今日も、舞い込んだ救助依頼を何とかこなし家路に着く。  
ふたり寄り添い、街をゆっくりと歩いていく。そろそろ夜の帳が降りる時間だ。店々も忙しく店仕舞いを始め、道行く2人に別れの挨拶をしていく。  
 
街を抜けると、オレンジに染まるサメハダ岩が見えてきた。  
赤々と燃える夕日が、水平線に隠されていく。  
 
いつもの光景。  
 
いつまでも見惚れてしまう光景。  
 
柔らかな潮風を感じながら、雄大な景色を見つめる。  
隣に添う彼女の影。  
儚く、しかし確かな幸せが彼を包む。  
 
とっぷりと日が沈む。  
ふたりはどちらからともなく歩き出し、基地への階段に足をかけた。  
 
「ふぅ…疲れたね、チャマ」  
 
ふんわりと積まれたワラのお布団に寝転ぶ。  
 
「全くだ…あのバカップルめ。助ける側の身にもなれっての」  
「肝試しでせかいのおおあなはちょっと無謀よねぇ」  
「どうせまたニドラン♂の方が見栄張ったんだろ」  
「彼女に良いとこ見せたいって奴?」  
 
依頼人に悪態を突きつつ、ダラダラと実の無い話をする。  
こんな瞬間さえ、ふたりには心から大事なものであった。  
 
 
一連の事件から、もう2年の歳月が経過していた。  
 
 
あれだけの事件をふたりで乗り越えてきたのだ。パートナーとしての絆は、いつしか愛に変わっていた。  
 
「あれから、もう2年か」  
「え? ああ…そうね。もう…2年」  
 
色々と思い出したのだろう。チコリータの表情に影が差す。  
 
「浜辺でどべーんと横たわってたアンタを見つけて…。驚いて話し掛けたら、ポッチャマの癖にやけに偉そうな口調でまた驚いて。………………………………………」  
「なんだよ、人の顔ジロジロ見て。イヤン!」  
「キモい。……んと、ね。アンタは変わらないなーって」  
「はー? なんだそりゃ。変わったほうが良かったか?」  
「別に…そういう訳じゃないけど」  
「………」  
「な、なに」  
「チコは変わったよな」  
「え。…嘘、どこが?」  
「可愛くなった」  
「は?」  
 
眉を寄せチャマを見ると、やはり。  
にやにやと嫌らしい笑みを浮かべ、チコの表情を伺っていた。  
呆れかえり嘆息を一つ。  
 
「なんだなんだ、反応が可愛くないぞ」  
「2年も居りゃいい加減慣れるっての」  
「前言撤回。可愛げのない奴め!」  
「何よそれ…」  
「そんな可愛くない口はこうしてやる」  
「え、ちょっわっコラ! やめ……んっ……………んむっ…………………っっ!」  
 
チコの頭を柔らかく抱え、舌を傷付けないよう器用に嘴をさし入れ、口内を貪るように舐め回す。薄目を開けると、固く目をつむり、顔を真っ赤にしている彼女が見えた。その必死な様子にチャマのSっ気がくすぐられる。  
チコもチコなりに応えてくれるかと思いきや、何ゆえか首で懸命に押し戻そうとしてくるではないか。  
少しムッと来て、動きを激しくしようと腕に力を込めると  
 
「ごふぇっ!!」  
 
 
頭の葉っぱで叩かれた。  
 
「っぷは!…………はぁ……はぁ………この、馬鹿!!」  
「な、何だよ…叩くことないだろ!?」  
「明日の仕事はなに!? そのHの事しか頭に無い腐れ脳みそでよーく考えてみなさい!」  
「腐れ脳みそ…………あーとー…たしか、プクリンのギルドと共同で………………………あ」  
「そうよ分かった!? 北の方で新しい洞窟が見つかったから、それの調査依頼! 集合は何時だっけ!?」  
「…現地に昼頃着くために、午前2時だったかと…」  
「正解よ馬鹿! 分かる!? アンタとちちくり合ってる暇はないの! 大体ね…」  
 
 
それから2時間弱。  
こってりと絞られたチャマは部屋の隅で体育座り、ぼそぼそと謝罪の言葉を連呼している。  
 
「(めんどくさい奴ねー…)」  
 
居室にあのような邪魔なオブジェを置く趣味は無い。  
はぁ、と何度ついたかわからないため息。  
 
「チャマ、顔を上げなさい」  
「…は、はい! ななななんでしょうか…」  
「顎、上げて」  
「へ? こうでふっ?………………………………」  
 
 
 
 
 
「……今はこれで我慢して」  
「………………チコ………」  
「帰ったらさ、時間なんてたくさんあるから…ね?」  
「チ、チコォ!!」  
「だからやめなさいっての!」  
 
 
 
満天の夜空に、軽快な音色が響き渡った。  
 
〜了〜  
 
 

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