俺は産科医だ。といっても分娩を扱っているんじゃあない。専門は不妊治療。子どもが出来ない夫婦を解決してきた実績がいくつもある。  
 不妊の原因?父方だったり母方だったり、そりゃまぁ様々だが、最近多いのは「ストレス」によるもの。そのストレスにも色々あるのだが、最も難しかったのが「不感症によるセックスレスのストレス」なんて、どうすりゃ良いのか、さすがに頭を抱えた。  
 そこで、研究を始めた。その成果が当院にある不感症の人の性感帯を刺激し、周辺神経を鍛える機器だ。  
 保険が使えないので高額だが、機器を使って皆子どもができたと喜んでくれている。  
 
 診察日、奇妙な患者が来た。代理で来たという女性はとにかく往診にきて、機械を使って欲しいという。普段、往診などしない俺だが、何か気になって、次の休診日に約束を取り付けた。  
 
 
 訪問には機械を運ぶ為の車と、助手ポケモンのデンリュウを連れていった。意外と電気を食うので、付き合いの長いドリーに発電してもらう。  
 住所の前に着き、機械を下ろしていると、ドリーがしきりにうなっていた。嫌な予感もするが、約束は約束だ。チャイムを押す。  
 
 人里離れた一軒家。チャイムを押す。出て来たのは雰囲気に似合わないコワもて筋肉。  
「萩野です。往診に参りました。牛尾七海さまですね?」  
黙ってうなづくと、俺を奥へと入れた。ドリーは機材の一部をしっかりともっている。  
 
 
「失礼します。往診に…まいりました」  
寝室には先日、俺の言ったものが全て用意されている。ボールに水、タオルにティッシュ。そして肝心の患者を見て俺は言葉に詰まった。職業柄、成人女性が相手だが、目の前の患者はまだ子ども。しかも全裸にされ、手錠をかけられて。寝心地の悪そうなベッドに転がされている。  
「まさか、これは…」  
「できないとは言わせない。そいつを全て開発することが出来たら帰ってもいいぞ」  
コワもて筋肉が仁王立ちで俺を見張っている。しかも入口のドアは丁寧に鍵をかけられている。  
「一つ聞いてよろしいでしょうか?」  
唯一部屋にいる大人のコワもて筋肉に話し掛けた。ナメられないよう、普通に。  
「なんだ?」  
「当院の機械は、成人向けに作られております。子どもとなると、思った結果がでない場合…」  
「知らん。やれ。」  
俺の命が危ない。犯罪に手を貸したら俺の社会的生命が危ない。だが俺には目の前の問題し  
か見えてなかった。  
 
「では、始めるよ」  
黙ってこちらを見つめる少女。緊張させないように笑顔で話し掛けるが笑ってくれない。  
「お名前は?」  
黙っている。そりゃそうか、下手すりゃ俺も仲間に見られてるのかもな。  
「先生はね、君のこと知りたいんだ。僕は、荻野始っていうんだ。」  
「…ハルカ」  
ゴニョニョより小さい声。けどハッキリと聞こえる。  
「ハルカちゃんかな?30分くらいかかるけど、じっとしてられる?」  
頭をなでながら話していたら、やっと笑ってくれたよこの子。相当怖い目に会ってんだろうな。  
「あの、この子の手錠外せませんか?電気使うから金属は危ないんです」  
機材を準備しながらコワもてに言う。仕方ないという顔で外した。  
 ドリーはコンセントとバッテリーの具合を確かめ、準備万端だとサインする。  
「じゃあハルカちゃん、仰向けでじっとしててね。痛くないから大丈夫だよ。」  
電極を、大体が感じる両乳頭、そして陰核に取り付ける。三点につけ、充電を確認するとスイッチを入れた。  
「ひゃあっ!」  
すげえな。小さな子でも大人並に感じるのか。それとも不感症の婦人に慣れ過ぎていたのか?  
 
「あっ…、あっ…」  
一番小さな刺激であるが、快感に身をくねらせている。それでもじっとしていようとしてくれてるのか、手足は力をこめている。  
「ハルカちゃん、もうちょっと強くするから頑張ってね〜」  
レベルを強くする。その瞬間から効果は抜群だ。  
「はぁっ…ああっ…あっ、あっ!」  
セックス前の大人みたいな声だ。普段ならシーツなどを上にかけるが、今はバスタオルしかない。胸元から足にかけた。が、その数秒後、快感により体動が激しく、すぐに落ちた。  
 ドリーが手にスーパーボール大のやわらかいものを持ってきた。これは、そこ以外の性感帯を刺激するものである。触れると、舌で舐められているような感じがする。  
 俺はそれを足の裏、太股、脇腹、首に取り付ける。多分ここ以外もあるだろうが、それは自分たちで解決して欲しい。とにかく、これをつけた瞬間から、ハルカは悲鳴かと思うくらい叫びだした。  
「いやー!きもちイイッ!凄いきもちイイッよぉっ!」  
このままでは体力がなくなってしまうのではないか。少女に似合わない言葉と声色で、俺を誘ってるかのようだ。が生憎、俺は命がかかってるため、そんな余裕ない。  
 
「大丈夫?一旦とろうか?」  
「いやっ!このままにしてぇっ!」  
即答だ。我ながら恐ろしいことをしてる気分になり、次の器具の準備を忘れていた。ドリーが肩を叩き、我に返る。そうだ、俺のやることは生きてここから出ることじゃないか。  
 
 ハルカの喘ぎ声を聞きながら、次の準備をする。次で大体の婦人が昇天、つまり最後だ。腟内の刺激である。経腟エコーより少し細い。そうじゃないと、旦那に浮気じゃないかと疑われるからだ。つまり、ほぼ開かないので、あまり処女には意味がなさそうだ。だがやるしかない。  
「ハルカちゃん、次で終わりだからちょっと足開いてね。それで膝立てて。このまま待ってね」  
「はぅっ、もうまてなぁいぃ」  
やばい、これじゃあ疲労で本当に逝ってしまう。逝く前にイカせなければ。  
 薄い手袋をして、ピンクの縦筋をそっと開く。が、子どもでも出るのかぬるぬるして上手くいかない。やっとのことで見えるようになった腟の中に、細い棒をゆっくり突っ込んだ。処女膜破って慰謝料、なんてシャレにならんからな。  
「いっ、何か入ってる!?」  
「大丈夫だよ、これも気持ち良くなるから。ドリースイッチいれて。」  
 
パチッと入った瞬間、ハルカの動きが激しくなり、俺は蹴飛ばされた。顔に当たったことより、これ以上押さえてられないことが心配だ。この棒は押さえてないと出てくる。仕方ないのでコワもて筋肉を呼んだ。  
「ちょっと手押さえて。線は取らないように。」  
視界にコワもて筋肉の股が見えた。こいつこういう趣味なのか?外から見ても解るくらいに張っている。気持ち悪い。仕事じゃなかったら、俺は吐いてる。  
「んぎゃああ!あん、あぁっ!」  
棒に対し、腰を動かそうとするハルカ。それだけはマジやめてと言っても、聞こえてない。こうなったらもうすぐだ。  
「ドリー、ボリューム上げて」  
刺激レベルが上がり、ハルカは声を出さなくなった。その代わり、艶っぽい喘ぎ声と活発な体動で快感を伝えていた。  
「くる、なにかくる!きゃあっ!」  
いきなりハルカは叫んだ。それは俺の仕事終わりを意味していて、生きて帰れることが決まったのだ。  
「ハルカちゃん、お疲れ様。よく頑張ったね。これから同じところが気持ち良くなれるよ。」  
何いってんだろ俺。こんな子どもがセックスすんのか?ハルカはとても満足そうな顔で余韻に浸っている。  
 
 俺は帰り支度を始めていた。ドリーも配線を片付けている。するといきなりハルカの悲鳴が聞こえた。見るとコワもてがハルカに覆いかぶさり、右の乳房を揉み、左の乳頭を吸っている。俺はこの光景が信じられなかった。  
「何するんですか、終わったばかりの患者には禁忌です!!!」  
必死で割って入る。俺が医者というだけあって、舌打ちしながらも聞いてくれた。  
 仕事から現実に引き戻され、血の気が引く。鍵は閉まったまま、出口は他にない。  
 機材を全てしまった後、もう一度ハルカに声をかけようとするもやめた。この機械が逸脱なのか、それともさっきのコワもてか、自分で自分を触っている。  
「終わったのね。ありがとう」  
鍵が開き、女が箱を渡してきた。爆弾か?と思いきや、現金にて500万。口止め料込みか。  
「ついでに聞いてよろしいでしょうか?」  
「質問によるわね」  
「あの子、ハルカはどうなるのですか?子どもながら私が必要とは…」  
「あの子はね、我々アクア団に歯向かったの。だから捕まえて吉原行きよ。だけど子どもだから商品にならない。だからお願いしたのよ。貴方も死にたくなかったら、逆らわないことね」  
俺は黙って一礼すると一目散に逃げていった。  
 

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