「悪タイプにてこずってね。お前の力を貸してくれ、ストライク」  
捕獲要員として稼動し数年。一時は現役から身を引いた私を目覚めさせた主人の第一声がそれであった。  
私を迎え入れた他のモンスターも幾らか交代はあったらしいが多くは懐かしい面々である。  
私が眠っていた間年月が育んだのは彼等の身の丈、体重、そして圧倒的な経験―…力の差。  
彼等は進化を遂げ、私を見上げていた子供らも今は逆に私が見上げる程に成長していた。  
嘗てその一刃の下、止めを刺さぬため細心の注意を払わねばならなかった頃にあった私の優位性は既に存在しない。  
 
主人が求める力を再び手中の物とするべく努力は、苛烈を極めた。  
旅も此処まで来ると受け止める一撃一撃が重く、己が誇っていた素早さや攻撃値の高さ等最早無きに等しかった。  
しかし成長出来ていると言う確かな実感が私を救い、血の滲む様な訓練も辛くは無く、寧ろ充実した日々である。  
――…ただ一つ、私の頭を悩ませている存在はあったけれど。  
 
訓練を終え、ボールから開放された私は風を受けて凪ぐ草原に佇んでいた。  
慣れ親しんだ草の香りが鼻腔を擽り、疲れた体を癒してくれる。  
私を信頼してくれる主人に甘え、人里遠いこの場所迄足を伸ばした甲斐があったと言うものだ。  
不意に腹奥から込上げる物があり、それが何かを感じ考えるよりも先に私は地面を蹴った。  
 
その瞬間。  
 
距離を取っても解る、空気を揺らす程高温の炎。それを纏った獣が一直線に私が居た場所へと轟音を立て突っ込む。。  
私の佇んでいた草原は一瞬の内に焼き焦げ、焦土と化した地面の中心に、着地に失敗した結果足を捻りでもしたか、横転し悶える無様な獣がいた。  
「さっすがストライク!今度こそ気付かれて無いと思ったのになァ」  
「――…物事を行動に移す前にそれらが引き起こすであろう結果を考えろと私はお前に散々教えた筈だが」  
悪びれもせず嬉々として呟く相手を、双眸を眇め睨み付ける。  
「だってさァ、ストライクとこう出来るのも久し振りだろォ?俺嬉しくってさァ!!」  
尾を千切れんばかりに振りたくり、挫いたらしき前足を若干引き摺り獣―…ウインディは笑う。  
 
人が見蕩れる程豊かな鬣、威風堂々としたその体格。伝説ポケモンの名に相応しき神々しさと、それを全て台無しにするアホ面。  
出身地が近いせいか何なのか、彼がガーディであった頃から何かと懐かれていた。  
まさしく毛玉と言って差し支えない頃は、今の様何かと私の後追いをし、暇さえあれば足許にじゃれついて来ていた。  
未だ乳離れも出来ぬ程幼い内から捕らわれた幼子に対する同情心も在り、私もそれに応え何かと世話を焼いてやっていたのがいけなかった。  
吼えられて飛び上がり、火の粉で翅を焦がされても、それでも甘えて擦り寄り、無心に己を慕い懐く子をどうして邪険に思えようか。  
 
だが、物事には限度がある。  
若干の頭痛覚えて鎌の先で額を抑え、地上に降り立った所間髪入れず第二撃が私を襲う。  
私はそれを必死で避け、結果彼は騒々しい音を立てて大木に激突することになった。合掌。  
「遊ぼうよォ、ストライク!」  
「やめんか、馬鹿犬」  
この、己の成長を全く省みぬウインディのスキンシップこそが私の唯一である「悩みの種」であった。  
彼は「甘えてる」つもりなのであろうが、彼の進化、それに伴う体格の変化は半端では無い。  
炎タイプは私が苦手とする最たる物でもあり、彼の一撃は私にとって命取りになりかねぬ物であると言う事を理解しない。  
復帰して早々仲間の歓迎によりポケモンセンター送りなどなれば主人に顔向け出来ぬ。  
そうで無くともそんな事私のプライドが許さない。  
 
顔を顰める私の心情を知ってか知らずか、彼は前足を伸ばして上体を低くし、  
それでも相手されぬと知るや眼を細めて身を摺り寄せて来る。  
数年前と何ら変わらず無邪気な挙動に聊か毒気を抜かれながらも、その結果散々な目にあった過去を思い出して口を開いた。  
「…いい加減にしろ。ガ…ウインディ。何時までも子供の様に、みっともない」  
ウインディは私の苦言を意に介さず、その豊かな鬣をも余さず私の体に擦り付ける。  
本人は無邪気に懐いているだけかも知れぬが、擦り寄られる都度ウエイトが絶望的に異なる私の体は揺らぎ時に傾ぐ。  
「だってさァ、ずっとこうしたかったんだもん!」  
喜色満面の笑みで告げられれば、私も然程悪い気はしない。  
昔に戻った心地すらして来る。  
悪い気はしない、が、一層力の篭った懐き具合に思わず膝をついてしまった。  
 
「ウインディ…」  
非難がましく声を上げた私を見返すのは、嬉々として輝く二つの眼。  
これは危険だ。そう判断するより先、子犬時代のじゃれつきの延長で圧し掛かってくる。  
彼の体重は公式で155kg。この駄犬の体格は平均より上回るが故当然体重もそれに伴う。  
もしウインディが加減して無ければ確実に圧死レベルであった。  
前足を地面についた鎌を抑え付ける様に置き、鼻先を外甲殻の境目、項へと押し当てて軽く歯牙を押し当てて来る。  
「俺さァ、ストライクがいなくてずっと寂しかったんだよォ。ね、俺大きくなったでしょ。凄い?偉い?」  
甘えて鼻を鳴らす仕種は可愛い、のかも知れないが、如何せん今はとにかく重い。  
相手の胴体によって翅の方向が若干不自然に拉げ、付け根に痛みを覚えた。  
己の最も柔い腹部が拉げ潰れる不吉な未来を想像し、思わず翅を震わせながら末端を上下させ捩じらせる。  
節付いた蛇腹が相手の腹部を叩き毛並みを掻き分ける感触に対し、ウインディは寧ろ心地よさ気に眼を細めた。  
「…いい加減にしろウインディ!成長したと言うならば態度も相応に改めるべきだろうが!」  
思わず声を荒げ怒鳴りつけることでようやく歯牙が離れる。  
安堵の吐息が、境目を舐めるざらついた舌に悲鳴へと変化した。  
 
「ウインディ…?」  
語尾が情け無く揺れたのは、私の腹部をぬめりと押し上げる粘膜の感触のせいだ。  
私の心臓が嫌な意味で早鐘を打つ。私の腹部とほぼ長さの変らぬペニスが、ぬる、にゅ、と脈動しながら腹部を撫ぜる。  
錘めいた先端から滴る生臭い汁に、怖気覚え震える翅が鈍い音を立てた。  
「――相応の態度ならァ、いい?」  
何時もの甘えたウインディの鳴き声。だと言うのに私は不穏な物を感じ思わず身を竦めた。  
ウインディの厚い肉球が刃の表面を撫ぜ、鋭い爪を私の鎌へと押し当て引掻くことでもどかしい様な疼き伴う振動が伝わる。  
雌よりも若干短く末端の丸まった私の腹部を、ウインディの腿が挟み込む。  
「ッ」  
特有の腰の動きで、ウインディが私の腹部へ熱く猛った陰茎を押し当て揺する。  
蛇腹の溝にねっとりとした淫液が溜まり、溝が拉げ、また引き伸ばされ開く都度ぬちぬちと淫音が響くのに身が強張る。  
私の柔らかく脆い腹部を雌の性粘膜に見立てたその扱いに、羞恥が頬を焼くのを感じた。  
それが何であるのか、何を意味するのか。  
判断出来ぬ程無知では無いが、余りの出来事に思わず怯み動きが止まる。  
浅く拉げた先、薄く盛り上がった淵に刻むスリットに気付いたウインディが大きく腰を引いて先端を宛がおうとする仕種で、  
私はようやく我を取り戻し、我武者羅に暴れた。  
翅の付け根が軋み痛んだが、最早その事に構っている余裕は無い。  
 
前足から強引に引き抜いた鎌の背でウインディの顎先を強く殴り付け、悲鳴を上げ怯んだ相手の下から引き摺り出ようと足掻いた。  
後少しと言う所で右足を咥えられ、ぶるりと頭振るう勢いの儘仰向けの状態となる。  
威嚇のため鎌を擡げる私に怯みもせず、ウインディは何故か双眸に涙を滲ませて私を見詰めていた。  
泣きたいのは私の方だと言うのに。  
「ストライク」  
私の足の爪へ、淡くウインディの牙が食い込む。  
外骨格に神経は通ってはいないが、微かな振動は内部へと伝わり何とも言えない気分にさせられる。  
「大好き。ずっとずっと、ガーディの頃から、ずっと好きィ。嫌?俺と交尾するの、駄目?」  
嫌に決まってる。駄目に決まってる。  
何故ならば私達は雄同士で種族が異なり、私は小便臭いガキなど好みでは無いのだ。  
第一同意も取らず問答無用で襲って来る獣に絆される奴など此の世には存在するものか。  
なのに、、  
「……」  
「ストライク」  
濡れた鼻先が私の胸部を探り、外骨格を辿った末薄黄緑の薄い皮膜に行き着きその場所へと舌を這わせる。  
器用に舌を動かして皮膜を吸い上げ、子犬が母犬に甘える動作の儘前足を鎌の腹へと宛がい再び私の両腕を地面へと縫い止めた。  
「ストライク」  
「…、煩い。今考えている所だ。邪魔をするな」  
何故私は己の体が損傷せず、或いは損傷しても出来るだけ最小限で留まる様営む方法など考えているのだろうか。  
「だってストライク、中から…」  
「首を掻き切るぞ、小僧」  
私の生殖孔が淡く綻び、ウィンディのしそれとは大きく外見が異なる輸精管が顔を覗かせひくついていた。  
体の何処よりも最も濃い色合いの緑は硬く、節立っていて細長い。  
一見無機質なその場所は、その実私の体のどの部分よりも敏感で、彼の被毛が節を撫ぜ擽る都度、私の腹部が熱く波打ち震える。  
それにウインディが興味を示さぬ筈は無く、再び腰を低く沈め、思案する私の腹部、そして輸精管へとペニスを摺り寄せる。  
その都度思考が乱れ、怒鳴りつけかけた私の頭に閃く物があった。  
「くふっ?!」  
肉球を傷つけぬ様鎌を抜き取り、峰の部分で肉錘を捕らえる。  
先走りの汁に覆われた粘膜は挟み辛かったが、本人が驚き動きを止めた事が幸いした。  
動揺しながらも熱い吐息を零し、興奮も露に肉棒を脈動させる若い雄を改めて見遣る。  
「私と交尾したいんだろう」  
首肯返されるよりも早く、ねっとりとした腺液が滴り私の刃を汚す。  
中腹にあった肉瘤がしゃくり上げる様に上下し、熱く脈打って興奮を伝えて来た。  
「私の中に入るにはお前のこれはでかすぎる。わかるか。…だから、私がお前の中に入る」  
「そ、それって俺が雌役って事ォ?お、俺後ろは…」  
「勘違いするな。お前の尻孔なんぞ興味は無い―…もっといい場所だ」  
根元から先端を撫で上げ、肉瘤を圧迫すると一旦引かれ掛けた腰が再び沈む。  
微かに丸み帯びた輸精管の先で裏筋の膨らみを撫で上げ、鈴口へひたりと宛がう。  
私の先走りとウインディの先走りが混じり合う様に、興奮を覚え思わず咽喉を鳴らした。  
「まさ―…、ぎゃいんっ!」  
疑念の声は悲鳴へと代わり、私の胴体を挟み込む腿が滑稽な程痙攣を繰り返す。  
撓る肉輪の締め付け、より直接感じる脈動、そして粘膜のぬるつき。  
押し開いた尿道口が痛々しい程赤く熟れ震えていたが、私の中にペニスを捩じ込もうとしていた彼の行為を考えればきっと許される範囲だろう。  
 
「ぬ、抜いてェ、抜いてよォ、や、だ、中が擦れ…」  
ぷ、ぶぷ。濡れた音を立てて沈む輸精管を嫌がるウインディの言葉に応じ、私は腹部を引いて埋めたそれを浅く抜き取る。  
「ひっ、抜かな、い、でェっ!」  
相反する言葉を零すウインディに笑い、再び私は挿入を開始する。  
私の輸精管が幾ら細長いとは言え、ウィンディが感じる痛みと異物感は軽減しこそすれ免れない。  
鬣が逆立って膨らみ、震える両足が緩やかに開き蟹股となる。  
限界まで捩じ込み、節で軽く抉りながら引き抜く。  
掻き出した粘液が泡立ち、私の腹部へ伝い落ちるのに何とも言えぬ快楽を覚えた。  
「う、ァ、く…ぅん…ストライク…」  
ウインディの内部は熱く、狭い筒の締め付けすら粘液の潤滑により甘く興奮を促す物へ変貌する。  
限界迄引き抜き、間髪入れず根元迄埋めて荒々しく肉を捏ねると、ぐちり、生々しい音が響いた。  
「ひ、…っぐ…ァ、あ、壊れるゥ。…ご、ごめんなさい、ストライク、ごめ、…ァ、出る、出る」  
私を押し潰さぬ様肘をつき、踵を持ち上げ震えるウインディのいじらしさに愛しさが芽生えると共に嗜虐心が湧き上がる。  
しゃくり蠕動する内部の心地よさに息を吐きながら、私は一層動きを激しくする。  
「ストライク、…ストライク…、や、出したいィ…!ひ、は、…れ、なィ、抜いてェ、お願…」  
毛並みに覆われた睾丸が収縮し、絶頂を覚えてはいるのだが私が栓をしているがため射精出来ずウインディは悲鳴を上げた。  
「尿道を直接擦られて、射精している様だろう。…最も、実際は吐き出せぬから過ぎる快楽は辛いものでしか無い。  
…違うか?」  
片目眇めて囁き、絶望の呻きを上げ頷く彼を笑う。  
「ストライク、らし、出したい、…射精させ、て。何でも、する、からァ」  
かく、かく、と力無く腰を揺するウインディが私の顎下へと顔を寄せ、顎先から口許へと舌を這い上げ懇願する。  
「何でも、とは軽々しく言うべきでは無いぞ。…お前は今、私と交尾してるんだ、ウインディ。―私を満足させてみろ」  
熱く焼けた吐息が膚を擽り、私を酷く興奮させる。  
ウインディは暫し思案した末、身を低くし私を軽く固定すると、下肢を捩じらせ、腰を前後する事により自らの尿道で私の輸精管を扱く。  
「ふ、…っふ、ぁ、あ、あっ」  
どちらとも知れぬ濁った粘液が滴り、淫らに拉げた鈴口を覆い淫猥な光沢がねっとりと絡みつく。  
赤く腫れた粘膜と、無機質めいた私の濃緑の輸精管の交接が妙に背徳的で、私は背筋に駆け上がる興奮の痺れに眼を細めた。  
「いい様だな。ほら、動きが鈍くなってるぞ。…ずっと私に嵌めていて欲しいのか。雌犬が」  
短く吐き捨てるとウインディの体が戦慄き、一時動きを止めてから熱心に腰を揺らす。  
尿道を犯され、また塞がれることで逆流する白濁が相当の痛みを与えている筈だが、それがまた快楽へと繋がっているらしい。  
「ん、ぅ、…う、ァ、…ス、トライク、いってェ、俺の中、で、せーえき、だひ、て。も、だめ」  
伝説ポケモンと呼ばれ、遥か東の地では信仰の対象にすらされていると言う彼が私にだけ見せる無様な媚態。  
征服欲が心地よく私を満たし、興奮が末端を支配するも彼を求める欲求の方が次から次へと込上げ、私の射精を遅らせていた。  
そんな我慢も終に臨界点を迎え様とした頃、私は肉錘に宛がっていた鎌の背を輸精管を咥え込み歪む鈴口へと移した。  
「仕方ない子だ、ウインディ。――…私が手助けしてやる」  
私の心情など知らず、幼い頃の儘無条件に私を信頼し慕い続ける彼は解らないながらも幾度も頷く。  
私は鎌に意識を集中し、刹那、微かな熱と小刻みな振動を鎌からペニスへと伝えた。  
ヴィイイイイ…。  
鈍く低い振動が粘膜全体を震わせ、それで丹念にペニスを撫で回してやると目に見えてウインディの太腿が強張りがくがくと痙攣する。  
太い四肢で地面を踏み締め、きつく地面を爪で引掻いても逃しきれぬ快楽に仰け反る咽喉元へと噛み付く。  
「ぐ、く、ぉおんっ!」  
「っ」  
短い彷徨が合図であったかの様に私は彼の中へ精液を吐き出し、徐々に縮み収まる輸精管を充血した尿道より引き抜く。  
途端散々掻き乱され泡立った精液が、脈動する楔の動きの儘押し出された。  
どぶ、ぶぷ、ぶ。  
鈍い音を立て、次々と溢れる精液は私の腹部へと伝い落ち、私の膚には無い「白」を与える。  
「ウインディ」  
射精後特有の倦怠感に苛まれながら、私は腹奥から込上げるあの感覚を感じ取っていた。  
ぐら、と私の上でウインディが揺らぐ。  
「おま」  
 
 
ぴんぴんぴぽぺーん♪  
 
あの数時間後帰りの遅い私を心配した仲間が私達を見つけ、結果私はポケモンセンターの医療用ベッドに、  
ウインディは主人の説教をくらい項垂れている。  
圧迫された時間が長かったがため物を言う気力も無い私はウインディを庇うことも出来ず、  
またその気も然程無く柔らかな寝台に身を休めていた。  
「復帰早々大変だったわね」  
その心地いい香りで神経を宥めてくれるメガ二ウムを横目で見遣り、私は曖昧に頷いた。  
「あの子、昔から貴方が大好きだったけど…ねぇ」  
それ以上彼女は言葉を濁したが、彼女の言いたいことは大体理解出来る。  
発見された当初、私は如何見ても「被害者」であった。  
まさか私が散々彼の性器を苛め犯しぬいて気絶させた等夢にも思うまい。  
「…同意の上だ」  
色々と説明するのも面倒で、取り敢えずそれだけは告げておいた。  
途端彼女の顔が笑顔でやわらぎ、「甘やかすのも程々にしなさいな」とだけ告げて笑顔で立ち去って行った。  
説教も一段落ついたらしく、依然項垂れた儘のウインディが彼にしては珍しいおずおずとした様子でこちらへと向かって来る。  
「ストライク、俺、ごめん、あの、だって」  
前足を寝台に掛け、ベッド上の私を覗き込む。私は無言で鎌を持ち上げ、刃で傷つけぬ様注意を払いながら頬を撫ぜた。  
「――…次は」  
黒色の瞳が、真っ直ぐ私だけに向けられる。  
「……次は、もう少し工夫することにしよう。毎度押し潰されては敵わん」  
途端ウインディは恥ずかしそうな、それでいて嬉しそうな複雑な表情を浮かべ首を竦めた。  
出会った頃から、どれだけ酷い目に合っても私を慕う彼を心から疎ましいなど思えたことなど一度として無い。  
きっとこれからもそうなのだろう。  
―…取り敢えず出会い頭のフレアドライブをやめさせなくては。  
私は明日に備えるべく、擦り寄るウインディの体温を感じながら瞼を閉じた。  
 
おわり  
 

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