「また来たのムクホーク。暇なのね」  
 ネイティオが憎まれ口を叩く。  
 失礼なことに、夕陽に目を向けていてこちらを見ようともしない。  
 この海に面した高い崖から、一日中太陽を見て過ごす。  
 これがネイティオの日課だった。  
「俺は暇じゃない。エサ取りのついでだ、ついで」  
 俺はネイティオの冷たい言葉にめげずに言い返した。  
 夕方、ここに来てネイティオをからかうのが俺の日課だ。  
 俺とネイティオはいつもこんな調子なのだ。  
 
 彼女の横に陣取り、俺も夕陽を見てみる。  
 だが、何の感傷もおきない。  
 俺は彼女に話しかける。  
「こんなもの見てて楽しいのか?」  
「別に」  
「最近、雨降らないよな」  
「そうね」  
「ムックルから聞いたんだけどよ、どこかにアメリカ村っていうのがあるらしいぜ」  
「それデマよ。しかもかなり古い」  
 彼女は、俺と対話する気なんてさらさら無いようだ。  
 自分でも何でこんな奴に話しかけてるんだろうと思う。  
 
 会話の種が早々に尽き、お互いに黙りこくる。  
 潮騒とキャモメが鳴く甲高い声に場が支配される。  
 何故かこの沈黙を心地よいと感じる自分が居た。  
 眩しい夕陽から目をそらし、横に居る彼女を見やる。  
 
 漆黒の瞳に水平線に沈む陽が写りこんでいた。  
頭からは垂れている二つの赤く長い帯のような体毛が、潮風によってゆったりと揺られる。  
 先端が赤と黒の二本のラインが引かれた白い翼はお行儀良く前に揃えられ、胸元にある猫の模様を覆い隠しているようだ。  
オレンジ色の光は、緑色の体毛と白い翼、赤い帯のコントラストをより鮮やかに際立たせている。  
 遺跡に置いてある像のように神秘的。奇妙な話だが、ネイティオの姿を表すにはその言葉が相応しい気がする。  
 彼女のかもし出す意味不明な迫力に、俺の目は釘付けになってしまう。  
 
「……まだ居たの?」  
「まだ居たんだよ。居ちゃ悪いか!」  
 気が付くと太陽は海に完全に沈み込んでいた。  
 夜がその気配を一気に強める。  
「早く帰れば? 暗くなると目が見えなくなるんでしょ」  
「言われなくても帰るよバーカ」  
 俺は捨て台詞を吐いて飛び去った。  
 
「くそ! 何だよあいつ……」  
 巣に帰った俺は、不貞寝した。  
 そうでもしないと、むなしさに押しつぶされそうだった。  
 
 ……日の出と共に目が覚める。  
 いつまでも寝坊しているわけにはいかない。  
 野生のポケモンは忙しい。あくせくと働かなければ生存競争を生き抜けない。  
 というわけで、俺は近くの湖で自慢のトサカの形を整えている。  
 湖面に写る自分を見ながら、頭を羽で撫で付ける。  
 これは真剣勝負。手を抜くわけにはいかない。  
 エサを集める時間が少なくなってしまうが、それは仕方の無いこと。  
 ムクホーク特有のリーゼントは毎朝のたゆまない努力によって保たれているのだ。  
「ふう……やっと決まった。早く木の実を探さないと」  
 俺は今日の食事を求めて、空へ昇った。  
 
 その日の収穫は上場だった。  
 カゴの実を一つをお土産にすることができた。  
 巣に帰ったらゆっくり食べよう。  
 ……その前に、あいつの所へ行かないとな。  
 
「来たの」  
「ああ」  
 いつもどおりのそっけない歓迎。  
 やっぱり彼女の両目は夕陽に向けられている。  
 ――あーはい、俺なんて眼中に無いんですね。そんなに太陽が好きかよ。  
 俺は話を切り出す。  
「今日は沢山木の実が採れたんだぜ。お前はボーっとしてるからそういうの苦手だろ」  
 別にネイティオことが嫌いなわけでも無いのに挑発するような口調になってしまう。  
「あまり動かないから、食べなくても平気」  
 初めて彼女が俺の話に返答してくれた。  
 
「は? お前メシ食ってないのか?」  
「うん。晴れている日は太陽をずっと見て過ごして、曇りの日に食べ物を探すの」  
 今日は一日中晴れだった。昨日も、おとといも、その前もずっとずっと……  
「お前バッカじゃねーの? そんなことしてないで木の実とかコラッタとか探せよ!」  
 気が付くと俺はネイティオを怒鳴りつけていた。  
 野生のポケモンなら何日か断食することも珍しくない。  
 だが、ネイティオが腹を空かせているのは何故か許せなかった。  
   
「わかった。お前が無表情で無感情なのは腹減ってるからだな! どおりで虚ろな目をしてると思った!」  
「失礼ね」  
 俺ばっかり必死にわめいていてバカみたいだ。  
 しかし、何もしないのは耐えられなかった。  
 
「俺が食べ物を恵んでやる! ほら食え! 良いから食え! とにかく食え! さっさと食え!」   
 木の実をクチバシで挟んで、ネイティオの頬にグリグリと押し付ける。  
 俺の力に押されて彼女の体が傾く。  
 こんな状況でも彼女は無表情を崩さない。  
 まるで俺なんか居ないかのように無視される。  
 いつも通りの冷たい拒絶。  
 慣れているはずなのに、深く心が傷つく。  
 まるっきり相手にされないとわかり、急に寂しくなる。  
 諦めかけたその時、ネイティオがこちらにくるりと向き合ってきた。  
 情けないことだが、正面から彼女を見るのはこれが初めてだった。  
 大きな目に射すくめられる。  
 
「わかった。食べる」  
 そう言うと、ネイティオはくちばしを俺の口の中に差し込んできた。  
 目を閉じ、顔を少し傾けてゆっくりと黄色いくちばしを寄せてくる。  
 大きなカゴの実を掴むために口を大きく開けていたので、容易く侵入を許してしまう。  
 突然の彼女の行動にみっともない程動揺する。  
「んあ!? あがあぁあああ!」   
 驚いた拍子に木の実が俺の口の奥に引っ込んでしまった。  
 カゴの実を追ってネイティオがより深く入ってくる。  
 俺は彼女から離れようともがく。  
 しかし、ネイティオの大きな翼で体全体を包まれて逃げられない。  
 柔らかな羽毛の感触と口内で感じる彼女の熱い吐息に惑う。  
 俺の心臓が苦しいほど高鳴る。  
 体が熱いし、頭もぼんやりする。  
 そして、ひたすら恥ずかしい。  
 混乱する俺を尻目に、ネイティオは冷静に木の実を受け取りついばむ。  
 口の中から、くちゃくちゃとカゴの実を咀嚼する音が聞こえてくる。  
 木の実の水分と、彼女の唾液と、俺のそれが入り混じり大きくて卑猥な音を立てる。  
 俺の混乱は、彼女の食事が終わるまで収まらなかった。  
 
 ……ようやく、木の実を食べ終わった彼女は俺の中から退場した。  
 唾液の筋が俺とネイティオのくちばしを繋ぐ。  
 黄色い彼女のくちばしは、俺のよだれにまみれてテラテラと光っていた。  
「……うん渋い。でもおいしかった、ありがとう」   
あれだけのことをしたにも関わらず、しれっとしているネイティオ。  
「澄ました顔で言ってんじゃねぇえええええ! お前、今何したよ!?」  
 俺は羽をばたつかせながら問い詰めた。  
「口移しでエサもらった。小さい頃あなたもお母さんと同じことしたでしょ?」  
 激怒している俺に静かに返答する彼女。  
 俺ばっかり怒っていてバカみたいだ。  
「俺はお前の親じゃねぇええええ! 良い歳したオスとメスがそういうことするのはなあ……」  
「どういうことなの?」  
 彼女の質問は俺を冷静にさせる。  
 オスがメスに食べ物をあげる行為は……メスに気に入られようとするその行為は……  
 …………求愛だ。  
 自分のした行為の重大さにようやく気付き、顔が熱くなる。  
 
「違うぞ! そういうのじゃないぞ! お前なんか……お前なんか!」  
「そういうのって何?」  
「うるさい、うるさい! オスの純情弄んでそんなに楽しいかよバーカバーカ!」  
 俺はいたたまれなくなって、彼女の前から飛び去った。  
 巣に戻ると、今日の事を忘れるために眠りにつく。  
 もう、何も感じたく無かった。  
 
 どんな事が起きても、太陽は昇るし腹は減る。  
 生きている限り、起きて、エサを探さなくてはならない。  
 朝が来た。いつも通り、まずは湖に行ってトサカを整えなくては……。  
 でも、やる気が出ない。  
 何より、湖面に映る自分を見るのが嫌だった。  
 ――別に良いか。誰かに見られるものでもないし。  
 気落ちした俺は風に吹かれるままだらだらと空を飛ぶ。  
 
「……あのね……はね……なんだってさー……」  
 普段は気にしない仲間のムックルの噂話。  
 今日だけは俺の話をしているような気がしてくる。  
 自意識過剰になっている自分に嫌気がさす。  
 こんな調子で食い物にありつける程、世の中甘くない。  
 時間を浪費して、あっという間に夕方になってしまう。  
 
「兄ちゃん、行かなくて良いの?」  
 昔から世話をしてやってるムックルが俺に尋ねてくる。  
「……ああ巣に戻らないとな」  
「違うよネイティオさんの所だよ」  
 意外な言葉に戸惑う。  
「何でお前が知ってんだ?」  
「みんな知ってるよ。ネイティオさん本人から聞いたんだって。噂になってるよ」  
 ムックルによるとネイティオが昨日のことを触れ回ってるそうだ。  
 なんという情報操作。  
「兄ちゃんネイティオさんにくびったけなんだ。かんばってねー」  
「あのトゥートゥーがあ!」  
 ネイティオの元へ慌ててむかう。  
 このまま放っておいたら、俺は皆の笑いものだ。  
 
「あ、来てくれたの」  
「お前はそこに直れええええええええ!」   
「……はい。昨日は本当にごめんなさい」  
 ネイティオは神妙に頭を下げる。  
 だがそれで俺の腹の虫は納まらない。  
「何で皆に言いふらした!?」  
「そんなことしてない。色んなポケモンに、オスが食べ物をくれるのはどんな時か質問しただけ」  
「それを言いふらしてるっていうんだよぉおおお!」  
「気が付かなかった……ごめんなさい」  
 しゅんとした表情を浮かべるネイティオ。  
 目が物憂げに伏せて、うなだれる。  
 俺はそれを卑怯だと思う。  
 そんな顔をされると許すしかなくなってしまう。  
 
「反省してるなら……それで良い。皆が飽きたら、噂も消えるだろ」  
「私、償いをしたい。木の実のお礼もしたい。何か私に出来ること無い?」  
「別にそんなのいらないって……」  
「そうだ、毛ずくろいしてあげようか? ムクホーク、寝癖ついてるし。」  
「だから良いって!」  
「このままだと、私の気がすまない。遠慮しないで」  
 俺の返答を待たず、ネイティオが俺の髪の毛をくちばしでとぐ。  
「……うん、完璧。この髪型って毎日整えるの大変でしょ?」  
「もう慣れっこだ。ありがとう。もう十分だ」  
「遠慮しないで。ちゃんとこっちもするから……」  
 俺の制止を振り切って、ネイティオは毛ずくろいを続ける。  
 くちばしが俺の胸元に触れる。  
「ふかふかで気持ち良い……」  
 ネイティオの顔が俺の胸毛に埋もれる。  
 俺の体を執拗に撫でる、彼女のくちばし。  
 毛ずくろいにしては何かがおかしい気がする。。  
 ゆっくりと何度も胸元を上下する感触は、俺の劣情を煽っているかのようだ。  
 妙な気分になってる自分に気付く。  
「ネイティオ……もう大丈夫だから!もう許すから!」  
「ムクホークはわかる? メスがオスの胸に顔をうずめるのがどんな時か」  
 ネイティオの意味深な質問。  
 だが、俺は言葉遊びは苦手なんだ。  
「そんなのわからねえよ! 言いたいことがあるならはっきり言えよ」  
「……わかった。考えてみれば、私たち、ちゃんと自分の気持ちを言葉にするべきだったね」  
 
 ネイティオは息を深く吸い、俺の顔を見上げた。  
 頬が赤いのは夕陽のせいだけではない。  
 普段感情を露にしない彼女が見せた恥じらいに俺の胸が高ぶる。  
 照れているようではあるが、背筋をピンと伸ばし真っ直ぐに俺を見つめる。  
 確かな決意が感じられるその姿。凛としていて美しい。  
 ネイティオの口がゆっくりと開かれた。  
 俺は一言も聞き逃すまいと耳を傾ける。  
「私、ムクホークと夕陽を見るのが好きだった。恥ずかしくて上手く喋れなかったけど、毎日あなたを待っていた。  
私、あなたのことずっと好きだった」  
 
 突然の告白に、頭がポーっとする。  
 返事が出来ない。  
 言うべき言葉が見つからない。  
「あなたは私のこと、どう思ってるの?」  
「そっ……そんなこと言わなくても……わかるだろ」  
「聞きたい。あなたの言葉を聞かせて……」  
 ネイティオは至近距離で見つめてくる。  
 視線の零距離射撃。  
 闇より深い黒の瞳に吸い込まれそうになる。  
 いや、実際吸い込まれていたんだと思う。  
 黒曜石のような瞳の前では、嘘や虚飾なんてどうでも良くなる。  
 今なら素直な気持ちを話す勇気が持てる気がする。  
 もう目をそらさない。ネイティオのから、そして俺の気持ちからも。  
「俺は、お前ともっと一緒にいたい。夕方だけじゃなくて朝も昼も夜も。つがいになってずっとずっと……」  
 一度、表に出てしまった愛しさは抑えることが出来ない。  
 たまらず胸の中の彼女を抱きしめる。  
 
「ネイティオ、好きだ! 俺はお前とずっと一緒に居たい!」  
 ずっと言いたかった気持ちを彼女に伝えた。  
「嬉しい……その言葉ずっと待ってた」  
 穏やかな表情で彼女が言う。  
 ずいぶんと遠回りしてきた気がする。  
   
 今までの空白を埋めるように、彼女を抱き寄せ、くちばしで触れる。  
「ネイティオ……! 好き……大好きだ!」  
 熱情にまかせて、彼女の体を貪る。  
 彼女を包む羽の力をぎゅっと強め、くちばしをでたらめに突き入れる。  
「ん……あああ、ムクホーク……そんなにしたら……」  
 いつも前に揃えられているネイティオの羽を無理やりこじあけ、鮮やかな体の模様をぐちゃぐちゃに乱す。  
 乱暴にくちばしを突きたてたせいで、ネイティオの綺麗な羽が抜けてあたりに舞い散る。  
「ネイティオ! 欲しいよ……もっと欲しい! もっとしたい!」  
「んくっ……うん、良いよ。最後までしよう……一緒になろう」  
 歓喜に沸く俺。ぎゅーっと彼女を抱きしめる。  
「ムクホーク、苦しいよ……。このままじゃ動けないでしょ……ね?」  
「え……ああ! ごめん。痛かったか? 俺……俺」  
 
 ネイティオを渋々解き放つ。  
 ほんの少し離れただけなのに、猛烈に寂しい。  
 ネイティオが地面に両羽をつき、うつぶせになる。  
 彼女の緑のひたたれに覆われた黒い下腹部が突き出される形になる。  
 細い足の間に赤く色づく可愛らしい穴が見える。  
 俺はつばをごくりと飲み込む。  
 
 俺たち鳥ポケモンは尻の穴で排泄と交尾の両方をする。  
 前には何も無い。  
 世の中には前と後ろの両方に穴があるポケモンの方が多いそうだ。  
 どうして、出口を分けるのか理解に苦しむ。   
 しかも、そいつらのオスは前に棒が付いているらしい。  
 ムックルに聞いたことだが、メスの前の方の穴に棒を突っ込んで精液を注ぎ込むそうだ。  
 そんなの、ネイティオが痛そうだと思うから俺には棒が無くて良かったと思う。  
 
「準備できたよ。来て……」  
「ああ。乗るぞ……」  
 彼女を傷つけぬように、ゆっくりと彼女の背に登る。  
 羽を大きく広げ、彼女の上でバランスをとる。  
 ネイティオの体は、置物のように真っ直ぐだったので乗りやすかった。  
 尾羽を降ろし、自分の尻の穴を彼女のそれへ近づける。  
「大事にする。お前も……俺たちの子供も」  
「嬉しい……ムクホーク、動いて……」  
 腰を前にグイっと曲げて、お互いの穴をぴったりとくっつける。  
 こうしないと、地面に精液を零してしまうのだ。  
 ようやく繋がった喜びに体が震える。  
 彼女に負担がかからぬよう、慎重に尻を左右に振る。  
 
「ううん……」  
 ネイティオが弱々しく鳴く。  
「大丈夫か!? 痛いか? 重いか? 嫌か?」  
 考えてみれば、無理やり彼女を抱いてしまった気がする。  
 あたりに散らばる白い羽が俺の暴力の証明だ。  
「違う……良いから続けて」  
「ごめん……。俺……下手くそで。ネイティオを傷つけてばかりいる……」  
「私は辛くない。……ちゃんと気持ち良いわ」  
 きっとネイティオは俺を気遣ってくれているのだ。  
 こんな乱暴にやられて、気持ちが良いはず無い。  
 落ち込む俺に、ネイティオが語りかける。  
「……そうね。こうすればわかってもらえるかしら。でもどうなっても知らないから……」  
 
 ネイティオの体全体から青白い光が立ち上る。  
 温度を持たない非現実的な光。  
 やがて、光が広がり俺とネイティオを飲み込んだ。  
「な!? ネイティオこれは……」  
「これはシンクロ。二匹の気持ちを溶け合わせる究極のコミュニケーション」  
 背中に何も乗っていないはずなのに重みを感じる。  
 そして、ものすごく焦れったくなる。  
「何だこの感覚? 俺のじゃない!」  
「私の感覚があなたに流れ込んでるの。あなたの感覚も私の中に入ってきてる。へえ、ムクホークは私のことをこんなに……」  
「うわああああ、やめろ。恥ずかしいだろ!」  
「恥ずかしいのはお互い様よ。あなたも私の気持ちがわかるでしょ?」  
 彼女が切ない程に俺を求めているのがわかる。  
「お前そんなに俺のこと好きなのか。へへへ、照れるぜ……」  
「でも、今はちょっと怒ってる」  
 確かに彼女から強い焦燥感を感じる。  
 俺の体を求める熱情は、俺がネイティオに感じてるそれと同じだ。  
 ――そうだよな。途中でやめたら辛いよな。  
 
「お前の気持ちはわかった。もう逃げない。だからシンクロを解いてくれ」  
「駄目、シンクロは解かない。私がどれだけ気持ち良いか、骨の髄まで知ってもらうわ」  
 唐突にネイティオが尻を動かした。  
 ビリビリと電流が流れるような感触。  
 俺とネイティオの二匹分の感覚が同時に押し寄せる。  
「ちょっと……待てよ! ネイティオ……そんなことしたら……」  
「ムクホークの感覚、温かい……ねえ、一緒に気持ちよくなりましょう……」  
 ネイティオが尻を突き出し穴を強く押し合わせる。  
 彼女の快感と欲望、そして愛情が押し寄せてくる。  
 
「ネイティオ! ……ああ!」  
 彼女の想いに答えて俺も尻の運動を再開させる。  
 ネイティオは尻を前後に、俺は左右にそれぞれ振る。  
 二匹の共同作業で快楽を高めていく。  
 彼女の柔らかい羽毛が俺の穴にさわさわと触れた。  
 その優しい感触に、高い声が漏れそうになってしまう。  
 オスのくせに、喘いだら恥ずかしい――そう思った俺は声を必死に抑えた。  
「声、我慢しなくても良いよ」  
「嫌だ……格好悪いだろ……」  
「どうせ全部ばれてるのに……ムクホーク、可愛い……」  
 
 可愛いと言われて、少し腹が立つ。  
 可愛いという言葉はメスに言うべきものなのだ。  
 生意気なことを言うネイティオを乱してやりたくなる。  
 俺は尻を横にずらし、左の羽で彼女の穴をいじくった。  
 穴の外縁部を円を描くように撫でまわす。  
 時々、羽の中央の硬い筋を少し中に突き入れて内部を刺激した。  
 ぶるっとネイティオの首が揺れ、赤い帯が振り乱される。  
「あん……ムクホーク、くすぐったいよぉ」  
「嘘つけ、気持ち良いくせに……わかるんだぞ」  
 シンクロのおかげで、彼女の気持ちはこっちに筒抜けだ。  
 俺の下で快楽に耐えるネイティオを愛しく思う。  
 
「……じゃあムクホークも気持ち良いんだ。嬉しい……」  
 ネイティオの言うとおりだった。  
 彼女の穴を攻めるのは、自分の穴を慰めているのも同じだった。  
 そういえば、さっきの手順はいつも俺が自分でする時と同じだった。  
 癖になってるのかな……  
「へえ、ムクホークってこうやってオナニーするのね」  
「うわ!? 気持ち読むな! やめろって!」  
 
 彼女の思考を奪うため、愛撫を強める。  
 クチバシを緑の背に沿わせ、左羽で穴を刺激し、右羽は優しく腹を撫でる。  
「……くぁあ……どうだ……ネイティオ」  
「あああ……良い……上手よムクホーク……」  
「はあ……はあ……そうだろう? へへへ……」  
 ネイティオを攻め立てる度に、快楽が反射されてくる。  
 透明な羽が俺の体を撫でくり回す。  
 ぞわぞわとした感蝕がこみあげてくる。  
 自分で自分を撫でて感じてるなんて変態だと思う。  
 だが、感じてしまうのはしょうがない。   
 もっと可愛がってやりたかったが、このままでは俺の方が先に達してしまうだろう。  
 
「ムクホークぅ……お尻……頂戴……あなたのお尻でして欲しいの……!」    
 それは俺の願望でもあった。  
 ネイティオが俺の気持ちを読んで、気を使ってくれたのだと思う。  
 俺は感謝しながら尾羽を下ろす。  
 俺はネイティオの背に乗せられた足をきつく踏みしめ、腰を思いっきり前へ突き出す。  
 再びお互いの穴をくっつけ、なすり付ける。  
「ムクホーク……もっとコスってぇ! ……もっと強く!」  
「う……うあああああ!」  
 敏感な穴を強く押し付けこすり合わせる。  
 強力な摩擦は甘い痺れを呼び寄せた。  
 痺れは体全体に回り、俺の思考能力を奪っていく。  
「ああ……良い……良いよぉ……ムクホークのお尻きもちいいい」  
「ネイティオ……! くああああ!」」  
 異性とまぐわう興奮に体温がぐんぐん上昇していく。  
 俺は、熱を発散させるために、口を大きくあけて冷たい空気を取り込んだ。  
 口をパクつかせながらひょこひょこと尻をふる俺はさぞかし無様だろう。  
 尻の穴から普段の排泄では絶対に感じない、切ないうずきがこみあげてくる。  
 熱い体液が尻の穴に集中し放精の準備を整え、欲望の解放を必死に訴えていた。  
 
「ネイティオ! だめだ……もう!」  
「うん……私も限界。頂戴……あなたの赤ちゃんが欲しい!……ドクドクと種付けしてえ……!」  
 一滴ももらさぬように強い力でお互いの穴を押し付ける。  
「うわぁあああああ! ネイティオ……! 孕め……孕め! 孕めぇええええええええええ!」  
 願いを込め、子種をぶちまける。  
 生命の放出によって力が抜けそうになるが、必死に彼女にしがみつく。  
 自慰の時とは違う幸福感を伴った放出感。  
 子孫を作る原始的な喜びに心が満たされる。  
   
「あああああ!……ムクホークの……すごいよぉ……イク……あたしもイクぅ……!」   
 俺の感じた最上の快楽が、ネイティオを絶頂に導いたようだ。  
 オスとメスの愛情あふれる幸福な交尾。  
 これこそ俺の求めていたものだ。  
 だが、心地よい脱力感に満たさて、油断している俺に正体不明の感覚が襲い掛かる。  
 
「……ひゃああ!?……ネイティオ……これって……これってまさか!」  
 長く尾を引くゆっくりとしたとろけるような快楽。  
 間違い無い。これはネイティオの絶頂だ。  
 俺の中に居座り、中々過ぎ去ってくれない甘さに身もだえする。  
 
「嘘!?……止ま……止まらない!……どんどん出てくる! ちょっと……ネイティオ……シンクロ解けよお!」  
 未体験の感覚に俺の体が出した答えは……更なる放出だった。  
 普通なら一瞬で終わる射精感がいつまでも続く。  
 強制的に俺の体液を引き出されて、吐き気すらもよおす。  
 
「ムクホークゥ……びゅくびゅく精液出すのって気持ち良いねえ……もっと出してぇ。もっと私を感じてぇ」  
 オスの絶頂をもろに受けて、ネイティオは壊れてしまったようだ。  
 シンクロを解かず、ひたすら淫らに快楽を貪る。  
「やだ!……こんなのって……ネイティオ、もうやめろよ……これ以上出したら……」  
「はあん……良いよお……これだけ中に出されたら絶対孕むねぇ……ああ、またイク……イクイクイクゥ!」  
 オスとメスの絶頂が溶け合い、混ざり、際限なく高めあう。  
 俺のうずきが彼女を煽り、彼女の恍惚が俺を高めていく。  
 残虐と言えるほど強力な性感が俺とネイティオ正気を蝕んでいく。  
 気持ち良すぎて怖い。  
 本当に狂ってしまいそうな気がする。  
 俺の精神が、メスの性感に犯し尽くされていく。  
「ひゃうん! ネイティオ……! これ以上お前を感じたら……このままじゃ俺……俺、女の子になっちゃうよぉおおおお! ふあああん!」  
 一つに解け合った快楽の洪水に溺れる。  
 もはや、俺とネイティオの境界線はわからない。  
 肌と肌を重ねると、一つに溶け合ってしまいそうだ。  
 二匹の精神がぐちゃぐちゃに混じりあう異常事態。  
 それは、ネイティオが失神してシンクロを解かれるまで続いた。  
 
「ううっ……出しすぎて、ケツの穴が痛え……」  
 結局、俺はネイティオに精を一滴残らず捧げてしまった。  
 二三日、いや数週間は何も出ない気がする。  
「でも、これで赤ちゃんができたのは確実」  
 白濁液をだらだらと尻の穴から零しながら、平静に受け答えるネイティオ。   
 メスの方が快楽に強いらしく、平然としている。  
「お前なあ、物には加減てものがあるだろ! このエロエスパーが! お前はスリーパーより変態エロポケモンだ!」  
「うん。わたしはエッチだよ。ムクホークを見てるとすごくエッチな気分になるの」  
 潤んだ目で彼女が見つめてくる。  
「でも、それはあなた大好きだから……」  
「わかったから! もう十分わかったから! そんなに見つめないでくれ」  
 なんだか、頭が痛くなって空を見上げると数多の星が光り輝いていた。  
 ――星? ということは夜? ということは……  
「うわっ! 全然見えない。巣に帰れねえよ」  
「だったらうちに来る? ここから近いよ」  
「え……良いのか?」  
「遅くなったの私のせいだし……」  
「いやそれは俺も悪かったし。うん、わかった連れてってくれ。ありがとな、ネイティオ」  
「でも良いの? ムクホークお持ち帰りされちゃうんだよ?」  
「はははバーカ。お持ち帰りはオスがメスにすることなんだぞ」  
 今思えば、ネイティオの言葉を冗談半分に聞き流すべきではなかった。  
 お持ち帰りの真の意味を、俺は身をもって知るはめになる。  
                                     完  
 

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