ちゃぽっ…  
(ああ…!)  
水が体に染みわたる。  
水タイプのポケモンとして生まれ、周りが水で囲まれているのが当たり前だった毎日。  
こんなにも水を有り難いと思ったのは初めてだった。  
カラカラに乾いていたブイゼルの体に潤いが戻っていく。  
川面に漂ううちに、しつこく残っていた痺れも徐々に洗い流されていった。  
 
ビークインに呪いをかけられ、オチンチンから常に甘い蜜の香りが漂う体になってしまった。  
しかも、勃起してしまうとその先端から先走り液に代わって甘い蜜が滴る。  
甘いものが大好きなブイゼルは、当初その呪いを天の恵みとばかりに喜んだが、  
蜜を求めて数々のポケモンが集まってきて、ついには強制的に蜜を奪われる事態に至って、  
やっとその呪いの恐ろしさに気がついたのだった。  
 
甘い蜜を求めるポケモン達が、ブイゼルの体調など気遣ってくれるわけもない。  
いくら疲れていようが、マヒしていようが、オチンチンから出るその甘い蜜を求めてくる。  
いや、マヒしていれば逆に、これ幸いとばかりに襲い掛かってくるに違いないのだ。  
(このままじゃあ体がもたない…!)  
プラスルとマイナンという悪魔のようなコンビに犯し尽くされ、  
マヒした体を引きずりながらブイゼルが逃げ込んだのは、自分の住処とも言える川の中だった。  
水の中なら森のポケモン達は入ってこれない。  
甘い蜜の香りだって、陸上と違いそんなには拡散しないだろう。  
そして、その考えはとりあえずは正解のようだった。  
 
首の浮き輪を膨らませ、顔だけぷかぷかと水面に浮かせて、流れにまかせて川を下っていく。  
辺りはもうすっかり暗くなり、夜空に星が煌いている。  
ゆっくりとではあるが、水に浸かっていることで体力も回復してきていた。  
時折恐々と水の中を覗いてみるが、  
数体のコイキングやトサキント達が泳いでいるたけで、  
他のポケモン達がブイゼルの甘い蜜を狙っている様子はなかった。  
(よかった…。やっぱり、水の中にいる限りは大丈夫だ)  
ビークインの呪いも、もしかしたら水タイプを想定したものではなかったのかもしれない。  
張り詰めていた緊張の糸をゆっくりとほぐしながら、ブイゼルは水面を漂っていた。  
 
最初にその違和感に気付いたのは、  
川が下流に差し掛かり、流れがかなり緩やかになってきた頃だった。  
ぬるぅっ…  
「…?」  
何か気配がする。  
今確かに、自分の股のあたりを何かが通っていったような感触があった。  
(まさか…!)  
また何かが襲いかかってきたのか。  
緊張してざぶっと水の中にもぐり込み、注意深く周囲を見渡すが、辺りにポケモンの姿はない。  
(気のせいかな?)  
しっぽをプロペラのように回転させて方向を変え、前後左右上下くまなく見てみても何もない。  
いや、何もなさすぎる。  
さっきまでは見えていた他のポケモン達が、全くいない。  
おかしい。何かある。  
そう思って身構えた瞬間、  
ぬるぅぅっ〜…  
「っ!!」  
再び、股間を何かぬめっとしたものが通り抜けていくのをブイゼルは感じた。  
 
「何…?誰なの!?」  
もしかして…オバケ…?  
不可解な感覚に怯えるブイゼルの耳元で、陽気な高い声が響いた。  
「あはははっ、オチンチン縮みあがっちゃったねぇ」  
「ひっ!!」  
びっくりして振り返ると、今までそこには確かに何もなかったというのに、  
突如水中に浮かぶようにして、シャワーズの顔が現れていた。  
――顔だけが。  
「う、わぁぁっ!!オバケ、オバケぇっ!」  
地上なら確実に目に涙が浮かぶのが見えていただろう。  
それを見た瞬間、ブイゼルはわたわたと手足をかいて逃げようとするが、  
どういうわけか全く体が進んでいかない。  
ぬるっとした粘液状のものに体全体が包まれていた。  
 
「失礼しちゃうなぁ。勝手に縄張りに入ってきた挙句、オバケ呼ばわりなんて」  
体の自由の効かないブイゼルの正面に回り込むように、シャワーズの顔がすーっと平行移動してくる。  
よく見るとその首から下の部分は、消えるようにして周囲と同化していた。  
まるで陽炎の中に溶けていくように…  
(…溶ける?そうか!)  
ブイゼルはやっと、自分の自由を奪っているものの正体を理解した。  
シャワーズの“とける”だ。  
「やっと気付いたみたいだね。それは溶けてる僕の体だよ。  
それにしてもキミ、いい匂いさせてるねぇ…。  
こうしてキミを取り巻いてみると、はっきり分かるよ。  
キミのオチンチンから甘い蜜の香りがする。水の中でも落ちないんだねぇ。どうしたの?それ」  
「……」  
言えない。ビークインに呪いをかけられたなんて。  
それを言ったが最後、このシャワーズが襲いかかってこないという保証はないのだ。  
「ゴメン、シャワーズ。キミの縄張りだって知らなかったんだ。すぐ出ていくから」  
答える代りにそう言って、すっと泳ぎだそうとするブイゼルだったが、  
シャワーズの溶けた体がそれを許さなかった。  
「っ!」  
網の目のように張りめぐらされたその体に、あっさりと取り込まれてしまう。  
全く見えないだけに、厄介だった。  
「待ちなよ。そんなにつれなくしなくてもいいじゃないかぁ。  
実は僕ね、甘い蜜が大好きなんだ。どこかに持ってるんだろう?分けてくれないかな」  
「っ!!」  
顔が、あからさまに引き攣るのが自分でも分かった。  
危険だ。  
このシャワーズに、バレたらマズい。  
 
「ほぉら、その顔。持ってるんでしょ?ちょうだいよ。甘い蜜。  
僕はオスもメスも好きでねぇ。キミみたいな可愛い子は特に好きなんだぁ〜。  
素直にくれないと、悪戯しちゃうかもよ…?」  
ぬめっ、ぬめっ…  
(ヘンタイだ…)  
再び股間をぬめぬめとした感触が撫でてきたのを感じながら、ブイゼルは必死で逃げる方法を考えていた。  
 
「ほぉら、早く出しなよぉ。それとも、こういうのが好きなのかなぁ?  
体のわりにはおっきなオチンチンしてるもんねぇ〜」  
まずい。本当にまずい。  
“とける”を使ったシャワーズがこんなにも危険な相手だったとは。  
技を使って攻撃しようにも相手は見つからず、逃げようにも既に体は不可視の縄で縛られたかのように自由が利かない。  
そして…  
本当に甘い蜜の1つでも持っていれば渡して逃げることもできるかもしれないが、  
もちろんそんなもの持ってはいないのだ。  
あるのは、強烈に匂いだけを放ち続けるオチンチン…。  
「ほんとに、キミのオチンチンいい匂いするねぇ〜。剥いちゃったりなんかして」  
にゅぅっ…。  
「うぁっ!!」  
突然股間から伝わってきた感覚に、びくんっと腰を引くブイゼル。  
見ると幼茎にかぶさっていた皮が大きくずり下げられ、散々いじめられて赤くなりつつある粘膜が大きく露出していた。  
慌てて元に戻そうとするけど、目に見えない水のリングがきつくそこを固定しており、全く動かない。  
「いい声で鳴くなぁ。本気になっちゃいそうだ。甘い香りも強くなったねぇ」  
「お願い、シャワーズ、許して…」  
「だぁ〜めぇぇ〜」  
ダメなんだ。ほんとに。もしここで勃起してしまって、シャワーズに知られてしまったら、  
大変なことになってしまうんだ。  
勃起だけはしちゃダメなんだ…。  
(オチンチン立たないで…!)  
必死の思いで腰を引き、愛撫から身を守ろうとするブイゼルだったが、  
どんな体勢になっても、周囲を包む水が変わりなくそこを刺激する。  
その上…  
「ひゃぁうっ!!」  
「そんな風にオシリ突きだされちゃったら、ここも弄りたくなっちゃうじゃないかぁ〜」  
ブイゼルの恥ずかしいスボミからほんの少し染み込んだ水が、ぐぐっと内部で膨れ上がり、そこを自在に拡張した。  
 
「あれ?キミ、もしかして元々そういう趣味だったの?これはラッキーだなぁ」  
そこを拡げた瞬間の、シャワーズの言葉の意味が分からずきょとんとしてしまったブイゼルだったが、  
すぐに理解すると、猛烈に抵抗し始めた。  
「っ!ち、違うっ!それは…、さっき無理矢理…!」  
そう、シャワーズはその孔を広げた瞬間に、先ほど流し込まれていたマイナンの精液を感じ取っていたのだ。  
最悪だ。  
「なに?キミ、無理矢理が好きなの?」  
「違うぅ〜!!んぐっ!」  
言葉の抵抗も空しく、興奮の高まったシャワーズは本格的にブイゼルの全身を愛撫しはじめていた。  
 
「はぁっ!ふぁぁぁん、むぐぅっ…!」  
まるでアメーバに犯されているみたいだ。  
ねとっ、ぬるっ…っと体を粘膜がはいずり回り、自由を奪う。  
首元を、脇窩を、乳頭部を…  
皮膚が薄く敏感なところを重点的にぬめぬめと撫でられ、興奮が高められる。  
アメーバと違うところは…所々で、自由に感触を変えてくるところだ。  
口をこじ開けて侵入してきた異物は、突然内部で舌先の形状になり、内側を舐めまわしてきた。  
そして、オシリに侵入してきたそこは、一段と体温の高い硬い棒状になって、前後しはじめていた。  
 
「すごいだろぉ〜。こんなの、味わったことないだろ」  
耳元で囁くようにシャワーズの声がする。  
「僕たちシャワーズはね、体の遺伝子を組み替えることでその形状を変化させることができる。  
“とける”と併用することで、体中のありとあらゆる部分を自由に操ってキミを愛撫することができるんだよ〜」  
(こ、の…。どヘンタイ…!ふぁぁっ!)  
限界だった。  
こんな異常な愛撫を受けて、興奮せずにいられるポケモンがいたら見てみたいくらいだ。  
ひくっ…ひくっ…!  
「やっと立ってきたねぇ。すごい、エッチな大きさだねぇ〜。まだコドモのくせに」  
どこにいるか分からないけど、見ているのだろう。  
少しだけ休んだことで立派に硬さを取り戻した幼茎の周囲を、ぬるっ、ぬちゅっ…と淫猥な刺激が襲う。  
(舐められてる…)  
その感触から、ブイゼルは確信した。  
バレてしまったことを。  
「やっぱりかぁ。オチンチンから甘い蜜が出てるよ。キミ、ビークインに呪いをかけられちゃったんだろう。  
聞いたことあるよ。体から甘い蜜が出るようになる呪いのこと。  
まさか本当にあるとはねぇ。すっごく美味しい、甘い蜜の味がするじゃないかぁぁ〜」  
襲ってきたのがシャワーズでなかったなら、  
直接口をつけて味あわない限り分からなかったかもしれない。  
いや、それ以前に蜜の香りを水の中で強く感じることはなかっただろう。  
しかし、周囲の水と同化しているシャワーズは、その味も香りも原液のまま感じ取っていた。  
 
「知ってた…の?呪いのこと…」  
「ふふふ、まさか本当にそうだとは思わなかったけどね。  
大好きな甘い蜜と、エッチな体をした可愛い男の子が一緒に手に入るなんて。  
まさにカモネギが鍋を背負ってってやつだねぇ。お互い楽しもうよ」  
「いやっ!あっ!ふぁぁぁっ…!」  
さっきまでのがシャワーズの本気の愛撫だと思っていた。  
でも、それはひどい思い違いだった。  
拒絶の言葉を吐き終わる暇もなく、一瞬にしてそれを体感した。  
 
より辱めを感じさせるように、両手足首に水の拘束具がかかり、体をぐんと引き伸ばされる。  
大きく股間を広げさせられ、隠すこともできずに硬く伸びたオチンチンを晒されると、  
その方が興奮すると思ったのか、再びそこにシャワーズの顔が出てきて、  
ちゅぷぅぅ〜っという音を水の中に響かせながら、剥き上がった幼茎を咥え込んだ。  
そして同時に、全身をぬめぬめと刺激していた愛撫の感覚が、劇的に変化を遂げる。  
「っ!!むぐっ、んぐうぅぅっ!!」  
ぬめぬめと粘液で舐めるようだったその表面が、  
ぐちゅぐちゅとした絨毛状になり、全身の皮膚を探索するように蠢く。  
快感でヒクリと反応する筋繊維一本一本の動きすら感じ取り、着実に性感帯を開発していく。  
「すごいだろぉ。コレ」  
その口はブイゼルのものをしっかりと吸いこんでいるはずなのに、  
確かに耳元でシャワーズの声が聞こえた…。  
 
「うーん。ほんとにすごいねぇ。甘い蜜がドクドク出てくるよぉ」  
「あうう…」  
オチンチンはただくわえられているだけなのに、全身を絨毛で撫でまわす刺激が気持ち良すぎて、  
性器からの分泌感がとどまる様子もなく続いていく。  
その蜜を体内に導きながら、シャワーズの声が次第に酔ったような調子になってきた。  
 
「さっきの続きだけどさぁ。遺伝子を組み替えれるってやつね。  
感覚器官も例外じゃないんだ。  
普通の生き物は舌で味覚を感じ、鼻粘膜で嗅覚を感じ、触覚が発達した性器で快感を感じる。  
僕達はね、それすらも操ることができる。  
つまり…。今キミの可愛いオチンチンをぐちゅぐちゅに刺激している粘膜で、  
オチンチンの気持ちよさも、甘い蜜の味も、香りも、  
ぜぇぇ〜〜んぶ同時に、余すところなく味わえちゃうんだなぁぁ〜」  
「うっく、ううっ、くぅぅっ…!」  
(このっ!どヘンタイ!)  
吐き気を催すような言葉だった。  
嫌悪感が全身を包む。  
しかし、それを覆い尽くして余りあるほどの快感がブイゼルを飲み込み、絶頂へと押し上げていった…。  
 
「ここの味もしっかり感じてあげるからねぇ〜」  
「ひぃうっ!あああ…!オシリ、いやだぁ…ふ、太いよぉ…むぐっ!」  
これが本当のシャワーズの性器の形なのだろう。  
大きく膨れ上がった肉茎が、ぐりっ、ぐりぃっとねじ込まれていく。  
先ほど味わったマイナンのものよりも、ずっと太くて、硬い。  
そして同時に、満足に閉められないようにされた口の中にまで、  
全く同じ形状のモノが挿入され、前後運動を開始した。  
「おいしいよ。キミの体、すっごくイイよぉ〜。  
もうイっちゃいそうなんだろ?もうちょっとだけがんばりなよ。僕の液もあげるからぁ」  
「んぐぅぅ…、むぐっ、んぐっ…!」  
(もう、ダメ…!)  
全く同じオスのペニスを口とオシリの両方に突き込まれ、  
それが同時にビクビクと震えつつ、体液を送り込んでくるのを感じながら、  
ブイゼルは絶頂を迎え、特濃の甘い蜜を絞り出していた…。  
 
「キミはねぇ、もう甘い蜜を吸われるためだけの存在になっちゃったんだ。  
――慰みモノってやつだよ。  
僕の愛撫、気持ちよかったろう?  
僕は水の中のどこにでもいる。また味わいたかったら…水に入って僕を呼ぶといいよ」  
あの後も何度も愛撫を続けられ、またもや全てを吸いつくされ…。  
ただ呆然とした表情を浮かべて川を流れていくブイゼルの耳元に  
シャワーズのねっとりとした声が絡みつき、消えていった。  
 
(水から…あがらないと…)  
水タイプである自分にとって住処であるはずの水の中。  
しかしそこはもはや、安全地帯ではなかった。  
安全どころか、水の中に入るということは、あのシャワーズに進んで抱かれることを意味する。  
(どこに…一体どこに行けばいいんだ…)  
長時間の拘束を受け、疲れ切ってしまった体を引きずるようにして川から出ると、  
ブイゼルはついに行くあてもなく彷徨い歩きはじめた。  
 
下流に差し掛かっていた川から上がると、そこはすでに森を抜けており、木々もまばらになっていた。  
東の空からはうっすらと太陽が射し始めている。  
一晩中、シャワーズに犯され続けていたことになる。  
そのことを知って、体にどっと疲れが押し寄せてきた。  
そして、  
ふわぁ…  
(ああ、まただよ…)  
水から上がりぶるっと体を震わせて毛皮についた水を弾くと、甘い蜜の香りが周囲を漂う。  
ふと、その香りが前より強くなった気がして自分のオチンチンを見ると…  
「うわっ、皮が…!」  
昨日から1日中愛撫を受け続け、酷使され続けたその幼いツボミは、  
勃起してもないのに皮がゆるやかに捲り上がり、  
少し赤く腫れた敏感な粘膜がにゅぅっと顔を出していた。  
その形もいつもよりずんぐりと太くなっているように見える。  
勃起してもないのに。エロすぎる。  
慌てて皮を前みたいにかぶせようとするけど、少しするとまたゆるゆると剥きあがってきた。  
そして、肉茎だけでなく陰嚢の方も、散々絞り尽くされ危険を感じ取ったかのように  
盛んに蜜の造成を行っているのか、少し熱っぽくなってぽってりと大きく垂れ下がっていた。  
歩いていても、自分の股間に重量感と違和感を感じる。  
自分の体が変化していっている。  
シャワーズの言うとおりの、慰みモノとして。  
認めたくはないけれど、事実だった。  
 
(これから…どうしよう…)  
重い体を支えて歩くのに疲れ、朝露の垂れる一本の木を背にして横になる。  
そうして体の動きを止めると、また股間からの匂いが周囲にこもり始める。  
何もしなくてもオチンチンが剥き上がってしまっているせいで、香りの濃度が更に濃くなっていた。  
朝日を見ながらじっと寝そべっていると、  
まるで鼻先に甘い蜜を置かれているかのように香りがどんどん濃くなっていって、  
何も食べてないお腹がぐぅ〜っと鳴った。  
(おなか…空いたなぁ…)  
体力を回復するためにも、木の実を食べに行きたいところだ。  
しかし、森の中に入るわけにはいかない。  
水の中で食べ物を探すこともできない。  
一体どうすればいいというのか。  
疲れ切った心と体でぼうっと遠くを見つめると、その視界の端に花畑が見えた。  
(ああ…もーボク天に召されちゃうのかなぁ…ん…?)  
一瞬幻覚でも見えたのかと思ったけど、違う。  
綺麗に区分けされた大地と、そこに咲く色とりどりの花々が、緩やかに風になびいているのが確かに見える。  
そしてその脇には、明らかに人工的に作られた家がぽつりと建っていた。  
あれは――人間の畑だ。  
食べ物が、あるかもしれない。  
わずかな希望を見つけ出し、ブイゼルは重い体を引きずり起こして歩を進めていった。  
 
「うっわぁぁぁ〜!!」  
1歩、また1歩と歩を進める毎に鮮明になっていく畑の様子。  
そこにあるものを見つけたブイゼルの足は徐々に速まっていき、ついには駆け出していた。  
あれは…、あの畑にたわわに実っている大きな実は、  
カイスの実だ。  
人間に管理され、森の中では望むべくもないほどまん丸に大きく育っている。  
朝露を表面に滴らせながら、何十個、何百個ものカイスの実がずらりと並ぶ景色は壮観だ。  
「わぁぁぁ〜い!いっただっきまぁぁ〜す!」  
畑の中にある一番大きなカイスの実を抱きつくようにして抱え込むと、  
ブイゼルはもの凄い勢いでそれを食べ尽くし始めた。  
しゃくっ!しゃくっ!  
内部に含まれる豊富な水分が、ひと噛みするごとに口から溢れる。  
木の実の中でも随一と言われるほどの甘さが喉を潤し、お腹を満たしていく。  
「お、おぉいしぃ〜!」  
さっきまで暗澹としていた気分が嘘のようだ。  
あまりの美味しさに大きな目をうるうると潤ませながら、ブイゼルは1つ、また1つと大ぶりのカイスの実を平らげていった。  
 
「あれ?雪?」  
とうとう3つ目の実を平らげてしまったところで、目の前にちら…ほら…と白い粉が降ってきているのに気がついた。  
今はまだ雪が降るような季節じゃないけど…。  
何だこれ?と思いつつ、腕に付着したその粉を払いのけようとして、  
自分の体が思い通りに動かなくなってきているのにやっと気がついた。  
(痺れ…粉…だ…!)  
ゆっくり、ゆっくりと痺れはじめた体を捻って上空を見ると、  
凶悪な目つきのアゲハントがこちらへと降りてこようとしていた…。  
 
「この…卑しい木の実泥棒が!」  
「ち、違うんだよぉ〜」  
飢え死にしそうだったんだ。  
そう言い訳しようとしたけど、盗み食いしてしまったことには変わりない。  
辺りにカイスの実の皮を散乱させ、お腹をぽんぽんに膨らませて違うと言っても、説得力の欠片もなかった。  
「このカイスの実はな、私と主人の人間とで受粉させ、時間をかけて育ててきた結晶だ!  
言わば私にとっては子供も同然だ!それを貴様…、無事に帰れると思うなよ!」  
「ご、ごめんな…さぁい…」  
鋭い眼光に射すくめられ、痺れて満足に動かない体を引きずりながら、  
ブイゼルはずりっずりっと後ずさりする。  
その体から強く漂う甘い蜜の香りに、アゲハントが気がつかないはずがなかった。  
 
「お前…、何だ、その匂いは?なぜそんなに甘い蜜の香りをさせている?」  
「あっ!」  
言わずもがなだった。  
慌てて丸出しになっていたオチンチンを手で隠そうとするブイゼルを見て、  
怒りで吊り上がっていたアゲハントの瞳が、にぃっと邪悪に歪む。  
「そうか…、お前がそうなのか。森で噂になっているぞ。ビークインに呪いをかけられたブイゼルがいると。  
どれ、味あわせてもらおうじゃないか。その体内から出てくる甘い蜜を」  
(もう…こんな所にまで知れ渡ってるなんて…)  
「ヤだ…イヤだ…!お願い…」  
ゆるゆると羽ばたきながら近寄ってくるアゲハント。  
必死で逃げようと身をよじるが、マヒしてしまった体は簡単には動かない。  
もうイヤだ。もうたくさんだ。  
無理矢理甘い蜜を接取されるのは。  
(もうお願いだから…ボクの体を好き勝手にしないでよ!)  
涙ながらに叫ぶブイゼルの懇願の声は、アゲハントには全く届いていないようだった。  
 
「ビークインの呪い――か。同じ虫タイプとして、よく知っているぞ。どんなものかは。  
ビークインが初めての相手に与えるために、長い年月をかけて己の秘所で熟成させる濃厚な甘い蜜、  
それを無理矢理奪われた時にかけると言われている。  
お前、ビークインに呪いをかけられて然るべき行いをしたのだろう」  
「うう……」  
言い訳のしようがない。  
黙り込んでしまったブイゼルに、アゲハントはまるで判決文を読み渡す裁判官のように、  
冷たい断罪の言葉を口にした。  
「因果応報…という言葉を知っているか?  
ビークインの呪いは、己に浴びせられた羞恥や苦痛を、そっくりそのまま相手に味あわせるためにあると言われている。  
まさに執念深い女王に相応しい呪いだな。  
今から己の体に降りかかる痛みも、苦しみも、相応の報いと思って受け取るがいい」  
 
アゲハントの言う通りだ。  
無理矢理甘い蜜を求められ、それが性的羞恥心を伴う行為であるというのに  
一向にお構いなく犯され、蜜を奪われる。  
今ビークインの呪いによってブイゼルの身に降りかかっている出来事は、  
全てビークインが実際に味わったことなのだ。  
(でも…、でも…こんなのって、ひどいよ…)  
「ううっ、ひくっ、ヤだよぉ、許してよぉ…」  
ぽろ…ぽろ…と、ついに瞳から大粒の涙をこぼし始めたブイゼルの前で、  
アゲハントの細長い吸収管が甘い蜜を求めてオチンチンを弄り始めていた。  
 
「本来なら、ビークインの呪いをかけられたポケモンから特濃の甘い蜜を絞り出すには  
性的興奮を絶頂まで高めなければならない。それがまた呪いをかけられた相手への辱めとなるのだが…。  
我が種族には、そのようなことをせずとも甘い蜜を摂取する手段がある」  
しゅる…しゅる…と音を立てて、その細長い吸引管がしなる。  
「動くなよ…。抵抗すると余計に苦しむだけだ」  
「ひっ!!ま、まさかっ、まさか…!ひぅっ!」  
にゅるっ…!ぐぐぐぐぅっ!ごりっ!  
「ひぃっ!!ふぁぁぁっ!や、やめっ!ああああっ!!」  
既に皮が剥き上がり、無防備な鈴口を露出していた先端から  
苦もなく鞭のようにしなる吸収管が挿しこまれ、奥へ奥へと進んでいく。  
マイナンやシャワーズに無理矢理オシリを犯された時とは全く質の違う衝撃が、ブイゼルを貫いた。  
 
「ふむ…ここ、か」  
「ひゃぁっ!あ…あ…」  
ブイゼルのオチンチンの奥底の、オシリに近いくらいのところで、  
くにっ、くにっとアゲハントの管が蠢くのが分かる。  
ぞぞぞぞっと背筋を虫が這うような感覚がせり上がってくる。  
直接内臓を弄られているような、耐えがたいその感覚に、ブイゼルの腰がガクガクと震えた。  
そして…  
「では――いただくとするか」  
ちゅっ、ちゅくぅぅ〜!きゅぅぅぅ〜!!  
「あっ、ああああっ!!いやだぁぁぁ…!!」  
吸われていく。自分の全てが。奥底から。  
体中に吸引音が反響し、睾丸がその内部に必死でため込んでいだ濃厚な蜜が、あっさりと吸い上げられていく。  
「これはまた…なんという上等な甘い蜜であることよ…」  
(気が…狂っちゃう…)  
直接脳の中に虫のさざめきを叩き込まれたかのように、ざわっとする感触が流れ込んできている。  
もうダメだ。こんなの、耐えられない。  
あと数秒この責め苦が続いていたならば、あるいは本当にブイゼルの精神は雪崩をうって崩壊していたかもしれない。  
しかしその瞬間、ブイゼルにとっては救いの声が辺りに響いた。  
 
「アゲハント!何してるんだ!」  
人間の、青年の声。  
その声にびくっと反応すると、アゲハントはしゅるっとブイゼルの中に挿入していた吸収管を元に戻し、  
再び中空へと舞い上がった。  
そして、青年の方を振り向くブイゼルの前で、  
手の中にあるモンスターボールから赤い光がアゲハントに向かって伸び、その姿が飲み込まれて消えていく。  
(助かった…の?)  
いや、まだ分からない。  
ゆっくりこちらに近寄ってくる人間は、このアゲハントのトレーナーであり、畑の持ち主に違いないのだ。  
依然危機が去ったわけではない。  
(逃げないと…!)  
マヒした体を必死で持ち上げ、立ちあがろうともがくブイゼル。  
しかし、全く足が言うことを聞かなかった。  
腰が抜けてしまっている。  
「っ!」  
自由の利かない体をなんとかよじって動こうとするブイゼルに向かって、  
ざっ、ざっと足音を立てながら人間が近づいてくる。  
畑を荒らした木の実泥棒に、お仕置きをするつもりなんだ…。  
その1歩ごとに、自分の顔から血の気が失せていくような感じがする。  
もう、絶望的だ。  
「うわ…あ…うっうっ…」  
泣いちゃダメだと思うのに、もう心も体も疲れ切っていて、自然と涙がぽろぽろと零れ落ちていた。  
 
(もうこのままここからいなくなっちゃいたい。全部夢だったらどんなによかったか…)  
そんなことを思いながらぐっと目を閉じる。  
奇跡を夢見て再び潤む瞳を開いてみても、何一つ変わらないままの現実がそこにあった。  
ついにブイゼルの正面までやってきた人間は、かがみ込んできて…  
「ご、ごめんなさいっ…!」  
差し出された手がまるで灼熱の鉄の棒であるかのように、ビクッと反応して身を引くブイゼルに、  
その人間は優しく微笑んできた。  
「ふふっ、可愛らしい木の実泥棒クンだなぁ」  
 
(えっ?)  
「ゴメンな、うちのアゲハントは気性が荒くて。お腹空いてたのかい?  
でも、珍しいね、こんな所まで野生のブイゼルが来るなんて」  
人間の口調は優しく、これ以上ないほど穏やかだ。  
とても大事にしていた畑を荒らされた後とは思えない。  
「怒らない…の?」  
怯えた目で聞くブイゼルに、人間はまるで悪戯をした子供を諭すように言葉をかけた。  
「そりゃあ、ちょっとは怒るけどさ。キミ、その様子だとアゲハントに散々やられちゃったんだろ?  
これに懲りて、もう2度と泥棒なんてしちゃダメだぞ」  
「……」  
 
不思議そうに見つめるブイゼルの目の前で、  
青年は簡単な応急手当てをしてブイゼルのマヒを治してくれると、  
「森にお帰り」  
と優しく放してくれたのだった。  
 
(人間…)  
ブイゼルの中で、今まで考えたこともなかった思いが浮かび上がってきていた。  
ビークインに呪いをかけられてからというもの、一時も気の休まることなくポケモン達に襲われ続けた。  
みんな、ブイゼルのオチンチンから出る甘い蜜を目の色変えて欲しがり、吸いつくしてきた。  
でも、あの人間だけは、そんなことなかった。  
そうだ。  
人間は甘い蜜を欲しがったりしない。襲ってきたりはしない。  
人間に、ゲットしてもらえば…  
さっきモンスターボールに吸い込まれていったアゲハントの姿がよみがえる。  
あの中なら。モンスターボールの中なら、安全だ。  
ブイゼルは、暗闇の中で一筋の光明を見つけた気がした。  
 
野生で暮らしている時には、考えたこともなかった。  
人間にゲットされるなど。  
人間に飼われ、人間に尽くすために生きているポケモン達のことを軽蔑してもいた。  
しかし今、自分を助けてくれる存在は人間しかないのだとブイゼルは悟った。  
(ボクの、トレーナーになってくれる人間を探すんだ)  
 
応急手当てを受けたとはいえ、体はボロボロだ。  
昨日から一睡もできず、木の実を食べて少し回復したかに思えた体力も、  
アゲハントに体の芯から吸い取られてしまった。  
それでも、歩かないと。  
早く自分をゲットしてくれるトレーナーを見つけないと。  
またどんなポケモンに襲われるか分からない。  
 
「誰か…ボクをゲットして下さい…」  
ポケモンに襲われるのが怖くて、慣れない人間用の道を歩き、体は土埃で汚れていく。  
洗い流そうにも、水の中に入る勇気はない。  
ボロボロになりながら、オチンチンは真っ赤に剥きあがったままで、  
少しでも立ち止まると周囲に甘い香りが立ち込める。  
そんな状態で時折見かける人間のトレーナーに声をかけても、みな避けていくばかりだった。  
(ダメなのかな、こんなボクをゲットしてくれる人間なんて、いないのかな…)  
絶望的気分に浸りかけたその時、  
ふ…と目の前に男が立ちはだかった。  
「あ…、あの、ボクを…」  
「ゲット、してほしいのか?そんなみすぼらしいなりして」  
「は、はい…。ボク、なんでもするから。体から甘い蜜だって、出せるんです…」  
もうプライドも何もなかった。  
人間にゲットしてもらうために、体の全てをさらけ出していた。  
その場で蜜を出してみろと言われたら、すぐにでも出そうとしたに違いなかった。  
「そうか、いいだろう」  
短くそう言った男の手から放たれたモンスターボールに、ブイゼルは心から安心した表情で吸い込まれていった。  
 
◆  
「ん…く、はぁっ…」  
「お前は可愛いな、ブイゼル」  
長い口腔内の愛撫が終わり、人間の愛撫は今度は首元から胸元へと降りていく。  
この人間の愛撫はいつもこうだ。  
何十分も、何時間もかけてブイゼルの体全体を撫でまわし、ゆっくり、ゆっくりと刺激していく。  
絶頂を迎えさせないままに。  
そうしながら、ブイゼルの様子をじっくりと観察して興奮を高めているようなのだ。  
その間中、ブイゼルはじわじわとオチンチンの先端から甘い蜜を垂れ流すしかない。  
そこにはピチューがぴったりとしがみつき、一滴も漏らさないとばかりに  
ちゅうちゅうと音を立てながら吸い続けていた。  
 
人間の、興奮が高まり始めた性器を口で奉仕させられながら、  
今度は指でオシリを弄られ始める。  
「ずいぶん上手になったな、ブイゼル」  
「ん…、くむっ…」  
体中を刺激され、興奮が高まってきているものの、ブイゼルの瞳には決して喜びは浮かんでいない。  
そこにあるのは諦めと…恐れだった。  
この人間は自分に飽きてしまわないだろうか、  
捨てられて…、またあの襲われるのに怯える生活に戻ってしまわないだろうか。  
その恐怖故に、ブイゼルは必死に人間に奉仕する。  
自ら進んで人間の性器を己の体の中へと導き入れすらした。  
この生活が、苦しいものであっても、少しでも長く続くように祈るような気持ちで――。  
 
 
「ブイゼル、お前はちょっと目立ちすぎるな」  
「えっ!?」  
行為を終え、蜜の香りが色濃く漂う部屋の中で、男が話しかけてきた。  
(それってどういう…。もしかして、ボクが嫌いになっちゃった…?)  
「お前がいるだけで、野生のポケモンが香りにつられてどんどん寄ってくる。  
まあ、それで助かる時もあるが…。ヘタに草むらに入れない」  
「ごっ、ごめんなさい…」  
(やっぱり…、捨てられちゃうんだろうか…)  
不安で心をいっぱいにし、しっぽをしなっと垂れ下がらせながら謝るブイゼルに、  
人間は小さな布切れを差し出してきた。  
「これをいつも履いておくようにしろ」  
「…え?」  
大きな穴が1つと、小さな穴が2つついたその白い布は…  
「オムツだ」  
「…っ!!」  
悔しかった。涙が出るほど。  
でも、それを拒否することなど、自分には決してできないことが分かっていた。  
ただできるのは…  
「しっぽの出る穴を、あけて…下さい」  
そう言って、新たに1つ穴のあいたその布を、ゆるゆると身につけることだけだった。  
 
たった一度の過ちがもたらした、取り返しのつかない結果を呪いながら。  
 
 
 
終  
 
 

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