え?
今の声…今の、響き…あれ?
似てる…コウジ?…いや、違う。
『弟』として、似てる…?
「お姉ちゃん、そんな事、言わないで!」
「ハ、ハキ…」
強く抱きしめるハキ。
その姿は、…ラナには、コウジと重ならなかった。
だが、その姿は、『弟』に、思えた。
「ラナには悪いけどさ…
仮にラナの弟が、仲良しだと思っていなかったとしても、親に強制的に言わされたとしても…
そんなの、弟じゃないよ!」
「ハキ…?」
普通なら、怒る。コウジの事を気に入っていたから、なおさらだ。
だが、ラナは、その言葉を冷静に聞いていた。
…自分が心のどこかで思っていたことと、重なっていたから。
「仲良しじゃなきゃ、兄弟じゃない!
親に強制的に嫌いだと吐かされそうになっても、そんなの関係ない!
…本当に仲良しなら、どれだけ親にたたかれようと、殴られようと、親なんて恐れないはずだ!」
「ハキ…」
「僕も、小さいころから、両親が仕事で忙しくて、しょっちゅう家を空けてて、
というより、ほとんど会えなくて、一人っ子だから一人ぼっちで。
いっつも一人だった、友達も、隣の家にいた幼馴染の1人だけ。」
『なんだってんだよー!』が口癖のせっかち少年の事である。
シンジこの一件でハキと同じくポケモンをナナカマド博士からもらい、旅をしている。
最後に会ったときにはバッジを6つゲットしていた。
時々彼と会うたびにバトルをしているハキだが、結局1回も勝ったことがない。
「だから僕、ずっと誰かに一緒にいてほしいと思ってた。優しくしてほしかった、甘えたかった。」
親の愛を受けられず、ずっと孤独だった。
孤独でいる事に慣れてはいた。でなければ、ポケモンがいるとはいえ1人で旅が出来るはずもない。
だから、自分を優しく包んでくれる存在を、ずっと求めていた。
…そう、ラナのような。
「…。」
「ラナのような、お姉ちゃんが、欲しい。
ううん、違う。ラナしかいない。ラナに、お姉ちゃんになってほしい。」
ラナもまた、コウジと一緒に過ごすうちに生まれた母性が、ハキのような存在を、求めていた。
コウジが目の前に消えてから、ずっと。
「ねえ、お願い、ラナ。僕の、お姉ちゃんになって。
血は繋がってないけど、そんなの関係ない、お互いに、認め合えばいい!
僕はもう、どこにもいかない!ラナしかいないから!
昨日の晩の、ラナのいない一人ぼっちのベットが僕には耐えられなかったから!」
「…。」
自然と涙がこぼれた。
そうだ、今、自分がハキの想いに答えてあげるには…
「ハキ、一緒に、お風呂に入ろっか。」
「…え?」
「お姉ちゃんと、お風呂に入ろっか。
小さいころから、ずっと一緒に入ってたでしょ?」
笑顔でそう言われて、流石に唖然とした。
しかも、ずっと兄弟だったような言い方。
違う。本当の兄弟のように思ってくれるからこそ、ラナはそう言ってくれた。
想像できる、思い出せる。小さい自分と、小さいラナが、一緒に遊ぶ姿が。そんな過去が。
僕たちは、兄弟。そうなる運命を辿って、出会ったんだ。
「うん!お姉ちゃんとお風呂だ!」
そう言って抱きついた。
ハキが初めて、温もりを手に入れた。本当の家族という、ぬくもりを。
(ワクワク…)
ハキが今か今かと待っている。
お姉ちゃんはちょっと脱ぐのに手間取るから、先に入ってて、と言われた。
(ラナの…裸…)
ハキだって男。今までの抱きつきはたんに甘えたい一心だったが、
流石に裸ともなれば性的な事を意識する。
しかも性の知識も人並みにはあるので、…ラナとのセックスもつい想像してしまった。
(や、やばいやばい、流石にそれはいけない…
でも、ラナの裸…)
やはり想像してしまう。
服の上からでも認識できた細いウエスト、理想的なスタイル。
美少女の3文字が見事にあてはまるその姿から、服をはぎ取ったら…
「おまたせーっ!」
(き、来た!…!!??)
だが、ラナの姿と彼の予想は大きく異なっていた。
…いや、いい意味で異なっていたのだが、ハキは唖然とした。
普通の10歳の女の子と変わらない、膨らみかけの胸。
さっき見た時まで、確かそうだったはずだ。そんな自分の記憶を、疑った。
「お、おっきい…」
「ん?なーにが?」
「い、いや、なんでも!」
思わず180度体の向きを変え、ざぶんと身を沈める。
一応鼻で息が出来る程度には留めているが、息が出来るものなら潜りたいくらいだった。
ちなみにラナは、ハキがこんな反応をする原因は、ちゃんとわかっていた。
大人のグラビアアイドルを凌駕する、ラナのおっぱい。
陰茎どころか、頭部すら楽々挟みこめそうなくらい大きい。
「まーた大きくなっちゃったー。
Gかなー。Iだったりしてー。」
大きな独り言。
ますますハキは恥ずかしくなる。
…どーしてもその天然記念物が気になり、ちらっと後ろを見る。
ハキに目もくれず、胸を大っぴらにして、目を閉じてシャワーを浴びている。
「…さっきから、見てるでしょ。視線感じるな〜。」
「み、見てないよ!」
ザバンという水音とともにまた後ろを向くハキ。
その水音を聞いて、やっぱり見てたんだ、と思いつつ、シャワーを浴びている。
シャワーの音が止まる。
もうすぐ、入ってくる、おっぱいの大きな、ラナが入ってくる。
期待と、緊張で胸をいっぱいにしながら、その時を待つ。
…だが、一向にラナは入らない。
もしかして消えた?そう思いつつ、恐る恐る後ろを向いてみる。
180度首を曲げた時、ラナの巨乳が目の前にあった。
浴槽の外で、ラナがたわわに実ったその巨乳を、ハキの目の前に位置させるように両手で持ち上げていた。
「みーちゃった、いけない子ね、ハキ♪」
「あ、あわわ…ラ、ラナ?えっと、こ、これは…」
「お姉ちゃん、でしょ?」
「ご、ごめんなさい、お姉ちゃん…」
「いやん、そんなにおっぱいが好きなら…えいっ!」
むぎゅ、まさにその擬音語がふさわしい行動。
柔らかい感触が、頭部全体を包み込む。
「おっぱい、大好き?」
「むぎゅぎゅ…もがが…」
巨乳に包まれているせいで、まともに返事が出来ない。
必死になって、何とか首を横に振る。
「あれー?素直じゃないなあ。
お姉ちゃんに対して、うそつくんだー。」
「むむう…ぷはあ!」
ラナがハキを解放して、自分も浴槽につかる。
そして、胸をハキにくっつけるようにして寄り添い、もう一度言う。
「おっぱい、大好き?
…お姉ちゃんね、ハキが素直に答えてくれたら、ご褒美あげる♪」
「ご、ごほうび?」
「おねえちゃんのおっぱい、飲んでいいよ。」
おっぱいが、おっきなおっぱいが、ラナのおっきなおっぱいが、欲しい。
ハキの理性とプライドが、ラナの包容力に、包まれて、
「ん…」
(あ!もう、素直に答えたらって言ったのに、何も言わずに吸いついて…
んもう、すっごくかわいいっ!)
無我夢中で吸いつく。
両手で右胸を持って、乳首に夢中になって吸いつく。
誰にも甘えられず、ずっと孤独だった自分、そんな自分を受け止めてくれたラナとおっぱい。
「…え?どうしたの、ハキ?」
「すごく…れしいんだ…こんなに…甘えられて…エッチが出来て…」
「もう、赤ちゃん!」
「僕…エッチな男の子だから…すっごくスケベだから…」
涙を流しながら、ラナの巨乳にしゃぶりつく。
ラナのからかいも言葉通りに素直に受け取る。
…やっぱり、ハキってば、可愛い!
「…あれ、でも、なんで急に巨大化したんだ?」
「あ、そこをついてくるかー。
言っとくけど、この胸のせいで親に嫌われたわけでもないし、友達からいじめを受けたわけでもないよ。」
「はあ…まあ、そんな風には思ってないけど。」
「…旅に出てから、急激に大きくなり始めた。数カ月もたたないうちに、ペチャパイが、こんなにおっきく。
いまもまだおおきくなりつづけてるのかも、これ以上大きくなったら、流石にやばいな、あはは。」
笑い事なのか?と思いつつ呆れるハキ。
しかし、肝心の事は全く分からない。
「で、なんで僕の前で急に巨大化したの?」
「ああ、いわゆるさらしってやつ?タオルでぎゅうぎゅうに巻きつけて、抑え込んでたんだ。
ほら、なんか気味が悪くってなんか嫌でさ。あ、あとさ、雪山の時、ハキ言ってたじゃん!
あたし息苦しそうだって、さ。あれ、さらし巻いてたおかげで、呼吸困難になってたの。」
「…それだけじゃないだろ。」
「え?」
「最大の理由が、あるだろ。
どうしても、胸を抑えつけておきたかった理由。」
「ど、どうして、分かるの?」
「理由の内容までは、分からない。
でも、今ラナが話している様子が、すごく悲しそうに見えたから。
裏を返せば、話したくなさそうだったけど、…できることなら、言ってほしい。」
「…そっか。うん、やっぱり正直に言う。」
弟に、隠し事は、なし!
大丈夫、絶対に受け止めてくれる!…あ、受け止める存在は、あたしか。
「弟がいなくなって、自分の嬉しさ、悲しさ、そう言った感情を吐き出す存在がなくなって。
…胸が感情でいっぱいになって、それで膨らみ始めて。
本当の原因はもちろんホルモンだとかそうだとは思うんだけど、そう思っちゃって。」
「弟さんへの、想い…」
「そんな膨らみ続ける胸、きっと、弟がいないから、感情を吐き出せないから!
感情を吐き出せなくなったあたしは、感情を抑えつけるしかないの!」
「胸のふくらみを抑えつけることで、感情の膨らみを抑えつけようとしたわけか。
胸が膨らんでいくのを見ると、自分の感情を吐き出す存在、
そして忘れたい存在である弟さんの事を、思い出してしまうから。」
ハキは、おっぱいは大きい方が好きである。
だが、そんな話を聞くと、大きなおっぱいが切なく見えた。
そんな風に思いながらおっぱいを見つめるハキの姿を、ラナはまたからかう。
「…あ、またおっぱいを見つめちゃって、スケベ。
でも、今は感情をためこませてくれた弟に、感謝してるかな。
だってハキ、おっきなおっぱいが大好きだもん!」
「…もう、何も押さえつける必要はないよ。」
「え?」
「僕がいる。僕という、感情を吐き出す、存在がね。
もう、何も抑え込む必要はないんだ。」
「あ…ハキ!」
「僕の名前のハキは、『吐き出す』のハキ。…なんかちょっと変だけどね。
でも、もう何も抑え込む必要なんてない、僕にすべてをぶつければいいんだ。」
「…だめよ。」
「え?」
拒否の言葉に、少し不安になる。
だがそれも、取り越し苦労だった。ラナが笑って、こういったから。
「だってあたしは、お姉ちゃんだもん!くよくよしたところ、ハキに見せたくないもん!
あたしはお姉ちゃんだから、ハキのぜーんぶを、受け止めてあげるんだから。」
「…ははは。
それが、ラナが感情を吐き出すこと、なんだけどね。」
「うん…
そう、あたしは、誰かに甘えてほしかった、これが、あたしが感情を吐き出す方法。
だけどそれでも、あたしは感情を受け止める立場、それがハキにとっての、お姉ちゃんって事!わかる?」
「はは…ああ、分かってる。
こんな風にね!」
「きゃあ!やん、もう、エッチ!
そんなにおっぱいが好きなら、えいっ、これでどおだっ!」
「もが、もがが!?」
巨乳にしゃぶりつくハキの顔を、その顔面より大きな乳房に抑えつける。
負けじとハキも、もっと強く乳首に吸いつく。二人のじゃれあいバトルが始まった。
…感情を吐き出せる、ようやく、吐き出せる。
これで、あたしの胸、縮んじゃうのかな。ねえ、ハキ?
…それはないよ、ラナ。
ラナが感情を吐き出す分、今度は僕が感情を吐き出してラナにぶつけるから。
ラナが吐き出した感情の分だけ僕がぶつけて、その胸に溜め込む。だから差し引き0さ。
…本当にそう思ってるの?
…ばれたか。
感情をラナと同じだけ吐き出して溜め込む分、そして+α。
…正直に言ってごらん。
言えれば、ご褒美を出すから。
…僕の、ラナのおっきなおっぱいが好きって想い。
その願望をラナにぶつける事によって、その分ラナの吐き出す感情を上回る。
…よーするに、ハキの願いがあたしのおっぱいに届くってことね。
あーあ、こりゃ肩こりがひどくなるなあ。
しかも目立つし。まわりからはやらしい目でみられるし。
…ごめんなさい。
…いいのよ、お姉ちゃんは気にしないから。
それじゃ約束通り、正直におっきなおっぱいが好きって言ったご褒美。
…おっぱい、くれるの?
…今も飲んでるくせに。ううん、もっといいご褒美だよ。
…えっと、なあに?
「お姉ちゃんと、セックスしよ?」
…続く。