「まだまだだな」  
ふっと前を歩くピカチュウが言う。後ろのイーブイは悔しそうな顔をして牙を向いた。  
「この前と話が違うじゃないですかっ!」  
途端、イーブイの額にピカチュウのでこピン。思わずイーブイは後ろに下がる。  
「ははっ、生意気な口は変わらず、か。」  
ピカチュウは、無言で目の前に散らばった藁人形を片付ける。先程、イーブイが技を当てて倒した、練習用の人形。  
「お前の電光石火は威力にかける。ただ素早く動けば良いってもんじゃない。」  
技の解説をしながらまとめた藁を担いだ。  
「イーブイなんだから電光石火くらい…」  
ピカチュウは気付いた。イーブイが震えながら立っている。悔しい時にする態度だ。  
「ま、もうしばらくしたら、俺が教えられる最後の技を…」  
フォローのつもりが遅かった。イーブイはわっと泣き出し、ピカチュウに背を向けて走り出す。それはもう、電光石火に並ぶくらいに。  
「全く、なんであいつはそうかなぁ。」  
藁を巣の近くに起き、イーブイの後を追いかけた  
 
イーブイは元々、人間のポケモンだった。といっても生まれてすぐの間だけだが。守ってくれる親も何もない草むらに放り出された。  
 
何も解らなくて鳴いていると、恐ろしく体の大きい鳥、ピジョットに会った。逃げないと、と走ったが、ピジョットの素早さの前には、爪の下に捕らえられるしかなかった。  
「たすけてーママー!パパー!」  
ピジョットは羽ばたき、体が地面から離れた。何がなんだか解らなくて暴れるが、爪が食い込むだけだった。  
「まぁ待て。赤子ではないか。」  
神経全体に行き渡る痛みと共に、イーブイは落下した。草むらとは違う、ふんわりとした柔らかい感触の何かに包まれて。疲労もあり、そのまま導かれるように寝てしまったのである。  
 
目覚めたら隣にはピカチュウがいた。介抱していてくれたようだし、何よりもその目が優しい。  
「幼子よ、そのままでは生きていけまい。一人前になるまで、俺が教えてやろう。」  
そうしてピカチュウの言うままに従い、今日まで生きてきたイーブイ。ピカチュウを師匠と呼び、様々な技を教えてもらった。そのことには感謝している。  
問題は、この年になって一度も褒められたことがないこと。それでもイーブイはピカチュウについて行こうとしているのに、その努力すら認めない。  
 
しかし褒められたことなどなくても、どんなに否定されようと、とある気持ちが押さえられないことに気付いた。  
 
師匠とずっと一緒にいたい。  
出来るなら夫婦として。  
 
 
なぜこのようになってしまったのかは解らない。しかし弟子である身では師匠と結ばれるなど到底不可能。だから早く一人前になれるように頑張ってきたのだが。  
 
「このまえはもう少しで終わりって言ったのに…」  
巣から離れた森で人知れず涙を流すイーブイ。もちろん、ピカチュウはイーブイの気持ちなど気付いていない。気付いていたら、もっと褒めてくれるし、かわいがってくれるのに。  
 
「どうしたのお嬢さん。」  
振り向くと美しい毛並みの炎ポケモン、ロコンがいる。イーブイをうっとりさせるような美しさだ。  
「なんでもないの。好きなポケモンと、ケンカしちゃっただけ。」  
「そうかぁ。そのポケモン、結局は君のこと大切じゃないんだよね。そんなの忘れちゃいなよ。」  
ふとロコンの目が光ったような気がした。その瞬間、ピカチュウに対する思いが不思議となくなる。  
「忘れ、ちゃうの?」  
「そうさ!それより僕のことを覚えるんだ!」  
飛び掛かった。しかしイーブイの足は鉛のように動かず、あっという間にロコンの下敷きになる  
 
「いやっ!どいて!」  
「どけるもんか、イーブイの雌っていったら貴重なんだ、やらせてもらうぜ。」  
ロコンはイーブイの後ろ首を噛んだ。前足を伏せ、おしりをロコンに見せる。  
「催眠術で気持ち良くしてやるからさ!損はねぇよ!」  
「やだやだっ!師匠!ピカチュウ師匠っ!」  
金縛りは解けず、されるがまま。しっぽはピンと立ち、まるでイーブイから誘ったような色香を見せる。  
「これがイーブイの雌。さぞ上手いんだろうなぁ!いくぜ!」  
ぷわっと言う音と共に、イーブイの意識は飛んだ。催眠術で、ロコンの好きなようになるために。半夢の中で、イーブイは性感帯を刺激され、興奮を押さえられなくなった。  
「気持ちいい…このままもっと気持ち良くなれないかな…」  
目をつむり、じっと襲われる快感に身を任せる。  
「それじゃあ、そろそろかなイーブイちゃん!」  
ああもっと気持ち良くなれる。もっと、もっと…  
 
 
「俺の弟子に何しやがる。」  
 
 
強い衝撃と共にロコンは吹っ飛んだ。近くの岩に体を打ち付け、動けないでいると、ピカチュウが近寄った。  
「もちろん、覚悟の上だろうなぁ?歯ぁくいしばれ!」  
雷パンチ、10万ボルト、アイアンテール…。師匠の抱負な技で、ロコンはあっと言う間に体力を減らす。  
 
「これに懲りたら二度と近付くんじゃねぇぞウスノロギツネ。」  
ドスの利いた低音でロコンをにらみ付ける。捨て台詞も反撃すらせず、ロコンは一目散に逃げていった。  
 
「師匠…」  
金縛りが解け、同時に倒れ込んだ。ピカチュウが手を延ばす。  
「イーブイ、ほら帰るぞ。」  
イーブイは頭を振った。いくら催眠術だったとはいえ、こんな不埒な姿を、しかも好意を持っている師匠には見せたくなかった。それなのに、今の状態は、考えるだけでも恐ろしい。  
「私、もうダメなんですっ。もう…」  
「何言ってんだ、帰るぞ。」  
ピカチュウが引っ張るが、イーブイはテコでも動かない。  
「私、私はっ、師匠が好きでした。だから、もう、一緒にいられる資格なんて」  
「…そうか、そこまで言うなら最後の技を教える。これを覚えたら、お前の好きにするがいい。」  
イーブイは目を開けた。いつもの師匠。最後に教えてもらうのはどんな技かと目に焼き付ける。  
「最後は、異性であることを利用し、相手の動きを封じることだ。」  
 
「師匠、それは」  
「技名メロメロ。かかるとこんな感じになる。」  
イーブイの心臓が高まる。いつも以上にピカチュウから目が離せない。それでいてピカチュウのことしか考えられなくなっている。  
「解ったか?俺の気持ちをないがしろにして出て行くとほざく弟子への罰だ。」  
さっきとは違う、師匠の行動。イーブイの体のあちこちに天使のキッスをし、さらに混乱させる。  
「師匠、これは…」  
「お前が悪いんだ。あの時もお前からメロメロをかけて来た。お前が大人になるまで待たせやがって。」  
「あの時!?」  
「ピジョットから落ちた時だ。これ以上は問答無用。メロメロにかかりつづけた結果を、お前の体で知れ。」  
「やぅっ!師匠!怖い、怖い!いつもの師匠じゃ…」  
「自分から誘っておいて今さらか!」  
メロメロの効果か、ピカチュウと体を合わせると、今までより暖かく、そして安心する。けど、いつもと違う師匠に、イーブイはただ身を任せるしかなかった。  
 
「お前初めてなんだな。」  
そういうと、ピカチュウはイーブイに背後から覆いかぶさり、いれる準備をした。イーブイとピッタリとあったピカチュウ。  
「イーブイ、お前がっ!」  
ピカチュウも興奮していて、言葉にならない。ただ解るのは、ピカチュウの押さえられない欲望が今、放たれるということ  
 
ピカチュウの下でじたばた暴れるが、本気を出した師匠の力には適うわけがなかった。  
「うあぁっ、師匠痛いです、いたぁい!」  
「だからなんだ。まだ全部入ってねぇよ。」  
痛みを感じるも、頭の中はピカチュウへの想い、一緒にいたいという思いが混じる。大人しくピカチュウに突かれ、その度にメロメロ状態の声が漏れる。  
「あぁっ、はぁっ、はっ…」  
深々と入り込み、お腹の中がたくさんつまったような感覚。  
「イーブイ、俺もお前が」  
小さくピカチュウは呟いた。しかしイーブイはそれどころではない。痛いながら迎える師匠を耐えねばならない。  
「師匠、あっ、もう、ダメぇ!」  
自ら腰を動かし、ピカチュウとの行為のみしか考えられなくなってきた。その間にも休み休みに天使のキッスをされている。  
「うあっ、出る!」  
ちょうど奥まで入れた瞬間。ピカチュウの押さえきれない欲望が一気に爆発した。  
「なに!?これ?」  
お腹に感じる違和感。思わずイーブイはピカチュウから遠ざかる。  
「タマゴが生まれる元を、お前に送り込んだだけだ。それよりお前、仰向けになれ。」  
言われるまま。仰向けになると、ピカチュウは天使のキッスをイーブイの口元にした。  
「覚えてるか?こうやって堅い木の実をやったの」  
 
顎の力が弱い時、こうやってピカチュウは噛み砕いてからイーブイにくれた。時にはピカチュウの口からキスをするようにしたこともある。  
「はい、まだ小さいときに…」  
「それがこんな一人前のイーブイになるとは。」  
品定めのようにイーブイの全身を見る。やわらかそうな肉球、ふさふさのエリマキとしっぽ。どれもこの時の為に手塩にかけて育てたものだ。  
 
「イーブイ。」  
「はい…」  
「お前はもう一人前だ。だから一匹の雌だ。」  
「はい…」  
「お前を妻にしたい。お前が来てからずっと思っていた。もう押さえきれん。」  
「師匠…」  
再びピカチュウはイーブイに覆いかぶさる。そしてその行為はまだ止まることがなかった。  
 

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