「あ、そう。まぁジムリーダーなんて名前だけだし。」  
 
 
初対面で、まだトレーナーになりかけ、しかもジムリーダーとして父親のことを尊敬していたのに、それを一言で一蹴したヤツがいた。  
 
その名はダイゴ。  
 
 
 
「まだまだ甘いね。本当に言ったこと解ってる?」  
「解ってます」  
ダークトーンのむくれた声はハルカ。前に立っているのが、ハルカのポケモンの師匠ともいうダイゴ。  
「いや解ってないね。前回のラグラージの使い方からなってないね。一体いつになったら覚えるのかな?」  
爽やか笑顔のイケメン!とトレーナーたちでは持て囃されているけど、ハルカにとっては嫌味のトサカ頭にしか思えない。  
「いつか覚えると思いますが。」  
「全く。なんで素直じゃないかな。素直になりなよ。」  
ダイゴも中々大人のようで、笑顔を崩さないが、目が笑ってない。  
 
素直に、というのも、これだけ反抗、反発、逆らっておきながらダイゴに教えてもらっている状況を見ての通り、ハルカはダイゴの方が好きだ。  
 
きっかけは本人が覚えていないくらいに、気付いたらダイゴが好きだった。  
 
けれど、ダイゴはムカつく、という矛盾にハルカは結局、反抗という態度しか取れなくなっていた。  
 
 
「じゃあ今日はここまでで良いから。早く帰った方が良いよ。何か雨っぽいし」  
「わかってますー」  
むくれたまま、ポケモンをしまい、帰る支度を始める。本当はもう少しいたいけれど、多分ダイゴは嫌ってるだろうと思って、早く帰らなければと焦る。  
 
 
「じゃあ今日はありがとうございましたー」  
少々ヤル気の無い挨拶をして、玄関の戸を開ける。その瞬間、暴風と暴雨が室内に舞い込んだ。慌てて閉めると、風がうなりをあげてぶつかってきていた  
 
 
「どうしましょう。」  
「天気予報だね。テレビつけて。」  
テレビをつける。よせば良いのに、ミナモシティの海岸で台風さながらの実況中継をしている。しかもどのチャンネルも。  
 
「トクサネは?」  
「暴風警報と波浪警報と洪水ですね」  
視線が合う師弟。しばらく黙ったまま時間が過ぎる。  
「なお、ポケモントレーナーには、勝負やなみのり、そらをとぶなどの技を控えるよう、注意がされています!」  
 
 
「ちょっと聞いて良い?」  
「なんですか?」  
「帰れるの?」  
 
ハルカは心の中でガッツポーズをした。天気が良くなるまでダイゴの家にいて良いと言われて喜ばないわけがない。  
 
 
なんだかんだ言いつつ、お茶を入れてくれたり、お菓子を出してくれるダイゴ。これにはハルカもあの時の不機嫌はどこへやら、ダイゴを相手にニコニコ。  
 
「それでですね、ユウキ君はキノココの方がかわいいって、進化させないんです〜」  
「ふ〜ん。あの子もまるっこいポケモン好きだねぇ。」  
「そうなんですよ!それで」  
自分でも解らないくらい、話したいことが次々に出て来る。いつもこう、話せたら良いのに。  
 
「君もそうやっていつもニコニコしてればかわいいのにね。」  
風で外の何かが倒れる音がする。ダイゴは見に行く為にレインコートを羽織った  
「素直になりなよ。」  
まさか同じことを二回も言われるとは思わず、返事をしようとした時には遅かった。ダイゴはすでに外。  
 
テレビは変わらず警報を鳴らしている。予報によれば、今日の夜遅くには晴れるという。居られるのも夜中までか、とため息をついた。同時、ダイゴが入って来るなり、ハルカに言った  
「思ったより酷い。今日は帰らない方が良いかもよ」  
返事を待たず、ダイゴは寝室へ急行する。ハルカは嬉しさが隠しきれなかったら、と思った。  
 
一方、天気は夜になっても回復どころか悪化の勢いだ。窓の外を見ればライボルトの集会のように雷が鳴っている。雨は大粒、風は暴風。風がぶつかる度に家が揺れる。  
 
ダイゴは天気など気にせず、残りの仕事と言って、パソコンに向かっている。ハルカがシャワーから上がっても変わらず、書類の作製中。  
「あ、先に寝てて良いよ。寝室でよければ使って。」  
「ダイゴさんはぁ?」  
「寝ないで作業。子どもはもう寝た。」  
ダイゴに言われるままにドアを開ける。いつも師匠が使っている部屋。整頓され、ベッドにはシワ一つない。緊張と嬉しさが混じり、ベッドにもぐりこんでいた。眠れる訳がない。  
 
あの師の、好きな人のいつも使っている空間。そこにいるのだから、たまらなくなる  
「ダイゴさんに素直になれたらなー。きっと嫌われてんなぁ。」  
ため息が出る。もっと素直に可愛げのある弟子になれないものか。  
 
あーだこーだ画策していると、その思考を止めるように雷が光と同時に鳴った。爆音と言った方が正しいか。  
 
ドアが開いた音に、ダイゴは目をやった。視界に映るのはタオルケットを抱えているハルカ。  
「あ、あの、パソコン大丈夫ですかっ?」  
ため息をつくと、ダイゴはイスから立ち上がる。そしてディスプレイに触れた。  
「間一髪、電源抜き。さっきのは大きかったね。落ちたかな。」  
「そうですか。まだ仕事、あるんですか?」  
ダイゴの口元が笑う。いつもと何か違う教え子の態度が、なんだか微笑ましい。  
「どうして?」  
ハルカの方は、たどたどしく、視線が合わない。雷かな、とダイゴは思ったが、それとは違うような、何か踏み切れないものごとがあるような。  
 
 
『素直になりたい  
素直になっちゃえ  
っていうか言ってしまえ私!』  
 
 
「あ、あのっ、邪魔しないから、一緒にいても良いですかっ!?」  
ハルカからしたら、告白に近かった。勇気を出して振り絞った言葉。けれどダイゴにとってはこの上ない質問だった為に、声をあげて笑うしかない。  
「くくくっ…そんなこと…あはははっ!」  
腹筋がよじれそうなくらいに笑っている。  
「聞くまでも無いよ。おいで。まぁ座りなよ。」  
手招きに誘われ、ソファーに座る。もちろん、ダイゴにピッタリくっついて。ハルカは熱くなっているのを隠すのに必死だった。  
 
「何遠慮してるの?さっきから隠そうっても無駄だよ。こっち見て。」  
二人の視線が合う。ハルカはもう何も言えない。緊張しているのもあるし、「余裕」の表情でこちらをみているダイゴから逃げようとする。  
「前に言ったよね。出す順番を間違えることが命取りになるって。君はポケモンもそうだけど、恋の勝負も知らなすぎる」  
僕の勝ちだ、とダイゴは言う。ハルカには全く意味が解ってなかった。恋は惚れた方の負けということも。そしてその勝負を仕掛けてられていたことも。  
 
けれど、そんなことはどうでも良かった。ダイゴに抱き締められ、ダイゴにされるまま、唇を塞がれる。柔らかく、そして熱い味が体に広がった。頭から足の先まで痺れる。感情が高ぶり、ダイゴの膝の上にいながらも涙が出る。  
「…僕何か泣かせるようなことした?」  
「いえっ…してないですけど、私、ダイゴさんに、嫌われてると…」  
頭を撫で、強く抱き締める。泣きじゃくるハルカを慰めるように囁く。それが恋の勝負だ、と。  
「君より多く生きてる分、君に勝ち目は無いんだよ。」  
雨音が少し弱まった。そんなことに構う余裕などなく、口付けを幾度となく繰り返す。待たされた時間を埋めるかのごとく、何度も行われた。  
 
そのうち、ハルカはダイゴの手が、パジャマのに触れていることに気付く。そして前開きのボタンを一つ一つ、上から外し始める。  
「なぁに?元は僕のパジャマだから良いじゃない。」  
「そういう意味でも…」  
「本当に嫌なら、君が決めれば良い。時期が早いのは良くないし、それに君の年齢だと、下手したら僕が捕まるからね」  
出会った時から犯罪のようなことをサラッと言っていた。「通り魔に会ったら、このボスゴドラで攻撃するから大丈夫だよ」と。今も言った後なのに、やわらかい乳房を包み込むようにして触っている。今はまだ発達段階であるけれど、それなりの大きさがある。  
試しにダイゴは乳房の先、乳頭に触れた。小さくて少しかたい。  
「ちょっと痛い。」  
「そう?」  
それだけ言うと、今度は乳房ごと持ち上げ、舌で吸うようになめる。  
「ダイゴさん痛いですって!痛いです!」  
口を離す。困った素振り一つ見せず、ダイゴは優しくハルカの頭を撫でる  
「ごめんごめん。まだ若過ぎるからねぇ。」  
もう少し大きくなれば、また違う感じがするよ、とダイゴは言う。  
 
「じゃあちょっと腰あげて。」  
その間に下着とズボンを素早く下ろす。そしていつも触れられない場所に手を伸ばす。  
「大丈夫?痛くない?」  
「はい。」  
「若くてもちゃんと反応はするんだね。」  
たまごの白身のようにヌルッとしたところ。陰核を指で撫で、場所を確認する。  
「じゃあ、これは?」  
ハルカの体の下の方に違和感が生じた。そしてそれは中心へ向かっている。  
「痛いですっ!」  
「そう。困ったなぁ。これが痛いならなぁ。」  
痛がるハルカをよそに、指は動く。奥に行ったり来たり、入り口を広げるようにしたり。ハルカは目を瞑り、痛みに耐えていた。初めて体験する変な痛みだったから。  
「うーん、無理かなぁ。」  
ダイゴは独り言のように呟きながら、穴を広げようとしている。そもそもが無理だったのか、それは解らない。  
「よし、やってみようか。」  
ハルカが答える前に、何か硬いものが再び押して来ていた。最初は触れていただけ。でも次はそれが奥に来ようとしてる。  
「いたぁっ!」  
ハルカはダイゴの膝の上というのも忘れて暴れる。一番の痛みから逃げるように。  
 
「大丈夫?」  
黙って首を横に振る。入ろうとしたダイゴの男性器はただ呆然とそこにある。  
「痛かった?」  
「はい。」  
「そうか」  
ダイゴからしたら、入っていたのはほんの少し。最初から予感はしていた。あまりに小さいこと、そして未発達な部分があること。そんな状態で決行できるわけがない。  
「ごめんね。いろんなことが、まだ早過ぎたみたい。君に痛みを与えたいんじゃなくて、気持ち良くなって欲しかったから。」  
ハルカのおでこにキスを。  
「もっと大きくなったら、この続きをしよう。時間はたっぷりあるから、焦らなくていい」  
耳元で囁き、今まで高ぶった感情を落ち着かせようとした。けれど少しでも味わってしまった感触は中々消えない。唇、指先、性器の先に残った感覚は、収まってくれそうになかった。  
 
 
 
 
 
けたたましく鳴くキャモメの声に目が覚めた。ハルカが起きると、ベッドにいて、着衣もちゃんとしている。  
「あれ……?昨日のは……」  
空は突き抜けるように晴れ上がっている。あんなにダイゴが優しかったのも夢だったからか、と一人納得してベッドから出た。  
 
「おそよう。人のうちで良く寝れるよね。」  
いつもの鬼師匠だ。朝ごはんに呼ばれる。ガッカリして食卓に着く。  
「そういえば…」  
「なんですか?」  
「やっと素直になってくれたんだし、今日は修業抜きでどこかデートでも行こうか?」  
「……ダイゴさんっ!!!」  
あまりに嬉しくて、ハルカはダイゴに飛び付いた。いきなり  
 
いきなりのことだった為、ダイゴも受け止められず後ろに飛ばされ、手はテーブルに触れて一部食器がジャンプする。  
「あの、あのっ!!!行きたいです!!!大好きです!!!」  
「ふふっ、もう全部知ってるよ。でも今まで通り、教える時は容赦しないからね」  
「はい!ついてきます!」  
夢じゃなかった。目の前に抱き締めているのは紛れもなく、一番好きな師匠、ダイゴ。年の差はあれども、誰よりも大切な人。確認するように、もう一度抱き締めた。  
 
 
 
終わり。  
 
 
 
 

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