空は暗雲に覆われ、稲光が鳴り轟く。
岩柱が数多く立ち並ぶ岩場で、私はおもむろに歩みを止めた。
「此処へ…何しに来た!!此処は我々の縄張りだ!」
荒々しく言い放つ。
しかし、周囲に相手の姿はない。
…奴め、奇襲をするつもりだな…?
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先日、私達の群れは、目的地である、岩肌が剥き出しとなった荒れた平原に辿り着いた。
この季節になると、此処には決まって雷雲が発生している。
その為、私達の群れは好んで此処に移住するのだ。
…平原に着いて数日後、何者かが群れを尾行している事が分かった。
私は群れを守る為、自ら奴を誘き寄せる囮となったのだった。
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私の声が岩に何度も反響する。
これで声で位置を特定することは難しいだろう。
「…フフフ。それで隠れたつもりか?」
不意に何処からか笑い声が響く。
奴はようやく姿を現す気になったようだ。
奴は話を続ける。
「可愛いものだな。…まあいい。
そうしてくれてた方が私にとっても有難い。
気配を消したままギリギリまで接近し
……そして……仕留めてやるッ!」
…成る程。
奴は相当な自信家のようだ。
プライドが高く、相手に力の差を見せ付けて屈伏させる事を好む、
……そんな奴だろう。
奴を屈伏させたい。
目の前で跪かせたい。
私の闘争心が燃え上がっていく。
思わず私は笑い声を上げた。
「フフフ。隠れても無駄だ。
私の眼はあらゆる物を透視できる。
この眼で物影に隠れた獲物を見つけ
……そして仕留めのだッ!」
そう。
岩場にやってきたのは私が隠れるためではない。
相手が隠れられる場所を作り、近くまで誘き寄せる為だ。
私の能力が有れば、周囲の岩は視界の妨げにはならない。
逆に素早い相手の行動を制約する事ができ、地形が有利に働くのだ。
「フフフフ…成る程、少々甘く見ていたようだ。」
少し離れた岩影から奴が姿を現す。
青い体毛に黄色の鬣の獣…。
自分と同じ電気タイプであることを窺わせる。
体格はほぼ同じ。
立っている鬣の分、相手の方が若干大きく見える程度だ。
「私の名はライボルト!
そして……ラクライ一族のリーダーだッ!
この一帯は以前より我々の縄張りだ。
貴様は群れを率いてこの土地より立ち去れ!」
奴の傲慢な態度に、私も声に凄みを効かせる。
「私の名はレントラー!
そして……ルクシオ一族のリーダーだッ!
此処が貴様等の縄張りだと?寝言は寝てから言え!」
キッ、と睨み付け、威嚇の姿勢を取る。
群れ同士の縄張り争いはお互いに群れの仲間を守るため、群れのリーダー同士の一騎討ちとなる。
勝負はどちらか一方が屈伏を認めるか、体力を消耗して動けなくなる事で決する。
二匹の間を風が吹き抜ける。
湿った冷たい風は雨を予感させた。
ゆっくりとお互いに相手の周りを回りつつ、間合いを詰める。
―ピカッ!
雷が瞬いたその瞬間、私達は同時に踏み込んだ。
『覚悟ッ!』
私達はお互いに電気を纏って突進を仕掛ける。
衝突の瞬間、スパークが火花を散らして弾ける。
奴は反動で危うく体勢を崩しそうになっていた。
力比べでは私の方が有利…といった所か。
「フフフ、貴様の力はその程度か。
私の威嚇にでも臆したか?」
「フン、余裕でいられるのも次の攻撃までだッ!」
「面白い、見せてみろッ!」
私は鋭い牙を剥き、奴を噛み砕こうと飛び掛かる。
「遅いッ!」
牙が届く直前、奴の姿は目の前から消えた。
「なっ…!?」
目にも止まらぬ素早い動きで視界から外れた為、奴の姿が消えたように錯覚したのだ。
「これでも喰らえッ!」
私に激しい電撃が襲いかかる。
「ぐおおおぉぉぉぉぉぉっ!」
体が悲鳴を上げる。
そうか、奴は電撃が主力なのか…
「フフフフ、私の雷は効くだろう?
馬鹿力に頼る貴様等ルクシオ一族にはこの威力は出せまい?」
私は奴の威張り散らした態度に、思わず頭に血を上らせる。
「おのれぇぇぇっ!よくもッ!」
「!?」
私の鬼の形相に、奴の動きが一瞬止まる。
―今だッ!
私はその一瞬で奴に突進をかけた。
「ッ…!!」
私の攻撃を喰らい、奴は岩壁に叩きつけられる。
「ガァッ…!?」
力加減を誤り、私も攻撃の反動に呻き、膝を地面についた。
…どれぐらいの時間、闘いを続けたのだろう。
ライボルトは地面に横たわっている。
私はゆっくりとライボルトの方へ近づいていく。
奴はこちらを睨みつけ、呻り声を上げている。
奴は既に技を繰り出す体力は全く残されていない筈だ。
それにも関わらず、奴は一向に屈伏しようとはしなかった。
私は奴の前に立った。
「全く、此処まで私を追い詰めるとはな…。」
長時間の極度の興奮状態に、私達のものは自然と硬くなっていた。
私は経験上、犯された者は本能的に
その相手に否応なしに反抗できなくなることを知っていた。
流石に奴も従順になるだろう。
身動きが取れない奴の後ろに私は回り込み、奴の菊門に私の肉棒を押し付ける。
「うっ、くっ…!?」
「抵抗すればどうなるか…分かっているだろう?」
奴の首筋に爪を押し当てる。
抵抗しないのを確認すると、私はゆっくりと体重をかけ始めた。
「ぐぁ…ぁ…!」
奴は苦しそうに呻き声を上げる。
どうやら奴も犯された経験は無いようで、
奴の内側はひどくきついものだった。
「…どうだ?屈服する気になったか?」
時間をかけてゆっくりと解していく。
奴が痛みに身体を震わせると、身体を伝わり私のものが刺激される。
一度先端が入ってしまえば、あとは楽に侵入していった。
奥まで入った事を確認すると、私は慎重に腰を振り始める。
「ハァ…ハァ…」
暫くして私の限界が近付く。
動きは不規則になり、呼吸も苦しい。
口からは涎が零れ、ライボルトの背へと滴り落ちる。
「い、いくぞッ…!ッ…!?」
ラストスパートをかけようと力を込める。
…その瞬間、身体に電撃が走った。
―なっ…身体が…動かない…!?
奴にはもう、技を繰り出す力は無い筈…!
「…フフフ、油断したな?」
奴の言葉に、ようやくあることに気が付く。
―まさか、奴の特性は…!
「触れた相手を麻痺させる特性…だと!?」
―確実に決めるために隙が出来るこの瞬間を狙っていたのか…!
思うように身体が動かない。
思った事を言葉にすることすらもままならない状態だ。
「今更気付いても遅いッ!今度は私の番だ!」
奴は私の下から脱け出すと、私の後ろから覆い被さってくる。
そして、先程私がした通りの事を始める。
「うがあぁっ…!!」
奴のものが侵入を始める。
今まで感じたことの無い異物感、激痛、そして屈辱感が私を襲った。
―奴はこれを長時間耐えたというのか!?
私は愕然とし、心が折れそうになる。
「貴様にやられた分、しっかりお返しさせてもらうぞ!」
奴と腰が密着する。
奥まで入ると奴はゆっくりと腰を引き、再び押しつける…。
…奴からは見えていないだろうが、私のものからは先走りが滴り、地面に水溜まりができていた。
暫くして挿入時の痛みが無くなると、痛みで萎えていた私のものが、再び硬くなりはじめる。
快感を感じている訳ではない。
生理的に自然とこうなっただけなのだが、この状態で射精すれば奴にバレてしまう。
それだけは何としても避けなければ…。
射精させられたと知られれば、私は屈辱に耐えられず、屈服せざるを得なくなってしまうだろう。
奴の息遣いは荒くなり、間もなく絶頂が訪れるであろうことが窺える。
奴と同じ手を使って抜け出そうにも、私には奴のような特性は無い。
麻痺で身体は動かないが、辛うじて小さな雷ならば1回落とす事が出来る。
しかし、この無理な体勢からでは奴に雷を命中させる事は出来ない。
「フフフ、先程までの威勢はどうした?」
ただ呻く事しかできない私を、奴は嘲る。
一か八か…やるしかないのか…!
命中しないにしろ、奴に隙が出来れば何か状況が好転するかもしれない…!
私は雷を起こす為、体内に電気を蓄え始めた。
「フン、麻痺で動けない貴様に何が出来る!?無駄な抵抗は…」
「う、五月蝿いっ!これでも喰らえ――――――ッ!!」
その瞬間、私達は轟音と共に視界は白い光に包まれた。
…そう、当たらない筈の雷が、命中したのだ。
当然、奴と身体を重ねていた私にも同時に衝撃が襲いかかる。
『ぐあああぁぁぁっ…!?』
雷の直撃を受け、私達はドサリ、と地面へと互いに向き合う形で崩れ落ちた。
刺さっているものが抜ける瞬間、今まで堪えていたものが溢れ、お互いの元に白い水たまりを作りだしていた。
…ぽつり。
どれぐらい気を失っていたのだろう。
雨の訪れに目を覚ます。
次に、むっとする雄の匂いに思わず咽返る。
ぼうっとする思考のまま、目の前で起き上がる精液まみれの一匹のライボルトを見る。
―無様だな。
奴もにやりと笑う。
…そうだ、私も…。
次第に思考がはっきりしてくる。
奴に犯され、最後には奴の目の前で射精してしまった。
途中に色々あったが、この事実は変わらない。
私達のプライドは音を立てて粉々に砕けていった。
奴の方を見ると、視線が合った。
慌てて思わず視点を下げる。
そして視界にライボルトのものが入る。
それは、相変わらず固い状態を保っていた。
…奴に犯された尻が疼く。
何か話し掛けようと口を開くが、適当な言葉が思い付かずにただ口をぱくぱくさせることしか出来ない。
奴もどうやらこれ以上争う気は無いようだ。
時々こちらを横目に様子を見ては、目が合うと慌てて視線を逸らしてしまう。
お互いに何もできないまま時間が過ぎていく。
…もどかしい。
何も言わずに襲い掛かって私を壊してくれればいいのに。
…ぽつり。
二滴目の雨粒が鼻先に落ちる。
「…何処かで雨宿りしないか?」
ようやく出た私の言葉に、彼は黙って頷いた。
私達は、二匹がようやく入れるぐらいの小さな横穴に着いた。
彼は横になり、体毛に着いた精液を落とそうと、身体を捻る。
「待て。」
「…?」
私も横になり、彼の腹部に顔を近づけると、彼の体毛に着いた精液を舐めとり始める。
「…ん…っ」
最初は戸惑っていたが、暫くして、お返しにと、彼も私を舐め始めた。
胸…腹…そして下腹部。
「ぁ…ぅ…」
暖かく湿った舌が身体をくまなく撫でていく。
気付くと、お互いのものは再び透明な汁を垂らし始めていた。
私達はどちらからともなく、相手のものを口に含み、舐め始める。
くぐもった喘ぎ声と、ぴちゃぴちゃと舐める音。
荒い息遣いと狂いそうな私自身への刺激。
…いや、既に私は狂っているのかもしれないが。
次第に限界が近付く。
私は口の中で彼のものをそっと、牙の側面に当てる。
牙から伝う弱い電流が、彼を絶頂へと導いた。
口の中に広がる苦味。
彼のものから口を離してゆっくりと飲み干す。
彼の方を見ると、私と同様に汁を飲み干し終わった所だった。
「…レントラー。もし、良ければ…」
「…?」
改めて名前を呼ばれ、困惑する。
「…いや、何でもない。」
…『ずっと一緒に居て欲しい。』
心の奥で期待していた言葉が貰えず、気を落とす。
「そうか…。」
…私達はそれぞれ群れのリーダー。
お互いに戻らなければ成らない場所がある。
群れを1つにするとしても、群れの皆は私達のどちらをリーダーにするかで揉めるだろう。
様々な転変地異で多くのポケモン達の気が荒くなっている今、そう簡単な話ではないのだ。
…いつか、世界が平和になったらまた会おう。
そう言い、彼は去って行った。
次に会うときはきっと…。
-終わり-