「よくやった。ルカリオ」
俺はバトルを終えたルカリオを撫でながら褒める。
「ありがとうございます。マスター」
ルカリオは御礼を言うが顔は俯いたままである。少し前まではしっかり正面を向いて話していたのにな。
「どうかしたのか?」
「いえ、褒めて貰ってうれしいだけです」
俺は思わず笑みがこぼれる。本当にこういうやつだったかな。
日が暮れてきたので、俺たちはとりあえずポケセンへ向かうことにした。
ポケセンへ向かう途中にルカリオのほうを何回か見たが、やはり少しばかり顔を赤くし俯いて歩いていた。
「なあ、ルカリオ。どこか悪いのか?」
本当に心配になってきた。何か悪い物を食わせた覚えもないのにな。
「どこも悪くありません」
「そうか」
ルカリオは一瞬だけ顔を上げたもののまた俯いてしまった。即答するってことはどこも悪くないみたいだな。でも、顔が赤いのは何故だ?
ポケセンについたものの、時間が思っていたよりも過ぎてしまっていた。
いつもは風呂の後に飯と決めていたが、時間が遅く先に晩飯を済ませることにした。しかし、晩飯が後なら後で風呂でゆっくりできる利点もある。
時間が遅いので食堂はがらがらで俺とルカリオ以外誰もいなかった。俺は券売機で食券を買い、もう1匹のパートナーであるヨルノズクをボールの外に出した。
「ルカリオ、ヨルノゾク。好きなのを選んでくれ」
俺がそう言うとルカリオとヨルノズクはそれぞれの好みのものを選んだ。
俺たちは晩飯を済ましてセンターの宿泊室に入った。部屋はベッドとテレビ、そしてバスルームがあるだけで広くはない。
とりあえずオレはベッドに腰掛ける。
「マスター。明日の予定は?」
ルカリオが俺に問いかける。ヨルノズクのほうを見ると俺の様子をうかがっている。
どうやら今すぐ言わなければいけないらしい。まだ予定決めてないんだよ。
「えーっと」
俺は詰まりながらも言葉を切り出す。リュックの中からタウンマップを取りだし膝の上に広げる。
今日はここだから。明日は……。だいぶ家に近いところにいるな。これなら明日は家に帰ろう。
「明日は一旦家に戻る。そしてゆっくりする」
「たまにはそう言うのもいいかもしれませんね」
とルカリオ。一瞬だけルカリオから黒い波導が見えたのは気のせいだろう。
ヨルノズクもまた。
「たまにはいいんじゃない?」
と言った。
「じゃあ、今日は風呂に入って寝るか」
ベッドの中。俺はすぐに寝られるような体質ではないため、いつも何分間か布団の中で寝返りを打っている。
センターの宿泊室ではポケモンを出すようなスペースがない。本当に泊まるだけといった感じだ。
ルカリオ……。本当にあんなやつだったか。いや、違う。昔はもっと活発だったと思う。
俺と居るときでも俯かずに話していたし、顔も赤くしたりしなかった。考え事は眠気を促進したらしく俺はそのまま眠りについた。
「う……、まぶし」
カーテンの隙間から太陽光が入り俺の瞼を照らしているようだ。もう少し寝ていたいがこうなればもう起きるしかない。
身支度をすませ、ボールをベルトにセット。1、2、3、4、5、6。うん連れて歩けるのは6匹までだ。でも2匹しかつかまえていない。
とりあえず朝飯を食べるため食堂に向かうとするか。時間時間……9……9時!? しまった寝過ごした。
食堂に着いたがほとんど誰もいなかった。あはは、昨日と同じ状況だ。朝は御飯とみそ汁のほうがいいな。パンを食べながらそう思った。
俺は食器をカウンターに返すと、自分の家の方角へ向かってポケモンセンターを背にしながら歩き始めた。さあ、久々に自分の家だ。
今は特に用はないが野生のポケモンが出たときなど後々のためにルカリオをボールの外へ出した。
「マスター。起きるの遅いですよ」
ルカリオは呆れながら言う。それが朝の第一声か。……否定できないな。
出発が少し遅れたが、この時間ならなんとか午前中に家につけるだろう。
まあ、家に帰ったからと言ってゆっくりする以外に何もすることがないのだが。
歩き続けてどこまで行こうか。歩いていると不意にあの歌の歌詞が浮かんだ。そんなに遠くまで行くつもりはないのだが。
センターから出発して2時間ぐらいが経ち、ようやく自分の家が見えてきた。
「ようやく見えてきたな」
「ええ。そうですね」
またルカリオから悪の波動が発せられたように見えた。気のせいだよな。
家に帰るのは何日ぶりだろうか。いや、何週間ぶりだろうか。とにかく長い時間家に帰っていなかった。
俺は無意識のうちに鍵を取り出し家の鍵を開ける。ドアを開けると中は俺が出発した時とまったく変わっていなかった。
「変わってないな」
自然と声が漏れる。
「変わっていませんね」
ルカリオから言葉が返ってくる。母さんも掃除していただろうけどさ。
俺は靴を脱ぎリビングまで行こうと足を進める。しかし、何か変だ。
「なあ、ルカリオ……。臭くないか?」
「私の鼻が変になったかと思いましたよ。ええ、確かに臭います」
俺の鼻も変になったかと思ったよ。リビングに続く廊下に変な臭いが充満している。人間の俺にもわかるぐらいだから相当なものだろう。
リビングに行くと臭いを発しているものがわかった。おにぎりが机の上に放置されている。見た目からしてだいぶ時間が経っているように見える。
とりあえずルカリオに窓を開けてくるようにと合図し、俺は無言でおにぎりをゴミ箱の中にたたきつけた。
母さん……ありがたいんだけどさ。いつ帰ってくるのかわからないのに。
「ルカリオありがと。まず、掃除からだな」
「そうみたいですね」
母さんは何日家を空けているのか。家具には少し埃がついている。さて、始めますか。
掃除が終了すると共にやることが全くなくなった。ゆっくりするために帰ってきたので当たり前と言えば当たり前だが。
しかし、ゆっくりしていても時間は速く過ぎるもの。夕食を食べ、自分の部屋まで行き、そして、寝る準備に入る。
「ヨルノズク、さあ遊んでこい」
俺はヨルノゾクをボールの外に出す。夜行性だから昼は滅多に外に出さないようにしている。
昼のバトルの時などは渋々やってくれることのほうが多い。しょうがないって言ったらしょうがない。
「朝までに帰ってくるわ。開けておいてよ」
ヨルノズクは俺が答える前に窓から飛び立っていった。俺は不意にルカリオから声をかけられる。
「マスター。こっちの部屋の電気も消しますよ」
「ああ、頼む」
消灯確認済み。いつも着ている赤い服を脱ぎ、寝間着に着替え、よし、寝よう。
俺はベッドの中に入ったが、やっぱりすぐには寝られなかった。
明日はどうしようか。旅の目的はないわけではないが。たまには野生のポケモンを捕まえるのもいいのかもしれない。
パートナーが2匹だけだとたまに心細くなるときがある。そうしたらどのポケモンを育てようか…………。
「マスター。マスター」
ルカリオが俺の耳元でささやく。俺はゆっくりと体を起こし、寝ぼけ眼でルカリオの方を見る。
「どうした?」
ちらりと目覚まし時計の方を見ると多分まだ午前の3時。まだ寝られるよルカリオ。
暗くてよくわからないが、ルカリオの体は少し震えているように見える。しかし、ルカリオが周りに発している黒い波導ははっきりとわかる。
「マスター……。すいません!」
その言葉を言い終わらないうちにルカリオが俺の唇を奪った。
速すぎてと言うよりも、起きたばかりで頭がぼーっとしていて、何が起きたか理解できない。
ルカリオは半分起こしていた俺の体をベッドに押し戻し、器用に俺の寝間着を脱がしていった。
「ルカリオ? 何するつもりだ?」
俺はこの後に起こることがわかっているが一応聞いてみた。
「すいません。私は雄なのに……、ポケモンなのに……。マスターのことが好きになってしまって……。
人間のポケモンの関係で……、主人とその従者の関係で……」
はーん。なるほど顔を赤くしていたのはこれが理由か。前半部分はまだいいとしよう。しかし、最後の部分だ。
「ルカリオ!」
俺は思わず声を荒げてしまった。近くに家は少ないし大丈夫だよな。
「俺はお前の主人とかいうようなものではないし。お前がそのことで苦しんでいるなら出ていってもらってもいい。
それによく図書館に一緒に行っていたお前なら『昔はヒトもポケモンも同じだった』んですよ。とか言って迫ってくるかと思ったんだが」
「そ、それは昔のこと。今となっては……」
「こんなことなら早く言えばよかったのに。お前に言われたら受け入れるしかないだろう?」
「マスター……」
ルカリオが俺に泣きついてくる。ルカリオの顔をこっちに向かせ、今度は俺からルカリオの唇を奪いに行く。
俺が舌を入れる前にルカリオから舌を入れてきた。積極的だな。俺もルカリオに応じて舌を絡ませる。
口の中にものが入ると自然と唾液があふれてくる。その反射があるからか口の中の音がどんどんどんどん大きくなっていく。
息が苦しくなってきたところでルカリオの肩を軽く叩き、口を離す。口を離したことで唾液が俺の胸にぽたぽたと落ちる。
ルカリオは俺の方を見ているが、どこか物足りなそうな表情をしている。
「ルカリオ。お前から始めたんだろ? お前が攻めろ」
「はっ、はい?」
「ならこれで終わりにするか?」
「わかりました」
ルカリオが正面を向き俺の股間の方に手を伸ばす。
「さっきから当たってたんですよ」
ルカリオが笑いながら言ってくる。恥ずかしいこと言ってくれるな、こいつは。
ルカリオが俺のモノに刺激を与え始める。他人にしてもらうと自分でするより感じるって言うのは本当なんだな。自分でやったときより何倍もいい。
「他の人のをやるのは初めてなんですが……。感じてますか?」
「ああ」
俺は刺激に耐えながら答える。すぐに果ててしまったらルカリオに悪い。俺がしばらくルカリオの攻めに耐えているとルカリオが一旦手を離す。
「なかなかですね……。ならこれはどうでしょうか」
ルカリオはそう言うと俺のモノを口に咥える。俺は反射的にルカリオにやめさせるように言葉が出る。
「ルカリオ、汚いって」
しかしルカリオは平然と俺の言葉を受け流した。
「風呂に入ったのなら、きれいなんでしょう?」
それ、昔に俺が言ったことじゃないか。手とは比べものにならないほどの刺激が俺に伝わってくる。ここまで来ると声がまともに出ない。
「ル……カリオ……。もう……無理……。……口は……なせ」
俺がそう言うやいなやルカリオは俺のモノをより深く咥えた。射精感。頭の中が一瞬だけ真っ白になる。
そのたった一瞬で俺はルカリオの口の中に白く濁った液体をはき出す。ルカリオは有無を言わずにはき出された俺の液を飲み込んでいく。何もそこまでしなくても。
「マスター。美味しかったですよ」
ルカリオは満面の笑みで俺の方を見てくるが、俺は達した後の脱力感でぼーっとしている。本当にやってくれるなこの野郎。
「本当に初めてなのか?」
俺は答えはわかっていながらも聞いてみる。
「初めてですよ」
くやしいから俺からもやり返すとするか。形状は人と違うけど大きさは普通かな? 俺はルカリオのモノを握り扱き始める。
するとルカリオはすぐに声を上げ始める。
「マ……マスターこそ……。初めてな……んで……すか?」
思わずニヤリと口元がゆがんでしまう。もちろん他人の、ポケモンのモノを扱くなんて初めてのことだ。
「マス……ター。出ま……、手を……は……なして……」
ルカリオの体が大きく跳ね、ルカリオのモノから精液がそこら中に噴出される。一部が俺の口の中に入った。しょっぱい? のか? なんだか不思議な味がした。
ルカリオは大きく肩で息をし、言葉をとぎれとぎれにしながらも喋る。
「はあ、はあ。すいません。だから……手を離してって……」
「そんなこと気にするんだったらやってない」
俺はルカリオをこちらに引っ張りもう一度キスをする。さて次はどう出るかな。
「続きはどうする? ルカリオ」
「もちろん続けますよ。いいんですよね?」
今更何をと思った俺が馬鹿だった。今ルカリオからは黒い波導が全開で放出されている。いつものルカリオの目じゃない。完全に野生の目だ。
ルカリオは俺を後ろ向きにしながら乱暴に押し倒し、俺のケツの穴に指を入れてきた。
初めて味わう挿入感。正直言って痛い。しかし、今のルカリオに何を言っても無駄だろう。
じわりじわりとルカリオは入れる指を増やしてくる。俺も痛みに少しは慣れてきたが、痛いものは痛い。
ルカリオが指を抜き、替わりにルカリオ自身を挿入してきた。指とは比べものにならない痛さに俺は顔が引きつる。
血が出ているんじゃないかと思うほど痛い。いや、絶対に出ていると思う。
お互いの荒い息づかいが部屋中に聞こえる。ルカリオが俺の感じる部分を刺激することで痛みもだんだんと快楽に変わってきて、俺の中を満たしていく。
「マスター」
ルカリオがそう言ったような気がした。その瞬間、ルカリオが俺の中で性を放つ。その刺激で俺も射精してしまう。
熱い。暑い。中と外の両方から熱が押し寄せる。俺はしばらく体を楽な体勢にして行為の余韻を味わった。
とりあえずルカリオのモノを抜き正面に向き直る。息がまだお互いに荒く喋ろうとしてもなかなか喋り出せない。
俺が言葉を搾り出すよりも先にルカリオがとぎれとぎれになりながらも喋り出す。
「マ、マスター。す……いません。血が……。いえ、無理……矢理……始めて……しまって……」
「ば……か。謝る……なら最初か……らやる……な」
俺はルカリオを抱きしめ、そして口づけを交わす。
「マスター……」
ルカリオは俺をよりいっそう強く抱きしめた。しばらくこのままでいたかった。
「マスター。体もベトベトになりましたし、シャワーを浴びてきませんか?」
何だ。もう終わるつもりなのか。俺がまだ攻めていないじゃないか。初めてでここまでやるのもどうかと思うけど。
時間は4時か……。よし、まだヨルノズクが帰ってくるまで時間はあるな。
俺が黙っていることを不審に思ったルカリオが声を再度かけてくる。
「マスター? どうかしました?」
「ふふ」
疲れているはずなのに自然と腹の底から笑いがこみ上げてくる。さて、どうしてやろうか。
俺は手始めにルカリオをベッドに押し倒した。ルカリオが俺の波導が変わったことに気がついたのかそろそろと後退し始めた。
「マッ、マスターこそ悪の波動が全開じゃないですかっ! アッー!!」
ルカリオの絶叫が部屋の中でむなしくこだました。
俺は風呂場までルカリオを担ぎ歩いていくが腰が痛い。筋トレの比にならないほど痛い。こんなにくるものなのか。
とりあえずシャワーを浴びよう。汗と液でベトベター。また懐かしい言葉が……。
俺は気絶してしまったルカリオにシャワーをかけ、ルカリオの部屋のベッドの上に寝かせておいた。これでひとまずは大丈夫だろう。
とんだ夜だったよ。でも、信頼できるパートナーと1つになれるなんて幸せじゃないか。おやすみルカリオ。
「おはよう、マスター」
窓際に止まったヨルノズクが声をかけてくる。
「ああ、おはよう」
頭が痛い。睡眠不足だな、これは。今日の早朝のせいだな。絶対に。腰が痛い。これも今日の早朝のせいだな。絶対に。
「ところでマスター。夜はどうだった?」
この言葉に俺は思わず顔を真っ赤にさせながら吹き出してしまった。
「なっ、な?」
俺がわけがわからないという顔をしているとヨルノズクがくちばしを俺の口の中に入れた。いわゆるキスされた。
「私が居ることも忘れないでね」
ヨルノズクはそう言いながら自分の部屋に戻っていった。
「何なんだよ。2匹そろって」
俺はしばらく窓から外を眺めていた。直接言えばいいのに。