冷たい雨が降り出した、初夏。ぐずついた天気は一過性のものだろう。しかし、雷まで鳴っていては中々に恐ろ
しい。にわか雨に降られながら、とある新米トレーナーは洞窟へと避難していた。次の街までは結構な距離があ
る。一時凌ぎの場所としては最適だった。道中でずぶ濡れになってしまった服の裾を絞りながら、一人ごちる。
「ふぅ……こりゃ、参ったなぁ……。今日はもう駄目っぽい……」
思わずため息が漏れる。今日の野宿は予定の範囲内だが、もう少し進んでおきたかった。しかし、時は夕暮れ。
このまま夜の森を行くのはいささか危険過ぎるというものだ。諦観しつつも、一時の避難所たる洞窟の奥へ向かっ
た。夏も近いとはいえ、雨が降ればそこそこに冷え込む。服を乾かさなくてはならない。背負ったデイパックから
固形燃料を取り出し、ライターを擦って火を灯した。ついでに、テントの骨組みを応用して上着も干す。別に誰が
見ているわけでもないし、これぐらいは慣れたものだ。
真っ暗な洞窟で、じんわりと暖かい炎がゆらゆらと爆ぜて、何だか幻想的だった。両手をかざしながら、炎をぼ
うっと見つめていると眠くなってしまいそうだ。濡れそぼった青臭い匂いが、熱に追い出されたように浄化されて
いく。ひとまずの安全を確保出来たところで、一息ついた。
それから、落ち着いて来たところで日程を見直してみた。少し急いで歩けば、明日の夜には街まで行けるだろ
う。手持ちのポケモンも、森のポケモンとの連戦で疲労が窺えるところなので、早く回復してやりたい。その為にも、
まずはしっかり休息を取ることだ。携帯食料を取り出して、封を切りながら予定を組み立てた。
そこに、ひたひたという足音が聞こえ始めた。ねっとりと絡みつくような音は、不気味だ。すぐさま立ち上がって、
辺りを見渡してみた。何者かがいるのだろうが、姿は見えない。こちらは炎で丸見えなのだろうから、向こうは息を
殺して近づいてこれる。慌てて腰のモンスターボールに手をやった。
瞬間、背中に気配を感じる。振り向いた時にはもう遅い。思いっきり押し倒され、鼻っ面を硬い地面に打ちつけ
た。痛みに耐えながら、再度ボールに手をやろうとしたが、その手を獣の前足が爪を立てて押さえつけた。傷つ
いた皮膚から、熱い血が流れ落ちていく。
「いたぁ……!」
何者だろうかと、首だけ捻る。そこにはしゃっきりと鼻筋の通った、犬型のポケモンが居た。黒い毛皮が迷彩の
役割を果たし、洞窟に馴染んでいる。唯一赤い目だけが、ギラギラと輝いていた。そのグラエナは大口を開けて、
牙を見せ付けてきた。見るからに鋭い牙が、何本も並び、涎が糸を引いている。噛まれる、と思った。恐怖で体が
縮こまる。喉が引きつって、声もあげられない。首筋に熱い息が吐きかけられた時、死を覚悟した。
「ひっ!」
痛みに備えて硬く閉じた目を、ざらりと舌が這いずる。状況の急変に頭がついていかない。恐る恐る目を開い
てみれば、目の前にもグラエナが居た。背中の重みは未だにあるから、別のグラエナだ。もしかしてと辺りを見渡
してみれば、何匹もの同じ姿があった。
自然と、思考がそのまま口から漏れてしまう。トレーナーは図鑑の説明を輪唱していた。
「野生のグラエナは……群れで行動する……」
そして、本来はこう続くのだ。「リーダーの命令には絶対逆らわず、一糸乱れぬチームワークで敵を倒す」と。
嫌な汗が背中から噴き出すような錯覚。ぞわっと体中が粟立つ。そうか、ここはグラエナの巣だったのかと、鈍
い頭で考えた。事態は最悪。倒すことはおろか、逃げ出せる算段もない。一瞬でただの肉塊となって果てるか、
それとも嬲り殺されるか。それぐらいの違いしかない。ぼんやりと視界が霞むのは、涙が流れそうだからか。
動けない自分に向かって、数匹のグラエナ達が動き始めた。二匹が左右から首筋を柔らかく甘噛みし、いつで
も殺せると誇示する。同じように、両手足に牙の感触が伝わった。全く身動きが取れなくなったトレーナーを尻目
に、背中のリーダーらしきグラエナは地面に降りる。野生の掟、食事は階級が上のものから。後は好きなように食
い散らされて、終わりだ。
びりりと、ジーンズが裂ける。グラエナは、まだ居たのだ。続けて下着までもを牙で無理やり破り取ると、下半身
が丸見えになった。ひやりと湿度の高い洞窟の空気に晒されて、つい震えてしまう。きっと怖ろしさもあるのだろう。
臀部から食うとは、知りもしなかったけれど。
その時、グラエナが信じられない行動に移った。ぺろりと、秘所を舐ったのだ。これには堪らず声が漏れる。
「うぁっ!?」
ざらっとした触感が、何度も何度も往復する。生暖かい舌に執拗なまでに抉られ、濡らされ、時には奥まで突き
入れられる。明らかにおかしい、食べる行為とは違うと思う。しかし、抵抗する術を持たぬ自分に、何が出来ようか。
虐め抜かれたそこは、とろりと蕩けそうなまでに柔らかくなった。ここまでされれば、嫌な想像を抱かずにはいられ
ない。黒い獣達は、自分を蹂躙しようとしているのではないのか?
「いや、だ……! やだっ! 離せっ! っ……!」
暴れた。筋肉という筋肉を総動員させた。それでも、深く食い込んだ腕の牙には敵わなかった。右腕のグラエ
ナが、深々と噛んだのだ。痛みと恐怖で、元通り大人しくなる。
そして、背中に体重がかかった。多分、先ほどのリーダー。ヤツは自分を、メスとして扱う気でいる。腰に当たっ
た猛るオスが何よりの証拠だった。トレーナーには、固唾を呑んで待つことしかできない。ぐいっと硬いペニスが、
押し込まれていく。濡れてゴワゴワとした毛皮が肌に触れて、気色悪い。
「痛い……! やだぁ……! うぅ……!」
涙が止まらない。こんな風に穢されるのは、堪らない。人ではなく、ポケモンに組み敷かれて、四つんばいのま
ま犯されるなんて。けれど、どんな訴えでも彼らは聴いてくれたりしなかった。
痛みを伴った挿入。先端の細い、獣特有の形状の一物が深く抉りこんでくる。一際太い根元まで収まれば、そ
れからは本能のままに打ち付けられた。弱いそこは、もう裂けているかもしれない。
「ぎっ!? ごぇっ! うぇっ!」
内臓をすり潰されているような痛みが、絶え間なく襲う。律動に合わせて、何度も何度も。テンポは速まる一方
で、収束する気配などまるでない。炎に照らされる中、汗と獣の臭いで洞窟が充満していった。容赦なく、ガツガ
ツ喰らうようなその行為に、快楽などない。恥辱と苦痛だけが巡る。
「げほっ! ごめんなさい……! 許して! もう、嫌だ……!」
「ハッ……ハッ……グルルルゥ……!」
獣の声だ。心を知らぬ、獣の。どんなに叫ぼうと、助けを請おうと、彼らに遠慮はない。げほげほと咳き込み、苦
しそうに呻く自分の前に、新たな責め苦が訪れた。
周りで待機していた一匹のグラエナが、口元に男根を押し付けたのだ。頭に乗せられた前足が髪の毛を乱し
た。でろりと先走りが顔を汚し、快楽をむさぼる為に擦り付けられる。その臭いがまたキツい。これを咥えろ、という
のか。そんなの、絶対にお断りだ。そういうつもりで顔を背けると、例のごとく牙が突き立てられる。
「いた……! 分かった……から……! うぐぅ……!」
涙を呑んで、舌を絡める。しょっぱい。苦い。臭い。熱い。一物は生暖かい粘膜に包まれて、ますます膨張する。
留まることを知らぬ先走りが、舌の上に広がって不快だ。しかも、それを確認するや否や、喉の奥に奥にと進み
始める。後ろで抉っているのと同じ、小刻みな動きで。
「おぇっ!? けほっ……! うぇえっ!」
どうしても、吐き気が襲う。生臭い臭いが気持ち悪い。このままだと、酸欠になりそうだ。そうとは露知らず、獣達
は自分を蹂躙する。こうなったら、少しでも早く解放してもらうしかない。究極の選択を迫られ、仕方なしに舌を動
かした。それに満足したかのように、口を使うグラエナは嘲笑った。目を細め、口元をパックリ裂いたような、そん
な表情。これは多分、嘲笑ったのだ。泣いて許しを求め、命のためにプライドを捨てた自分を、こいつは嘲笑っ
た。証拠に尻尾が強く振られている。
許せない。けれど。けれど、どうしようもないじゃないか。
「ごぇっ! はっ……! うぶっ!?」
「ハッ……ハッ……ハッ……グルォオオオッ!」
「あ……やらぁああああっ!」
一際強く、腰が打ち付けられる。出された。そう感じた時には、もう遅かった。口に咥えた一物で、不明瞭な発
音の悲鳴をあげるほかは。後ろで急激に膨らんだ亀頭球が中を圧迫し、先端から噴き出す精液を漏らすまいと
する。ただただそれを、黙って受け入れる。狂えるのなら、狂わせて欲しい。もうどうにでもなれ。そう思ってしまっ
たトレーナーは、その場で脱力しきった。どくどくと注がれる、熱い液体を感じる。空間に拡散しているオスの臭
いが、一気に強まった。
「ガァアアッ!」
「いた……!」
口が動かなくなって、不満に思ったのか。口を弄ぶグラエナの怒りをかった。体を伸ばして背中に圧し掛かり、
爪を立てる。そのまま皮膚を剥ぐように、何本もの爪の線を残した。それが分かったから、どうしようもなくって口を
動かした。いっそ殺されたほうがマシだったかもしれない。
「うぅ……! はぁっ……! んぶっ!?」
「グルゥ……ハッ……!」
案の定、口を動かし始めると腰を動かすのを再開させた。痛いのは、嫌だ。先ほど死んだほうがマシと思ったの
に、やっぱり死ぬのは怖い。痛いのも、怖い。付き合うから。最後まで付き合うから、殺さないで。
泣く泣く口を動かすトレーナーの後ろで、ずっぽりと音を立ててペニスが抜かれる。一杯一杯に腹部を圧迫し
ていた白濁が、漏れて体を流れていった。太いものが抜かれて、ぱっくりと穴が開きっぱなしになっている感じだ。
情けないとは思う。でも、あとは前を処理させれば助かるか。そんな希望が見える。でも、リーダーのグラエナは
首を押さえるグラエナと交代した。そのグラエナが、背中に乗ってくる。
「んぅうううっ! むいぃっ! もうはいんらいっ!」
「ガァッ!」
静止を求めた自分が恫喝されたようだった。恐ろしさに体が縮こまる。そして、オスが入ってきた。深いストロー
クで抉られた。ぐちゃりぐちゃりと卑猥な音を立てながら、同じように動く。まだまだ、こいつらは許してはくれない
のか。もしかして、このグラエナ達は全員オスなのか。舌を絡ませ、砕けそうな腰を何とか建て直しながら、救いよ
うのないビジョンが浮かんだ。
「ひっ……! おぇえっ!? おれがい……たふけれ……!」
「グルウウウウッ!」
「グルゥ……ガァアアアアッ!」
首筋の痛みはきっと否定。ほぼ同時に口一杯に広がる精液は、直接食道へと流し込まれる。とんでもない量の
白濁無理やり飲み込まされて、飲みきれない一部が零れ出した。口元は白く濡れ、吐き気を催す臭いに咽び泣
く。その顔に涎と精液で光るペニスが、べっとりと擦りつけられた。これでも、誰も助けてくれない。許してもくれな
い。絶望に包まれたトレーナーは、とうとう気が触れた。
「はは、あはははは……」
「ハッ……ハッ……ガウゥゥ……!」
「分かったよ、もっと頂戴?」
やっぱり彼らは嘲笑った。目の前のグラエナは交代して、新しいオスが目の前にやってくる。股間の一物が、い
きり立っている。押し付けられる。素直に飲み込む。だって、その方が楽だから。オスをべちゃべちゃと舌で撫で
回し、気持ちよく達してもらう。それだけを考える。粘着質な音も、感触も、もう気にならない。
「はぁっ……んぅっ!」
様子が変わったのが分かったのか、牙で押さえつけていたグラエナ達は一斉に離れた。そして、好き好きに行
動しだす。後ろや口に二本目を押し込む者。両手に握らせる者。柔らかそうな体に擦りつける者。勝手に蹂躙し、
玩具のようにトレーナーを扱う。
彼らに最早理性などない。性欲の塊に囲まれて、弄ばれる哀れな被害者は、もうまともに考えられない。腹の
中の肉棒さえ、いとおしく、心地よく感じ始めていた。
「グルァアアッ!」
「んぅうっ!? けほっ! はぁっ……あははっ……!」
「ガゥッ!」
いつまでも続くかに思える饗宴。供物たる人間。本能が告げるままに、謝肉祭は続く。
この人間の生還叶ったとして、果たして正常で居られるのか。それは神のみぞ知る。
初夏。それは暦で言えば、丁度今頃に相当する。
意外と知られていないことだが、動物の発情期はこの頃であることが多い。春になる者も居るが、我々の知る猫
などもこの時期に発情する。この時期が一年で、最も草生い茂り、色んな命が活動的になるのだ。だから、おか
しい話ではない。つまり、この物語は──今まさに、起きたばかりの話。