ねえ見てよ、もう夕方なのにまだ気温が25度もある。
この分じゃ外はまだまだ暑いだろね。夜は寝苦しくなければいいんだけど……あんたも暑いの苦手だったもんね。
見て、空がオレンジ色になってる!
あー、すごい!夕日が綺麗だよ。暑いのは嫌だけど、お日さまがこんなに綺麗に沈むのが見れるなんて幸せだねえ。
……え、早く夕飯にしろ?なんでそんなに情緒がないのよあんたは!バカッ!
もうすぐ夏も終わりだね。……そういえばね、こんな季節になると思い出すことがあるの。
今まで誰にも言ったことがないんだけど、聞きたい?…そう、興味津々なの。あんたこういう話大好きだよね。
別に誰にも口止めされてないんだけどなんとーなーく誰にも言う気がしなくてね。そんなこんなもう十年くらい経っちゃった。
時効だからいいかなー?…いいよね、言っちゃえ!
だからあんたも誰にも言っちゃだめよ!言いふらしたりしたらただじゃおかないんだから!いい?
私ん家さ、お父さんもお母さんも共働きだったじゃない?
お兄ちゃんも年が離れててね、妹の面倒見るより勉強したり自分の友達と遊びたい年頃で、だから家に帰るとたいていだあれも居なかったの。
誰も「おかえり」って言ってくれない、オレンジ色になった家に帰るのがいやでね、だからちっちゃい頃は毎日学校から帰ったらまっすぐ友達と遊びに行ってた。
私としてはずっとずっと遊んでたかったんだけどね。
たとえば大勢で公園で遊んでて、日が暮れてくると友達のお母さんが友達を連れにくるの。
いっぱいいた友達も一人ずつ迎えが来て、最後にいつも残るのは私だったわ。
「一人で遊んじゃいけない」とは言われていたけど夏は日が落ちるのが遅いからまだ外は明るいし、まだ十分遊べる。でも家に帰るのは嫌。
だからよくみんながいなくなった公園で時間を潰してた。
その日は公園の芝生にこんもり生えたクローバーの花で冠を作ってたの。
葉っぱの上にしゃがみ込んで、わき目もふらず花を編みこんでたから、はじめは何が来てたのかわからなかった。
ふと私の顔に影が落ちたの。
それに気付いて顔を上げたら、そこにかわいいフワンテがいた。つぶらな目をしてふわふわ浮いて、一言「ぷわ?」って鳴いたりしてね。
まだその頃はポケモンに詳しくなくてそれがフワンテだってわからなかったけど、あの単純な顔はよく覚えてる。
とにかくフワンテが一匹夕日に照らされて、触れるほど近くで私をじーっと見ていたの。
私、ポケモンがそんなそばにいたのに驚いて、しばらく動けなかった。
お兄ちゃんがデルビルを飼っていたんだけど……
そう、あんたが「いまだにお前の保護者面してて嫌いだ」って言ってたあの子ね……
デルビルはなんだかいつも怖い顔をしてて近寄りづらかったし、家の近くで野性のポケモンを見たことがなくて、
攻撃されるんじゃないかって気が気じゃなくて、私気がついたら泣き出してた。
「早く逃げなきゃ」って思ってるのにしゃくり上げたら止まらなくて、パニックになったのね。
もうそれからは尻餅ついたまま、わんわん声を上げて大泣きよ。
そしたらね、フワンテが手を伸ばしてきてさらに大泣き。もー子供ながらに「だめだもう死ぬんだ食べられるんだ」って思っちゃってねー、
叫んだり助けを呼んだりで、フワンテが私の涙を拭いてくれたって気付くのにだいぶかかったの。
目をごしごし拭ってもらったら困り果てたフワンテの顔が見えて、それでやっと泣き止んだ気がする。
落ち着いてよく見りゃかわいい顔してるし、攻撃するなら出くわした時点で襲い掛かってきてるでしょ?
だから私すっかり安心して、それからは怖ず怖ずフワンテの頭撫でたり、追いかけっこしたり、
生ぬるくなるまで握りしめてた花輪を頭のふわふわに乗せてあげたりして、暗くなるまで遊んだの。
フワンテは友達がみんないなくなった夕方にしか来なかった。
友達に教えたりもしたんだけど私が一人にならないと姿を現さなくてさ。きっと私と友達になりたいんだけどみんながいると恥ずかしいんだ!なんて思ってたなあ。
フワンテと遊んでから家に帰るとちょうどお母さんも帰ってきててね、
「あんまり遅くなっちゃダメよ」とは言われたけど「新しい友達ができたの」って言ったら叱られなかった。
だから私、かれこれ一週間はフワンテとふたりっきりだったの。
ぷわぷわ鳴くから「ぷわちゃん」なんてオマヌケな名前も付けてね。いつかぷわちゃんを家に連れてくんだ!って意気込んでたのよ。
そんなある日、夕暮れが来るまで公園で遊んでたらいつも通りぷわちゃんが来たの。
うれしくてうれしくて駆け寄っていったら滑るみたいに少し後ずさりして、ハートの手を上手に使っておいでおいでをするの。
そんなことがしばらく続いたから、「こっちにおいでって言いたいんだな」と思って私はぷわちゃんについてった。
道案内するみたいにぷわちゃんは私の前を飛んで、…結構広い公園だったからね。
ぷわちゃんが止まった時、私は公園のめったに行かないすみの方の、薄暗くて大きな木のたくさん植わってるとこにいたの。
何かイイモノがあると思ってついていったから、ぷわちゃんが立ち止まって振り向いたときすごくがっかりした。
なーんだ。なんにもないじゃん、ってね。あはは、あたしどれだけアホな子供だったんだろ!
それでね、私ぷわちゃんにもそう言ったの。そしたらね、頭の上のそれぞれ違う方から
「ぷわー」「ぷわー」「ぷわわー」っていくつもの鳴き声がした。
見上げてみたら……もうわかるでしょ?
忘れられないわ、おっきな紫色のきのみみたいに、木立の切れ間に、たくさんのフワンテがいた。軽く十匹以上はいたかな。
私が見上げると途端にみんながこっちを向いて、何十個もの黒い目と黄色いばってんが瞬き一つせずに並んでたわ。
私それを見てね、なんでかな……ずっと一緒に遊んでたフワンテの仲間たちなのに、一瞬すごく怖かった。
笑いながら話をしてた友達たちが、急に私を置き去りにして無表情に、無言になった気分だった。
……まあ、その感覚はあながち間違ってやしなかったんだけど。
……ふと目線を元に戻したら、ぷわちゃんが私に腕を絡めてた。名前を呼んでもぷわちゃんは返事ひとつしなくて、紐みたいな手は腕にどんどん食い込んで痛かった。
怖くなって逃げ出そうともがいたらぷわちゃんがなにか合図をして、木の上にいたフワンテがみんな下りてきてみんな私の腕や、足や腰に腕を巻き付けた。
体の周りをフワンテの無表情な顔が囲んで、もう私はどれがぷわちゃんなのかわからなかったわ。
「いやだ、離して!」とか「やめて痛い!誰かぁ!」とか叫んだけどまわりには誰もいなくて、
そのうち体にぎちぎちに巻き付いたフワンテの頭がポンプみたいに縮んだり膨らんだりし始めて、私の足が地面につかなくなったとき私は半狂乱になってた。
フワンテが出す風でどんどん体が浮いていってね、体の高さは小学校の二階くらい。
足に履いてたサンダルのかたっぽが地面に落ちたのが消しゴムくらいの大きさに見えた。
そのまま雲の上まで行ってしまうんじゃないかと思ってた割に低いところでフワンテは止まったけど、大人でも落ちたら無事じゃいられない高さでしょ?
もう抵抗しても無駄だってわかって、涙も声も嗄れはてて、声にならない声で「誰でもいい、助けて」ってしゃくり上げてた。
群れの中のフワンテの一匹は、誰の目も届かない高さまで上がってきたのを見計らうと「ぷーわ」と一声鳴いた。
そしたらこんなに体に巻き付いてるのにどこにまだ余りがあるの、ってくらいたくさんの黄色いハートの腕が、Tシャツやスカートをたくしあげちゃったの。
丸出しになった胸を物珍しそうにつついたり、くるくる優しく撫でたり、耳や乳首に風を吹き付けたり……
首筋を舐めるみたいに撫でる奴、私の足に緩く巻き付いて収縮しながら残りの手先で太ももをくすぐる奴や、パンツに手を入れておしりを撫で回す奴もいた。
おっぱいなんて呼べないくらい薄っぺらい胸だったしさー、何が楽しかったんだか……
っておい、何笑ってんのよ。今も大差ないってか。殴るわよ。
エッチの仕方だって知らないほんの子供だったから、フワンテがなにをしてるのか理解できなかった。
どうしてこんなにくすぐったいことをするのに体を押さえ付ける必要があるんだろう、って不思議でさ。
けど怖さより服を脱がされてる恥ずかしさが大きくて、「やめて」って何度も言ったら今度は口の中に手を入れられた。
真っ正面にあるフワンテの顔を見ながら、ぐちゅぐちゅほっぺの裏側や上あごの表面を撫で回されて、
紐がゆるく舌に巻き付いて吸い上げてきて、息が出来ない苦しさより口の中のむず痒さの方がつらいと思ったよ。
噛もうとか吐き出そうとかそんな考えも出てこないまま好き勝手口の中荒らされて、「なに、そこも良いの?」みたいにもう一本手が入ってきても無抵抗のまま。
口のなかで別々に動く手の動きが複雑になってくるにつれだんだん頭がぼーっとして、
おしっこがまんしてるみたいに足の間がきゅんとしてきて、太ももやおしりを撫でてる手がイヤじゃなくなってきた。
もう真っ暗になってる公園だとか、家で待ってるお母さんのこととか、これから自分がどうなるのかどうでもよくなって、
さっきと同じフワンテの合図が聞こえても何も考えられなかった。
頃合いだと思ったんだろうね。
口の中から手が引き抜かれるのが名残惜しかった。よだれまみれになった手が糸を引いて、ほてった首に落ちて冷たかった。
もしかしたら「待って、もっと」とか言ったかもしれないわ。
けどフワンテたちは私の言うことなんて無視して、蝶々の喧嘩みたいにお互いを牽制しながらパンツに手を殺到させてた。
あぶれた手は仕方なさそうに脚や胸に集まって、またもとのとおり巻き付いてね。
私のよだれで濡らされた、冷たくてぬるぬるしたものがはじめにお尻の側を通って前に来て、それに続くように乾いた手が前から後ろから何本も回ってきた。
パンツの前から手を宛がって、なにかを待つみたいにそのまま止まってるのもいた。
合図がまた聞こえて、そしたら操り人形みたいに私の脚がM字に開かれて、
……パンツの前に置かれてた手が、くにゅくにゅとマッサージを始めたんだ。
はじめは撫でたりこすったり押したりするだけ。そのうちお肉を寄せてつまんだり、二つの手を寄せるように揉みこんだり、
パンツの上からあそこの中心をいじくり回して、パンツの中の手は刷毛で撫でるみたいにあそこを何往復もするの。
そのたびにぞわぞわ震えがきてね。私はおしっこが漏れないようにするので精一杯で。
今まで気にならなかった強弱をつけて脚を締め付けてる手や、おっぱいを撫で回して乳首を突つく手の動きが敏感に感じられるようになってきててさ。
もう口にはなにも入っていなかったけど、喋れるような状態じゃなかった。
喘いだり小さな悲鳴をあげるだけで、助けを呼べるわけもないわけ。
けどね、
「ぷわ」
私の耳元でフワンテがなにか命令すると、あそこをいじる手がぴしっとそこをひっぱたいたの。
大きな声を上げたかもしれない。目の前に星が散って、何が起きたのかわからなかった。
じょろろ、って音がして、足やおしりに温かいものが流れていって、片足に残ってたサンダルが滑って落ちていったのを覚えてるわ。
おしっこ漏らした恥ずかしさもどうでもよくなる、お腹の奥のもやもやの爆発で力が抜けて、ずっと眠り続けたい気分だった。
脚に強く食い込む紐やあそこを撫で回す手が、ただ痛いとかくすぐったいだけじゃなくて、お腹の奥を前よりずっと切なくするものになってきてた。
おしっこでびちゃびちゃになったパンツが太ももまでずらされて、おしっことよだれと汗でぐしょぐしょになったフワンテの手、手、手が、
大事なとこの入口にこすりつけられて、ぐちゅぐちゅにゅぷって水音を立ててた。
たまに口を近づけられて、火種を大きくするみたいに息を吹き掛けられると体が勝手にびくびく揺れた。
頭がぼうっとして、どこか遠くに連れ去られそうになるような気持ちがするの。
―――もう、どこに連れていかれてもいい。
そのとき私、確かにそう思ってた。
……「それでどうなった」かって?ばか、そのまま連れてかれてたら私はここにいないでしょ。
強いて言うなら、ヒーローが現れたのよ。囚われのお姫様を救うヒーローがね。
……お姫様ってガラじゃない…だと?少しは黙って聞きなさいよ!!あんたはぁ!
フワンテが私のあそこに手を埋めようとした時、間髪入れず暗闇にけたたましい吠え声が響いたの。
私の足の間に集まってた手がさっと退いて、いち早く体から離れて逃げた一匹が炎に包まれて、回転しながら空気を吐き出して落ちていった。
フワンテが落ちていった暗がりには真っ赤な目玉が二つ。だんだん加速しながら落下していく火の玉に照らされた先には―――
―――あとから聞いたんだけどね、学校から出るなりお兄ちゃんのデルビルは制止も聞かずに駆け出して、家にも帰らずに私を探してたんだって。
もう一声デルビルが「ほえる」を繰り出すと、フワンテは完全に私から手を離してね。
私は空中に置き去りにされて、それから真っ逆さまに落ちていった。
デルビルが空中で私を受け止めて着地してくれたくれたとき、もう涸れたと思った涙が急にわき出して、
あんなに怖くて仕方なかったデルビルに縋ってね、私わんわん泣いたのよ。
私はそのままデルビルに連れられて濡れたパンツとサンダルを持って家に帰って、
家族みんなに一回ずつ、苦しいくらい抱きしめられることになったの。
それからはてんやわんやの大騒ぎよー、私はぎゃんぎゃん泣きじゃくってる上にフワンテに縛られた痕も残ってたし、おまけにおもらししてパンツもはいてなかったし。
お父さんは変質者やスリーパーに悪戯されたんじゃないかって、顔を真っ青にして私を揺さぶったわ。
なんとかかい摘まんで説明して
「変な人や変なポケモンには会わなかった、たくさんの風船ポケモンにさらわれそうになって怖くておもらししたんだ」
って言ってことなきを得たのよ。
それからは町ぐるみでフワンテ捜索隊が組まれてねー、小中学生は集団登下校するわ幼稚園や小学校は一時閉鎖するわで大変だった。
まあ結局何にも見つからなかったんだけどね。強いて言えばフワンテを飼ってた人には大打撃だったかな……
フワンテを飼ってる人はポケモンセンターから自分のポケモンの厳重監視を言い渡されて、
ほとぼりが冷めるまでボールに閉じ込めっぱなしだったんだって。
迷惑かけて、本当にごめんなさいって言いたかったよ。
それからお兄ちゃんは私の面倒をよく見るようになって、お父さんもお母さんもできるだけ早く帰って来てくれるようになった。
デルビルとは知ってのとおりそこから急速に仲良くなってね。
しばらくの間は遊びに行くとき必ず連れていかされたんだ。
大概のいじめっ子や野性ポケモンはひと睨みで追い払ってくれたのよ!
……あーあ、ヘルガーったら今お兄ちゃんのとこで何してるのかなあ。会いたーい。
……それにしても私がフワンテにされたイタズラは、おもらしに隠れて誰にもばれなかったのは幸いってとこだったなー。
あ、そうそう。フワンテ自体はそんなにトラウマにもならなかったのよ。
こうしてポケモントレーナーにもちゃんとなれたしね。
ヨーショー時のトラウマがどーたらいう、ヤバい性癖の歪みとかもないでしょ?
フワンテ事件が私を取り巻く環境をプラスに運んでくれたから、そんなに怖い思い出じゃなくなったのかな。
……むしろ、ちょっと気持ち良かったからそんなに嫌な思い出でもなくて……
……えへへ、ほんとに連れ去られてたらこうやって笑い話なんかにできないよね。もうやめよやめよ!これで話はおしまい!
夕飯がすっかり遅くなっちゃった。ごめんねー。
……何よ。そんなに握ったら痛いよ。
いやね、今はフワンテよりヘルガーよりあんたのことが好きだって。いや、ホントホント。私らの育んできた愛情を疑うわけー?
……不安なら今夜のベッドで確かめなさいよ。女のコにここまで言わせないで!
だから今はおとなしく、ご飯食べよ。ね?
「ハンバーグ好きでしょ?ゲンガー?」
HAPPY END…?