ザングースを迎え入れてから数日―――。  
コウキは、ザングースの足が完治するまでの間、ザングースを色々な所へ案内した。  
買い物に行ったり、散歩に出かけたり、海を見に行ったり。  
平凡な毎日だったが、ライチュウはこの数日ですっかりザングースに懐いている。  
最初はあまり打ち解けなかったザングースも、一緒に過ごしているうちに段々と、コウキとライチュウとの距離が縮まりつつあった。  
「ザングース!こっちこっち!早く!」  
ライチュウが先へ先へ進みながらザングースを呼ぶ。  
「はぁ……はぁ……ま、待ってくれよライチュウ」  
息を乱しながらライチュウに駆け寄るザングース。  
そんな二人のやり取りを見守るコウキ。  
(ライチュウ本当に楽しそうだな。ザングースがいてくれてよかった)  
ザングースとの楽しい時間はあっという間に過ぎていく....  
 
 
ザングースの足が完治を迎える前日―――。  
コウキは、ある用事を済ませる為出かける事になった。  
ライチュウとザングースはお留守番だ。  
「ライチュウ、ザングース。悪いけど留守番頼むな。せっかくだから二人で遊んでていいよ」  
「うん。行ってらっしゃいコウキ!」  
「あ、そうそう。ライチュウちょっと」  
何かを思い出したコウキは、ライチュウに耳打ちする。  
「ライチュウ。ザングースと……体で遊びたいんなら、ザングースにお願いしてみたらどうだ?もう機会は今日しかないぞ?」  
「えぇちょっとコウキ!?何言ってるの!?」  
「とぼけちゃって。まぁいいや。やるんだったら寝室でな。ライチュウちゃんとリードしてやれよ」  
コウキはライチュウを茶化し、家を出て行った。  
「…………」  
黙ってそれを見送るライチュウ。  
実は……ライチュウは、毎日ザングースと一緒にお風呂に入っていたのだが、何度かザングースの股間をちらちら気にしていた。  
コウキがザングースの陰茎を洗っている時は特に。  
でも、勃起していたり恥ずかしがってたりしていた様子もなかったので、ライチュウは中々言い出す機会はなかった。  
それに気付いていたコウキも気を使って、今日は二人に留守番をさせたのだ。  
「ライチュウ?どうかしたのか?」  
ぼーっとしているライチュウに話しかけるザングース。  
「え?ううん。何でもない。それより」  
気を取り直しライチュウはザングースに言う。  
「ザングース。明日で足も完治だね…」  
「うん。そうだな…」  
二人の声は少しばかり寂しい感じがした。  
そう、ザングースは明日足が完治する。  
そしたらザングースは帰るのだ……自分の住み処に。  
「ホント、色々な事があったよね」  
ライチュウがここ数日間の思い出をしみじみと語る。  
「ああ。でもオレ、こういう生活って結構好きかもしれないな」  
「え?」  
ライチュウがザングースを見る。  
「上手く言えないけどさ、何ていうかその……誰かと一緒に過ごす生活ってのも、悪くないかなって」  
ザングースはライチュウを見て笑う。  
「ザングース。ホントに完治したら……帰っちゃうの?」  
「…………」  
ザングースは答えられず、二人の間に沈黙が訪れた。  
 
沈黙を破ったのはザングース。  
「それよりさライチュウ。何かしようぜ」  
「うん」  
ライチュウが返事する。  
「何がいいかな?ライチュウ。何かあるか?」  
「う、うん」  
ザングースがライチュウの返事を待っている。  
(今日で最後だし……駄目元で言ってみよう)  
ライチュウは思い切って、ザングースに言ってみた。  
「ねえザングース。もしよか…よかったら……オイラと交…交尾……してみない?」  
カミカミで上手く喋れない。  
「え……?交尾?」  
ザングースはライチュウの言葉に疑問を覚える。  
「何で?」  
「そ、その……ザングースと……やってみたい……から」  
段々と声が小さくなる。  
ずっと一人で過ごしてきたザングースは当然、交尾した事など一度もない。  
「オレと交尾すんの?」  
「う、うん。……嫌?」  
ライチュウは不安げな顔をしてザングースを見る。  
「いいよ。別に」  
「え!?」  
ライチュウは驚いてザングースを見る。  
「別にいいよ。やった事ないけど」  
「オ、オイラも交尾はした事ないけど……ホントにいいの?」  
「うん」  
ザングースはあっさりOKしてくれた。  
「じゃ、じゃあ……やる?」  
「うん。あ、でもオレやり方とか全然知らないからライチュウ、オレをリードしてくれよな」  
ザングースはコウキと同じ事を言う。  
「うん。じゃああっちの部屋行こ」  
「うん」  
(ザングースはホントに嫌じゃないのかな……?)  
ライチュウはそんな疑問を抱きながら、ザングースと寝室までやってきた。  
「ザングースが下でもいい?」  
「うん。寝転がればいいのか?」  
「うん」  
ザングースは仰向けで寝転がりライチュウを見る。  
「ザングース。オチンチン……見せて?」  
言ってから、ライチュウは顔がかぁっと赤くなった。  
目茶苦茶恥ずかしい……。  
だが、交尾をする以上、言わない訳にはいかない。  
「いいよ」  
ザングースはガサガサと股間の体毛をかぎ分け、ピンク色の陰茎をライチュウに見せる。  
(オイラより大きい……)  
改めて見るそのザングースの陰茎は、ライチュウのそれよりも僅かに大きい。  
「しゃ、射精した事……ないよね?」  
射精自体を知らないと思うが、一応確認しておく。  
「しゃせい?」  
ザングースは何それ?って顔で聞き返す。  
やはり知らない。  
 
「口で説明するよりやってみた方が分かるから……やってみる?」  
段々ライチュウの興奮が高まってきた。  
「うん。やってみたい。あ、ライチュウのも」  
興奮したライチュウの股間から、ピンク色の陰茎がにゅるりと顔を出す。  
ザングースと違い、当然上を向き始める。  
「へえ。ライチュウのチンチンって上向くんだ。凄いな」  
ザングースがライチュウの陰茎を見て関心を示す。  
「じゃあザングース。やろっか。オイラがリードするね」  
リードするとは言ったものの、ライチュウがコウキに今まで教わった事をザングースにするだけだが。  
ライチュウがあらわになったザングースの陰茎を触る。  
「ん……」  
ザングースが少し喘ぐ。  
「ザングース敏感なんだね」  
そのまま先っぽをすりすりしたり、撫でたりしているうちに、僅かにザングースの陰茎が上を向き始めた。  
「あ、オレのもおっきくなってきた」  
ザングースは顔を起こし、自分の陰茎に釘付けになる。  
かつてライチュウも、自分の陰茎が初めて大きくなった時はそれに釘付けになったものだ。  
最近ではそれが普通になってしまったが……。  
ライチュウはザングースの陰茎をいじりながら、下のすぼみを摩ってみた。  
すぼみを摩られ、ビクンと体を震わせるザングース。  
「ライチュウ。どこ触ってるんだよ!」  
「ん、後で使うんだ」  
「???」  
自分が何をされるのか、ザングースには全く想像がつかない。  
ライチュウがザングースの陰茎をくんくんと嗅いでみる。  
僅かに……ザングースの匂いがする。  
(どうしよう。先に……出させてあげようかな?)  
すっかり大きくなったザングースの陰茎をしっかりと握るライチュウ。  
試しに1回扱いてみた。  
「っわ……!」  
ザングースの顔が引き攣る。  
ザングースも興奮しているのか、ライチュウが続けて2、3回扱くと、尿道から僅かな透明の液体が出てくる。  
(あ、もしかして先走りってやつかな?)  
指で触ってみると、粘膜を張っている。  
(やっぱり。ドロドロだぁ)  
ライチュウがゆっくり扱くと先走り液はますます溢れ、ザングースの亀頭を光らせていく。  
「あ……ラ、ライチュウ……オレ……」  
ザングースが喘ぎながらライチュウを呼ぶ。  
ザングースの陰茎がピクピク震えてきた。  
間もなく射精を迎えるようだ。  
「ザングース。もう出そうだね」  
扱くスピードを速めると、先走りの液でグチュグチュ嫌らしい音を立てながら、ザングースの陰茎は絶頂を迎えた。  
ザングースが堪らず叫んだ。  
「あぁ……ガマ…ン……出来な…い!ひん!」  
ぴゅう!  
勢いよく飛び出したザングースの真っ白な精液が、ザングースを汚していく。  
初めての精液を放出したザングースの陰茎は、亀頭に微量の精液を残しながら、ピクピクと震えている。  
しかし、まだ萎える事を知らない。  
あれだけの精液を出してもなお、上を向き続ける。  
ライチュウは、ザングースの陰茎から手を離した。  
尿道口からトロトロ溢れる僅かな精液が、糸を引きながら床に垂れる。  
「ザングース。いっぱい出たね」  
「……これ、何だ?」  
初めて見る自分の精液を見つめ、訳が分からないザングース。  
ライチュウは、床に垂れ落ちたザングースの精液を指で取り、ザングースに見せる。  
 
「これはね。ザングースが気持ち良くなった時に出るんだよ」  
「気持ち良くなった時?そういえば……出てる時……何か体の力が抜けて……変な感じだった」  
ザングースは言葉を途切らせながら自分の陰茎を見つめる。  
ライチュウは、指に付いたそれをぺろりと舐めとる。  
それを見たザングースが驚いた。  
「な、ライチュウ!それチンチンから出てきたやつだぞ!?そんなの舐めたら……」  
「平気だよ」  
あっさり答えるライチュウに、ザングースは何も言えない。  
「ザングース。二人で一つになろう」  
「二人で一つに?それってどういう……あ!」  
それってどういう意味?と言おうとしたら、ライチュウに足を持ち上げられた。  
M字開脚の体勢にされたザングースは、ある事に気付いた。  
先程摩られていたすぼみが、ライチュウにもろ丸見えだ。  
ザングースはたちまち顔が赤くなる。  
「入れやすいように濡らしとくね」  
「な、何を入れる……ひあぁ…!」  
ライチュウがザングースのすぼみをぺろぺろ舐め始めた。  
「くぅ……!お、おいライチュウ!そんな……と…こ……」  
最後まで言い切れない。  
くすぐったいのか、それとも快感なのか……ザングースは「はぁん!」「ひぁ!」など高い声を出して喘ぐ。  
適度な濡れ具合になったところで、ライチュウが舐めるのを止めた。  
(準備できた。後はオイラが……)  
ライチュウが自分の陰茎を掴み、ザングースに近づく。  
「ラ、ライチュウ?何するつもりなんだ?」  
「言ったじゃない。二人で一つになろうって」  
ライチュウがザングースに自分の陰茎を入れていく。  
鋭い痛みと、キュンとした快感に襲われるザングース。  
「ラ、ライチュウ……い、痛い……」  
顔を険しくするザングースは、足をじたばたさせる。  
「もう少し……もう少しだよ」  
ライチュウも初めてなので、やり方がよく分からないが、自分が思った通りにやってみる。  
ぎりぎりっ……ライチュウの陰茎が、ザングースのくぼみに侵入していく。  
「イタタ……ライチュウ……まだ?」  
「は、入った……!」  
ライチュウとザングースは一つになった。  
「ザ、ザングース。いくよ」  
「う、うん……」  
ザングースは意味が分からないが、ライチュウに身を任せる。  
ライチュウは不器用ながらも、ぎこちないピストン運動を始めた。  
中でライチュウの先走り液が、ザングースを犯していく。  
元々恐いザングースの顔が、更に強張っていく。  
「ザングースの中、あったかいね」  
動きながらライチュウがザングースに声をかける。  
「ラ、ライチュウこそ。ふぇ!ぁぁ……」  
ザングースは時折喘ぎながら、息を荒くしている。  
「ラ、ライチュウ。そんなに激しく……動かないで……」  
(あぁもう出ちゃいそう……最近コウキやってくれてないからなぁ……)  
ライチュウの陰茎は、数日ぶりの射精へ向けての準備している。  
「ザ、ザングース。オイラもう……出そう。ザングースの中に出して……いい?」  
ライチュウも息を荒くしながら、ザングースに言った。  
 
「はぁ……はぁ……いいよライチュウ」  
「くぅ……!」  
ビュルル!!  
ザングースの中で熱い精液を放出するライチュウ。  
「うぁ!」  
ライチュウの精液を受け止めるザングース。  
数日ぶりの射精はしばらく続いた。  
「はぁ……はぁ……ザ、ザングース……」  
息を荒くしながら射精を終えたライチュウは、陰茎を抜く。  
抜いたザングースのすぼみから、ライチュウの精液が溢れてきている。  
「はぁ……はぁ……」  
ザングースも、息を荒くしながら目をつぶっている。  
「ザ、ザングース……もう一回……イカせてあげるね」  
ライチュウは再び、ザングースの陰茎を握り、今度は口に加えた。  
(フェラするのって初めてだけど……口の中があったかいや)  
「……あ!」  
自分の陰茎を舐められているのに気付き、思わず声を上げるザングース。  
「ザングースのオチンチン……震えてるね」  
亀頭に吸い付き……カリっと軽く噛み……舐め回す。  
ライチュウの口の中でザングースの陰茎は、再び訪れる射精に向けて痙攣し始めた。  
ザングースが顔を起こしながらライチュウを見つめている。  
「ラ、ライチュウ……オレ……やっぱり……ぅあ……!また……だ」  
何か言いかけたが、射精寸前になり喘ぎ声に変わった。  
ザングースの陰茎が更にプルプル震え出した。  
「オイラが飲んであげる。ザングースの精液……」  
「くぅ……!で、出る……!」  
ザングースの体が反る。  
ぷくぅっと亀頭が膨らみ、さっきと同じぐらいの濃い精液を堪らず吐き出したザングースの陰茎。  
初めての射精を立て続けに終えたザングースは、気持ちがぼーっとしてきたようだ。  
口で受け止めたライチュウは、ゴクリとそれを飲み込んだ。  
(ザングースの精液……熱い)  
ライチュウもザングースも、しばらくそのまま動かなかった。  
 
気分が落ち着いてきたライチュウとザングース。  
「ザングースごめんね。ちょっと強引だったかも」  
ザングースが口を開く。  
「いいんだライチュウ。オレも……結構楽しかったし」  
言い終えた後、顔を赤めるザングース。  
「オイラも……ザングースと交尾できて……良かった」  
ライチュウは嬉しそうに笑う。  
 
 
ライチュウがザングースとやってから数分後―――。  
コウキが帰ってきた。  
「あれ?ライチュウとザングースがいないな。あ、もしかして……」  
コウキは寝室に行ってみる。  
精液まみれのライチュウとザングースが、コウキを見ている。  
「あ、お帰りコウキ」  
「二人ともやったのか?……って聞かなくても分かるな」  
コウキは二人を見て、軽く笑った。  
「ったくしょうがないなあ二人とも。洗ってやるからおいで」  
ライチュウとザングースは、コウキについていった。  
 
風呂に入ってる間、ライチュウとザングースはあまり口を開かない。  
コウキも違和感を感じているようだ。  
「二人ともどうしたんだ?ケンカでもしたのか?」  
「ち、違うよ。ね、ザングース」  
「うん。ちょっと疲れただけだよ」  
「ふーん。ならいいけど」  
どうもそれだけではない気がしたが、コウキもそれ以上は聞かなかった。  
二人に付着した精液を丁寧に洗い流す。  
 
「さ、二人とも綺麗になったな。もう夕方だし飯食うか」  
「うん!オイラお腹ぺこぺこだよ!」  
「オレも!」  
ライチュウが満面の笑みで餌を食べる。  
ザングースも一緒に餌を食べ始めた。  
 
「ごちそうさま!ねえコウキ。海を見に行かない?ザングースも行こうよ」  
食べ終えたライチュウが、コウキとザングースに声をかける。  
「いいよ。ザングースもいいか?」  
「うん。行こう」  
ザングースも了解してくれた。  
家を出て道を少し歩くと、ライチュウはザングースと一緒に先に進んで行った。  
(いつもの二人だな。俺の思い過ごしか)  
いつもと変わらない二人を見て安心したコウキは、気にするのをやめた。  
 
夜でも、この丘から眺める海は見晴らしがいい。  
町の光が海に反射して、一層美しく見える。  
「ザングース。とっても綺麗だよね」  
「うん。最後にまた……見れてよかった」  
”最後に”とザングースの口から出た言葉に、ライチュウは下を向く。  
(ライチュウ……)  
コウキもライチュウが心配だ。  
そう。ザングースは明日、住み処へ帰してやらねばならない。  
コウキがザングースと果たした約束だ。  
「ザングース。オイラ……オイラ…………ごめん」  
ライチュウは顔を背け、家に向かって走り出した。  
ザングースはライチュウを追いかける事が出来ず、顔をうつむける。  
「ごめんなザングース。ライチュウ、ザングースと離れ離れになるのが……」  
コウキは最後まで言う事が出来なかった。  
別れが辛いのは……コウキも同じだ。  
「うん。分かってるよコウキ」  
コウキに向き直り無理をして笑顔を見せるザングース。  
「さ、俺たちも戻ろうか」  
ザングースの肩をぽんぽんと叩いて、コウキは歩き出した。  
「…………」  
ザングースはしばらく海を見つめながら、コウキの元へ走って行った。  
 
家の前にはライチュウがいる。  
コウキは黙ってライチュウを抱き上げ家に入る。  
「二人とももう寝るか?」  
コウキがライチュウとザングースに声をかけた。  
もう夜も遅い。  
「……うん」  
元気のないライチュウが弱々しい返事をする。  
「俺はまだ起きてるからさ。ザングース悪いけど、ライチュウの事……頼んだぞ」  
「うん。分かったよコウキ」  
「おやすみライチュウ、ザングース」  
二人の事を思ったコウキは、最後の晩ぐらい二人で寝かせてあげよう……そう思ったのだ。  
ライチュウとザングースは、寝室へと向かった。  
 
「……じゃあ寝よっかザングース」  
「そうだな」  
二人で布団に入り、天井を見る。  
「…………」  
「…………」  
二人とも、言いたい事が山ほどあるのに黙ったままだ。  
「……ねえ、ザングース」  
「何だ?」  
ようやくライチュウが口を開いた。  
「オイラ、ザングースと友達になれてホントに良かったよ。ありがとう」  
「いや、お礼を言うのはオレの方だよ」  
「え?」  
ライチュウがザングースを見る。  
「オレ、今まで一人で生きてきてさ、仲間なんて要らないって思ってた。けどさ、コウキに怪我治してもらってライチュウとも仲良くなって……」  
ザングースは、言うのを恥ずかしがっている。  
「初めて温もりってものが分かった気がする。オレにそれを気付かせてくれたのは……お前たち二人だ」  
「ザングース……」  
ザングースは申し訳なさそうにライチュウを見る。  
「済まなかったなライチュウ。オレ、お前が大嫌いなんて言っちゃったけど……撤回するよ。オレ……ライチュウの事……大好きだ」  
ライチュウはまた泣きそうになった。  
「オイラだって……ザングースの事大好きだよ。ザングース。また……会えるよね?」  
「会えるさ。絶対に」  
「絶対……絶対遊びに行くからね」  
「オレも、もしかしたら…………」  
「え?もしかしたら……何?」  
ライチュウは、最後の言葉が聞き取れなかった。  
「何でもない。さ、もう寝ようぜ!」  
ザングースは話を切り上げた。  
「おやすみ。ライチュウ」  
「うん。おやすみザングース」  
二人は寄り添いながら眠りについた…………。  
 
 
翌朝―――。  
「ザングース。準備出来たか?」  
「うん。バッチリだよ」  
「よし。じゃあ出発するか!」  
コウキたちはザングースの住み処へ向け出発した。  
ザングースは「いい」と言ったのだが、ライチュウの強い希望と、最後まで面倒を見るというコウキの意見で、ザングースを住み処まで無事に送る事にしたのだ。  
ライチュウは、道中全く口を開かないが、ザングースは珍しくよく喋る。  
無理をしているのかもしれない。  
コウキも、それには触れないようにザングースと話している。  
「コウキ。遠いのにごめんな」  
「いいんだってザングース。ええと、次はこっちだな」  
地図を見ながら、分岐点の道を間違えないように進む。  
「しかしザングース。ポケモンハンターなんかに狙われるって事は、ザングース強いのか?」  
「そんな事ないよ。オレなんかより強いザングースはいっぱいいるだろうし」  
「…………」  
二人の会話にも、ライチュウは全く入ろうとしない。  
コウキもザングースも、そんなライチュウが気にならない筈もなく、声をかけるのだがライチュウは「うん」や「そうだね」しか言わない。  
 
随分と道を進んだ三人は、やがて森の前に着いた。  
「地図を見た感じだと、この森はかなり広いな」  
コウキが地図を見ながら顔を曇らせる。  
「久しぶりだな。ここに戻ってくるのは……」  
ザングースは数週間ぶりの帰還が嬉しいのか、それとも懐かしいのか、どっちつかずの顔をしている。  
森を進んで行くと、大きな湖があって、周りに成っている実を虫ポケモンが食べていたり、水ポケモンや草ポケモンが水浴びをしていたりと、よく見かけるポケモンばかりだ。  
コウキやライチュウも辺りを見回している。  
「へえ。結構いい所じゃないか」  
「オレを見るとみんな逃げちゃうけどね……」  
ザングースが落胆した様子で湖を見つめている。  
「ザングース。住み処はこの辺なのか?」  
「もう少し進んだ所に洞窟があるんだけど……荒らされてないかな」  
ザングースは少しばかり不安のようだ。  
「じゃあ行くか」  
コウキたちは、湖を後にした。  
「コウキ。あのさ……」  
「ん?」  
ザングースが何かを言いかけた。  
「オレ……オレを……」  
「オレを……何だ?」  
吃るザングースに問いただすコウキ。  
「……いや、何でもない」  
「言いたい事があるんじゃないのか?  
「いや……いいんだ」  
ザングースは言う事が出来なかった。  
 
「着いた。ここだよ」  
コウキたちの目の前に、入り口の大きな洞窟がある。  
ザングースが中へ入り、荒らされていないかを確認する。  
「よかった。荒らされてないや」  
ザングースは一安心した。  
「じゃ、ライチュウ。ザングース」  
コウキがライチュウとザングースに声をかけた。  
ここで、ザングースとのお別れだ。  
「ザングース。また会う時は……よろしくな!」  
「うん。ありがとなコウキ。オレ、コウキの事……大好きだよ。本当にありがとう」  
ザングースはコウキに頭を下げた。  
「ほらライチュウ。ザングースに言う事があるんじゃないのか?」  
コウキがライチュウの肩をとんとんと叩く。  
「……ザングース……絶対にまた会おうね」  
「ああ。ライチュウも……元気でな」  
「…………」  
「…………」  
本当は二人とも、離れ離れになるのが嫌なのに言い出す事が出来ない。  
コウキもまた、ライチュウと気持ちが同じだが、自分から言い出す事は出来ない。  
ザングースにも、ザングースの生活がある。  
この先どうするかは、ザングース自身が決める事だ。  
(また……時間が出来たら……会いに行こう)  
ザングースは、寂しそうな顔でライチュウを見つめていた。  
「じゃあザングース。元気でな!」  
「ありがとうコウキ!ライチュウ!また会おうな!」  
ザングースは最後に、思いきり元気を出した。  
肩を落としているライチュウを押し、コウキたちは来た道を戻っていく。  
ザングースは泣きながら、二人が見えなくなるまで手を振ってくれていた。  
 
「コウキ……オイラ……」  
「何も言うなライチュウ。よく我慢したな」  
「うわああん!」  
泣くのを我慢していたライチュウは、ついに我慢しきれずコウキに泣き付いた。  
「また会えるんだから。な?」  
「ひっく……うん……ひっく……」  
泣いているライチュウを慰めながら、コウキはゆっくりと歩いた。  
帰り道がとても長く感じる。  
 
家に着いても、ライチュウは全く口を開かない。  
ライチュウが気持ちの整理がつくのは、かなり難しい……かもしれない。  
あれだけ大好きだったザングースが、もう……いないのだから。  
(何か……家の中が静かだな)  
いなくなってから初めて、ザングースの大切さが分かったような気がした。  
「ライチュウ。風呂入るか?」  
「ううん……今日はもう寝るよ」  
「そうか。ん?」  
ライチュウが、コウキの袖を引っ張っている。  
「……一緒に寝よ?一人じゃ……眠れないから」  
「分かった。一緒に寝よう」  
ザングースがいなくなったその夜、コウキとライチュウは二人で寄り添いながら眠りについた。  
夜中に、コウキはライチュウの啜り泣きを聞いた……ような気がした。  
 
 
 
続く....  
 

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