一言に、愛と言ってもその種類は様々である。  
生まれて最初に抱く愛は、両親や兄弟に対しての家族愛である者が多いだろう。  
友に対して友愛を抱き、世界に対して愛郷心を抱き、そしてやがては他人に対し恋をして──  
 
しかしながら、恋愛とはまた別の愛を彼女は自分たちに対して抱いているのだろう、と彼は思っていた。  
それは慈愛。部下である自分たちを大切に思う気持ちはそれ他ならず  
彼女は自分たちに慈しみを注いでいるのだと。  
だから、この行為もそれ故にしかならないと、普段の彼ならそう考えていただろう。  
だが、今、彼はその考えを思考に巡らせる事が出来ていなかった。  
 
 
「ふ……ぁ、ん…」  
「はっ…は…」  
部屋の四隅に置かれている油の入った皿のうち、三皿の火の灯りは消され  
藁のベッドの位置にある一皿だけが、この部屋を照らす唯一の灯りであった。  
……正しくは、窓から入り込む星と月の灯りもあったのだが、今は雲がその灯りを隠していた。  
小さな灯りに照らされた1組の男女が重なり合い、互いの唇を重ねては離す事を繰り返し、  
時折長く重ねて鼻で呼吸を行い、口の中を動かして互いの舌を味わっていた。  
「んっ…ふはっ、はぁ…」  
女が熱い息を肺より吐き出しながら唇を離し、口から出した舌先から唾液の糸を垂らしては  
それを男の口中に流し込むように、再度唇を重ねた。  
腹を天井に向ける形で仰向けになった男の首に乗り上がり、  
マニューラは部下の1匹に己の愛情を行動で示していた。  
「ふぅっ…は…マ、ニューラ…様……」  
頭の名を呼び、ドラピオンは彼女の背と腰を爪で抱くと、マニューラも彼の兜の首に腕を回した。  
「う、ん………はぁー…」  
ドラピオンの唇と舌を存分に味わって満足したのか、  
マニューラは互いの唾液が混ざり合った液体を飲み込んでから  
彼の首から腕を解き、身体を起こし上げて口元を鉤爪で拭った。  
 
「ふぅー……はあ……」  
ドラピオンが深く息を吸い込み、そして吐き出すと腹部と首が上下に揺れて  
それに乗り上がっているマニューラも軽く揺れ動いた。  
ドラピオンの瞳では、火の灯りでマニューラの身体の輪郭が浮かび上がっている程度しか確認出来ていなかったが  
突如、風が吹いて月と星を隠す雲を撫で流し、サァ…と木々が揺れ動く音と同時に窓から灯りが注がれ  
彼女の姿がはっきりと映りこんだ。  
青白い光がマニューラの身体に纏い、太陽の光に照らされる時の姿よりも  
妖艶に見えるのは錯覚だろうか、とドラピオンは思った。  
「……マニューラ様…」  
「ん?何だいドラピオン」  
「あっ…い、いえ……お、お綺麗です、ね……」  
言葉を濁らせながらドラピオンがマニューラを褒めると、彼女は瞳孔を丸く広げ数回瞼を瞬いた。  
「……何、馬鹿な事言っているんだい。無理にムードを作ろうとしてもお前じゃぁ白けるだけだよ」  
マニューラが短く息を吐いて呆れた様子を見せると、ドラピオンは「ぐ」と呻き  
彼女らの後ろ側では、壁に背を寄り掛けているアーボックがうんうんと頷いていたが  
彼は首を伸ばし、マニューラの肩を口先で突いて彼女の顔を覗きこんだ。  
「ボスぅ…オレさまにもして下さいよぉ」  
舌をチロチロと揺らして不満を表すが、マニューラはそんなアーボックの額を撫でては「駄目だ」と切り捨てた。  
「お前は後だ。2匹同時に相手してやれる程、ワタシは器用じゃないからね」  
そう言ってマニューラがアーボックの額に軽く口付けをしてみせると、  
彼はキシキシと笑いながら伸ばした首を戻して再度壁に寄りかかった。  
 
「ドラピオン、腕を離しな」  
「あ、は、はい…」  
マニューラに言われ、ドラピオンは彼女の背と腰を抱いていた爪を離してそれを藁のベッドの上へと置いた。  
すると彼女は身体を捻ってドラピオンの顔に背を向けては、彼の首と腹部の根元へ腰を落とし  
背を屈めて下腹部へと顔を寄せ、腹部の節と節の間を鉤爪で探り始めた。  
マニューラが何をしようとしているのか、ドラピオンは即座に理解してビクリと身体を震わせた。  
「ま、マニューラ様っ!そ、それは……」  
「お前の何処にあるんだい?」  
ドラピオンの制止する声を無視し、マニューラは滑らかな彼の腹部を撫でつつ目的のモノを探していた。  
そして、尾の付け根から二節目の腹部を探った際に掌に違和感を覚え、  
マニューラはその部分をまじまじと眺めては鉤爪の先端で軽く引っ掻いてみせると  
ドラピオンがまたしても身体を震わせたので、ここだな、とニヤリと笑ってはその節目に舌を這わせた。  
「う、うわっ…」  
弱点を当てられてドラピオンは小さく叫んだが、マニューラが与える感覚に意識を奪われてしまっていた。  
 
「んっ…」  
舌を圧迫される感覚を見て、マニューラは顔を上げると舌を這わせていた節目から  
粘膜を帯びた肉棒がゆっくりと伸び出て来る様を確認した。  
赤紫色の兜の皮膚よりも赤みが多いその肉棒を眺め、マニューラはへぇ、と呟いた。  
両鉤爪で根元を握ってみると、掌に収まる程度の太さである事が分かったが  
長さは彼女の顔と頭部を超す程であり、それに圧巻された様子を見せながら、  
マニューラはドラピオンのペニスに口を寄せた。  
悪夢で見せられた彼のモノとは似ているが、所詮はゲンガーの操っていた夢でもあるのだから  
偽物とは違う事実に彼女はやや安心したように息を深く吐いた。  
「随分……大きいな。ワタシのナカに納まるかねぇ、コレ…」  
ふぅ、とペニスの尖った先端に息を吹きかけると、ドラピオンは「うっ!」と、呻きを上げた。  
その声がマニューラの心をくすぐり、彼女はドラピオンへの愛おしさを込めて彼のペニスの先端を口に含んだ。  
口に含みながら舌で先端を転がす様に舐め回し、鉤爪で陰茎を扱いていると  
マニューラは自分の下腹部が熱くなってきているのを感じ、  
ドラピオンの硬い兜の皮膚に自分の秘所と陰核を押し付けながら、無意識に腰を左右に振った。  
 
「あ、ぁ……マニューラさ…まぁ…」  
脳が痺れる感覚に溺れながらも、ドラピオンはマニューラを呼ぶが  
彼女はそれを無視して彼への愛撫を続けていた。  
口を離すと、舌先とペニスの先端が体液の糸で結ばれたが、それはプツリとちぎれてペニスへと落ちた。  
その落ちた糸を舐め取るように、マニューラはペニスの先端から竿へと舌を滑らせては右鉤爪で先端を撫で回し、  
左鉤爪で竿を扱きながら根元に舌を這わせていた。  
「んっ…はぁ…ドラピオン……どんな感じだ…?」  
「は、は、は、い…その……」  
兜の口から唾液を垂らし、息を荒げながらもドラピオンは素直にマニューラへ答える。  
「すごく…は、ぁ……いい、です……」  
ドラピオンの返事に、マニューラはゾクゾクと首筋と背の体毛が逆立ったのを感じ、クスリと笑った。  
「じゃ、もっと良くしてやりたいかな…何処が良いんだい?」  
「えっ!?」  
ビクリとドラピオンは身体を揺らし、マニューラの言葉に一瞬怯みを見せたが  
ペニスの先端を舌先で突かれ、その感覚に理性を奪われてしまった。  
「あ……っの、う、裏側…を…」  
「裏?」  
マニューラは顔を動かしてペニスの裏側を覗いてみると、  
太い一本の筋が皮膚から浮き出て根元から縦に走り、ペニスの先端まで続いていた。  
 
マニューラはその筋の根元に舌先をあてがい、つぅー、と先端まで一気に滑らせると  
ドラピオンがその刺激に嬌声を上げた。  
「お、おぁッ!そこっ…」  
ペニスの先端から透明な液体を垂れ流しながら、ドラピオンはマニューラの舌に溺れては更なる快楽を求めた。  
「マニューラ様……も、そのっ…」  
「ん?出しそうか?」  
「は、はい……」  
ドラピオンの返事にマニューラは口を離した。  
そして鉤爪で肉棒を扱き続け、時折ビクリと鉤爪の中でペニスが跳ねる感触が妙に面白いと思った。  
「……ドラピオン、どうして欲しい?」  
唐突にマニューラが彼へ問いかけ、ドラピオンは彼女の問いの意味が分からず、  
首を上げて自分に背を向けるマニューラを眺めた。  
「え?あ、あの…どうって……?」  
「……飲まれたいか?かけたいか?どっちだ」  
 
「な、なぁあぁッ!!??」  
マニューラの言葉にドラピオンは驚愕の声を上げるが、即座に「うるさい」と怒られてしまった。  
「静かにしな。この宿は情事目的の宿じゃないんだよ…」  
「ま、でもこの部屋は角っ側ですし隣はオレさまらの部屋なんで、まだ平気じゃないですか?」  
アーボックが相棒の反応に呆れながらマニューラへ切り返すと、彼女は「確かにな」と頷いた。  
「しぃっかし……妙にサービス良くないですかぁ、ボス」  
羨ましいと言いたげにアーボックはマニューラを眺めて息を吐くと、  
彼女はドラピオンのペニスを握り締めたままニヤリと笑みをアーボックへ返した。  
「ま…少しくらいは可愛がってやりたくてな」  
そう言いつつ、マニューラはまたドラピオンのペニスに舌を這わせた。  
「う……ま、マニュッ…マニューラ様ッ……」  
ゾクゾクと腰に悪寒が走り、兜の尾も浮いてはブルブルと震えていた。  
「はぁッ!……あ、も、イき……ッ!」  
兜の歯を噛み合わせ、フー、フー、と呼吸を繰り返すと、マニューラが乗り上がっている首と腹も上下に揺れた。  
「早く言え…そうしないと出させてやらないよ?」  
両鉤爪で根元を強く握りこみ、射精を塞き止める事を暗に示しながら  
マニューラはペニスの先端を再び口に咥えた。  
「んんんッ……!!の……飲んっで…く、下さい……!」  
ドラピオンはマニューラの背から視線を逸らし、羞恥で顔を更に赤く染めたが  
彼女がその事を知る由も無く、彼の言葉にほくそ笑んで喉奥までペニスを咥え込み、  
根元を握った鉤爪の力を弱めた。  
 
「ッ…!マニューラ様ッ…マニューラ様!マニューラ様!!マニューラ…さ………!!!」  
ドラピオンは頭の名を連呼し、呼吸を一瞬止めたと同時に目を見開き、  
ガクン、と大きく身体を震わせるとマニューラの口の中に絶頂の証を吐き出した。  
「う…あ…ぁ……ぁ……」  
「ふっ…んぅ……」  
マニューラは喉と口に粘着質な液が放出されるのを感じ、それを飲み込んでは鼻で呼吸を繰り返すが  
「ん……ん、んうっ!?はっ…」  
放出される勢いと飲み込む勢いが合わず、マニューラは口からドラピオンのペニスを引き抜いてしまい、  
尚も続く射精で彼のペニスはビクビクと震え、溢れた白濁液はマニューラの額と頬へと降り注ぎ、  
鼻腔を突き抜ける生臭さに彼女は嫌な顔も見せずにそれが治まるのを待っていた。  
鉤爪の中で脈打つ動きが弱くなり、やがて治まると同時に射精も止まった。  
「ふぅ……量が多過ぎるぞ、お前…」  
マニューラはドラピオンのペニスに再度舌を這わせ、垂れた精液を舐め取ると  
上半身を起こし上げては彼の顔へと視線を向けつつ顔に付着した精液を鉤爪で拭っては、それを舐めるのを見せた。  
「飲ませるだけでは飽き足らないのか?贅沢な奴だねぇ、お前は」  
蔑むようなマニューラの視線に、ドラピオンは軽く呻いた。  
 
そんなドラピオンを眺め、マニューラは愛おしさとは別の感情が胸内に広がったのを感じ、  
身体を捻って彼と向き合い、背を屈めて口付けをした。  
口中に残る精液を舌で彼の口中へ流し込み、  
「…お前の味だ……」  
と、味わらせ、己もまた彼の舌を味わった。  
鉄と砂利が混ざり合ったような味と食感に、ドラピオンは気乗りがしない様子を見せたが  
それでもマニューラの舌を拒絶する事をせずに、自ら彼女の口の中へ舌を入れた。  
 
「ふ…はぁ……ひとまず、お前は休んでな…」  
ドラピオンから口を離し、頭部の角に軽く口付けてから彼女は両鉤爪をドラピオンの首へとあて、  
肘を伸ばして腰を持ち上げた。  
──彼女が腰を落としていた位置から粘り気のある糸が引かれていくのをドラピオンは見、  
マニューラの身体が興奮している事を知るやいなやそそくさと視線を逸らした。  
マニューラはそんなドラピオンの気遣いに気がつく事無く、  
壁に寄りかかっていたアーボックへ声をかけて彼のとぐろを巻いた腹部に乗り上がった。  
「じゃ、次はお前だね…」  
そう言いながら背を伸ばし、アーボックの首に鉤爪を回して引き寄せては、彼の唇に自分の唇を重ねた。  
ドラピオンとしたのと同じく、軽く唇を重ねては離し、また重ねては離す事を繰り返し  
少し強めに唇を押し付けるとアーボックがマニューラの唇に舌を触れさせたので、彼女も彼と同じに返した。  
「ん……ふ、ぁ……」  
肉厚で広いドラピオンの舌では互いの舌を味わう程度の行いしか出来なかったが、  
アーボックの舌は彼女のそれと良く似ており、且つ蛇特有の長さも持っているため  
マニューラの舌に触れるだけでなく、口内を二股に割れた先端で撫で上げる事も出来る。  
アーボックはマニューラの舌に自分の舌を絡ませながら、ふと、自分の相棒へと視線を向けると  
仰向けに寝転んだままのドラピオンと目が合った。  
マニューラと舌を絡ませ合ったまま、口の端を上げてニヤけて見せると  
相棒は喉を詰まらせて歯を食いしばった姿をアーボックに見せた。  
自分の方が上手いだろう、とアーボックは笑う事でドラピオンに優越感を見せつけたのだ。  
 
「はっ……ボス」  
舌を引き抜き、アーボックは彼女の首筋に鼻先をあてがいながら言葉を続けた。  
「して…もらえませんかね?」  
マニューラが乗り上がっている腹をアーボックが動かすと、彼女の尾羽の付け根に何かが当たったので  
マニューラは振り返ってその部分へと視線を向けると、既に勃起した彼のヘミペニスが突き当てられていた。  
「分かったよ。今してやるよ…」  
アーボックの頭部に軽く口付けてからマニューラは身体を捻ってアーボックの胸に背を向ける形を取り、  
彼のヘミペニスを眺めるように背を屈めて、手前の方を右鉤爪で軽く握り締めた。  
「……ちょっと、その…し辛いね、お前のは…」  
悪夢で見せられたアーボックのヘミペニスは一言で表わせばグロテスクその物であり、  
本物の彼のヘミペニスも、それに近いと言えた。  
伸びた陰茎の長さはドラピオンのよりも短く彼女の顎から額を超す程度であり、  
太さも片手で握りこめる程度ではあったが、問題はその形状であった。  
竿にはボコボコとした瘤が浮かび上がり、先端は二股に分かれ更に短い棘が幾つも生えている。  
根元に比べて先端は2倍近くの太さを持っているので、  
マニューラは果たして彼のも自分に入るのかやや不安を抱いていた。  
「無理しなくていいですぜ、ボス」  
マニューラの戸惑いを悟りアーボックが彼女を案ずるが、彼女は大きく息を吐いて、大丈夫だ、と笑った。  
「平気だよ……多分、な。ふふ」  
そう笑いつつ、彼女はヘミペニスの根元に舌を這わせ、瘤と瘤の間を通るように舌先を滑らせた。  
「ぅ……」  
小さく背を震わせてアーボックは小さく呻き、その呻きを聞いたマニューラは更に舌で舐め回して見せた。  
 
唾液で十分に濡らしてから右鉤爪で扱き、次にもう一方のヘミペニスに舌を這わせては  
二股に分かれた先端の中央部を左鉤爪でコリコリと引っ掻いてみると、  
アーボックが息を飲み込みながら荒げた呼吸を鼻で繰り返し始めた。  
「ふっ……う…ボス、すっげぇイイですぜ…」  
「そうかい?じゃ、これはどうかな……」  
扱いていた方のヘミペニスの先端に舌先をあてがい、先走りが流れ出ている尿道口をチロチロと刺激すると  
アーボックは短い息を吐き出し、その快楽に夢中になっていた。  
「は……あー…ボスぅ…」  
背を仰け反らせ、重心を壁に寄せてアーボックは深呼吸を繰り返しては彼もまた、己の頭を呼んだ。  
マニューラは彼の呼びかけに答えずに、ひたすら愛撫を続け、  
次に口を大きく開いてはヘミペニスの先端を咥え込んで頬張った。  
「んっ………ん、ぷはッ…!」  
だが、頬張ったのも束の間でマニューラは一瞬呼吸を止めてはその直後に呻き、  
息を吐き出すと同時にヘミペニスを口から出してしまったのだった。  
そして左鉤爪で口を押さえ、彼女は舌で自分の口中を探っていた。  
「……すまない。ちょっと無理かな…」  
苦い笑みをアーボックへ向け、マニューラは彼に詫びた。  
「棘、痛かったですか?」  
「頬に刺さったよ。傷はついてないけどね」  
そう言いつつ、マニューラは右鉤爪でヘミペニスを扱き、左鉤爪で尿道口を引っ掻いて  
自分の口の中を痛めつけた罰を与えていた。  
「う、はっ…!!ボス、それは強いですって……!」  
ビクリと背を揺らし、アーボックは口を食いしばってはマニューラに訴えるが  
彼女はそれを無視して鉤爪の動きを更に早めた。  
 
「ボスッ…オレさまも、そろそろ……」  
「そうか。じゃぁお前はどうしたい?」  
マニューラはアーボックにドラピオンと同じ事を聞き、その返事を待った。  
だが、アーボックから返って来た言葉は、彼女の予想を上回っていたものだった。  
「じゃぁ……オレさまの…も、飲んで、浴びて下さい」  
「は、はぁっ!?」  
自分で情事目的の宿で無いから静かにしろと言ったのに、  
彼女はその事を忘れて大声を上げてはアーボックへ振り返った。  
すると、ドラピオンとアーボックが同時に「シィー」と、マニューラを静めようとした。  
「っ…お、お前ねぇ……」  
マニューラは一度喉を詰まらせてからジロリとアーボックを睨むと、彼はケラケラと笑った。  
「だって、ドラピオンにはそうしたのにオレさまはどっちかだなんて、それは不公平ですぜぇ、ボス」  
「ま…全く。本当贅沢な奴らだよ……ん…」  
拒否する事無く、マニューラはアーボックの要望を聞き入れたようで  
彼女は再びヘミペニスを口に咥え、もう一方のヘミペニスも左鉤爪で扱きながら  
その噴射口を自分の額へと向けさせた。  
「お、お……お……あー、マジ、イイ……」  
「出す時はちゃんと…ふ……言いな」  
尿道口に唇を付け、音を立てながら先走りを吸い込んで見せると、アーボックが限界の呻きを上げた。  
「ボスっ…ボス!イク……!!」  
その声を聞き、マニューラが瞳を閉じると同時に握った対のヘミペニスが震え、  
直後に彼女の口の中と額へと、白濁の精液が放出された。  
 
「んっ…ん、んっ…」  
アーボックの精液は卵黄の卵帯のような弾力と粘りを持ち、飲み込もうとしても喉に引っ掛かってしまい  
マニューラは嚥下に少々手間取りを見せていた。  
その間に額と頬に降り注ぐ生暖かい感触にも、マニューラはゾクリと肩を震わせて受け入れていた。  
 
口中に放出された精液を全て飲み込んでから、マニューラは閉じた瞼を持ち上げて  
アーボックのヘミペニスから口を離し上半身を起こし上げた。  
「は……あ……」  
大きく息を吐き、アーボックの胸に背を預けて顔に付着した精液を拭おうとしたが、  
それはベタリと彼女の頬と鉤爪を繋ぎ、マニューラは苦い表情を浮かべてそれを眺めた。  
「ったく……はぁ…」  
鉤爪で拭った精液を口に運び、吸い付きながらそれを舐め取っていると  
アーボックが彼女の顔を見下ろして、クックッと、喉を鳴らして笑い始めた。  
「ボスの黒い毛には、映えますねぇ…」  
「……馬鹿な事言っているんじゃないよ、もう…」  
爪と爪の間を舐め上げ、マニューラはアーボックと視線をしばし合わせ、  
そうして彼の首に腕を伸ばし、顔を引き寄せては唇を重ねた。  
「ん……ぁ、は…」  
アーボックはドラピオンとは逆に抵抗を見せずにマニューラと舌を絡ませて己の精液を味わい、  
彼女の口に残る精液をも舐め取っても見せたのだ。  
「ボス…こんなマズイのよく飲めますね」  
「…ふは……飲ませた本人が何を言う…」  
「くく、確かに。……で、ドラピオンとどっちのが美味かったですか?」  
絡ませた舌を解かせ、マニューラは一言、「馬鹿が」とアーボックに返した。  
 
「それじゃぁマニューラ様……次は」  
身体を起こしたドラピオンがマニューラとアーボックへ歩み、彼女の顔を覗き込んで声をかけた。  
「ん?あぁ、じゃぁ次はお前……」  
マニューラは腰を浮かせ、ドラピオンの額を撫でるために腕を伸ばそうとしたが、  
それをアーボックの尾が邪魔をした。  
彼の尾の先端が伸ばした彼女の右腕に絡み、そのままマニューラの胸を押さえて  
アーボックの腹へと押さえ付けたのだ。  
「えっ?あ、アーボック…?」  
腰を再度落とし、何をするんだと瞳でアーボックに訴えると、彼は口の端を上げて声を出さずに笑っており  
そしてドラピオンも同じく声を出さずに、首と腕を揺らして笑っていた。  
「ボス……オレさまたち、してもらってばっかじゃ悪いんで」  
「次はオレたちがマニューラ様に、して差し上げますよ」  
 
「え……い、いいよ!今はワタシがお前たちを……」  
「ダメです。だってボス濡れていますでしょう?乗っかられているだけでも分かりますぜ」  
「い、いいって……あ、こら!」  
ドラピオンが両爪でマニューラの両脚を掴み、持ち上げては左右に開くと  
黒い体毛の一部がテラテラとぬめっている様を確認した。  
「お……マニューラ様。キスとフェラで随分興奮なさっているようじゃないですか…」  
ドラピオンはそう言いつつ、爪の側面を濡れている体毛に押し付けてゆっくりと離してみると  
細い粘膜の糸が長く繋がり、月明かりに照らされた。  
「んっ……あ、もう…馬鹿共がっ…!」  
マニューラは顔を顰めて部下たちを罵倒するが、今の彼らには彼女の咎めを聞き入れる必要性は無く、  
各々、彼女を善くしてやるべき事をするだけであった。  
「ボスがオレさまたちを同時に相手出来なくても、オレさまたちは同時にボスを相手に出来るんですぜぇ…」  
アーボックが低く笑っては、長い舌を伸ばしてマニューラの首筋を撫でると、  
彼女は目を硬く瞑って、「んっ」と、小さく喘いだ。  
そしてドラピオンがマニューラの下腹部から胸へと体毛を逆撫でるように舐め上げる事を繰り返していた。  
「あ……ん、ぁ…!は、ぁ…」  
悪寒が背に走り、マニューラが背を反らして部下たちに与えられる愛撫に悶えていると  
アーボックの舌が彼女の付け襟の中へと潜り込み、平たい乳房を揉みしだいては  
尖った先端に舌先を触れさせ、マニューラは軽い電撃を浴びたかのような刺激を受けた。  
 
「ひぁっ!……ん、ふぅ…」  
アーボックの舌はマニューラの胸から顎を撫でるように滑ってはうなじへ移り、そこから生えた羽根を弄り出し、  
ドラピオンの舌は脚へと移っては膝の裏から足首へと滑らせては撫でる事を繰り返し、  
部下たちによる甘い責めは彼女の身体のほぼ全身に行われるが、肝心の部分だけには触れる事をしなかった。  
無意識的にか、意識的にか。マニューラは脚を動かしてはその部分を触れと無言で訴えるが  
アーボックもドラピオンも、わざとそれに気がついていない振りをしていた。  
「お……お前たちぃ…!じ、焦らすんじゃないよ……!」  
痺れを切らし、マニューラが言葉で訴えるが部下の2匹はニヤニヤと笑って「焦らす?」と返した。  
「えぇ?焦らしているだなんて、心外ですぜぇボスぅ」  
「そうそう。ちゃーんとマニューラ様を善くしていますのに」  
「んっ……ちゃ、ちゃんと、そこもっ…!」  
マニューラは息を荒げながら、脚を広げてトロトロになった秘所を見せ付けたが  
「あぁ、ここですか?」  
ドラピオンの舌は右脚の付け根へと移り、膝裏へとかけて滑らされた。  
「ふぅっ…違うよッ!も、もうちょっと横…」  
「あ、こっち側ですか?」  
今度は左脚の付け根から膝裏を舐め上げると、マニューラは再び「違う!」と叫んだ。  
「もっぉ…いい加減にしなッ……!!」  
今にも泣き出してしまいそうな表情でドラピオンを睨むと、さすがにやりすぎたかと彼は思ったようで、  
右腕の爪で傷つけぬよう細心の注意を払いながらマニューラの秘所を開いた。  
 
くちゃ…と、粘着性のある音と共にマニューラの黒い体毛の一部が開かれ、  
真っ赤に充血した粘膜が露わになり、その奥から男を興奮させる香りとトロトロとした液体を流していた。  
ドラピオンはその個所をまじまじと眺めては、己の胸の鼓動が高まっていくのを感じた。  
「すっかりとろけていますよ、マニューラ様」  
「お前たちのせいだろう……」  
マニューラが小声で文句を言うと同時に、ドラピオンの舌がマニューラの閉じた花弁を下から上へと舐め上げ  
彼女はその刺激に震え、嬌声を上げた。  
「ひゃっ……あ、ぁん……!」  
ようやく与えられた甘い感覚に、マニューラは背をアーボックの胸に押しつけながら悶え、  
ドラピオンの頭部に右鉤爪を添えて、更に強請った。  
「あ…ん、そこっ……もっと、な…」  
マニューラが腰を左右に振りつつ快楽に浸っていると、その唇にアーボックの唇が触れた。  
「ん……」  
空いている左鉤爪でアーボックの頭部を抱え、舌を絡ませ合っては腰を振り、ドラピオンの口淫を強請っていた。  
傍から見れば何とも淫乱な女だろうか、とマニューラは想像しては更に秘所を濡らした。  
 
ドラピオンは舌先を花弁に捻じ込み、広げようと懸命に動かしてみるが  
彼の分厚く広い舌ではそれはままならず、仕方無しに筋に沿うように滑らせて陰核へと移した。  
「はっあ、ぁあ……そこぉ…いい、よぉ…」  
最も敏感な部分を探られ、マニューラは悦楽の笑みを浮かべた。  
アーボックはマニューラの舌を解放し、彼女の顎と頬を舐めながら喉奥を鳴らしながら笑った。  
「くくく……ボスってめちゃくちゃイヤらしいですよねぇ……」  
「はぁ……何が、だ…?」  
火照った瞳でアーボックを見上げてマニューラが問うと、彼は舌をチロチロと揺らして彼女の羽根を梳いた。  
「あ、ぅんっ…」  
「オレさまたち、本気でボスに惚れてるっつーのに……惚れてるメスがオスのチンコ咥える所を見せつけて、  
でもって直後に別のオスのチンコまた咥えて……酷いですぜぇ…結構精神的にクるんですけど」  
「はぁ、あ、んぅ……ふ、ふふ…。ワタシが優しく無い事くらい知っているだろう、馬鹿が……あっ、んぁ!」  
アーボックに妖艶な笑みを見せていたが、ドラピオンの舌の感触に意識を奪われ、  
マニューラは再度背を反らして彼の頭部を掴む鉤爪に力を込めた。  
 
「マニューラ様……イきそうですか?」  
舌を這わせながらドラピオンがマニューラへ聞くと、彼女は呼吸を荒げながらもそれに返した。  
「う、ん…っ…イくよぉ……」  
恥じらう事も無く、マニューラは絶頂が近い事をドラピオンへ知らせた。  
すると、ドラピオンは舌の動きを止めて、マニューラへチラリと視線を向けたので  
その視線に彼女も返し、どうした、と言いたげに首を傾けた。  
「……?ドラピオン…?」  
「マニューラ様…どっちでイきたいですか?」  
 
「………お、お前、なぁあ!」  
「シィー!ボス、さっきっから大声上げているのボスだけですぜ?」  
マニューラはパシッと自分の口を両鉤爪で押さえ、  
ジロリ、とアーボックとドラピオンに睨みをきかせたが、彼らはケラケラと笑うだけであった。  
マニューラはドラピオンの企みを読み、口から鉤爪を離しては彼を睨み付けた。  
「くっ……本当、馬鹿な事考えるね、お前は…」  
「そんな、心外ですねぇ。マニューラ様が気持ち良くイかせて下さったから、  
オレもマニューラ様を気持ち良くイかせて差し上げたいだけですよぉ?」  
「分かったよ……の、上、の方で、な…」  
マニューラは大きく息を吐き、ドラピオンに要望を出したが  
彼はニヤニヤ笑っては、マニューラの下腹部を舐め上げたのだった。  
「ひゃ…ん、そこじゃ無いよ…」  
「え?じゃぁこちらですか?」  
そう言いつつ、今度は彼女の胸元を舐め上げた時、マニューラの鉤爪の拳がドラピオンの頭部へと落とされた。  
「あだっ」  
「違うよッ!馬鹿が!!」  
叩かれた頭部を擦り、ドラピオンはバツが悪そうに笑っては彼女の発言を認めた。  
「そうですねぇ…オレ、バカですんで、ちゃんと言って貰わないと分からなくってですねぇ……」  
「………ほ、ほんっ……本当、馬鹿……だね…!」  
マニューラはそう吐き捨ててから両鉤爪を下腹部に寄せて、その箇所を爪先で示した。  
「こ、ここだって……」  
「ここ、と言われましても……名称で教えて貰いだっだだ!!」  
マニューラが再度鉤爪で拳を作り、それをドラピオンの頭部へ2度振り落としたのだった。  
マニューラとドラピオンの漫才のようなやりとりを眺めつつ、アーボックは声を出さずに笑っていた。  
「ボス〜手加減しないとドラピオン死にますぜ。バカは死んでも治らないって言いますし」  
アーボックはキシキシと笑いながら、マニューラを止めに入り  
その言葉を聞いて彼女は4度目の鉄拳を振りかざそうとした所で腕を止めた。  
「全く……早くしな…」  
「いててて……へへ。で、何処に?」  
「…………だ、だか、らッ!その……………ク……」  
触れて欲しい名称を言いかけて、マニューラは下唇を噛み締めては瞳を硬く瞑った。  
「ク?何ですか?」  
「……ク…………あああぁぁああ!!もう!馬鹿!馬鹿!!馬鹿ぁああぁッ!!!!」  
 
マニューラは顔を頭部の羽根の色と同じになる程に紅潮させ、ドラピオンを罵っては両鉤爪で顔を覆った。  
「…え?」  
「……ボ、ボス…?」  
ドラピオンとアーボックはマニューラを眺めては互いに視線を合わせ、  
数回瞬いて再びマニューラへと視線を向けた。その瞳は小さい円を描き、文字通り、2匹は目を点にしていた。  
マニューラは顔を覆ったまま背を屈め、身体を小刻みに震わせながら  
「……馬鹿がぁ…」  
と、震える声で呟いた。  
 
「……あー。ボス?……えっとぉ……」  
マニューラの腕に絡ませていた尾を解き、その先端で自分のこめかみを掻きながら  
アーボックは彼女に呼びかけるが、マニューラはそれに答えずにただ黙り込んでいた。  
「…あの、マニューラ様……えー…そのー……」  
ドラピオンは顔を上げて自分の相棒に、声にはせずに口を動かして『どうすればいい?』と聞き、  
アーボックもまた声にはせずに口を動かして『こっちが聞きてぇよ』と返した。  
「……のー…ボス、顔、上げてくださいよ」  
尾の先端でマニューラの顎を持ち上げようとしたが、パシン、と鉤爪で払われてしまい  
アーボックは自分には打つ手が無い事を理解すると、  
ドラピオンの頭部を尾で小突き、『アホ』と、無言で口を動かした。  
「………マニューラ様…その……調子に乗ってしまって申し訳ございません…」  
ドラピオンが頭を垂れて詫びの言葉を向けると、マニューラはようやく鉤爪を顔から離した。  
「……本当……馬鹿だよ、お前はッ……」  
赤らめた顔に赤い瞳でドラピオンを睨んでから、マニューラは息を吐いてアーボックの胸に寄りかかった。  
「だからワタシは苦労が絶えないんだよ。少しは労われ」  
そう吐き捨ててから、フン、とマニューラは横を向いた。  
 
「……あ」  
アーボックが何かに気が付いた様子で、唐突に呟いた。  
「ボス」  
「……どうした?」  
「すいません。また勃起しました」  
「は……あっ!?」  
マニューラはアーボックへ振り返り、彼の胸に右鉤爪を添えては素っ頓狂な声を上げた。  
「いやぁ〜まさかボスがこんな可愛い反応するなんて思わなくって、つい興奮しちまいました」  
ケラケラと笑い、アーボックがマニューラを乗せた腹部を突き上げて見せると  
マニューラは自分の尾羽の根元に硬い何かが押し当てられるのを感じ、  
それが彼の勃起したヘミペニスと理解すると同時に大きく息を吐いた。  
「何……馬鹿な事言ってんだい、お前まで」  
「いやぁ?でも本当可愛いと思いまして」  
「か、可愛いとか…下らない事言っているんじゃ、ない…よ…」  
ボソボソと声を小さくさせて、マニューラは呟きながら彼から視線をそらすと  
ドラピオンとアーボックは彼女の思いもよらぬ弱点を知り、互いに鼻から息を吐いてニヤリと笑った。  
 
「…って。早くしておくれよ、もぅ……」  
身体の疼きは治まらず、マニューラはその解放を求めるようにとドラピオンの額を撫でた。  
「おねだりするマニューラ様も可愛いですねぇ…ん、オレもまた勃起したみたいです」  
「……また殴られたいのかい?お前」  
ドラピオンの額に添えた鉤爪で拳を作って脅すと、彼は首を揺らして笑い、  
「いやーそれはもう勘弁してもらいたいですね」  
と、言ってはマニューラの胸元を舐め、そのまま舌先を下腹部まで滑らせて  
彼女が言い損じた箇所へと辿り着き、膨らんだ小さな陰核を突いた。  
「はっ……あ、そこっ…そこだよぉ…」  
声で強請りながら腰を捻るように振り、マニューラは陰核に与えられる刺激を自ら増した。  
ドラピオンの舌先がマニューラの陰核をグリグリと潰すと、  
彼女は背を反らして天井を見上げながら喘ぎ、快楽に溺れた。  
「あ、ぁ…は、ぁんッ、いい、よぉ…ドラピオ…ぅんッ!?」  
唐突に口を塞がれ、マニューラは驚きの声を上げる間もなくその舌を絡められた。  
再びアーボックがマニューラに唇を重ね、長い舌で彼女の口中を撫で回しながら  
尾を付け襟の中へと潜り込ませては、胸を弄り始めたのだ。  
「はっ、あ……はぁ、あ、あ…」  
アーボックの頭部に縋り、ドラピオンの頭部にも縋り、  
マニューラは部下に与えられる甘美な感覚に夢中になっていた。  
秘所がキュゥキュゥと締まっているのを自分でも感じ、彼女はゾクリと身体を震わせた。  
「マニューラ様…固くなっていますねぇ……」  
押しつぶしていた陰核の弾力が増し、ドラピオンはそんな事を呟いた。  
 
そして舌先で不器用に包皮を剥き、ぷっくりと膨れた陰核に濡れた舌で掬うように舐め上げた瞬間、  
マニューラが下半身を大きく跳ね上げた。  
「あッ!……あ、ぁぁ、あ……ん…!!!」  
ビクビクと震える脚でドラピオンの首を固定しては、快楽の絶頂を最後まで味わおうと彼に縋りついた。  
「んっん……は、はぁー……」  
アーボックの頭部に回した腕を離し、唇も離しては彼女はくたりと彼の胸に身を預けて  
深い呼吸を繰り返しては顎に垂れた唾液を鉤爪で拭った。  
「イき…ましたか?マニューラ様……」  
マニューラの愛液で口元を濡らしたドラピオンが彼女の身を案ずる様子で顔を覗きこんだので  
彼女は瞳を動かしてドラピオンに視線を向け、コクリと頷いて見せた。  
「それじゃぁ、お返しです」  
そう言って、ドラピオンはマニューラの唇に自分の唇を重ねた。  
「! ……ん」  
ドラピオンの企みを読み、マニューラは瞳を瞑っては眉を下げて小さく笑い  
彼の舌に自分の舌を這わせ、絡ませた後に唇に付着している自分の愛液を舐め取ってやったのだった。  
「は…ぁ……へ、へへへ…マニューラ様。ご自分のお味はどんな感じですか?」  
「ん?さぁ、良く分からない味だね……」  
クスリと笑い、マニューラはドラピオンの角に口付けをした。  
 
「ボス、そんじゃぁ次はオレさまがしますね」  
マニューラの背を舌で舐め上げてアーボックは今のように言うと、  
返事を待たずに尾を彼女の腹に巻きつけ、持ち上げては藁のベッドの上に寝かせた。  
藁特有の香ばしさが鼻をくすぐり、マニューラはうつ伏せに寝転ばされた事を知って  
アーボックへと振り返ろうとしたが、  
「ひゃっ!あ、こ、こらっ…!」  
濡れてヒクついている秘所を二股の舌で舐められてしまい、とっさに藁の枕に顎を乗せた。  
「今はぁっ…ダメ、だって!い、イッたばっかりだから…」  
「でもクリトリスでイッたんですし、ナカなら平気ですよね?」  
そう言うが早く、アーボックはマニューラの秘所に舌先を埋め、  
閉じた花弁を開かそうと捻じ込み始めた。  
「ひゃぁ、んッ!だぁ、め、だって、あ、ぁん…!」  
陰核で絶頂したからと言っても敏感になっている事には変わりなく、  
マニューラは右腕を身体の下へと潜り込ませ、アーボックの舌を払うために鉤爪で彼の舌を叩くが  
彼はその鉤爪を避けるために、口先を彼女の秘所へと吸い付けた。  
「やっ……こら!やぁ、めッ!!」  
鉤爪でアーボックの顎を引っ掻くが強烈な刺激に力が入らず、彼の顎を撫でる結果となってしまい  
それに促されたのか、アーボックは口元から溢れる彼女の液を吸い込み、飲み込んだ。  
わざと彼女の耳に入るようにジュルジュルと音を立てると、  
マニューラは羞恥心からか、藁の枕に額を押し付けて首を横に振った。  
 
花弁の入り口ですら、侵入を防ごうと懸命にアーボックの舌を締め付けていたが  
逆にそれがアーボックの欲求に火をつけてしまい、彼は舌先を更に奥へと突き進めた。  
「えっ………あ、やだッ!こら!やめ、なッ!!」  
マニューラは一瞬目を見開いてビクリと腰を震わせたが、  
即座にアーボックの顎を叩いては止めるように指示をするが、彼はそれを無視して舌を更に埋め込ませた。  
「ひゃ…は、入って……止めな、って……ばぁ…!」  
「ボス。止めろと言われましても、めっちゃくちゃ狭いですぜ?  
ちゃんとほぐしておかないと後が辛いですからねぇ」  
舌を埋め込ませたまま器用に喋り、アーボックは口元の舌を軸にして  
ゆっくりとマニューラの膣内を掻き回し始めた。  
ねっとりとした内部は熱く、それでいて適度な締め付けがある事をアーボックの舌へと伝えた。  
 
アーボックが膣壁を二股の舌先で撫で回していた時、  
マニューラの腹部側の膣壁の一部に違った感触を覚えたと同時に、彼女の2本の尾羽がピンと張り上がった。  
「はッ…!!」  
ビリビリと電流に似た感覚が撫でられた箇所から走り、マニューラは身体を支える両脚を小刻みに震え始めた。  
「お?ここ…弱いんですねぇ…」  
ねっとりとした他の膣壁とは違い、ざらついたその部分に狙いを定めてアーボックは舌で責めて見せると  
マニューラはビクリと脚と腰を震わせ、彼の顎を掴んで行為を止めさせようとした。  
「そ、そこは、や……ひゃぁッ!あ、ぁあ、ぁッ!!」  
アーボックの責めでは嬌声を抑え切れないとマニューラは悟り、  
抵抗する事を諦めて左鉤爪で口を押さえ、声を抑える事にした。  
「ふっふぅッ……ん、ぅん…ふッ!」  
「マニューラ様…口を塞ぎたいのなら、手伝いましょうか?」  
のそり、とドラピオンがマニューラの横から顔を覗かせた。  
マニューラは横目でドラピオンを眺め、彼の言う『手伝い』の意味を理解しては  
何度呟いたか分からないお馴染の言葉を心の中で彼に投げ、  
口から鉤爪を離してそれをドラピオンの頭部へ乗せて彼の顔を自分の顔へと引き寄せた。  
 
「んっふぅっ…!」  
唇を重ね、ドラピオンの舌を自分の口中に吸い込んではその中でチロチロと舐め、  
彼の舌を彼のペニスにしたのと同じように愛撫した。  
「んっ、ん………ん!ぅ、んっ!んんん………!!!」  
彼女の膣壁はアーボックの舌をオスの陰茎と見立てて、種子を搾り取ろうと締め付けては痙攣を繰り返したが  
本能が望むものは与えられず、代わりに舌先で最奥を撫でられる事で絶頂を促され、  
ドラピオンの舌を口に咥え込んだまま、マニューラはアーボックの責めによって2度目の絶頂を迎えた。  
快楽の波に溺れながらマニューラは悶え、無意識的に咥え込んだドラピオンの舌に牙を立てしまったが  
ドラピオンには逆にそれが彼女への愛しみとなり、抵抗をせずにそのまま噛ませる事にしていた。  
「ふは……ぁ……」  
絶頂の勢いが弱まった頃、マニューラは口からドラピオンの舌を抜き  
それと同時にアーボックも自分の舌をマニューラの秘所から引き抜き、  
唾液と愛液が混ざった太い糸を舌先から垂らしていた。  
 
張り上がっていたマニューラの赤い尾羽はペタリと秘所を隠すように垂れ、  
彼女自身も身体を崩して深く呼吸を繰り返していた。  
「はー……はぁー……は…ぁ……」  
遠ざかりそうになる意識を保とうと、もう一度大きく息を吐いてから  
マニューラは首を動かしてアーボックを睨み付けようとしたが、  
彼女の行動を予想したのか先にアーボックが動いてマニューラの顔を覗き込み  
濡れた舌先で彼女の唇をなぞってはその中へと捻じ込ませた。  
「あ……も、ぅ…」  
マニューラが彼にしたのと同じ事をアーボックが彼女にし、マニューラは苦い笑みを浮かべては  
その舌に付着した自分の液を味わった。  
 
「ふー……ボス、どうでした?」  
マニューラの舌を撫でてから自分の舌を収納し、アーボックが唐突に彼女へと質問を投げた。  
「……良かったよ……でも頼むからさぁ…あんまり無茶させないでよ。  
ワタシはお前たちみたいに頑丈じゃないんだからね」  
マニューラは含んだ笑いを見せてから、今の言葉をアーボックに返して藁の枕に頬を埋めた。  
「ほぅ、そりゃ失礼を。……で、どっちが良かったです?」  
「……はぁ?」  
眉を顰め、枕に頬を埋めたままマニューラが返すと、アーボックが質問の内容を詳しく説明した。  
「オレさまのと、ドラピオンの。どっちが気持ち良かったですか?ボス。  
ま、オレさまの方がテクは上……」  
「お、おい。どーゆー事だよそれは」  
ドラピオンがアーボックへ詰め寄り、兜の腕で彼の広い胸を叩いては詰問をすると  
アーボックがキシキシと笑いながら言い返した。  
 
「童貞丸出しのテクじゃぁ、ボスが満足するわけねぇだろ」  
「どっ……」  
アーボックの悪態にドラピオンは声を詰まらせ、兜の歯を食いしばらせた。  
が、すぐに口を開いては大きく息を吐き出し、首を後ろへと傾けて下目でアーボックを睨んだ。  
「……つか、オマエの方がどーよ?  
オマエがクンニしている間、マニューラ様は一言も気持ち良いなんて言わなかったぜ?」  
「お……バカの癖して中々の言い返しじゃねぇか…」  
アーボックは背を屈めて鎌首をもたげながらも、目を細めて下からドラピオンを睨み付けた。  
 
「ちょ……お、お前たち……?」  
マニューラは部下たちの険悪な空気を読み取り、呼び掛ける事で止めようとしたが  
彼らはそれを無視して、それぞれの男としてのプライドを賭けた口論を始めてしまったのだった。  
「へっ。キスすら満足にしてやれねぇ癖に、よー言うぜ」  
「はっ。でも、どーせオマエなら噛まれると舌を外すんだろ?ほれ見ろよこの歯型」  
「けっ。ボスを焦らしまくったからこそ、あんだけボスも善がったんだろ」  
「ふっ。焦らせるのもテクの一つだろ。敏感になってる場所に無理矢理突っ込むのは最速拷問だろうが」  
「お、お前たち…ってば……」  
「ほぅ?ならほぐしもしないで突っ込む所だったのか?そっちの方が相手の身体を何も考えてねぇ証拠だろ」  
「はぁ?ちゃぁーんとして差し上げるつもりだったぜ?」  
「へぇ?舌はデカ過ぎて入りそうにもねぇし、爪でも突っ込むつもりだったのか?」  
「あぁ?そうだけど?毒は出さねぇよ。悪いか」  
「お、お前…た……」  
「バッカじゃねーの!?切れるだろ!も、本当オマエボスの事考えろよ!」  
「うるっせーな!切らねぇよ!!そこまでオレはバカじゃねぇっつーの!」  
「………」  
「あ、やっぱりオマエ自分でもバカだと分かってんじゃねーか」  
「な、何をぉ?誰がバカ……」  
 
「 止 め な ッ ! ! ! 」  
 
────瞬時に、沈黙が訪れた。  
アーボックとドラピオンは互いの眉間を擦り合わせ、目先で火花を散らしては  
一触即発の事態に陥っていたが、マニューラが声を張り上げる事で彼らは硬直し、  
揃って彼女へと視線を移したのだった。  
マニューラはいつの間にか臀部と脚を藁のベッドに乗せる形でしゃがんでおり、  
彼らに顔を向けずに代わりに藁のベッドへと視線を落とし、俯いていた。  
「……下らない事で、争っているんじゃないよ。……馬鹿共が…」  
普段なら、笑いながら投げかけられる彼女なりの慈しみを込めた罵倒。  
だが、今のこの言葉にその張りは無く、あるのは悲哀。それだけであった。  
「………あ…」  
「……そ、の……」  
2匹は背を正しては顔を離し、マニューラへと向けるが彼女にかける言葉が思いつかずにいた。  
数秒間、彼らが考えて思いついたのは彼女への謝罪であり、ドラピオンとアーボックは彼女へ頭を垂れた。  
「ボ、ボス…すいませ…」  
「マニューラ様…も、申し訳…」  
「違うだろう」  
彼らが謝罪の言葉を言い終わる前に、マニューラが口を挟んで否定を示した。  
「……謝る相手はワタシじゃないだろう…」  
マニューラの指摘に、2匹は声を詰まらせた。  
そして、互いに視線を合わしては即座に外し、口ごもりながらも謝罪の言葉に出した。  
「っ……あ……わ、悪かった、な…」  
「……お、オレさま…も、な。わりぃ……」  
 
項垂れる頭部の羽根越しに2匹のその声を聞き、マニューラは俯いたまま息を吐き出しては彼らに語りかけた。  
「……なぁ、お前たち。さっきのワタシの言葉、覚えているかい…?」  
「え?えっと……どのですか、ボス…」  
尾で自分の頭を掻きながらアーボックがマニューラに問うと、彼女はポツポツと心境を語り始めた。  
「……お前たちを抱いてやりたい…しかし色々と面倒が起こるのも事実だって…。  
で、今がまさにソレだよ、馬鹿共が」  
マニューラの語りに、ドラピオンとアーボックは胸が打ち抜かれたような衝撃を受けた。  
「…ぁ……」  
声をかけようと口を開いてみるが出てくるのは呻きだけであり、ドラピオンは口を噤んでは悲しみに暮れた。  
「…だから嫌だったんだよ。お前たちと関係を持つ事で亀裂を生じさせたくなかった。  
お前たちをさ……抑え付けていたのは悪いと思っている。  
でもそれ以上に…壊したくないのさ。MADと言うチームを。  
お前たちが今みたいな下らない争いをすると言うなら、この続きはしない。ここで終わりにする。  
……ワタシから誘っておいて悪いけどさ……」  
マニューラはそう苦笑してから、鉤爪で自分の顔を拭った。  
「………」  
ドラピオンとアーボックは静かにマニューラの呟きを聞き、  
彼女がどれだけ自分たちを想っているかを痛切に感じていた。  
マニューラが自分たちに何度も投げかけた馬鹿と言う言葉は、まさしく確かであるとも思い知っていた。  
 
「…マニューラ様……」  
「…ボス……」  
2匹は同時に歩み、しゃがむ彼女の元へと寄って呼びかけると  
マニューラは「何だ」と顔を俯かせたまま返した。  
「……ボスって…すっげぇ考えて…いるんですねぇ…」  
「…当たり前だよ。上に立つ者…特にワタシみたいに、メスがオスを従える場合は  
きっちり考えていないと、あっと言う間に秩序は崩壊しちまうよ。  
ワタシの苦労を知らないんだから、のんきでいられるんだよ、お前たちは」  
感謝しろ、と最後に続け彼女はまだ彼らに顔を背けたまま肩を揺らしては笑った。  
「……え、と。マニューラ様……ありがとう、ございます…」  
彼女の言葉に促され、ドラピオンが感謝の意を言葉で表わすと、  
アーボックもまた同じく感謝の意を言葉で表わした。  
「ボス…いつもいつも…ご苦労様、です」  
部下たちの謝辞を受け、マニューラは鼻から短く息を吐き、  
背を正して顔を上げたが彼らにはまだ彼女の顔が見えずにいた。  
「……お前たち」  
「は、はい?」  
「……下らない争いはしないと誓えるか?」  
「……は、はい!」  
「……え、えぇ、しませんぜ、ボス!」  
部下たちは焦りながらも断言し、その返事を聞いたマニューラはゆっくりと口の端を上げた。  
そして首を揺らして頭部の羽根も揺らし、マニューラは「そうか」と返した。  
 
「それじゃぁ……抱いてやろうじゃないか。お前たちを、な」  
首をゆっくりと後ろへと動かし、マニューラは赤い瞳で彼らへと視線を向けた。  
──その瞳に微かな潤いが保たれていたのを彼らは見たが、その潤いの正体を聞き出す事はせずに  
はい、と承認を返しては、彼女の肩に顎を乗せて誘いに乗り、  
マニューラは彼らの頭部に鉤爪を寄せては、交互に頬を擦ってみせた。  
 
「…あ、マニューラ様」  
「ん?なんだい、ドラピオン」  
「えっと……萎えてしまったので、またお願い出来ます?」  
「あ、オレさまもオレさまも」  
「……も、もう…!このっ…馬鹿共がぁ……!!」  
 

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