私が、ガブリアスと出会ったのは、19歳の時だった。  
時が経つのは早いもので、あっという間に6年が過ぎ、私は25歳になっていた。  
これからする話は、今より4年前・・・・21歳の時の話である。  
そう、私がポケモンと結婚をするきっかけと敬意をした時の話だ。  
 
 空には真っ黒な雲が漂い、今にも雨が降りそうな勢いだった。  
そんな中、小走り気味で家へと向かっていた私は、無意識の内にガブリアスの事が頭に浮かんでいた。  
(早く帰らなきゃなぁ、ガブリンが私の帰りを待っているだろうし・・・・)  
心配を掛けたくなくて、早く帰ろうと思っていた。  
けれど、徐々に家が近づいていくにつれて、私は友人のツバキに言われた事を思い出していた。  
「ミフはさ、好きな人とかいるのん?」  
行き成りな事で動揺し、どう答えていいか分からなかった。  
分からなかった・・・・が、自然とガブリアスの事が頭の内に浮かんできていた。  
けれども、ポケモンに恋をしている、等とは言えなかった。  
昔はポケモンと結婚した人が多数いたと聞く。  
なのに今では、禁忌とされていたからである。  
「ん〜、いないって言ったら嘘になるけど、いるって言っても嘘になるなぁ」  
曖昧な返事をし、何とかその場を切り抜けようとした。  
甘かった・・・・後悔することになるなんて全く思わなかった。  
「え〜、何それ〜  
はっきりしないわねぇ  
いるんならいるでハッキリしなさいよね〜」  
無理だって、言えるわけないじゃんか・・・・  
ガブリアスのことを愛しています、だなんて。  
私がボーっと考えていると、可愛そうな者を見るような目で見つめてくるツバキ。  
「その様子だといないみたいね・・・・  
うんうん、ミフみたいに気が強いのか、天然なのか分からない人を好きになる男なんていないよね〜」  
うぅぅ・・・・言いたい放題言いやがって〜。  
禁忌なんかじゃなかったらちゃんと言えるんだからねっ!!!  
「あ、あはは、そ、そうだよねぇ  
私ってどっちつかずって感じだもんねぇ・・・はぁ」  
認めるのが空しく、苦笑いをし、溜息をつくと、ツバキは泣いている子供をあやすかの様に私の頭にポンっと手を置きヨシヨシと撫で回してくる。  
うぜぇー、超うぜぇー、通路の真ん中で止まって話をしているオバハンくらいうぜぇー!!  
「おっと、もうこんな時間か  
私そろそろ帰るね  
彼氏が私の帰りを待ってるから♪」  
時計を確認し、満面の笑みで言うとガンバレという視線を私に送り、その場を後にした。  
 
「好きな人・・・・か  
あんな決まりが、あんなのが無ければ・・・」  
立ち止まり、憂鬱な気分になる。  
気が付くとそこは家の目の前で・・・・・。  
今更考えても仕方ないよね。  
「たっだいま〜」  
「おう、お疲れ」  
「あっ、お帰りなさいませご主人様、お風呂が沸いていますが、お入りになりますか?」  
相変わらず用意がいいなぁ、まるでメイドさんのようだ  
「ん〜、二人ともお腹空いてるでしょ?  
すぐにご飯にするからさ、お風呂はその後って事で」  
言うとグレイシアは笑顔で頷くと、尻尾を降りつつ奥へと消えた。  
「お前も大変だよな、何を言われたかはわかんねぇけどよ  
ミフユには俺が付いてるんだから堂々してろよ」  
彼にこんな事を言われると、落ち着く、安心する。  
私は、縋る様にして抱きついていた。  
「お、おい、どうしたんだよ急に  
お前らしくないぞ」  
「ううん、何でもないよ  
でも、こうしていたい気分なの・・・・いいでしょ?」  
困った顔をするガブリアスだが、すぐに優しい顔になった。  
これが彼の優しさでもあり、優しさだった。  
惚れない方がおかしいよね、こんなの。  
だから、彼が大好きなの、夢中なの。  
誰が何と言おうと私は・・・・・。  
 
「中々惹かれるようなのが無いわねぇ、自作しかないかな」  
決断したら早いもので、私はウェディングドレスのカタログに目を通し、呟いていた。  
訳を知らない人が見たら驚く光景だろう。  
でも、出来る事からコツコツとって言うよね、備えあれば憂いなしとも言うし  
問題は告白するタイミングだよね。  
カタログを放り投げ、天井を見つめ考える。  
すると、スッと私の顔を覗き込む彼の姿が目の前に現れた。  
「ま〜た考え事かよ  
お前もよく飽きね〜よな、俺だったら途中で投げ出しちまうぜ」  
「うわっ、ちょ、ちょ、ちょっと、行き成り何よ」  
咄嗟の事に驚きを隠せず、動揺してしまった。  
本当にガブリンは行き成りが多い。  
少しは事前に何かを言ってほしいものである。  
「考え事って訳じゃないよ  
ただ、ちょっとね・・・・」  
「ちょっと、何だ?  
俺に言えない事なのか?  
水臭い奴だな、なんでも言ってくれよ、お前の為なら何でもする覚悟なんだぜ?  
つっても、まっ、お前の言いたい事は大体分かる気がするな  
たぶん、俺も同じ気持ちだから・・・・」  
え・・・?  
私と同じ気持ちって事は彼も・・・?  
彼の視線は私に向いている・・・かの様に見えた。  
が、右目が私に向いていない。  
カタログに向いてるし。  
そりゃ、言わなくても分かるわなぁ・・・・  
「こ、こ、こ、こ、これはその、違うの、ガブリンと結婚したいとかそういうんじゃなくって、そ、そ、そ、そう!!  
友達にどれが良いか選ぶの手伝ってくれって言われたの!!」  
最悪だ・・・・・。  
こんなにキョドってたらバレバレじゃないか。  
嘘がヘタだな私って。  
「つまり、俺と結婚したいんだな  
けどポケモンと結婚するのは禁忌だから、口にすることができない、違うか?」  
うっ、中々鋭い。  
もしかしてニュー○イプか・・・?  
 
見える、私にも敵が見えるぞ!!  
いや、うん、取り乱しましたごめんなさい。  
「うん、すごいね、全部君の言うとおりだよ」  
全て見透かされ、如何して良いか困惑してしまう。  
そんな私を見て彼は言葉を続ける。  
「此処でなきゃ問題ないんじゃないか?  
俺の住んでた森の10kmくらい先に村がある。  
そこにはポケモンと結婚をしてひっそりと暮らす人々がいるんだ  
禁忌だと分かっている、けれど愛に種族は関係ない  
そんな人たちが集うところだ」  
へっ?  
そんなところ私どころか、此処に住んでる人たちですら知らないぞ。  
でもこれって、間接的にOKってこと・・・だよね?  
自然と顔は綻び、嬉しさで胸がいっぱいになっていた。  
 
 
 
 「お引越しですか・・・?  
私は構いませんが、このお家はどうするのでしょうか?」  
グレイシアの問いにすんなりと答える。  
「引き払うよ、それで森の向こうにある村で暮らすの  
無茶を言ってるのはわかってる、でも、ここじゃちょっと暮らし難くなるからさ」  
説明を受けて納得するグレイシア。  
彼女は、外の世界を見られる、と言う期待で胸がいっぱいになっていた。  
「じゃ、出発しましょ、荷物は全部向こうに送ってあるからさ」  
新居を目指し、ガブリアス、グレイシアと家を出るのであった。  
 
 
 その後、住んでいた家は不動産屋に買い取られ、空き家と化していた。  
一方で私は移住先にて、優雅なウェディングドレスに身を包みガブリアスと結婚をした。  
禁忌と言うものに悩み、苦しみはしたが、幸福と言うもののおかげでさして気にはならなかった。  
これからは此処で、3人で暮らすんだ。  
何者にも縛られないこの土地で・・・。  
 
 
「大丈夫か?  
慣れてないだろうし、あんまり無理はするなよ?」  
私の事を心配してくれるガブリアス。  
それに対し私は笑顔で答える。  
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ  
ガブリンもいるしグレイシアもいる  
それに、此処の人たちもついていてくれるから」  
お腹に身ごもったガブリアスと私の子。  
どんな子が産まれてくるかは分からないが、4人で暮らす事になりそうだ。  
こんなに幸せだと思ったことはない。  
今も、これからもずっと。  
私達は皆で力を合わせて幸せになるんだ。  
何があろうとも・・・・。  
 
 

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