「はぁ……はぁ……。ここは一体どこなんだ……?」  
深く薄暗い森の中を、ルカリオは一匹で歩いていた。  
森はどこまでも続いていて、進めども進めども景色は全く変わることはない。そのせいでルカリオの正常な方向感覚はすでに失われていた。自分がちゃんと前に進んでいるのか。そんなことにさえ自信が持てなくなってきている。  
ルカリオは深く考えずに森に入った自分を恨むばかりだった。ただ隣町まで行きたかっただけなのに……。  
ちゃんと整備された迂回路を通らずに近道として森を抜けることを選んでしまったことを後悔してもいまさらどうしようもないのだが。  
ルカリオはひたすらに自分が前だと思う方向へと進んでいく。  
「……!」  
その時、ルカリオは微弱の波動を感じ取った。後頭部についている黒い房が反応している。  
ルカリオは目を閉じて意識を集中し、その波動をより正確に感じ取ろうとする。  
(波動は……2つ。こっちに近づいてきている……)  
神経を集中させ、辺りを警戒する。相手は音も無くこちらへと迫っている。  
現在の場所が全く分からないのでルカリオは下手に動かずにその場で待ち続けた。  
やがて、その相手はルカリオのすぐ近くまでやってくる。  
 
音もたてることなく近づいてきた相手だ。目で追おうとしても巧妙に隠れられるだろう。しかし、ルカリオには波動がある。  
「……そこだっ!」  
ルカリオは波動を感じる場所へ向けて波動弾を放った。  
ルカリオは目を開いてその場所を見る。が、そこには誰もいなかった。  
「波動ポケモンのルカリオ……かぁ。これじゃ隠れても意味ないね」  
「姿を見せても見せなくても結局捕らえることには変わりないんだからいいじゃない」  
後ろから声が聞こえ、ルカリオは即座に振り返った。そこにはマニューラが2匹。片方は色違いの金色のマニューラだ。  
「……何の用だ?」  
ルカリオは警戒しながら問いかける。  
距離は充分にあるが、相手の素早さを考えると油断は出来ない。  
「あなたさっきからずっとこの森の中をウロウロしてるでしょ?もしかしたら道に迷ったんじゃないかなぁと思って助けに来たのよ」  
含みのある笑いを隠そうともせずに金色のマニューラが答えた。  
一匹で困っている状況で他のポケモンに出会うことはまさに救いだが、音もなく隠れて近づいてきたところからこの2匹のマニューラがルカリオを助けてくれるとは考えづらかった。  
「そのようには思えないがな」  
 
ルカリオは正直にそう言った。今更上辺だけの会話をしていても意味がない。いつでも動けるように構えをとる。  
それに対し、マニューラは降参というように両手を上げながら言う。  
「わかったわかった。そんなにピリピリしないでよ。別にまだ何もしてないじゃない」  
ヘラヘラと笑いながら言うが、目だけは笑わずに獲物をしっかりと捕らえている。  
「ま、あなたには余計な話は必要ないみたいね。じゃあ早速本題に入りましょうか」  
金色のマニューラが話を進める。  
「この森は私たち2匹の縄張りなのよ。そこに何の断りもなく入られてウロウロされたら迷惑なのよね。だからといって外には放り出さないわ。何の支払いもなく出て行かれちゃ納得がいかないもの」  
金色のマニューラの満面の笑みにルカリオは少し気圧される。睨まれるよりもこっちの方が怖いと感じてしまう。  
「支払い……?」  
「お金とか命とかそういう物騒なのじゃないから安心して。欲しいのはあなたの……オスのカラダ」  
金色のマニューラの笑みが艶やかなものへと変わる。目はメスの目へと変わっていた。  
「なっ……!?」  
 
ルカリオは意表を突かれ動揺してしまう。その少しの隙が命とりだった。  
2匹のマニューラの姿が消えたように見え、気がつくとルカリオはマニューラに押し倒されて、馬乗りになられていた。  
「っ!や、止めろっ!」  
ルカリオは必死になってもがくが、上から両手を押さえられ、大した抵抗も出来ない。  
「止めろだなんて、素直じゃないね。ホントは期待してるくせに」  
お互いの吐息がかかるほど顔を寄せ、マニューラが囁いた。  
普段♀とはあまり関わりのないルカリオは自分の意思とは別に顔を赤くしてしまう。  
「期待なんかするものか!こんな、こんなこと……」  
「もしかして、あなた一度もしたことないんじゃない?」  
「なっ!わ、悪いかっ!」  
マニューラに未経験であることを当てられ、ルカリオは恥ずかしさを隠すために大きな声をあげてしまう。  
仲間たちの中で未だに未経験なのはルカリオだけで、本人もそのことを気にしている。けれど、ルカリオはどうも♀に苦手意識を持っていて近づくことが出来ないのだった。ファーストキスさえもまだ守り続けている。  
「いいじゃない。可愛いよ?」  
「なっ!か、可愛いって…!」  
 
今まで言われたことのない言葉にルカリオはさらに顔を赤くする。  
(って、何を話してるんだ私は!)  
ルカリオは自分の今の状況を思い出し、抵抗しようとする。  
「んっ……!んむぅ!」  
しかしそれはマニューラのキスによって止められてしまった。  
ファーストキスを唐突に奪われた衝撃で頭は真っ白になり、体を動かすことが出来ない。そんななか、唇の柔らかい感触だけが際立って感じられた。  
抵抗する意思を奪い去られたルカリオの口内にマニューラの舌が入り込む。  
「くちゅ…んっ……」  
マニューラの唾液がルカリオの口内へと流れ込み、それを混ぜるかのように舌を絡められる。  
「ぷはっ………ん?どうしたの?」  
口を離したマニューラはボーっとしたまま動かないルカリオを見て尋ねた。  
しかし、なかなか返事は帰ってこない。  
「もしかして初めてだったんじゃない?キスするの」  
金色のマニューラがからかうように言った。その言葉にルカリオが敏感に反応する。  
「は、初めてなんかじゃない!キ、キスくらい…私だって……」  
反論の言葉はだんだんと小さくなっていき、ごまかすように消えた。  
 
金色のマニューラがルカリオの頭を優しく撫でる。  
「いいのよ、恥ずかしがらなくても。どう?気持ち良かった?」  
頭を撫でられていると、何故か不思議な気分になった。少しずつ落ち着いていく。  
「ぇ、あ、あぁ……気持ち良かった。…………って!何を言わせるんだっ!」  
心が落ち着いて、そのまま素で答えてしまう。自分の言ったことが恥ずかしくてまた顔を赤くした。  
「あははっ!ホントに可愛いねぇ。楽しめそうだよ」  
マニューラは笑いながらくるりと体ごと後ろを向く。その視線の先にはすでに大きくなり始めているルカリオのモノがあった。  
「な、何をする気だっ!」  
本当は大体の想像はついている。未経験だが無知と言うわけではない。雌との交尾でどのようなことをするのかくらいは知っていた。  
けれども、恥ずかしさを隠すために今は何か叫ばなければいけなかった。そうでもしないと完全に呑まれてしまいそうだ。  
マニューラの手がそっとモノに触れる。それだけでルカリオは大きく反応し、腰が浮いてしまう。  
「すごい敏感なんだねぇ。あ、初めてだからかな?」  
マニューラは「初めて」を強調してそう言った。ルカリオはもう恥ずかしさで埋もれてしまいそうになっていた。  
 
しかしそんなことには構わずにマニューラはモノに顔を近づけ、根元から一気に舐め上げる。  
「ひゃぁっ!」  
いきなりの責めにルカリオは思わず上擦った声を上げてしまう。  
「可愛い声で鳴くのね。女の子みたい」  
そう言って金色のマニューラはクスクスと笑った。  
「可愛い」とは言われても「女の子みたい」は許せなかった。ルカリオは必死になって反論する。  
「そんなの、いきなりなんだから仕方ないだろう!このくらいなんとも……はぅぁ!」  
言葉の途中でまたモノを舐め上げられる。ビリビリとした刺激が下半身から広がっていく。  
見るとまた金色のマニューラがクスクスと笑っていた。もうこれ以上言い返すことは出来ない。  
ルカリオは反論を諦め、せめて声を上げないように必死に口を閉じた。  
「んっ……ふぅ…んくぅ!」  
だが、初めてのフェラの快感にどうしても息が漏れてしまう。少しでも気を緩めれば声も出てしまいそうだった。  
今までフェラをされたことのないルカリオには上手い下手なんていまいち分からないが、それでもマニューラのフェラは上手いと思った。  
ルカリオの特に感じるところを的確に責めてくる。  
「我慢しちゃって……。意地っ張りなのね、あなた」  
 
金色のマニューラに笑いながらそう言われるが、ルカリオは言葉を返す余裕がない。  
「じゃあ、私も混ざろうかしら」  
金色のマニューラはそう言ってルカリオの視界から外れた。  
(ま、混ざるってまさか……!)  
ルカリオがそう思うのと同時にモノに対する刺激が強くなった。  
「ふぁっ!?」  
どうしても押さえきれずに声が出てしまう。その刺激は初めてのルカリオにはあまりにも強すぎた。  
ルカリオからはマニューラが邪魔で見えないが、感覚で二匹同時にフェラをされていることがわかった。  
舐め回すようなマニューラのフェラと舌を這わせるような金色のマニューラのフェラ。そんな違いをぼんやりと感じ取った。  
「ぉ、おい、それ…やめっ……!」  
背中にゾクゾクとした刺激が走り、無意識のうちに腰が浮いてくる。下半身の感覚が敏感になりすぎていて他の機能が動いていないような錯覚がした。  
実際に目に写っているものがいまいち認識出来ないし、よくわからない音まで聞こえる。頭では何も考えられない。ただ気持ちいいという信号を受け取り続けるだけで精一杯だった。  
 
「んむっ…くちゅくちゅ……。凄い感じてるんだねぇ。そんなに喘いじゃって」  
フェラの途中、マニューラの言葉がかろうじて聞き取れた。けれど、どういう意味かわからない。  
(喘いでる……?誰が?)  
そう疑問に思いながら少し周りの音に耳を傾けると確かに喘ぎ声のようなものが聞こえた。  
(これは……私の声?)  
「ひぁっ!」とか「はぁっ!」などという声が絶え間なく聞こえてくる。それは明らかにルカリオ自身の声だった。  
(私が、こんな声を……)  
分かっていても、もう止められなかった。  
無意識のうちに声は出続ける。  
「んぁぁっ!もぅ、イキそう……!あぅっ!」  
マニューラ達の唾液とルカリオのガマン汁でびちょびちょになっているモノがピクンと反応する。  
強烈な快感がせり上がってくるのをもう止めることは出来ない。  
マニューラ達のフェラはさらに激しくなり、ルカリオは絶頂へとのぼり詰めた。  
「くぁっ…イクッ!!あぁぁっ!」  
ビクンッと体が震えた。頭が一瞬真っ白に染まり、溜まっていた性が一気に体外へと放出される。  
それはマニューラ達の顔にかかる。二匹は全く嫌そうな顔をせず、うっとりとした表情で顔についた精液を指で絡め取り、舐める。  
 
「んっ……!すごい…濃い精液」  
「ずいぶん溜まってたのねぇ、自慰とかしてるの?」  
「………はぁ…はぁ…」  
金色のマニューラの質問にルカリオは答えられない。体が疲れきって動かないし、何もしゃべることが出来ない。ただ荒々しく息を繰り返すのみだった。  
「あ〜あ…。限界っぽいね。この様子だとこれ以上無理かなぁ」  
「そうみたいね。まぁ、今焦ってやらなくてもまだまだ時間はあるんだし、今日はこのくらいにして館に連れて行きましょうか」  
ルカリオはボーっとした意識のなか、最後にそんな言葉を聞いた気がした。  
 
 
「んっ……」  
目が覚めて、初めに視界に入って来たのは見慣れない天井だった。  
寝起きでボーっとする頭のまま、体を起こした。  
「ここは……?」  
状況が把握出来ないまま部屋の中を見回す。人間の泊まる宿のような部屋だった。縦長いクローゼットと大きな鏡。丸いちゃぶ台のようなテーブル。壁際についている窓の外からは光はなく、今が夜だということがわかった。  
しばらくぼんやりと窓の外を眺めていると、だんだんと頭が回るようになってきた。  
そして、意識を失う前のことを思い出す。  
「! あのマニューラ達は!?」  
 
ルカリオは弾かれたようにベッドから飛び出し、部屋のドアを開ける。  
「キャッ!」  
そこで金色のマニューラと鉢合わせる。ルカリオにとっては好都合だった。  
早速質問をぶつける。  
「おい、ここは何処なんだ?」  
驚いたからなのか、ルカリオが唐突に質問したからなのか、少し間があって金色のマニューラが口を開く。  
「ここは私たちの館よ。あなたは私たちがここに連れてきたの」  
「な、何のために!?」  
「オスが欲しいから。それだけよ」  
「なっ!…ふ、ふざけるな!誰がこんなところにいるか!」  
ルカリオは訳の分からないという気持ちと共に叫んで走り出した。  
後ろから声が聞こえた気がしたが、無視して走った。  
(オスが欲しいからなんて訳の分からない理由でこんなところにいさせられてたまるか!)  
大した時間もかからずに、出口らしき大きなドアを見つける。  
ルカリオは迷わずそこから飛び出した。  
外に出ると、視界一杯が夜の暗い森で埋め尽くされた。  
ここがあの深い深い森の中だということをすっかり忘れていた。  
頭に血が昇っているルカリオはそのまま駆け出そうとした。しかし、声がそれを遮った。  
 
「止めときなよ。今森の中に入ったら私たちでも助けられないから」  
マニューラだった。館の入り口に立ってルカリオを見ている。  
ルカリオは足を止めた。冷たい夜風が頭を冷やしていく。  
冷静に考えれば昼間でも抜けられない森を夜に抜けられるはずなどないのだ。それでもマニューラの声がなければ夜の森へ突っ込んでいたかもしれない。  
「あなたにはこの館に居るって選択肢しか残ってないんだよ。まぁ、死にたいのなら別だけどね」  
ルカリオだってこんなところで死ぬつもりはない。しぶしぶ館へと引き返す。  
(どうしてこんなことに……)  
そう思わずにはいられなかった。  
「これから長い付き合いになると思うから、とりあえずよろしくね」  
マニューラは満面の笑みでそう言いながら手を差し出した。  
「……はぁ」  
ルカリオは溜め息をついた。律儀に握手を返す自分に対して。  
(これからどうなるんだろう……)  
そう思わずにはいられなかった。  
 
 

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