「かーっ、もうやってられるか!」  
俺は砂地にゴロンと大の字になって寝そべると、伸びをした。  
強い日差しが気持ち良い。  
…ここは育て屋コガネシティ支店。  
俺の主人は、少しでも俺たちを強くしようと、  
パソコンではなくここに預ける怠けぐせがある。  
しかも一緒にいる時は外に出して連れ歩き、  
用事もないのに時々振り返ってはニヤニヤしてくる。  
戦闘は相性の悪い岩タイプ相手に平気で出すわ、道具はケチるわ…  
お陰でここは唯一俺の気が休まる場所だった。  
…少し前までは。  
「よう、リザードン、毎度お疲れさん。」  
池からオーダイルが顔を覗かせている。  
…なんだ、今回はジュカインが連れていかれたのか。  
「今回はお前と相部屋か…」  
はぁ、とため息をつく。  
 
本来、育て屋は卵を作るために、つがいが預けられる場所。  
…というのが暗黙の常識なのだが、  
俺もオーダイルも、そしてジュカインも皆、雄である。  
ここで出されるエサは美味しいし、部屋は清潔なのは良いのだが、  
エサは精力がつく成分が多かったり、ねぐらが所謂、ダブルベッド的な感じになっている為、嫌でも意識してしまう。  
「何だよ、嫌そうにするなって。」  
「…この前、寝床で寝ぼけてアクアジェットして来たのは忘れてないだろうな?」  
…あれは痛かった。本気で。  
あの後、確かオーダイルには罰として床で寝てもらう事にしたんだっけ。  
「あぁ、忘れないって。  
…カウンターで瀕死にされて床で朝まで気絶させられたんだからな。」  
…あー、条件反射って凄いな。  
オーダイルは陽気に笑っている。  
…目は笑っていなかったが。  
 
日も暮れ、俺たちは小屋に入った。  
俺は周りを見回し…  
寝台から離れた部屋の隅に伏す。  
「そんな隅で何してるんだ?」  
「…俺はここで寝る。また寝惚けて攻撃されたら堪らないからな。」  
オーダイルは溜息をつく。  
「…悪かったな。だったら俺が床で寝るから、寝床は使ってくれ。」  
そう言い、反対側の床にオーダイルは伏せた。  
「…。」  
俺は躊躇いながらも寝床に横になる。  
 
あの時、瀕死になったのはオーダイルだ。  
先に攻撃して来たのも彼とはいえ、俺にも少し引け目がある。  
 
 
…と思っていた俺が馬鹿だった。  
寝ていると、またしても攻撃されたのだ。  
しかも今度はカウンターできないよう、ハイドロポンプで。  
 
「ぐぅっ…オーダイルっ、何のつもりだ!?」  
「お前に抵抗されると面倒だからな。  
…抵抗できないよう、瀕死になってもらっただけだ。」  
オーダイルは俺の側にゆっくりと歩み寄る。  
俺は身体を動かそうとするが、身体はいう事を聞かない。  
「もう我慢出来ねぇ…。」  
オーダイルは台の上に横たわってる俺の下腹部…尻尾の付け根を撫で始める。  
俺はこの後に起こる事を想像し…  
「や、止めろ…!」  
抵抗虚しく、俺の逸物は大きく勃起を始める。  
オーダイルはそれを握り、荒っぽく扱き始めた。  
「あぁっ、くっ、止め…」  
当然止めるはずもなく、次第に固くなり扱き易くなる逸物を扱く一方、  
彼の利き手は彼自身のものを扱き始める。  
「お前が…俺を見てくれないから…  
俺の物になってくれないから…  
俺は…こうするしかないんだ…!」  
「…オーダイル…?」  
尻尾の付け根に当たる、ヌルリとした感触。  
それは俺への入り口を見つけると、迷わず侵入してきた。  
「ぐぅっ…!」  
俺の中で乱暴に暴れ回る彼の物。  
俺は激痛に身をよじらせる。  
目を閉じ、苦痛をこらえ…  
「俺を…見てくれ…!俺を…!俺だけを…!  
あんな奴の事なんか…ジュカインの事なんて忘れてしまえ!」  
オーダイルの表情は、怒りと悲しみの混ざったような、そんな感じだった。  
「リザードン、お前が好きだっ!!」  
「オーダイル…」  
 
ジュカイン…  
俺は彼に初めて合った瞬間、何か運命的な物を感じて以来、  
ずっと、俺は彼を見続けてきた。  
彼は俺の事なんか見向きもしないが、  
いつかは俺を認めてくれると信じて…  
 
あのクールな目、素早い身のこなし…  
俺は彼を見れば見るほどに惹かれ、  
いつしか俺の物にしようと思うようになっていた。  
 
しかし、何度アプローチをしても彼は俺を見てはくれない。  
それどころか、俺を避けるようになっていた。  
彼の目の中には、いつも俺以外の誰かがいた。  
…その相手がオーダイルだと気付いたのは、彼を瀕死にさせてしまった後の事だった。  
 
主人が瀕死のオーダイルをポケモンセンターに連れて行く間、  
俺とジュカインがここに残された。  
『…何故、オーダイルにあんな事をしたんだ?』  
『あ、あれは正当防衛だ。いきなりオーダイルの馬鹿が…』  
『…もういい。お前はオーダイルに近づくな。分かったな?』  
誰が近寄るものか、と返事をする。  
ふと、彼の方を見る。  
俺と話をしているにも関わらず、彼の目に俺は映っていない。  
彼はオーダイルがいつも休んでいる池の方をただ、見続けていた…。  
 
 
「やっぱり、俺を見てはくれないんだな…。」  
オーダイルの動きが止まる。  
想いを放ち終え、萎えた逸物を抜くと、彼は俺の前に立った。  
「…。」  
俺はオーダイルの身体を見た。  
身体に着いた幾つもの治りかけの傷跡が生々しい、が…  
この傷跡の形は…  
「…この傷か?…ジュカインにやられたんだ。『もう、リザードンの事は諦めろ』だとよ。」  
その言葉が俺の為のものだったら、どんなに良かっただろうか。  
しかし、実際はジュカインがオーダイルを欲する為に出した言葉。  
…どうして俺たちはこんな事になってしまったのだろうか。  
 
 
オーダイルに襲われて数日。  
流石に異常を察知したのか、育て屋の主人はオーダイルを別の区画に移動させた。  
襲われた時の体の傷はすっかり回復したものの、  
心の傷は癒されることは無い。  
 
 
きぃ、と入り口が開く音が聞こえる。  
「あ…ジュカイン…」  
ジュカインは辺りを見回し…軽く舌打ちをする。  
「今回はあいつが連れていかれたのか…」  
彼は木蔭の草むらに腰掛ける。  
俺は彼の隣に立った。  
「き、今日はいい天気だな。実は俺が日本晴れで…」  
「…暑い。」  
いつものように素っ気無い態度。  
「…ジュカイン、俺…」  
「…失せろ。」  
「俺…お前の事が…」  
「…聞こえなかったのか?さっさと失せろ。」  
構わず言葉を続ける。  
「ジュカイン、お前が好きだ。」  
「俺はお前が嫌いだ。」  
「っ…!!」  
 
予想していた言葉。  
それなのに、実際に言われると、もう何も言えなくなってしまった。  
 
------------------  
 
「ジュカイン、お前が好きだ。」  
「俺はお前が嫌いだ。」  
俺の放った言葉に、リザードンは黙り込む。  
俺は更に追い討ちをかける。  
「もう、知っているんだろう?  
俺がオーダイルを好きな事を。  
…そしてオーダイルがお前を好きな事を。」  
…そう、オーダイルはこいつを愛している。  
俺ではなく、こいつを。  
 
こいつさえ居なければ、オーダイルは瀕死になる程の怪我をしなかったのだ。  
こいつさえ居なければ、オーダイルとずっと二人きりで居られるのだ。  
こいつさえ居なければ、オーダイルは俺を愛していた筈なのだ。  
こいつさえ居なければ…  
こいつさえ…  
 
-------------------  
 
「…リザードン」  
低く冷たいジュカインの声に、俺は顔を上げる。  
「…?」  
ジュカインがゆっくりと俺に歩み寄る。  
「本当に俺の事を想っているのなら…」  
「…。」  
 
「死ね。」  
 
瞬間、ジュカインの刃が俺に襲い掛かる。  
回避が間に合わず、腕で攻撃を防ぐ。  
「ぐぅっ…!?」  
刃が腕の肉を抉り、焼け付くような痛みが走る。  
ジュカインは周囲の岩石を尻尾で俺の方へ弾き飛ばし、俺の身動きを封じ込める。  
続けて二回目の辻斬り。  
背後から翼の薄膜が切り裂かれる。  
「ぐっ、や、止めろっ!」  
しかし、ジュカインは攻撃を止める様子は無い。  
そして三撃目。  
正面から…来る!  
カウンターの構えを…いや、ダメだ!  
ジュカインを攻撃するなんて…!  
「うぐっ…!?」  
腹部が切り裂かれる。  
俺は地面に膝をついた。  
 
「これで…最期だ。」  
ジュカインはゆっくりと刃を振り上げる。  
もう…最期なのか…。  
結局、ジュカインには認められないままだったな…。  
俺はグッと目を閉じる。  
 
…ごりっ、と鈍い音。  
痛みは…感じない。  
続けて、どさり、と何かが崩れ落ちる音。  
俺は恐る恐る目を開いた。  
ジュカインが地面に横たわり、オーダイルがその後ろに立っている。  
…口を真紅に染めて。  
「オーダイル…お前…どうして…」  
「お前が心配で…逃げ出してきたんだ。…立てるか?」  
 
----------------------  
 
「オーダイル…お前…どうして…」  
リザードンが驚いた表情でこちらを見ている。  
「お前が心配で…逃げ出してきたんだ。…立てるか?」  
俺が差し出した手をつかみ、リザードンは立ちあがる。  
…手遅れになる前に間に合って良かった。  
振返ると、ジュカインが首元から血を流しながら、よろよろと立ち上がろうとしているのが見える。  
ちっ、急所を噛み砕いたつもりだったが外していたか…。  
「くっ…邪魔をするな…っ!」  
ジュカインがこちらに飛び掛かって来る。  
俺はジュカインをギッと睨みつける。  
「よくも…俺のリザードンをここまで…やってくれたな…!?」  
俺は怒りに身をまかせ、冷気を込めた拳でジュカインに殴りかかった。  
「…っ!?」  
…ジュカインは回避が間に合わず、大きく弾き飛ばされる。  
「ぐはっ…!!…くっ!」  
「ふん、まだまだ行くぜ!」  
素早い動きでジュカインを翻弄し、爪で切り裂く。  
…回避不可能だろう。  
…予め、竜の舞で攻撃や素早さを上げておいたのだ。  
「ぐぁっ…!?」  
ジュカインは攻撃を受けると、地面に倒れた。  
「トドメだ!くたばれぇっ!」  
俺は最期の一撃をジュカインに…  
 
瞬間、周囲が光に包まれる。  
…なっ…ソーラービーム…だと…!?  
ジュカインは既に意識を失っている。  
放ったのはジュカインではない…となると…  
「オーダイル…もう…やめてくれ…ジュカインを…傷つけ…ないで……」  
どさり、と、背後でリザードンが倒れる。  
馬鹿か…そんな事で…打つか…?  
もう、戦う力なんて…残って無かったんだろ…?  
無理しやがって…。  
それ程にジュカインの事を…想っているのか…?  
…俺の意識は次第に薄れて行った。  
 
 
 
 
俺達が互いに殺し合った、あの後…  
慌てて駆けつけた俺達の主人がポケモンセンターに届けてくれたお陰で三匹とも一命をとりとめたらしい。  
主人は俺達が度々傷付け合う事を気に病み、  
とうとう家から出なくなってしまった。  
…いつまでも主人に懐かない俺達が悪いのかもしれないが…そんな事はどうだっていい。  
 
主人が出かけなくなった事により、俺達3匹は主人の友人のトレーナーの名義でそれぞれ育て屋に預けられる事になった。  
お陰で相部屋ではなくなったが、同じ敷地内である為、育て屋の目を盗んで会いにいく事はできる。  
…だが、あいつに会ったとして俺はどうすれば良いんだ…?  
…何も思いつかない。  
 
「オーダイル…」  
あいつとは物心付いた頃からの仲間だった。  
その頃は俺はキモリで、オーダイルもワニノコで…  
…リザードンもヒトカゲだったな。  
あの頃は恋愛感情は無く、3匹でポケスロンのチームを組まされたりしたっけ…。  
意識をし始めたのは…確か皆が進化した頃だったな…。  
 
回想にふけっていると、窓から吹き込んだ涼しい風に身を震わせた。  
気付くと外はすっかり暗くなっている。  
…少し様子を見て来るか。  
俺は部屋を出て、オーダイルの部屋の方へ向かった。  
 
---------------------------  
 
俺は彼にどう謝ろうか、1人で必死に自室で悩んでいた。  
ああでもない、こうでもない…と考えているうちに、すっかり日が暮れてしまった。  
 
「リザードン…許してくれ…」  
…いや、これではダメだ!  
リザードンはジュカインを殺そうとした俺をこの程度では許さ無い…。  
でも、ああしないとリザードンがやられてたから仕方無いし…。  
でもリザードンは自分を犠牲にしてまでジュカインを…あぁっ、くそっ!!  
 
リザードンにジュカインを諦めさせるには、ジュカインをどうにかしなければならない。  
ジュカインを傷つけるとリザードンには嫌われる。  
しかも、ジュカインは俺の事を求めている。  
…リザードンを殺そうとする程に。  
 
…リザードンが俺を受け入れるようにするには…  
 
リザードンを守る為には…  
 
俺も自分自身を犠牲に…?  
 
…。  
 
…何だ、こんな簡単な事だったのか…。  
 
 
 
…部屋の外に何者かの気配を感じる。  
「…ジュカインだろ?入ってこいよ。」  
「っ!?」  
気づかれないとでも思っていたのだろうか。  
興奮で荒くなった息が聴こえて居たのだが…。  
きぃ、と戸が開き、ジュカインが部屋に入って来る。  
「オーダイル…」  
入り口の所からこちらの様子をうかがっている。  
「ジュカイン、もっと近くに来いよ、…もう怒ってないから…。」  
「…。」  
 
戸惑いながらも、ジュカインは寝床の側に来る。  
俺は仰向けになり、目を閉じた。  
「…好きにしろよ、ジュカイン。」  
「…どういうつもりだ?」  
「…後で話す。今は…気が済むまで…やってくれ。」  
「…分かった。」  
 
ゆっくりと身体に掛かる重量。  
伝わる彼の体温。  
絡み合う指と指。  
首筋をなぞる湿った生暖かい感触。  
口を押し開く彼の舌。  
甘い、とろけるような口づけ。  
身体を愛撫する彼の手。  
胸…腹…下腹部へ。  
思わず漏れる喘ぎ声。  
孔に侵入する彼の指。  
俺の物が次第に大きくなり、彼の指に触れる。  
先走りに濡れ、糸を引く太い肉棒…。  
「…じゃぁ、入れるぞ…」  
「…あぁ。」  
指が抜かれ、代わりに侵入する彼の大きな熱い物。  
今迄にも無理に何度か挿れられている為、痛みは無かった。  
彼は俺の物を握り、ゆっくりと扱く。  
「オーダイル…、お前が…好きだ…。」  
「あぁ…。」  
「…そろそろ…動くぞ…?」  
ジュカインは俺の両脚を脇に抱えて腰を動かし始める。  
俺の巨根に負けず劣らずの彼の物が、俺の中を往復する。  
脳天まで突き上げられ…  
内臓ごと引きずり出されるような感覚…  
…その繰り返し。  
彼の腹に俺の物が擦れ、先走りで濡れていく。  
 
暫くして、彼の動きが不規則になってくる。  
…俺も…限界だな…  
「…オーダイル…すまねぇ…もう…イ…イく…っ!」  
「くっ…俺も…一緒に…っ!!」  
俺は我慢出来ず、彼の頭を掴んで俺の物を咥えさせる。  
ードビュッ!ビュッ!  
俺が彼の口内に熱を放つと同時に、彼も俺の中で果てる。  
…ゴクリ、と彼は俺の精液を飲み干すと、身体を俺に重ねた。  
 
暫しの余韻の後、ジュカインが俺に乗ったまま話しかけてくる。  
「…オーダイル、そろそろ話してくれるか?」  
「…あぁ。ジュカイン、…お前に頼みがある。」  
「…交換条件って訳か…?」  
 
「…リザードンに…抱かれてやってくれ。」  
ー続くー  
 

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