月の光がぼんやりと照らすギルドの一室にキマワリはいた。
「…おそいですわね」
つぶやき、窓をみやる。隣の部屋からは仲間たちのはしゃぐ声が聞こえてきた。
チリーンが、みんなで怖い話をするといっていたのだ。
今日はみな、遅くまで起きているつもりなのだろう。
だが、キマワリはその中に入っていくつもりはなかった。
なぜなら、彼女は心に決めていることがあったからだ。
廊下に出ると、案の定チリーンたちが内緒話をするかのように体を寄せ合っているのが目に入った。
驚かせるのも悪いと思い、黙ってそこを通り過ぎてはしごを上る。
ペラップはおやかたの部屋に行っているのか、いつもの場所にはいなかった。
外に出るといつものように潮のまじった風がキマワリの頬を撫でていった。
ひんやりとしたそれに吹かれながら、水飲み場まで歩いていく。
数々のダンジョンにつながる道の先は闇で隠され一寸も見えない。
まだ姿を見せない彼を心配しながらも、キマワリは少し胸がドキドキするのを感じていた。
まるで、まるでそれは、恋を打ち明けるような―――?
「きゃーーーーー!!!わ、ワタシったら何を考えてるのかしら!!」
ふと思いついた形容詞に、キマワリは赤面し、おとくいの悲鳴をあげながら誰もいないその場を右往左往する。
素直になれず、ひどいことを言ってしまった。だから謝りたい、そして助けてくれたお礼を言いたい。
それだけなのだと、そこにいない誰かに弁解するかのようにかぶりを振る。
―――ドゴームが助けてくれた時、とても嬉しかった…胸が高鳴って、安心しましたわ。―――それとも、心のどこかで…また助けにきてくれると、信じていたの…?
「ワタシは……ドゴームのこと、どう思ってるのかしら…」
心にうずまく、感情の渦。キマワリはこれまで感じたことのない気持ちの葛藤に混乱していた。
だが、彼女がその答えを見つける前に、その場にひとつの影が現れた。
「ふぅ、ふぅ…お?き、キマワリか?」
低く野太い声。
キマワリが振り向くと、そこには大きい籠を背負ったドゴームが立っていた。
「きゃー!!ドゴーム!!」
「そ、そんなびっくりするなよ…まるでワシが驚かしたみたいじゃないか」
ドゴームが少し目を瞠りながら言う。だが、その視線はすっと逸らされた。
キマワリはそれを見て心がちくりと痛んだ。
「あー…、ワシ、りんご届けなきゃいけないから、もうギルド入るぞ」
おまえもさっさと寝たほうがいいぜ、そういって歩き出すドゴームにキマワリが飛びついた。
「まっ、待って!ドゴーム!」
「うわっ!?」
ぐらりと揺れる二匹の体。籠の中のたくさんのりんごが音を立てた。
「な、なんだよキマワリ!なにかワシに用でもあるのか…」
立ち止まりはすれどもこちらを見ないドゴームの横顔が明らかに気まずそうに歪められ、キマワリは一層申し訳なくなった。
「そうですわ。
ワタシ、アナタに謝りたくて…。ごめんなさい、ドゴーム。
アナタにひどいことを言ってしまいましたわ。
マグマッグやゴーストから助けてくれたのに…ペラップに頼まれたなんて嘘までついて気を遣ってくれたのに…」
「!」
「ペラップに聞いたら頼んでないって。
…何も言わないで持ち場を離れてまで、ワタシのこと助けにきてくれたんでしょう?ドゴーム…」
何も言葉を発さないドゴームの腕に、キマワリの葉っぱを模った手が触れた。
「ドゴーム、ありがとう」
その瞬間に、ずっとわだかまっていた二人の空気が、紐をほどいたように、和らいでいく。
「キマワリ…ワシも謝らなきゃいかん。ワシは短気だから…怒鳴ってゴメンな」
「そんな…ワタシが意地をはらなければよかったんですわ」
「いいから。謝らせてくれ」
キマワリは肩を竦ませ、その時の情景を思い出した。
―――まるで自分が襲われたかのように怒って、マグマッグたちを追い払ってくれたドゴーム。
ペラップに頼まれたからという言葉に、ワタシはなぜかカチンときたんですわ。それで怒ってしまって、ドゴームも怒って…。
―――でも、なぜカチンときてしまったのかしら?ワタシは…なにを期待していたのでしょう?
「それと」
ドゴームの声がキマワリの意識を引き戻す。
「前の探検…あれもすまなかった」
「あ…」
そうだ。二匹で探検した時のドゴームの行動にキマワリが腹をたててから、二匹はすれちがってばっかりなのだった。
「いまさら信じてくれとも言わないが…あの時は、必死だったんだ。
あのダンジョンはワシたちのレベルでぎりぎりだっただろう?だからワシは…キマワリを守りたくて…」
そこでドゴームが言いよどんだ。体だけでなく全身が真っ赤だ。
「ワシはどうも…おまえが傷つくのを見たくないらしい」
ずくん、とキマワリの胸が強く疼いた。思わず手でおさえる。
「ワシは、キマワリがな…その…好き、だ」
「!!」
ドゴームのその言葉に、キマワリの顔も赤くなった。まるで熱があるかのようだった。
どくん、どくんとその鼓動は激しく打ち、彼女はどうしたらいいのかわからなかった。
だが振り向いたドゴームの顔を見ていると、なぜかその言葉は無意識に出てきたのだ。
「わかりましたわ…。ドゴーム、ワタシもアナタのこと…好き、なんですわ」
どちらからともなく、口を合わせる。
ドゴームの片腕がキマワリの細い背中にまわされ、分厚い唇をその口にすり寄せる。
「んっ…ふあ…」
息を継ごうと開かれた口の中にドゴームの舌が入っていった。
彼の舌も過ぎるといえるほどの大きさだったので、全ては入らなかったが。
キマワリがおずおずと舌を絡ませる。
「はぅっ…ド、ゴーム…んぅ…」
キマワリが熱い息を漏らし、二匹の唾液がいやらしい音を立てながらまざりあう。
体の熱が共有され、湯気が立つのではないかと思うほどに体が火照っていく。
「うぅっ…キ、キマワリ…キマワリっ…」
だんだんと乱れていくキマワリを、我慢できないというようにドゴームが押し倒した。
柔らかな土が、彼女を優しく受け止める。
「きゃ…だめですわ…!こんな、ところで…誰か来たら…」
「だが…我慢できん!キマワリだって…」
そう言いながらドゴームの手がキマワリの胸に当てられる。
自分と同じようにどくどくと鼓動を打っているのがわかる。
「ほら…すごくドキドキしてるぞ…」
「っん、ン…」
キマワリもりっぱな雌だ、大きくはないが柔らかそうな乳房が誘うように膨らんでいる。
「…キマワリ…好きだキマワリ…」
べろりと舐める。塩辛く、それでいて甘い。
潮と草と汗のこもったにおいが鼻孔をくすぐった。
くりかえし揉みあげると、ぷつりと小さな乳首が出てきた。
ドゴームの太い指はそれぞれの乳首をつまみ、こする。
「きゃぁっ!ひゃっうぅ…だ、だめぇ…ですわ…ァン…」
硬くしこった乳首はうっすらとしたピンク色で、緑の体に小さな花が咲いているかのようだ。
円を描くようにこねたりひっぱるようにつまんだり色々に刺激を与えていけばいくほどその可憐な花はまずまず色を濃くしていく。
すべすべとした肌の感触、甘くとろけた声がドゴームの脳髄を、心を、体を侵略していく。
それまで半勃ちしていた彼の性器はびくんと大きくなり、先走りを地面に垂らし始めた。
右手で乳首をいじり、左手を下半身にすべらせていく。
わずかな月の光に照らされたそこは、もうすでにぐっしょりと濡れていた。
「すごいぞ…もうこんなに?…ぬるぬるして…ぐちょぐちょだ…」
「…ふンん…いわないでぇ……ワタシ…あっ…はずかしッ…」
普段ははっきりと見えない瞳が、不安そうに揺れながらドゴームに向けられる。
うるんだ瞳、紅潮した顔、浅く呼吸を繰り返して乳房がふるりと震える、
そんな痴態を見せてくれる恋人にドゴームはまたさらに下半身が大きくなるのを感じた。
「うっ…だめだァ、我慢できんッ!!」
一声叫び、目の前の恥丘にむしゃぶりついた。
「ひはあぁ!!」
愛液の洪水はドゴームの口をあっという間に濡らしていった。
甘酸っぱい味と匂いが広がり、じゅるじゅると音を立てて味わう。
おそらくずっと、恋焦がれてきた相手の体液は、ドゴームの残りわずかな理性を確実に溶けさせていった。
大きい舌で甘い精液を舐めとり、時折吸って、またツンと突き出たクリトリスをつついてやると、
キマワリは激しく体を揺らし、喘ぎながら両足をドゴームの体に絡ませた。
丸く肥大化したそのクリを包皮ごしに、緩急をつけて舌で弄べば、
彼女は両足にぐっと力をこめて彼の体を引き寄せる。
腰を前後に動かして、相手の口に押し付けるようにもするその姿はとても淫猥だ。
「あぅん、も、もぉ、あぁ…ハァン…」
「あぁ…ワシも…早く…」
じらすように体をくねらせる彼女の秘所に今度は指を入れていく。
これまで何も入ったことがないのだろう。
べろべろと舐め回したにもかかわらず、そこはぴっちりと閉じられており異物の進入を拒んでいる。
「ぁっ、イタ…い…ドゴーム…」
「キマワリ…だいじょうぶだぞ、きっと気持ちよくしてやるからな」
それでもここで諦めるわけはない。ドゴームは自分の指を舐めて、うにうにと虫のように指を曲げながら、もう一度突き刺した。
あいかわらずぎゅぎゅうっと肉壁が邪魔をしてくるが、かまわず奥に伸ばし動かす。
ぶちゅぶちゅと卑猥な音を立てて、秘裂がだんだんとほぐれていく。
艶やかな緑色の体と熟れた果実のようなピンク色をした肉丘の対比が、たまらなく淫靡だ。
そうして何度か抜き差しを繰り返すと少しずつ抵抗はなくなり、愛液が割れ目からこぽりとこぼれた。
「はぁっ…はぁっ…」
二匹の荒い息が重なる。
クリトリスをこすり、だんだんと早くなっていく指の動き。
ばちゅばちゅと透明の飛沫が飛び、それはドゴームの顔やキマワリ自身の太ももを濡らしていく。
彼女の体はその早さについていけずびくびくと痙攣し始めた。
「あっああんっ!もっ、おねがっぁい、あッ、アナタのっ、いれっ、いれてぇっ、…ン!」
なにかが全身を突き抜けていく感覚にキマワリが叫ぶ。
普段の言葉遣いもあいまって、妖しく誘うその台詞にドゴームは、にゅぽんと指を抜いてかわりに猛った自身を宛がった。
「うぅ!…キマワリ…いれるぞ…!」
「きてっ、きてぇえっ!」
小さくくちを開けたその場所に、ドゴームの大きな肉棒が、ぬちぬちと沈んでいく。
キマワリの華奢な体が震え、悲鳴とも奇声ともとれる声があがった。
両手で口を押さえるも、すきまから断続的に声を漏らしながら熱の塊を受け入れていく。
「ふううっ…んああっ、は、うん…」
「うあっ…、…ぅ…」
体内の熱さときつさがドゴームのペニスを圧迫し、思わず達してしまいそうになる。
盛りのついたようにドゴームは腰をふりたてた。
ぐちゅぐちゅと肉と肉が擦れあう音が聞こえる。
キマワリの体が傷つかないように背中に手をやると、首に彼女の両手がまわされる。
「だいじょうぶか…?」
顔を近づけて聞くとキマワリが汗を浮かべながらも、にっこりと微笑んだ。
「ええ…もっと…」
もっと、激しくしてください…。顔を赤らめて健気に言う姿に、ドゴームはたまらずその口にキスをした。
ゆっくりと腰を送り続ける。結合部からは絶え間なく水音が響き、
腰の動きに合わせるようにキマワリから甘い声が漏れた。
「ドゴーム…だいすきですわ…もっと…もっと…」
中のプルプルとした突起にぐりぐりとペニスを当てながらも、腰を進めていく。
「ん…ああ…」
キマワリがたまらないというようにドゴームの背中を軽く蹴った。
ピッチを上げ、ずぼずぼとその膣内を浅く深く犯していく。
初めはきつかったそこは今やよくとけており、
肉襞がまくれ、あるいはひきずり込まれながら、ペニスをこする。
「はぁっ…んんぅ…んっんっ…」
むちむちとした太ももとドゴームの体がぶつかり合い、肉と肉の強い摩擦が官能を大きくしていく。
膣壁の襞襞が幾重にも重なって、しつこくペニスにまとわりつく。
きゅ…きゅ…きゅ…と締め付けてくるのだ。
あたたかくやわらかくもあるそれは、たまらなく気持ち良く、ドゴームの昂ぶりをさらに強くするのだった。
「あっ…う、キマワリっ…キマワリっ!キマワリ!」
気が触れたかのように名前を呼ぶ。
「い、いぃっちまう…っ、うぅっ!」
「んああっ!ワ、ワタシもぉっ、ひっ、いっちゃふ…ッ!」
大きく振動していた二匹の体が、一瞬大きく震えた後に、その動きを止めた。
「はぁあああっ、あぁっ!!」
流れ出る音すらも聞こえるかのように、ものすごい勢いでドゴームの欲望が吐き出されていく。
そしてまたキマワリもプチャアァァ…と細い潮を吹いて達したのだった。
太い肉棒が栓をしているために、二匹の愛液は流れ出ることはなく、彼女の下腹部を満たしていった。
深い闇色に浮かんだ満月を眺めながら、ドゴームとキマワリは寄り添いあいながら寝転がった。
「こんなところで…してしまうなんて…」
きゃー!と小さく叫んでキマワリが両手で顔を覆う。
隠しきれていないその顔は火が出るのではないかというほどに赤く、ドゴームもまた恥ずかしさを思い出してきた。
甘く、しっとりとした沈黙が流れ、二匹の体を月の光が優しく包む。
「だいじにするからな、キマワリ…」
そっとその体を抱き寄せると、また彼女も身を寄せた。
風が火照った体を冷ましていく。
しばらくして興奮も羞恥も冷めてくると、キマワリはその大きい顔を見上げた。
ドゴームの目に自分自身が映っているのを見て、口を開いた。
「やっと…これで仲直りですわね」
そう言って彼女は、まるで向日葵のような笑顔を咲かせたのだった。
END