「一体何のつもりなんだ?」
「何が?」
今、ボクに起こっていることは明らかにおかしいことだ。ありえない。しかしこの空間にいるもう一人の人物はそう思っては
いない。けろっとした顔でこちらの問いにさらっと答えてきた。しかもニヤリとこちらをあざ笑う表情もつけてだ。
「だから、この状況はおかしいと言っているんだ。」
「あら、そお?あたくしは別に何とも思っていなくてよ。」
ああ、もうイライラする。普段から気が合わないし、やりにくい女性だと思っていたがここまでとは思っていなかった。第一
迷惑しているのはこっちだ。さっさと帰ってくれ。というかボクに何もせずボクの上からどいてくれ。頼むから。露骨に嫌な
顔をしてやるが、普段つけている仮面が邪魔でどうも彼女にイマイチ伝わらない。このときばかりは仮面なんかつけるんじゃ
なかったと後悔する。じゃあつけるなよとか言われそうだけれど、そうもいかない。ほら、キャラってものがあるじゃないか。
他の四天王の連中は忍者だったり上半身裸ウーハーだったりセレブ系名言女だったり露出狂チートマントだったりするじゃな
いか。ボクは地味だしトゥートゥーだし仮面つけるくらいしかないじゃないか。スーツって時点でドータクン眼鏡と被ってる
のだからしょうがないじゃないか。…おっと、そんなことはどうでもいい。とにかく彼女がボクに何もしなければ済むのだ。
今、ボクは不利な状況にある。私室のお気に入りの椅子に座っているわけだが、その膝の上に女性が乗っているのだ。しかも
こっちに身体を向けて。健全な男子諸君ならば理解できるだろう。これがすごく興ふ…いや不健全な状況だということがね。
しかもこっちにその気がないってことは女性に襲われてるってことだろ?これは男性として情けないだろ?しかも好みじゃな
いんだよ、ボクの。もっとこうエスパーポケモンのように静かで知性的でサーナイトのように可憐な娘がいいのだよボクは!
こんなところ四天王の誰かもしくはあのチートドラゴンチャンピオンに見られたら死ねるよ!いやもうホント自分でギガイン
パクト喰らって自殺するよいっそ。だってその女性って同じ四天王の彼女だよ?!悪タイプだよ?!エスパー大好きエスパー使い
のボクとの相性は最悪じゃないか。サイコキネシスが効かなかったときの絶望感は今でも忘れられない。
…いやそんなことはどうでもいいんだ。とにかく状況を回避しなくては。彼女にとってこれはヒマつぶしにしか過ぎないの
だ。そんなことごときでボクの幸せ家族計画を塗りつぶされてたまるかってもんだ。
「じゃあ聞くけど何でボクなんだ。相手ならたくさんいるだろうに。ましてやキミの様な美しい女性なら……」
心にも思ってない言葉を言う。真に美しいのはやはりエスパーポケモンでも屈指の美しさを誇るのサー(以下略)
「その言葉、そのままお返しするわ。だってワタルはロリコンだし、シバは堅物だし、ましてやキョウさんじゃ不倫になっ
ちゃうでしょ?アンズちゃんって言ったかしら、あたくし、かわいい女の子を泣かせたくないの。」
何だよそれ。目の前にいるトゥートゥー野郎は泣かせていいってか。やめてくれ。あとワタルはロリコンかどうかはまだ決ま
っていないぞ。ほぼクロに近いけどね。
「だから、わざわざ貴方を選んだのに。ちょっとは光栄に思いなさいな。」
うふふ、と邪悪な笑みを浮かべている(本人は悩殺☆カリンフラッシュ!のつもりだろう)彼女は一向に悪びれた様子もなく
ボクの仮面を外すか外さないかのところで弄んでいる。いい加減面倒になってきたのでこの辺でエスパーの力で思い知らせて
やろうと思う。こんなことにエスパーを使うのは心外だが致し方あるまい。ひれ伏せ!屈せよ!マッガーレ!ボクは渾身の力
を相手にぶつけた。…が、全然効いていない。これが噂に聞く「なん…だと…?!」だ。確かに念力を送ったはずなのに全く効
果が現れていない。ふっと部屋の隅に眼をやると、そこにはミカルゲが設置されていた。ナンテコッタイ!ネイティボクはジ
ーザスになんて祈ればいいんだい?!ミカルゲは悪タイプ、すなわちボクはこの部屋では形無しということじゃないか!ボクは
ひたすら絶望した。対戦でバンギラス十万ボルト持ちに当たった時並に絶望した。眼鏡と被るからエルレイドは持っていない。
あとウー!ハー!じゃないから筋力もあんまりない。見ての通り形無しだ。く、悔しい…!
(全く…ポケモンリーグってバトルの腕は一人前のクセに男としてはロクなやつがいないわね…)
カリンは目の前で勝手に頭でブツブツくだらないことを考えながらのた打ち回るイツキに冷たい視線を送った。ちょっとから
かいに来てやったら、本気にしてこれだ。膝の上に乗って挑発してやっただけでなんだと言うの?ヤラシイこと考えてるのは
貴方だけよ、と心の中でせせら笑ってやった。ただ、いつも冷静な彼が超能力を封じられてもたもたしているのが面白く、カ
リンとしてはもう少し暇つぶしを楽しみたかった。この様子じゃ、女性と恋愛すらしたことないんじゃないかしら?彼が持っ
ているポケモンは皆♀だ。彼曰く、理想の女性はエスパーポケモンのような女性らしい。恐らくめぐり合えていないのでポケ
モンにそれを重ねているのだろう。
(やだわ、色々からかうネタが沸いてきちゃうじゃない)
クスス、と笑ってカリンは次の攻めに入った。
「貴方、そういえばポケモン皆♀よね。もしかして女性を知らないから毎晩ポケモンで色々しているのではなくて?」
ピクリ、とイツキの眉毛が引きつった。怒ったらしい。
(フフフ、面白くなってきた)
それを見たカリンはさらに彼をいじめて見たくなった。そういえば、イツキの怒るとこ見たことないわね…案外面白いかも…
そしてそれを今度の四天王での話し合いの時にネタにしてやろう、とカリンは考えてほくそえんだ。それを話題にして取り乱
すのを見るのも一興だ。
「あら、なによムキになっちゃって。もしかして本当なの?」
――――冗談じゃない!!
今度ばかりはボクは本気で怒った。ボクがポケモンでそんな妄想をするだと?!いや確かにボクのトゥートゥーやサーナイトは
本気で可愛いしもうそいつらにならサイコキネシス100回されても平…ゲフンゲフン!いやいやボクのポケモンを汚すヤツ
は許さないよ?!変態仮面と言われようとそこは変態じゃないから。いやむしろ変態仮面でもないから!
「…いい加減にしてくれないか…?!……さもないと……!!」
「さもないと、なあに?ご自慢のエスパーは使えないんでしょ?シバみたいに筋肉もないんでしょう?だったらどうするとい
うのかしら?」
…くそ…相変わらず嫌な女だ。しかしボクは諦めない。こうなったら実力行使だ。袖に隠したモンスターボールをコッソリと
足元に落として、靴のかかとでスイッチを入れる。瞬く間に自慢のポケモンが飛び出す。ルージュラだ。
「……きゃ!!ちょっと、ちょっと何?!」
いきなり足元からポケモンが飛び出したのでカリンは思わず彼の膝から転げ落ち、お尻を打った。
「痛いじゃないの!…少しからかったぐらいで何を……!!」
彼女の口をルージュラがふさぐ。「あくまのキッス」だ。どうだい、ポケモンにブチュッと、しかもルージュラにやられる感
覚は!思い知ったかエスパーの力!!悪タイプのせいでスターミーのエスパータイプマジ邪魔wとか言われたヤツの気持ちがわ
かったか?!え?イツキとかシャドボ連発でざまあwwwとか、かみくだくマジありがとうございますwwwwwwwwwwwとか言いやがっ
た連中にも思い知らせてやりたいよ全く!
「……く……!…ひ…卑怯よ…こ…ん…な……」
そのままカリンは昏倒した。「あくまのキッス」は確実に相手を眠りへと誘う。
「そもそもミカルゲを出していたのは君だろう?これでおあいこだね。」
そう言ってボクは部屋の隅っこで、主人がやられてオロオロしているミカルゲをジロリと睨みつけ、ドータクンをボールから
出して命じる。
「のしかかり、だ。閉じ込めてしばらく動けなくしてやれ。」
ドータクンはうなずくとミカルゲを上からすっぽり包んで動かなくなった。ミカルゲの悲しそうな声が聞えるが気にしない。
こういうときは便利だなドータクン。手持ちに入れてよかったよ。ゴヨウ涙目wwwwwって散々言われたけど。
床に横たわるカリンをじっと見下してやる。先ほど「美しい」と言ったがそれは嘘じゃない。彼女は美人だ。中身が気に
食わないだけで。いつも胸を強調するような派手な黄色い服着ちゃって破廉恥極まりないな全く。胸元が見えそうだよ、け
しからんな全く。スラッと伸びた足に黄色のハイヒールとか挑発してるようにしか見えないぞまったry
ともかく彼女は当分起きないだろう。今のうちに部屋の外へ放り出すとしよう。この有様を誰かに見られたら厄介だ。さ
っきの状況より性質が悪い。そう考えながらそのまま彼女を抱き上げる。銀色のウェーブの髪の毛が手に当たる。さらさら
していていい香りがする。シャンプーはモモンの香りかなあこれ。抱き上げてやると、アングル的に胸元が開いたキャミソ
ールから谷間が覗いている。思わずボクは息を呑む。そりゃそうさ、ボクだって男なんだからさ。釘付けになるさ。そうい
えば彼女にはいつもかわかわれて、そればっかりだった。仕返しとかは思いついたことがなかった。一瞬脳裏に邪な考えが
よぎった。そうだよ、彼女も元々そういうつもりできたんだから(当のカリンはそういう気はなかったのだが)いいじゃな
いか。ボクだって女性経験が全くないわけじゃない。ただ、理想が高いから上手くいかなくて別れたり、それでもって運命
の人に出会えていないだけだ。…何だよその目は!本当だぞう!
……そういえば、ワタルはチョウジへ調査へ行くって言ってていないし、シバは修行、キョウさんは娘さんと久しぶりに出
かけてくるって言っていたよな……
イツキはだらん、と力なく抱きかかえられているカリンを見てニヤリと笑った。
なにかしら、身体がフワフワと浮いているような、そんな感じ。不安定で、でも何かに支えられているような……
「!!!」
カリンはハッとして目覚めた。そうだわ、あたくし、アイツをからかってたら返り討ちにあって…それから……って、身体
が宙に浮いているじゃないの。しかも動かないわ。一体何なのこれは。眼だけを泳がせると、あの憎たらしい小僧のトゥー
トゥー(ネイティオ)がいた。翼を広げて、眼をカッと開いて。どうやら彼女が念力を使ってあたくしを拘束しているみたい。
こんなことするなんて、悪趣味だわ。やっぱり普通じゃないわ。変態仮面よ。
「ポケモンを使ってボクの超能力を封じた人がよく言うよ。」
頭上から声がするイツキだ。声に出していないのに、わかるってことはアイツ、あたくしの心を読んでいるのね。腹正しい。
「どうだい?力を封じられて、その上念力で拘束される気分は。」
馬鹿馬鹿しいわ。答える気もしない。
「いいザマだよね、今までボクを散々コケにしてくれた罰ってやつだ。」
…そりゃ、あたくしも調子に乗り過ぎたことは認めるけど。だからってこれはあんまりだわ。早く解いて頂戴。貴方の望んだ
通り、自室へ帰るなりショッピングへ行くなりするわ。
「残念だけど、それは無理だね。それに、ボクも望んだことが変わったんだよ。」
それはどういう意味かしら。あたくしはただ……
「キミもこういうことを望んでいたんだろう?だったらむしろ嬉しいんじゃないのかな?」
……!!まさか彼……!!
そう、カリンにはからかい程度でその気はなかったのだが、彼女がミカルゲによってイツキの超能力を封じていたことが仇
となった。本来なら得心術でわかってしまうその悪戯心が、イツキには読めていなかった。カリンの「暇つぶし」を別の方の
…まあイヤらしい意味の方の「暇つぶし」だと思ったのだ。まあ健全な男子ならしょうがないと言えばしょうがないことであ
る。その辺はご理解いただきたい。
「ちょっと!あたくしは別にそういうつもりじゃ…!!」
「今さら何を言っているんだい?いつもボクを挑発してきてさ、ボクが何とも思わないとでも?」
別にそういう意味で挑発しているのではないわよ!とカリンは叫んだが、イツキは冷たく笑うだけだった。もうダメだコイツ
早く何とかしないと…しかし、いつも悪タイプに虐げられているのが逆転したテンションの上がったエスパータイプほど止め
られないものはない。まるで「きあいだま」を手に入れたフーディンの如し。
「さあ、そりゃじゃあショータイムと行こうか。さあ、ネイティオ。」
カリンは何とか抜け出そうともがいた。しかし、いくらもがいてもネイティオの念力が緩むはずもない。カリンの身体に薄気
味悪い感覚が広がっていく。身体をなぞられるような、さわさわとした感覚。その感覚はネイティオが発しているものであり、
彼女に触れずとも、いとも簡単に服をずらし、剥いていく。丈の短いキャミソールがたくし上げられ、形のよい胸が露になる
と、カリンは羞恥に顔を染めた。こんなやつに…!カリンの顔は羞恥だけでなく、憤怒も入り混じっていっそう赤くなった。
「ははあ、やっぱり黒かあ。予想通りだね。」
まじまじと冷静に観察している変態仮面小僧が忌々しい。そのどこかの変態みたいな仮面をいっそのこと叩き落してやりたい。
「うるさくてよ。こういうときぐらい、女性を褒めて少しでもことが運ぶようにしたらどうなの?」
キッと睨み付け、あくまで平然に憎まれ口で返す。デリカシーも何もあったものじゃない。そんなのだからポケモンにしか
相手にされないのよ。
「…わかったよ。参考にしておく。観察してしまうのはボクの悪い癖でね。」
「……貴方という人は……全く悪趣…ッンンッ!!」
カリンの胸の突起に痺れが走り、思わず声が上ずった。
「あ、こらダメじゃないかネイティオ。まだ早いだろう?こういうのはもっと焦らしてだね……」
そう、そういうやり方なのね。…やっぱり悪趣味変態野郎だわ。正真正銘の。
「そうは言ってるけどさ、感じてるんじゃないの?こんなことされたことないだろ?」
「…当たり前よ…!こんな…馬鹿みたいなこ…ッ!!」
ネイティオの念力がカリンの身体を這いずり回る。直接触られていないのが余計に彼女に刺激を与える。ニタニタ笑うイツ
キの顔を見て、声を意地でも出してはやらない、とカリンは思った。何て男なのかしら。本当にロクなヤツがいないわ。シ
バとキョウさんの性癖とか私は知らないけど、これでいくと完全におかしいプレイに行きそうだわ。ワタルは絶対に変態だ
ろうし、もうポケモンリーグはどうなってるのかしら。ホウエンかどこかのボンボンチャンピオンも相当らしいし。
「くだらないことを考えていないでさ、もっと楽しんだら?」
「……く……!」
今は彼に自分の頭の中が筒抜けになっているのだ。考え事をして気を紛らわせることも出来ない。…だから?…だからって
なによ!これぐらい、追い詰められた内に入らないわ!!
「……さて……ネイティオ、そろそろ詰めに入ろうか。」
イツキがネイティオに目配せすると、ネイティオは頷き、その無表情な顔で念力をカリンの上半身から下半身へと移行させ
た。
「!!」
カリンの下半身を、ネイティオの発する念力が撫で回していく。特に感じやすいところを重点的に優しく撫でる。ポケモン
にこんなことをさせるなんて…!トレーナーとして恥を知りなさい!!と怒鳴ってやりたいところだが、口を開けば喘ぎ声が
漏れそうだったのでそれどころではなかった。…最低…!と心の中で罵りながら目で睨みつけてやるのが精一杯だった。
「ふうん、不満を言うわりには体は正直だよね。わかるかい?」
ネイティオの念力を強くし、わざと卑猥な音を立てさせる。全く、彼女は立場をわかっていないみたいだ。今はボクの方が
力が上だということを。まあ、それでも屈しないところは尊敬するけれどね。
「……っは…は……うう……う…ん……」
ネイティオの念力に加え、今度はボク自身の念力も送ってやる。すると少しずつだが彼女も身体に素直になってくる。目に
は涙がうっすら浮かび、白い肌に汗がにじんできている。ほうら、いいんだろう。これが。キミが散々悪趣味だって言った
これがね。それにしても、彼女の色っぽい姿を見ていたらボクもちょっと我慢が出来なくなってきた。やはりじかに触れた
い。だがまずは超能力の力でひれ伏させなければ。イツキはさらに念力を強め、彼女の一番弱いところにそれを集中させた。
「……っ!あああ!!」
さすがのカリンもこれには堪えた。ビクッと身体を震わせたかと思うと、そのままぐったりして息を上げている。
(ううう……イってしまった……こんなやつに…こんなことで……)
しかし、もう身体に力が入らない。こうなったら最後まで耐えて…いやむしろ形勢を逆転させてみせる……!!チャンスはま
だあるはずだわ、とカリンは力の入らない身体を無視し、逆に頭を回転させた。
(……どうする……?!策を練っても、読まれてしまうし、ここは……)
「可能性がゼロじゃないかぎり、無限の力をそこから生み出すのがエスパー、それは認めるけど。」
いつの間にか宙に浮いていた身体はベッドに下ろされていた。ネイティオは力を相当使ったらしく、ぐったりと眠そうな顔
で壁にもたれかかっている。ポケモンをこんなしょうもないことで疲れさせるってどうなのよ。
「キミはエスパーじゃない。そしてボクはエスパーだ。」
イツキは上着を脱いでカリンの身体に手を伸ばした。
「わかるよね?この意味がさ」
「……さっきからエスパーだの何だのってうるさくてよ。そんなことだから強くなれないのではなくて?関係ないでしょう、
強さとかにそういうの。」
「いいや。ボクはエスパーポケモンでも最強になれるということを証明したいんだ。だから四天王になった。いずれはキミ
も、いやワタルも倒して見せるさ。ボクのエスパーでね。」
「ふーん、たまにはまともなことをいうのね。そういうの、嫌いじゃないわよ。」
カリンはフッと笑った。ちょっとは男らしいところもあるじゃない。性癖に若干問題があるけれど。
「たまには、とは余計だね。ボクにだって信念があるんだ。」
「好きなポケモンで頂点を目指す、ねえ。そういうところは好きよ、あたくし。だからといってその力をこういったことに
まで持ち込むのはどうかと思うけれど。」
「やれやれ、これだからキミはわかっていないね。ポケモンバトルも、こういうことも、ボクにとっては同じで本気なんだ
よ。」
「あら、それはあたくしに惚れているってとってよいのかしら?」
「馬鹿だなキミは。それとこれとは別だよ。」
カリンが冗談よ、と言ってクスクスと笑う。何気ないやりとりだったが、このことで少しはぎすぎすした空気が緩やかにな
った気がする。これからボクがしようとしていることにが変わることはないけれど。正直もう限界だった。最近女性と付き
合っていないのと、四天王としての体面でエスパーポケモンにハアハアし…いや何でもない忘れてくれ。彼女もちょっとは
許容してくれてそうだしまあいいじゃないか。
「んっ……」
軽く触れただけでカリンの身体は敏感に反応した。念力での愛撫の後に、直接触れられると刺激が一層強くなるようだ。形
の良い胸が揉みしだかれ、カリンはいつもなら絶対に上げないであろう甘ったるい声を上げた。下を確認すると、準備は既
に整っており、男性を受け入れる時を待っている。
「どうせ貴方のことだからもう我慢できないんでしょう?…いいわよ。来ても。」
イツキはそのままカリンを押し倒すと、カリンに己の怒涛を打ちつけた。彼女も最近はご無沙汰だったのだろう。まるで吸
い付いてくるようだった。
「……ちょっと、もう少し優しく出来ないの?…あっ……」
カリンの声はもはやイツキには届いていなかった。夢中になって彼女をただ求めている。口では生意気なことを言うが、ま
だまだ青いわね、とカリンは翻弄されながら思った。
「ううっ……もう……」
「あらやだ。もうダメなのかしら。」
カリンの嫌味ももはや意味を成すことなく、彼は彼女から己を引き抜くと、欲望を吐き出した。それはカリンの身体にかか
ってしまい、彼女の白い肌を汚した。
「…もう…ダメねえ。このあたくしにこんなものを……」
「…………」
欲望を吐き出した当人は、慣れない激しい運動のせいかそのまま横たわっていた。先ほどのことで仮面はずれ落ち、床に転
がってしまっていた。仮面がなければそこそこイイ男なのにもったいないわねえ、とカリンは呟いたが、それも彼の耳には
届いていないらしい。
「……何よそれ……」
今まで散々自分をコケにして口では生意気なことを言っていたくせに、一回しただけでこのザマだ。こんなやつに一回でも
されたかと思うと腹が立ってしょうがない。
「……これではあたくしの立場が……そうだわ…!」
カリンは不敵に微笑むと、イツキにビンタをかまして無理矢理たたき起こした。
「…痛ッ!な、何だ急に!!」
うろたえるイツキを尻目に、カリンは逆にイツキを押し倒した。
「ポケモンの腕もあたくしに敵わないし、コッチの腕もまだまだだなんて、殿方として情けなくないのかしら?…あたくし
が貴方を鍛えなおしてさしあげるわ……!」
ふと横を見ると、ドータクンが転がっており、ミカルゲをはじめ彼女の悪タイプのポケモンがずらりとボクを取り囲んでい
た。ヤバイ。これは相当ヤバイ。
「……心配しなくてもよくってよ。あたくしがしっかりとレクチャーしてさしあげるから。」
ニコッと微笑んだ彼女の顔に、ボクの顔が青ざめていったのは言うまでもない。
「はあ……はあ……」
彼女の悪タイプのポケモンに押さえつけられ、彼女にいいように踊らされて何時間たつだろう。これで少なくとも15回く
らい射精させられたんじゃないだろうか。もう無理だ。このままだとボクのがコイキング並に使えなくなってしまう。それ
だというのに彼女は最後の一滴といわんばかりにボクの上で腰を巧みに使う。
「……どう?女性の扱い方がよくわかって?」
どこが!ボクが一方的に襲われてるだけじゃないか!いや確かに調子に乗ったことは謝るけどさ!
「どうなの? よ く わ か っ て ? 」
カリンが凄い形相でボクの方に睨みを効かせてくるのでボクは頷くしか道がなかった。そうでもしないと本当に干からびて
しまう。
「そう。なら今後は女性にああいった変態的なことはしないようにね。」
彼女は色っぽく微笑み、最後にボクを締め付けた。情けなかったけれどもボクはそれで達してしまった。そのままカリンは
さすがに疲れてしまったのかごろんとベッドに横になった。それでもまだこちらをみて余裕の笑みを浮かべている。女性っ
てコワイ。それに、彼女のポケモンはボクへの拘束を緩めてはいない。まさか、まだするつもりなのか……?!ボクは部屋の
隅でぐうぐう寝ているトゥートゥーを恨めしい顔で見た。もう嫌だ。お前今度食事抜き、もしくは大嫌いなドリのみを混ぜ
てやる。カリンが起き上がり、ボクへの攻めを再び開始しようとしたそのとき、ボクは色々な意味で救われた。いや、救わ
れなかったのかもしれない。誰かの足音が聞えてきたからだ。
「ガチャッ」
…まさか…ボクとしたことが!!
扉が開いた。迂闊だった。誰も来まいと思って鍵を閉めるのを忘れていた。オワタ。ボクの人生もうオワタ。挑戦者の子と
かだったらどうしよう。これが女の子だったら「イツキって四天王はトゥートゥーだし女を連れ込む正しく変態仮面だ」と
触れ回られることに……!!どうしよう助けてくれフーディン先生。スキャンダルになったら四天王…いやトレーナーとして
ボクは終わりだよ。人生オワタ。
って思ったら何だシバか。…ってうおおおおおおおい!!何でお前がここにいる!!修行じゃなかったのかよ!!早く切り上げた
のか!!なんという策士!!ウーハーのくせにっ!
「……なあちょっと修行に……あ、スマン。取り込み中だったか。じゃ。」
ちょっと待てよ!!じゃ。じゃねーよ!!目を逸らして「あ、俺お邪魔だったかな?」みたいな顔で出て行くなよ!!誤解だよ!!
ボクとカリンはそういう仲じゃないなんだよ!!これはつまり何だな、そう戯れだよ戯れ!!さっきの目は完全に映画借りたら
恋愛物で大人の恋人の情事のシーンを見ちゃった中学生男子そのものだったぞ?!待てeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!
待つんだウーハー野郎ォォォォォ!!テメエ口堅そうだけどうっかり?!なんてことありそうだよ!!むしろありまくりそうだよ!!
シリーズごとにイメチェンしてるんだから充分ありうるよ!違うッ!!違うんだァァァァァッ!!!
「……見られたわね……」
テンパってたらいつの間にかカリンがこっち睨んでる。ちょwwwボクのせいかwww元はといえばアンタがさwwwwwwwwwwwww
「何をぼさっとしいるのかしら。さっさと弁解してきなさい。」
は?!何を言っているんですか?!何でボクがwwwwwwwwwwwwwwww
「 行 き な さ い 」
ヤバイ。このままだと確実にブラッキーでどくどく+影分身でジワジワコンボが今日中にされかねない。目が本気だ。もし
くはヘルガーにボクのトゥートゥーがかみくだかれる。それだけは絶対に嫌だァァァァァァ
結局、ボクは泣く泣くシバを追いかけて彼にひとしきり説明した。カリンとボクがそういった仲じゃないと言うと、彼は
さらに怪訝な顔をした。…この純情ウーハー野郎め…!第一ボクはサーナイトみたいな女性がいいんだ!!って力説したらさ
らにドン引きしてた。キミは格闘ポケモンに何も抱かないのか?!あと誰にも言うなって釘を差しておいた。言ったら絶対今
度の練習試合でキネシス連発してやる。勿論ボク自身がだ。
でも次の日にワタルとキョウさんがボクに会ったとき、すっごい冷たい目でボクをじっと見てきたので、カリンによって
練習試合でボクの大事なトゥートゥーに噛み砕くを5連発くらわされた。トゥートゥーごめんよ。でもちょっとあれクセに
なりそうな気がしてしまうんだよ。ボクはカリンの機嫌をとるために今夜食事に誘おうか本気で考え始めた。
おまけ(※エロなし)
「弁解〜ばれるまで」の四天王の井戸端会議
ナナシマに修行に行ってきたのはいいものの、いつも一緒に修行している格闘家のトレーナーの連中が意外と少なく、修
行にならないから帰ってきたらこれだ…全く。いやカリンがいつもちょっかいを出しているから怪しいとは思っていたがな。
しかしあんなものを見せられて俺は次の日からどうやって彼らと話せばいいんだ。特にカリン。普段から露出が多いから目
がそういう風にしか見れなくなるじゃないか。どうしてくれるんだ。とか思ってたらトゥートゥーが追いかけてきた。何だ
お前。アレか。俺にノロケ話でもして自慢する気か。その仮面粉々にして、ご自慢の顔にばくれつパンチしてやろうか。
「ああ、さっきはすまなかったな。……まあ何だ、おめでとう。」
イライラした顔で言ってやったが、トゥートゥー本人曰くカリンとヤツはそういう関係ではないとのことだ。なーんだ、そ
うか。ハッハッハ。ってオイ!お前らそういう関係でもないのにコトに及んだのか!!くそっ…何て不健全なやつらだ……!
最近のトレーナーはチャラチャラしてるとか思ってたけどお前もそうか!今度練習試合でその腐った根性叩きなおしてやる。
「つまりその……彼女とは何でもないわけで……ただの戯れからちょっとね……本当だよ!信じてくれ!!先にちょっかいを
出してきたのはカリンだしさ!!第一ボクはもっと清楚で可憐な……サーナイトのような感じの娘が好みなんだからさ!!」
うわっ何だそれ。好みの女性ポケモンで表すか普通。♀ばっかり持ってて、ポケモンはおとなしい方がいいんだろうかこい
つとか思ってたけど、なるほどそういう趣味か。もうダメだ。今度からこいつとは距離を置こう。
「何だよその冷たい目は……キミだって格闘ポケモン好きだろ?」
いや好きだけどそういうのじゃねえから。俺のカイリキー♂だし♀だったとしてもカイリキーみたいな女とは付き合いたく
ねえから。
「いいかい?!さっきのことは誰にも言うなよ?!頼むよ?!」
あーあー、必死になってお前。俺を何だと思っているんだ。そんな卑猥な会話まずしねえよ。同じ四天王として恥ずかしい
よ全く。つーかさっさと俺の前から消えてくれ。お前のせいでトレーニングする気失せたからさ。
「なあお前、ちょっと元気ないよな。どうかしたのかナナシマでさ。」
「そうでござるよ!悩みがあるなら拙者達に相談するでござる!!」
腹いせにトレーニング場でカイリキーと組み手をひたすらやってたら、ワタルと忍者のおっさんが話しかけてきた。頼むから
そっとしておいてくれ。
「ところでさ〜聞いてくれよ〜。チョウジでR団のアジトぶっ潰しに行ったんだけどさ〜。めっちゃ可愛い女の子がいてさ〜
コトネちゃんって言うんだけどね、一緒にアジトに潜入したら赤毛のウザイ少年にストーカーされてるみたいで。電話番号
教えてって言ったら照れちゃって断られたんだけどまたそこがいいっていうか……」
「ワタル殿、その少女はまさか『ピーッ!』代の少女じゃなかろうな……お主犯罪だぞ。」
「恋愛に年齢は関係ないだろ!!愛があればオールオッケーさ!!俺チャンピオンだし。」
「全然正論になってないでござる!」
「そういえばイツキとカリンは?あいつら見ないんだけど。」
ピクっと俺の顔が引きつる。ダメだわ。俺隠し事苦手なんだよな。
「あ、その顔お前何か知ってるだろ。」
「まさかッ!!二人に何かあったのでござるか?!」
俺はだんまりを決め込んだ。そんなに軽い男じゃないぞ俺は。第一人に言えるか!!
「なあ、俺たち仲間だよな?!お前とは三年前から四天王やってきた仲だもんな?!」
「水臭いでござるよシバ殿!!ささ、拙者達に洗いざらい話すでござる!!」
そう言いながらお前ら何顔ニヤニヤしてんだ。恋バナに目がないオバハンか。昼ドラでも見てろ。
「なー頼むよー。二人に何があったんだよー。」
馬鹿野郎。俺は口が堅いんだ。そうやすやすと話すものか。
「あ、そうそう。」
ワタルは何か思い出したようにマントをゴソゴソとし始めた。色々出てくるあたりがまるで四次元ポケットのようだ。
「これ。」
目の前に箱が差し出される。土産物っぽい。そして包装紙には……
「チョウジ行ったついでに『いかりまんじゅう』買ってきたけど、お前いらないよな〜?減量中だっけか?」
ななななな何だとォォォォ?!俺をモノで釣ろうってか?!いやいや俺は四天王のシバ!!人とポケモンは鍛えればどこまでも……
「いらないならいいぜ。コトネちゃんにあげて点数稼ぎに役立ってもらうしさ。」
「ワタル殿、それならせめてうちのアンズにやってくれんか。娘が好きなんだよ甘いもの。」
……俺の思考回路はそこで停止した……
「え〜…引くなあそれ…イツキのヤツ、まさかそんなことを……」
「……見損なったでござる。」
「にしてもさ、カリンにね〜……うわーカリン可哀相〜……」
「神聖なポケモンリーグで女を連れ込んでコトに及ぶとは……トレーナーとして…いや男として失格でござる……!!」
ワタル、お前人のこと言える立場じゃないだろう。まあいいじゃない。何てったってチャンピオンですから。
「ううう…しかしイツキの野郎に先を越されるとは……!!悔しいッ!!」
「……コトネという少女のことが拙者とても心配になってきたでござる……」
「あ、アンタの娘さんイツキに会わせないほうがいいぜ。食われるぞ絶対。」
「な、何ィィィ?!あのこわっぱ!!アンズにまで……おのれ……許さん!!」
イツキに対する同僚の冷酷な仕打ちはその後、ヒビキとコトネという少年少女がポケモンリーグに挑戦しにやって来るとき
まで続いたという。
お わ り