「絵を描きたいか?」
ドンカラスだ……このスラム街に蔓延るポケモンマフィアのボス……。
「いえ、絵なら地面でも、壁でも、尻尾があれば描けます。お気になさらず」
「しかし、それはただの落書きだ。金にはならん。
どうだ、真っ白なキャンパスに好きな絵を描いて、毎日パンを食える生活をしたくはないか?」
突っぱねて狭い路地を曲がろうとする。
「ふぐっ」
口を羽で押さえられ、腕を掴まれる
「そう冷たくするなよ……
なあに、悪い話じゃあ無い。俺と――寝てくれればそれでいい。
パンだけじゃねぇ、ベーコンと卵を乗せてチーズを喰っても金は余る。
俺は娼婦に興味は無いんだ。おめぇさんとするキスは――どんな味がするかな」
想像したくもなかった。だが、想像もする前に口の中に嘴が入っていた。
初めてが嘴と 嫌だった 嘴に噛みついてやった 効果はなかった
「面倒だ。あくのはどう!」
がっしボカ
私は死ん……でない?
「手加減してやった。従わないとどうなるか?わかってるよな」
「ひっ……」
全身に激痛が走り、吐き気やめまいに襲われる。
手加減?これで手加減?
逃げ出しても、途中で野垂れ死ぬと思う。この男にもし何かされたら、どう手加減されても殺される。
そんな恐怖に押しつぶされ、悲鳴すらあげられない
「続きをするにも、ここはちとアレだ。柔らかいベッドのある部屋に行こう。な」
肩に羽を回される。もう諦めよう。
ある廃アパートの一室に押し込められ、ドアに鍵がかかる。
ドンカラスは誰も使ってないハズの冷蔵庫を開けると中から木の実をいくつかと缶に入った人間の飲み物を取り出した。
「ここは私の隠れ家なんだよ。さあ、腹が減ってるのだろう?好きなだけ食べるがいい」
爪に金属の輪を掛け、引くと意外と簡単に開いた。なかの飲み物を犬飲みすると知らない味がしたが、別に毒では無いだろう。
木の実もガツガツと食べた。途中いつの間にか涙が流れていた、うまい。うますぎるッ!
食べ終わった時を見計らい、ドンカラスが声を掛けてきた
「うまかったか?」
「……」コクッ
私は小さく頷いた。涙を拭われる。
「じゃあ、俺にも美味しい思いをさせてくれよ」
「……うん」
声に出して頷いてしまった。この雄の優しさが欲しくなってしまった。