「で!?ヤッたのか!!」  
 
クチートが、目をらんらんに輝かせてボクの顔を覗きこんで今のように言った。  
…え、あ、の、そ、の、え、と…。  
「ヤッたのかって聞いてんだよ!おいッ!」  
立ち上がり、ボクの肩を左手で掴んでゆさゆさ揺らしながらクチートは尚もボクに問い詰める。  
「ちょ…そんなダイレクトに聞かなくても……」  
ブーバーがクチートを宥めようとしてくれるけれど、聞く彼なんかじゃぁない。  
い、嫌だぁぁ!き、聞かないでよ!言えるわけないよ!  
ボクは真っ赤に染まる顔を隠すため、  
頭を抱えて肘に額をくっつける勢いで身を伏せてクチートから逃げようとしたけれど  
ボクの肩を、今度は両手で掴んで背を引き上げようとさせる。毛を引っ張られるから痛い…、うぅ。  
「ほぅらぁ、泣いちゃうか………あ、れ?」  
クチートを止めようとしていたブーバーが、何かに気が付いたようで途中で言葉を止めた。  
「ん?何?…わあ!?」  
今度はクチートの驚く声。何だろう?と、ボクは頭を抱えたまま上げてブーバーの方へ視線を向けて─  
 
「……ご、ご主人!…と、他のみんなを呼んで来て!」  
ブーバーがクチートへとそう呼びかけると、彼は「お、おう!」とその身を飛び跳ねさせた。  
ダダダ、とクチートが走り去る音を背中越しに聞きながらもボクの意識はとある一点に集中していた。  
…ブーバーが両手で抱える……たまごが、淡くも断続的に点滅していたんだ。  
コゥ…コゥ…と、点滅と合わせて音までもが聞こえる。これはまさか…  
「孵る…よ。今すぐに!」  
ブーバーの手に纏う炎がチラチラと揺れる。  
それと合わせて断続的に続く点滅もだんだんと強くなっていって……  
光が止まった…と、思ったその瞬間、たまごの頂点に一筋の皹が走った。  
筋は一本、二本、三本と数を増して行きやがてたまご全体が皹に覆われた。  
……パキ、とたまごの殻が崩れて中から新たな生命が顔を出そうとしていた。  
ボクはただ、それを見守っている事しか出来ずにいた。  
…怖い。  
ボクは、怖かった。  
本当に、このたまごがアブソルのものなのか、それとも───  
 
「…キサマはアレか。同性愛者の上に小児性愛者だったのか」  
ボクの胸に顔を埋めながら、アブソルが言った。  
…うーん、そう言うわけじゃぁないんだけど……ねぇ……。  
同性愛者と言うのは否定したい。…でも、小児性愛者と言うのは否定出来ないかもしれない。  
ボクは軽く苦笑って、彼女の頭を抱える手を今度はほっぺたに移して軽く撫でてみた。  
…やっぱり、抵抗はしなかったからちょっと持ち上げて額の青い宝石に唇をつけてみた。  
「……」  
アブソルは何も言わないで、ただ黙ってボクの行動を受け入れていたから  
ボクは調子に乗って額からほっぺたへ唇を滑らせて、次に彼女の唇に移そうとしたら  
「止めろ」と阻止された。…キスは精神的に受け入れそうにないらしかった。  
うん、まぁ気持ちは分かるかな…やっぱり、アブソルの心はオスなんだもん。  
 
アブソルを草むらの中に伏せさせて、ボクはその背中の上に乗って彼女の首筋に鼻を埋めた。  
フワリとした白い体毛が鼻をくすぐって、くしゃみをしそうになったけれど  
それはグッと抑えて口を開いて舌を出し、体毛に埋もれる皮膚を舐めた。  
「む……」  
ピクリ、とアブソルは反応を見せてくれる。  
…どんな感じ?と聞いたら「…良くわからん」と彼女は返した。  
「だが……悪い感じでは、ない…な…」  
そうなんだ。じゃぁもっと…と、背中からうなじへと舌を滑らせると  
アブソルは「んんん!!」と身を硬くさせた。  
…感じているんだろうか。ボクはちょっとだけ嬉しくなってうなじに顔を埋めたまま  
彼女のおしりあたりに右手を持っていって、軽く、触れてみた。  
「…そ…そこは触るな……」  
顔を伏せたまま、ボクが触れる場所の方へとアブソルは視線を向けて嫌がるけれど  
そうしないとたまごは作れないよ?と言うと、彼女はまた黙った。  
おしりよりももうちょっと下側へ、手を滑らせてみる。  
…掌に、ぷにっとした柔らかいモノが当たったのが分かって  
それが何のか理解した時、ボクは顔が急に熱くなったのを感じた。  
一気に、身体に緊張が走った。…凄い今更だと思ったよ。  
でも、ここで固まっていたら何も出来やしない。ボクは大きく深呼吸をして  
手をその場所にくっつけたまま身体を起こし、その場所を覗き込んで見た。  
全身を覆う深く長い白い体毛。だけれども、その体毛が極端に薄く短くなっているその場所。  
…アブソルが、メスであると言う証拠のその場所を、ボクは初めて目の当たりにした。  
 
うっすらとした一本の縦線。ボクはそこを爪で軽く撫でてみると  
アブソルはビクッと身体を震わせた。…やっぱり感じているのかな…?  
それとも、ただ単に驚いただけなんだろうか。  
爪で触っていると彼女が動いて、うっかり傷つけてしまうかもしれないと、ボクは思った。  
じゃぁどうしよう…?指は短いからそれで触る事も──  
 
あぁ、あったじゃないか。爪よりも指よりも、もっと優しく触れる事の出来る器官。  
ボクはアブソルに腰を上げるようにと言うと、彼女はそれに素直に従ってくれた。  
…多分、ボクが考えたその事を知らなかったからだろう。  
もし分かっていたら、絶対に従ってくれなかったと思う。  
「!! あっ…!?」  
そこで、アブソルはボクの意図に気が付いた。だけどもそれは遅かった。  
ボクは─アブソルのおしりに顔を埋めて、彼女がメスである証拠のその場所を…舌で、舐めた。  
 
「はっ…そこっは…」  
ブルッと背を震わせて、アブソルが身を捩って逃げようとする。  
だから、ボクは彼女の腰を掴んで逃がさないようにして、舌での愛撫を続けた。  
なかなか濡れてこないから、ボクは何度も何度もそこを舐める事にしたんだけど  
アブソルはどうもそれが嫌らしく、「て…手間をかけなくていい…」と、ボクを急かす。  
 
でも濡れないと挿入する事は難しいんだけどな…そこで今度は舌を中に入れてみる事にしたら  
「ひゃぁっ!」ってアブソルは身を跳ね上げた。  
…と、ボクの舌先にちょっとだけ甘い味が触れた。  
それが彼女の愛液だとすぐに分かったから  
ようやく濡れてきたと、ボクはちょっぴり安心した。  
舌を離すと、彼女のソコとボクの舌は、透明な粘液が糸となって繋がった。  
それが途切れた時、アブソルは「早く…しろ」とボク振り向かずに指示をする。  
それは焦らすなと言っているわけじゃぁない。  
ただ、早くこの行為を終らせたいからだと言うのは  
彼女の性格を知っているボクには、痛いくらいに伝わった。  
うん…分かっている。キミが望むならボクはそれに従うよ…。  
彼女の鎌の尻尾はペタンと落ち、その場所を隠したので  
ボクは尻尾を軽く握って持ち上げる。  
そして……ボクの熱い下半身をアブソルの下半身へと、くっ付けた。  
「……ん…」  
メスであると言う、彼女にとって否定したいその証拠の場所に  
オスであると言う、彼女が別の意味欲しているソレを触れられ、アブソルは小さく声を出した。  
ドキドキと胸が波打っている…心臓が、痛かった。  
 
ゆっくりと。でも確実に。  
…ボクは、アブソルの中に身を埋めた。  
「く……んぅ……」  
十分に濡らしたおかげで、ボクはすんなりとアブソルの中に入る事が出来た。  
それでも彼女の中はギチギチに狭く、ボクを強く締め付ける。  
…まるで、その部位を自分に寄越せと言っているかのようで  
千切れてしまうんじゃないの?って少し怖くなった。  
だから、ボクはそうならないようにと…腰をゆっくりと動かし始めた。  
「…は……ぁ……」  
アブソルは大きく息を吐いて、ボクの行為をただ受け入れていた。  
…痛い?と聞いたら「痛くは無い」と返してきた。  
「ただ……」  
ただ?  
「…熱い……」  
身を伏せたまま、アブソルは気だるそうにそう言う。  
それは痛いんじゃないの?と聞き返そうとしたけれど、  
意地っ張りな彼女の事だ。違うと言うんだろうね。  
 
ボクは腰を動かし続け、彼女の中に出たり入ったりを繰り返す。  
抜くたびに、ボクに絡みつく彼女の愛液は濃さと粘りを増して行って  
それらはポタポタと森の草むらへと零れ落ちていった。  
「…なぁ、まだ……か?」  
ハァ、と息を吐いてアブソルはボクに尋ねる。  
うーん……強くすれば多分、すぐに終ると思うけれど…  
「…じゃぁそうしろ。俺は早く終らせたい……」  
でもー…それだと痛くなると思うけれど……  
「構わない…」  
自分をメスである事を頑として認めないアブソルにとって  
オスに長い間抱かれるのはこの上ない苦痛なのかもしれなかった。  
ボクは上半身を再び彼女の背に乗せ、うなじに鼻を埋め込んで  
腰を掴む手の力を強くした。……自分の腰を浮かして、一度彼女から引き抜いてそして  
 
「……ん、あ、あぁッ!!?」  
強く、一気に彼女の中へとボクは入り込んだ。  
パァンッ……てボクが彼女に腰を打ち付ける音が、静かな森の中によく響いた。  
ボクはそれに思わず毛が逆立つような快感を覚えた。  
そして、彼女もまた─……  
「はっ…ちょ、ちょっと……ま、待て!」  
腰を打ちつけ続けるボクに、アブソルは制止の声を上げた。  
「待て…なんっ…なんだ……これ…!!」  
ゆっくりと出入りしていた感覚と全く違う感覚に、アブソルは戸惑っていた。  
無意識に、逃げようと四肢を動かそうとするけれど  
ボクに乗られている上に腰も掴まれているのだから、彼女は立ち上がることすら出来なかった。  
…それは、ボクが押さえているだけだからでも無かった。  
「ん、あぁ…何……だ、はぁっ…これ…」  
ゾクゾクと身体を震わせて、ハッハッと口で息を繰り返すアブソル。  
…気持ち、良い……ん、じゃぁないの?って耳元でポツリと呟いてみせると  
彼女はまた、軽く身体を震わせた。  
「…気持ち良い…のかは、分か…らない……」  
上目使いで、ボクを見ようとするけれど、うなじの後ろにいるボクを瞳で捕らえる事は出来なかった。  
「…た、ただ…ぁ……」  
…ただ?  
「…何…か……は…ぁ………続けていたい……気分だ…」  
 
初めて味わう未知の感覚。  
アブソルは、それがメスだけが味わえる感覚だと言う事を知らなかったに違いない。  
だから、無意識に。でも求めるように、今のように言ったんだろう。  
ボクはその言葉に火をつけられ、腰の動きをもっともっと早めた。  
「あつっ!あ、早っ…熱ぃ…」  
早くしろ、と言ったのはキミだよね?だからその通りにしているだけなのに。  
「で、でも!こんっ…な…は、はぁ…」  
顎を草むらに落とし、アブソルはガクガク震えながらも未知の感覚を味わっていた。  
……そして、ボクもそろそろ限界だった。  
本当はもっと、彼女に触れていたかった。  
今だけメスである彼女を、味わっていたかった。  
この行為が終ってしまえば、アブソルは再びオスへと戻るだろう。  
…嫌だった。アブソルはメスなのに。オスへと戻したくなんかなかった。  
だから、だからボクは。ボク、は───  
 
彼女をメスに戻すがごとく……ボクのオスのしるしを、アブソルの中へと深く深く注ぎ込んだんだ…。  
「はっ…あ、あぁ…ぁぁ…」  
ブルッと身体を震わせて、アブソルはうっとりとした感じで喘いだ。  
ボクは下半身がドクドク波打っているをの感じながらも、  
まだ彼女から離れたくなくて、そのまま彼女の背に乗っていた。  
…が、一通り落ち着いたアブソルが顔を動かして「重い」と言って来たから  
ボクは名残惜しくも彼女の中から身を引き抜いた。  
…トロッとした白濁液が、ボクと彼女を繋いでいたけれど  
それもまたすぐに千切れてしまい、  
これでボクとアブソルが触れる機会を終えてしまった事に気付いて、とても悲しくなった…。  
 
 
「……腹が空いた」  
ボクが彼女の後ろへと座り込んだ時、いきなりそんな事をアブソルが呟いた。  
「腹が空いた。食い物を持って来い」  
アブソルは首を回してボクへとそう命令をする。  
え、えー……だったらさっき、蜜を一舐めしないで全部舐めれば良かったんじゃ…  
「うるさい。俺は甘いものよりも辛いものが好きなんだ。さっさと持って来い!」  
う、うわぁ何かすっごく不機嫌だ……ま、まぁボクとこんなコトしちゃったんだし  
少しは彼女の機嫌を取らないと、後が怖いや。  
ボクは立ち上がり、じゃぁ何か持って来るねって行って彼女へ背を向けて森を出たんだ。  
 
…えーっと。1時間後くらいかな?  
マトマの実とモモンの実を抱えて彼女の元へと戻ってきて……  
そこで、ボクは自分を疑う光景を目の当たりにしたんだ。  
「遅かったじゃないか」  
眉をひそめて、鎌の尻尾をパタパタ振って、身体を地に伏せて  
不機嫌さを全身で表わすアブソルの─胸元に、白いでっぱりが存在していた。  
体毛と同化して、一瞬それが何なのか分からなかったけれど  
しゃがみ込んでそれをマジマジと見つめて、やっとボクはそれがたまごであると言う事を理解した。  
……えっと、これ……  
「たまごだ。それ以外の何かに見えるか?」  
い、いや、わかるけど……キミ…が、産んだの……?  
木の実を草むらの上に置いて、おそるおそる右手の爪先でたまごを指し示すと  
アブソルは「さぁーな?」と、含んだ笑いをボクに見せたんだ。  
……これはまさか、他のペアのなんじゃないかと、ボクは大きな不安を抱えた……。  
 
たまごに皹が入り、中のポケモンが生まれ出るその瞬間、  
ボクはアブソルとの出来事を思い返していた。  
本当に、本当に……本当に、ボクとアブソルの───  
 
「孵化……する!!」  
ブーバーがそう言ったと同時に、たまごの光は輝きを増し殻がパァン!と弾け飛んだ。  
 
思わず、腕で顔を覆い、殻から目を守ったけれど  
本音はたまごのポケモンを見るのが怖かったんだ。…情けないよ。  
「…リングマ、……リングマ」  
ブーバーが炎の指で、ボクが顔を覆う方の腕をちょんちょんと突く。  
「生まれたよ…見て、ほら……」  
穏やかで優しいその声に急かされ、ボクはゴクリ、と息を呑んで覚悟を決めた。  
そっと……腕を下ろし、硬く瞑った目を開けて……  
そこに見えたのは……  
赤と黄色の炎のような色の身体──に、支えられる、白い体毛と、青い鎌を持ち合わせた─  
赤いまんまるい瞳が、ボクをじぃっと見ていた。  
うー?って声を出して、爪も生えていない手でボクの鼻をポフポフと叩く。  
「…アブソルの、男の子だよ」  
…紛れも無く、アブソルの赤ん坊がボクの目の前にいた……。  
 
「うぉりゃ飼い主!こっちだこっちだ!!」  
クチートの声が背後からしたと思ったら、  
ドヤドヤとした騒ぎの声も一緒にこっちへ向ってきているのが分かった。  
「えー?何ーな……あ、あああぁぁ!!!」  
クチートの飼い主の、のんびりとした声は即座に驚愕のそれへと変わった。  
「あ!生まれている!」  
次に聞きなれた、ボクのご主人様の声。  
「わー、かーわいーいー。キャッキャッ」  
「あら、本当ね」  
「わぁ……おめでとう!リングマさん」  
そして、クチートの仲間たちの声がして、最後に  
「……そうか、生まれたか」  
ボクが振り返ると、白い体毛を靡かせてアブソルがゆっくりとこっちへ向っていた。  
…ボクは何も言えず、コクリと頷くことしか見せることが出来なかったけれど  
それでも彼女には十分に伝わったらしく、彼女はハッと息を吐いて、笑った。  
 
「白い体毛はルネの家々。青い皮膚と鎌はルネの空と海の色!  
やっぱり生まれる場所をルネシティにして正解でしたね。ピッタリだぁ」  
クチートの飼い主がそう言いながら、  
生まれたばかりのアブソルをブーバーから受け取って 両手で抱え上げた。  
じぃっとある一点を見つめて「あ、オスですね」と言って  
ボクのご主人様へと手渡した。  
「わぁ、可愛いぃ〜…生まれてきてくれて、ありがとう!」  
ご主人様は凄く凄く喜んで、アブソルの赤ん坊をぎゅぅっと抱きしめた。  
「そう言えば、この子にニックネームをつけるんですよね?  
アブソルが2匹もいると間際らしいからって」  
「えぇ、そのつもりなんですけど…なんて名前にしようか、思いつかなくって…」  
ご主人様は苦笑って、クチートの飼い主にそう言うと、  
彼はうーむ、と唸ってしばらく考え込んで…  
「…じゃぁ、生まれた場所をあやかって、ルネって名前にしたらどうです?」  
「ルネ…うん、そうします」  
ご主人はその意見に頷き、抱きかかえた赤ん坊に視線を向けて  
「あなたの名前はルネよ。よろしくね、ルネ」  
と、ニコリと微笑んで見せると、ルネは「あうー?」と首をかしげていた。  
 
 
「短い間でしたけど、どうもありがとうございました」  
 
翌日の事だ。  
カイナシティの港にて、ボクのご主人様はペコリと頭を下げてクチートの飼い主にそう言った。  
クチートの飼い主の後ろには、大きな大きな船。  
クチートと仲間達は飼い主の後ろに並び、船を見ながらわぁわぁと騒いでいた。  
特にクチートは船を見るのが初めてらしく、デケーデケーと一番騒いでいた。  
何でも、男性はシンオウと言う北の町からこっちへ来たらしく  
そろそろそっちへ戻らないといけないらしく、ここでボクのご主人様と別れる事にしたんだという。  
「あぁぁぁぁ〜…別れたくないですぅ〜…」  
顔にかけたメガネが曇る勢いで、男性は涙を流しながらもご主人様の手を握ったまま離そうとしない。  
「えぇ、私もです…でも、そろそろ船が出てしまいますよ」  
「あぅ……は、はい。で、ではこれで…」  
「メール、送りますからね」  
「えぇ、こっちも送りますから」  
船と港を繋ぐタラップに足を踏み入れようとして、男性ははた、と何かに気が付いたようで足を止めた。  
そしてクルッとご主人様へと振りかえり、ひとつの提案を出たんだ。  
 
「…あの。確かアブソルって電光石火覚えますよね」  
「? え?えぇ…」  
男性は身をかがめ、ご主人様の顔へ自分の顔を近づけて彼女が抱くルネを指差していった。  
「あのですね。遺伝によるたまご技ってご存知です?」  
「え?いいえ…?」  
自慢じゃないけど、ボクのご主人様はポケモンの知識はからっしきだ。  
…そうでもなければ、メスのアブソルをオスと間違えたりしないもの。  
だから、遺伝技と言う事すら何も知らないんだと思う。  
「…コリンクって、電光石火覚えないんです。  
素早さの低いこの種にとってけっこう致命的な問題でして─」  
「は、はぁ……」  
男性が何を言いたいのか分からないらしく、ご主人様は若干引き気味だった。  
うん……言っちゃぁ悪いけど、ちょっと気持ち悪かった。ごめんなさい。  
 
「なので、自分のレントラーと……ルネ、掛け合わせて見ませんか?」  
 
どうやら、ご主人様とボクらはまたこの男性と、  
クチートを始めとしたポケモンを顔を合わすことになりそうだ。  
…と、ボクはうっすらとした期待を込めて、そう思った。  
 
 
ボクの不安は、ルネが生まれた事によって吹き飛ばされた。  
…それでも、アブソルは相も変わらずオスを装っていた。  
どうにも、長い間すり込まれたオスであると言う意識を変えることは出来ないみたい。  
 
…でも、ルネを世話する時に見せるその顔は、まさに母親の顔だと、ボクは思った。  
だから……彼女がメスに戻れる未来は、そう遠くないんじゃないかな…?  
 
以上でボクの話はこれでお終い。  
でも、もし……アブソルがメスに戻れた時には、話に来るかも…しれないよ。  
それじゃぁね、バイバイ。  
 

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