「あちー…あつすぎるぜー…」  
秋も近いというのに、やたらと熱い。太陽がやたら近くに見える。日差しが強い。強すぎる  
グラードンが何かやらかしたんじゃないか、なんて噂が飛び交い、しまいにはグラードンの様子をぶっ倒してこいなんて依頼まで出てくる始末だ。伝説のポケモンもずいぶんな扱いだな、オイ  
 
そこで名乗りを上げたのがチームかまいたちだった  
ポケダンズはダーコイズだかサークライだかのところに行っちまってるし、チームMADはゼロの島にしか興味がないらしい  
チャーレムの所はうみのリゾートにいっちまってるし、プクリンギルドの奴らは頼りない、ゲスゲス言ってるのが特に  
 
「そんなこと言ったって、どうにもならないんだから言わないでよっ。余計に熱くなるよっ」  
「お前らいじょーに暑さに弱えーんだよ、オレは…あちー…」  
「わたしだって熱いんだからねっ!グラードンさんが落ち着くまでの辛抱だよっ」  
「んなこと言ってもよー…グラードン鎮めにむかってんのがかまいたちだろー?」  
「…ま、まあそれなりに名の売れた探検隊だし大丈夫なんじゃないかなー。同族としては期待してるよっ」  
「オレはあの虫やろー、どーにも好かん。真面目すぎんだろー…よく他の二匹についていってるよなー。大体…」  
と、ハッサムが言葉を途切ると地面からサンドパンが現れて  
「ただ今戻りましたっ!!!遅れてしまい申し訳ありませんっ!!これもすべて自分の不徳と致すところ…」  
「あー、はいはい。ここにもクソ真面目なのがいたなー…」  
「地面の中だと涼しそうでいいよねーっ、しばらくそこで避暑しようかなっ、毛がちょっと汚れそうだけどー…でー。どうだったのかなっ?」  
「…それが…良いにくいのですが。彼らが失敗してしまったらしく救助依頼が張られてまして…食糧がなかったそうです」  
「ええっ!?」「マジかよ!?」  
「問題はその依頼なのですが…実力のあるチームはみんな出払ってしまっていて誰も受けられないようなのです…」  
「んー?さっきチームMADさんみたよー?アーボックさんがマニューラさんにどつかれてたねー」  
「…あいつら犬猿の仲だし無理だろーよ、火花散らしてるところしか見たことねーよ…にしてもしょうがねーなー…かまいたち」  
「こうなったら、わたち達が行くしかないねっ!みんな!準備しよっ!」  
「えっ!?じ、自分の実力では…少々荷が…」  
「あー、無駄無駄。こいつはこーなったら聞かねーだろーが。諦めろ。テメーのフォローはある程度してやるから」  
「…い、いえ頑張って…見ます…」  
「それじゃ、各自準備してかげろうのさばく入口に集合だよっ」  
「…なー、せめて一人傭兵とか連れてこないか?戦力的にはけっこーぎりぎりだぜ」  
「んー、チームかまいたちの救助ならやっぱりわたしたちで行きたいしねっ。だいじょーぶだよっ、イケるってっ!依頼なんかはわたしが受けておくよっ。それじゃあまた後でねっ」  
と、いうとザングースは走ってさっさと行ってしまった  
「それは答えになってな…あれ?」  
「もう行ってしまわれました。仕方ありませんから我々も準備しましょうか」  
 
 
オレたち三匹は…まあ幼馴染って奴だ。たまたまチームかまいたちと同じ種族の集まりだったからガキのころはよくごっこ遊びなんかしてたりしたし、最近まで奴らと勘違いされ声をかけられることが多かった  
オレが進化してからはそんなこともほとんどなくなったが、いまだに勘違いされることが稀によくある  
…で、その本物のかまいたちを助けに行こうって訳だ。めんどくせ―…  
大体オレが砂漠に行けってのがそもそもおかしいだろーが……  
……かといって、あのザングースが一度言いだしたことを止めるなんてことは今まで生きてきて見たことがなかったわけで…  
 
「なんだってんだ、全く…」  
残された雄二匹は仕方なく準備を始めるのだった・・・  
 
…さて、依頼があったのは9階か  
……あと1つ階段を下りれば目的の階には辿り着けるわけだが…  
「…おい、ザング。一度休もうぜ?」  
その言葉にこちらを振りむいてオレとサンドパンを一瞥すると  
「…あー、そうだね。この先モンスターハウスだろうししっかりしなきゃっ」  
「い、いえ自分でしたら大丈夫ですので…ハァハァ…」  
(とても大丈夫には見えないよねーっ…)  
「…オレも疲れたんだよ、糞暑いなか歩かされたしな。お前も本ばっかり読んでないで体力つけろって」  
「そ、そうでありますか…了解しま…した…」  
サンドパンはそういって崩れ落ちるように倒れこんでしまった…  
 
「なー、こいつガキの頃より体力落ちてねー?」  
「しょうがないよっ、たくさん勉強してたもん。でも私たちよりものすごくいろんなことしってるよっ?」  
「にしたって限度があるだろーよ…ま、今はいーか…オレも結構体力キてるしなー…休むぜ…お前もちゃんと休めよ?オレやドパンはなんともねーけどお前には砂嵐はつらいだろー?」  
「だいじょうぶだよっちゃんとオレンの実食べてるからっ……けっこう敵も強いしねー…でも強くなれてる感じもするよっ。レベルアップって感じだねっ」  
「グラードンをぶったおせ、じゃなくて良かったな。俺たちじゃ相当厳しいぜー…」  
「やっぱり本物のかまいたちさんはすごいよねー、昔はあこがれてたけど今でもこうやってダンジョンにくるとすごいなーって思うよっ」  
「最終的にハラへってぶっ倒れてるけどなー…飯持ってこなかったのか?あいつら…」  
「だからリンゴもお弁当も持ってきたよっ。これ食べて頑張ってもらおうねっ……そろそろ行こうっ、待たせても悪いしね」  
「…そーだなー。  おい、ドパン起きろ、行くぞ!」  
「は、はい…了解しました……」  
 
 
かげろうのさばく9F モンスターハウスだ!  
「う―わ―…休んどいてよかったねー…」  
「ど真ん中かよ…おい、ドパン無理しねーで回復優先な」  
「了解しましたっ、では参ります!縛りだまっ!」  
サンドパンがたまを掲げた途端に部屋のポケモンどもが皆動かなくなっちまった。やっぱこえーアイテムだ  
「油断しないでくださいっ、アーボックはすぐに動き出しますのでそちらから対処してくださいっ」  
「毒タイプならわたしとハッサムさんにまかせてよねっ、いくよっ!」  
 
………  
「案外あっけなかったなー、アイテムの力ってかー?」  
「私たち自身も強くなってるよ、たぶんっ。えーっと救助は…あ、あそこだねっ」  
ザングースが部屋の隅に立っていた旗にバッジを翳すと旗から光が溢れ辺りが真っ白になり…光が収まるとそこには三匹のポケモンが立っていた  
 
『ッ・・・ふぅ、助かった。らしいな』  
「お待たせしましただよっ、助けに来たよーっ」  
『お?おお、同族か!助かったぜ!このバカが食糧買い忘れるなんて初歩的なミスしやがってよーありがとよ!』  
『いやー、まいったねー。最近物忘れ激しくて嫌んなっちゃう』  
『嫌になるのはこちらの方だ、確認作業は怠るなとあれほど言ってあっただろう』  
『しょーがないじゃーん、忘れちゃったんだからー』  
「あー…えっと。お弁当もってきたよっ。サンドイッチとおおきなリンゴ3つ!皆で食べてね!」  
『マジで?しかも手作りじゃねぇか。女の子の手作りとか何年ぶりだ?』  
『あー、リーダーずるーい。俺も食べるー』  
 
……あー、さっきはあんなこと言ったけどやっぱり実物目の前にするとダメだなー。こいつらオレより全然つえーなー…、倒れた理由はマヌケだけど  
なんて考えてるとドパンはドパンで歓喜極まってるらしい、ガチガチに緊張してやがる  
 
『もしかして、君たちが例の三人組か?俺たちと同族の仲のいい三人組がいると聞いたことがあるのだが…』  
…やっぱりこいつは常に一歩引いてるよなー冷静というよりはこいつらのノリについて行くのをあきらめてるって感じだが・・・、ザングースとサンドパンは…いやこれはかまいたちの方で…ええいややこしい!  
「たぶん、そうだなー。憧れのかまいたちさんに会えて嬉しいぜー?こいつなんか感動してさっきから何もいえてねーし」  
『え、マジで?俺らのファンうれしーねー。ね、ね。君今度二人で遊びに行かない?』  
「じ、自分とですかっ何ともったいないお言葉で…!」  
 
『おい、サンドパン。ナンパなら後にしろ。先にグラードンぶっ倒すぞ』  
『ちぇー…つまんない…んじゃあとでその話をゆっくりね♪』  
「その話なんだけどー…私たちもグラードンのところまでついていっていいかな?」  
「おいちょっと待て、今何て言った?オレも含まれてんのか」  
『ええっ。危ないよ?俺女の子にはあんまり危ない事させたくないんだけどなー…』  
『俺はいいぜここまでこれてるんだから、十分強ぇんじゃねえの?お前はどうだ?ストライク』  
『…俺は、構わない。このハッサムの実力も見てみたいのでな。彼の戦い方を見ておきたい』  
「んじゃ決まりだねっ。よろしくお願いしますだよっ」  
「おーい、オレらの意見は完全に無視かー?」  
『虫ポケモンだけに無視ってね、あははっ。』  
…はあ、ドパンもついて行きたがるだろうし、何言っても無駄だろうな…  
 
 
 
「あー…疲れたー。だり―。かったりー…」  
『さすがに骨が折れたな…お前たちがいなければ途中で撤退していたかもしれぬな…』  
「わたしもちょっと疲れたねー……というかお酒つよくないかなー?」  
『ザングース一族に伝わる秘伝の酒だぜ。女の子には強かったか?』  
「せっかくだからいただくよっ…サンドパンさんはだいじょうぶかなー?」  
「ひゃい…、大丈夫であり…あります」  
「だいじょーぶそーじゃねーな。お前はもー休んどいたらどーだ?」  
『んー、お酒強くなかったみたいだねぇ。おくってくよー♪』  
「あぅ…助かります…」  
『…サンドパン、変なことするなよ?』  
『す、するわけないじゃーん。もう信用ないなあー』  
「うぅ…私は失礼します…」  
「なさけねーなー…これしきの酒で…」  
『いや、この酒はなかなか強いぞ、お前が酒に強いのだろう。……しかし今日は本当に助かった、礼を言う』  
「それはいーけどよー…お前ん所のサンドパンもけっこー飲んでたぜだいじょーぶなのか?」  
『いくらなんでも、夜這いをかけるような節操のない奴ではないと思いたいが…』  
「…そーゆー話じゃねーんだが…ってゆーかあいつは何でもいいのか…」  
『らしいぜ、ストライクと違ってそういうの大好きな野郎だからな』  
『…余計な御世話だ』  
「節操がないってやつだねっ!もーよくないなあー。そういうのはだめだよっ」  
「……ザングもそうとう来てるなー。お前も無理すんなよー?」  
「…うえー?そんなことないよー。酔って………うー、ぐるぐるするよー」  
『…すまん、飲ませすぎたようだ。……外歩いて酔いを覚ましてくるといいぜ?』  
「う―…ぐるぐるするよー…行ってくるねー…」  
「やれやれ、うちの奴らはなさけねーな…」  
 
『いや、あれはなかなかにきつい酒だ。女子には辛かろう。…ところでハッサムよ一つ頼みがあるのだが…』  
「んー?どーしたー?」  
『一度、お手合わせを頼みたい。進化後の同族の戦いを感じてみたいのでな』  
「…オレはかまわねーけど。お前の方があっとー的に強いだろ」  
『……いや、先ほどの闘いを見ている限りそれほど実力差があるとは思えなかった。お願いできないだろうか』  
「別にいいって言ってんだろ、明日の昼以降ならいつでもいいぜー」  
『感謝する、時と場所は追って連絡させよう』  
『おー、熱いなー。んで負けたほうが犯されるワケだ』  
「………………」  
『………………』  
『…ごめんなさい。』  
『謝るなら最初から言うな』  
『お前ら目が怖えんだよ、同時に睨まれたらビビるっての』  
『…まあいい、ハッサム。気にしなくていいからな。それでは今度頼む』  
 
 
その後酔いを醒ます、と言って外に出てきた  
冬が近い星空の下を歩くのは嫌でも体が冷める…はずなのに  
オレはさっきの言葉のせいなのか、酒のせいなのか体の火照りがとれる事はなかった。  
 
 
 
つづく  
 

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