ぺた、ぺた。ひた、ひた。暗い夜道に、静かな足音がかすかに響く。  
向かう場所は、粗大ゴミ置場。そこには、足音の主の好物が沢山あるからだ。  
足音の主は、無念な気持ちや、どす黒い怨念を食糧としている。  
名を、ジュペッタと言う。捨てられたぬいぐるみに怨念が籠り、ポケモンと成った存在。  
口はジッパーで閉じられ、歩くたびに、ジッパーの金具が『ちゃり』と鳴る。  
ジュペッタは、必要があろうとも喋らない。口を開くのは、そこにある念を食らいつくす時だけ。  
昔はもっと、綺麗な肌の色をしていたはずなのに。  
ふと気がつけば、自分の心の色と同じ…ほぼ黒と言えるくらいの、暗い暗い灰色になっていた。  
生きる意味も、理由も無く。ただ、食らう。それが、ジュペッタの存在意義だった。  
 
その夜もジュペッタは、食事をするためだけに粗大ゴミ置場に向かった。  
人間や他の生き物の気持ちが染みついた家具や、本来そこに捨てるべきではない衣類など、  
ジュペッタにとっては上質の食糧が色々と転がっている。  
ゆっくりとジッパーを開けて、暗い闇が広がる口から、その念を吸う。いつもの食事風景だ。  
しかしその晩は、普段と違った。  
 
 
「よぉ…そこのお前だよ、なんかふかふかしたお前」  
 
 
食事中のジュペッタに、気配も感じさせずに話しかけてくる存在があった。  
声のした方に視線を巡らせると、夜の闇にまぎれて、影のようなポケモンの姿。  
存在自体がシルエットとも思えるような、丸っこい影。  
大きなソファにゆったりと腰かけていて、大きな口は愉快そうに笑みを作っている。  
 
 
「お前、俺の同類みたいだな…しかし、ひでぇツラしてるな。この世の終わりみてぇなよ」  
 
 
返答をしないジュペッタなどお構いなしに、影はソファから立ち上がりながら喋り続ける。  
暗闇に浮かぶ赤い瞳を煌々と輝かせながら、ジュペッタの背中に触れた。  
 
 
「そんな景気の悪い顔してんじゃねぇよ。俺が楽しい事、教えてやろうか?」  
「…?」  
 
 
楽しさ。それは、ジュペッタの中からはとっくの昔に消えうせていた感情で。  
今更、自分に何を教えてくれるというのか。  
半ばどうでも良いと思いながら、ジュペッタは、その影から視線は逸らす事はなかった。  
 
「俺はゲンガー。お前と同じで、世間からは嫌な目で見られる存在だな」  
 
 
なんせ、毒ガスで人を殺すんだからな。ゲンガーと名乗った影は、軽快に笑う。  
 
 
「ま、そんな事はどうでも良いんだ。楽しい事、教えてやるよ。俺達ゴーストだけが出来る、な」  
「…だ、け?」  
 
 
なんとなく。  
「だけ」という言葉が、仲間扱いをされたように感じたジュペッタ。  
久しぶりに、正の感情が働く。「嬉しさ」。  
その感情の表れは、言葉を発する、という行動に反映された。  
 
 
「そう、俺達だけだ。本来俺達は、戦いの時とかじゃないと他のポケモンに触れないだろ?  
 でも、ゴースト同士なら…ほれ」  
「…はっ…」  
 
 
言いながら、ゲンガーはジュペッタの胸のあたりに手を触れさせる。  
冷たいはずなのに、他の生物に触れられると、こんなにも温かいのだろうか。  
その温かさのような感覚に、ジュペッタは思わず吐息を漏らす。  
 
 
「お?可愛い声じゃねぇか…勿体ねぇなぁ、もっと喋ろうぜぇ?」  
「…かわ、いい?」  
「そうさぁ。だからほれ、むにむにーっと」  
「あ、はっ…」  
 
 
抵抗する様子がないとみるや、ゲンガーはジュペッタの胸をおもむろに揉み始める。  
されるがままのジュペッタ。  
その刺激には、快感よりも、心地よさのようなものを感じていて。  
可愛いと言われたことで、かつて持っていた感情も、少しずつ甦り始めていた。  
 
こ、このままだと  
ジュペッタが成仏してしまう・・・!!  
 
「ここ、お前の食堂なんだよな。前から見てたんだぜ…可愛いやつがいると思ってな」  
「前、から…?」  
「そうだ。お前とこう言うこと出来たら、さぞ気持ち良いだろう、ってな」  
「気持ちい…い、ぁっ…」  
 
 
ゲンガーの手は、控えめなジュペッタの胸を正面から確実に捉える。  
指の先で、掌で円の動きを作り、女性慣れしている様子。  
優しくも大胆なテクニックに、未経験のジュペッタも息を荒げる。  
それと同時に、忘れていた「嬉しい」「楽しい」感情も、段々と膨れ上がっていく。  
 
 
「ははっ、これじゃ喋るって言うよか鳴き声だな。ま、可愛いから良いや」  
 
 
また。可愛いと言われた。  
その言葉が、ジュペッタの心を揺らす。  
昔、ぬいぐるみだった頃に、たくさん可愛がってもらったその時の光景が甦る。  
可愛い。ふかふか。幸せ。  
自分はまだ、誰かにそんな風に思ってもらえる?こんなに、薄汚れても?  
それなら…  
 
 
「…ゲン、ガー。私、もっと…して、良いよ」  
「お?じゃあ、遠慮なく…って、もっとって…最後までしていいのか?」  
 
 
こんな私でも、例えゴーストポケモンだとしても…  
まだ、誰かの役に立つなら。必要としてもらえるなら。幸せを感じてもらえるなら。  
それが性の捌け口だとしても…喜びに他ならない。  
 
だから、ジュペッタは、ゲンガーの問いに『こくり』、頷いた。  
 
ゲンガーは、最初に腰かけていたソファにジュペッタを押し倒す。  
その丸っこいシルエットの下腹部からは、黒い雄の証が伸びていて。  
押し倒されたジュペッタは、恥ずかしさこそないものの、その股には不思議と熱が宿っていた。  
 
 
「おおー…可愛いじゃねぇか。俺…お前みたいの、タイプだぜ」  
「…うれ、しい」  
 
 
か細く呟くようなジュペッタの喋り。  
どうやらそれがゲンガーのツボらしく、下腹部から伸びる雄は更に熱を帯びる。  
我慢の利かなくなったゲンガーは、その大きな舌で、ジュペッタの下腹をべろりと舐めあげた。  
 
 
「あ…ひ、あっ」  
「うへへ…もっと鳴いてくれよ…可愛い声、聞かせてくれよぉ」  
「う、ん…あぅ」  
 
 
自分がされている事がなんなのか。曲がりなりにも生物として、本能的に理解はしていた。  
例え子を孕む事になっても…それが、相手にとって幸せであれば構わないと思っていて。  
そんな感情が、ジュペッタの体を熱くさせる。股の間からは、透明な滴があふれ始める。  
 
 
「すげぇ…こんなびしょびしょになっちまって…も、もう俺、我慢出来ねぇよ…」  
 
 
捨てられ、疎まれ、避けられ続けてきた。  
そんな自分が、そんな事をするのはおこがましいと思いながらも。  
ジュペッタはおずおずと手を伸ばし、ゲンガーを抱きよせた。  
そして、耳元でぽつり、呟いた。  
 
 
「…し、て」  
 
最初から欲望の歯止めなど無いゲンガー。ジュペッタの言葉は、彼の引き金となった。  
腕を回してきたジュペッタを抱き返すゲンガー。  
その柔軟性を活かして、抱き合ったままの姿勢で、ずぷり、とジュペッタの中に侵入する。  
熱を持たないはずの両者。けれどそこには確かに、互いの熱があった。  
 
 
「あ、や、やべぇぇ…気持ち良いぜぇぇ…!」  
「ゲン、ガー…ゲンガー…熱い、あついぃ…」  
「お前の中も熱いぜぇ…また、でっかくなっちまうっ」  
 
 
宣言通り、侵入している雄が、ジュペッタの中でその体積を更に増す。  
無理やりに押し広げられるジュペッタの秘所。しかし、元々痛みは無いが故に。  
 
 
「あ…あっ…きも、ち、良い…?これ…気持ち良い、の、かも…」  
「俺は最初っから…快感大爆発だっつーの…!」  
 
 
破瓜などあるはずもなく、その行為、刺激は、全て快楽となって還元された。  
交尾に慣れているゲンガーですら、ジュペッタの具合の良さには舌鼓を打たざるを得ない。  
綿に包まれているかのような柔らかさと、そのふわふわでの締め付け。  
逆に言えば、相手が慣れているゲンガーでなければ、挿入した瞬間絶頂へと達している程で。  
 
 
「は、はぁっ、たまんねえ!もっとしてたい…のにっ、あ、っく、もう限界…だっ…!」  
「あ、あ…ちょ、ちょーだい…ゲンガーの…熱いのぉ…!」  
 
 
ジュペッタの言葉に反応するかのように。  
ゲンガーの雄は、ジュペッタの体の最奥で、大爆発を起こした。  
 
ぶしゃああああ…  
ゲンガーの射精は長いものではなかったものの、量はとてつもなく多かった。  
噴出孔が限界まで開き、大量の精液の塊を、ジュペッタに大量に叩きつける。  
さすがに、その液体の全ては許容出来なかったのか。  
雄を引き抜かれたあと、ごぷんっ、と灰色の液体がジュペッタの体内から溢れだした。  
ジュペッタは、その液体を不思議そうに見やる。  
 
 
「あ…れ…こ、れ?」  
「…気づいたか?そーだよ。これも、念の塊だ…俺の欲望っていう、な」  
「ゲン、ガー…」  
「お前も俺も気持ち良くなって、お前は腹もいっぱいになる。一石二鳥だろ?」  
 
 
最初に会った時のように、軽快に笑うゲンガー。  
しかしジュペッタは、どこか腑に落ちない様子で。  
ゲンガーの手を、くい、と引っ張る。  
 
 
「あ?なんだ?」  
 
 
視線を合わせたジュペッタは、ゲンガーをまっすぐに見て、こう言った。  
 
 
「…わたし。まだ、イってない」  
「…はっ?」  
「…イかせて。そうしないと…呪っちゃうよ」  
「…っく。くっくっ…はっはっは!」  
 
 
それは、彼女なりの甘えであり、精一杯のジョークで。  
ゴーストだからこそわかるその冗談が、ゲンガーには通じたらしく。  
 
 
「いいぜぇ!お前が望むならいくらでもイかせてやる!俺の怨念が尽きるまでな!」  
 
 
ジュペッタは、生きる意味と、喜びを思い出した。  
それは、誰かに尽くせる喜び。傍に居てもらえる幸せ。  
欲望や怨念に塗れていたとしても、それも一つの幸福の形で。  
その後、誰に迷惑をかけるでもなく…  
粗大ゴミ置き場は、食堂から、ラブホテルへと姿を変えたのだった。  
 
 
 

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