「あーあ、ヒマやなあ……」  
 
コガネシティのジムリーダー、アカネはうーんっと伸びをしてから呟いた。土曜日のお昼間、今日はジムはお休み。  
コガネデパートでショッピングをしようと勇んで行ったのはいいものの、買うものがそんなになくて時間がかなり  
余ってしまった。そこでコガネの周りでも散歩しよう、そう思って『ポケモン育て屋さん』のあたりまでアカネは  
やってきていた。  
 
「そない言うたかて、ホンマやることないしなあ。……あ」  
 
アカネが目をやると、そこにはかつて自分に戦いを挑み、勝利をその手に収めた少年、ヒビキがいた。どうも彼は  
ポケモンを預け、タマゴを作ろうとしているようだった。タマゴからしか発見できないポケモンはたくさんいる。  
ウツギ博士の研究も手伝っている彼は最近よくこの施設を利用していた。  
 
「なんやなんや?ヒビキやないか。へーえ、育て屋とか来るんやな。研究熱心なやっちゃな。」  
 
アカネが感心して見ていると、ヒビキの側に一人の少女が現れた。仲よさげな様子。ぴょんっと跳ねたツインテー  
ルに、大きなリボンつきのスキャットが可愛らしい。悪いと思いながらも、耳をすませて会話を聞いてみる。どう  
やら彼女は幼馴染で、ここの育て屋夫婦の孫だそうだ。奥から出てきた老夫婦も彼女に嬉しそうな声を掛けている。  
 
「コトネや、久しぶりだね。」  
 
「あっ、お祖母ちゃん!びっくりしたー。だってヒビキ君来てるんだもん。」  
 
「ほっほっほ。相変わらず元気そうだね。」  
 
何も変なところはない、普通の会話。しかし、次の老婆の発言が、事態を一転させた。  
 
「ところでヒビキ君はなんだい?コトネのコレかい?」  
 
老婆はウフフ、と笑うと小指をピンっと立てて見せた。その言葉にヒビキとコトネが顔をカーッと赤くさせる。お  
互いに顔を見て、そのまましばらく固まり、コトネの方がサッと老婆に向き直って弁解を始めた。  
 
「ち…違うよお祖母ちゃん!ヒビキ君と私はそんなんじゃないもん!!」  
 
「そ…そうだよ!コトネちゃんは僕の友達で……!」  
 
モゴモゴと気まずそうに二人は話していたが、そのうちコトネの方が、私用事があるから!と言って行ってしまっ  
た。  
 
その一部始終を見届けたアカネは面白そうにうんうん、と頷くと、ヒビキの方へ駆け寄っていった。  
 
「ヒビキ!ヒビキやないか!」  
 
元気なアカネの声にヒビキはすぐに反応し、身体をアカネの方へ向けた。顔はまだ少し赤いままだ。  
 
「あ、キミは確か……」  
 
「もー!『だいなまいとぷりてぃぎゃる』のアカネちゃんやないか!!よう覚えとき!!」  
 
「う、うん…っていや覚えてるけど……」  
 
ヒビキはアカネのことをよく覚えていた。だって初めて女の子を泣かせたのだから。まさかジム戦で泣き出すジム  
リーダーがいるなんて、彼には想像がつかなかった。すぐに泣き止んでくれたから良かったものの、当のヒビキは  
どうしていいのかわからず、オロオロするばかりだった。だからよく覚えている。  
 
「なあなあ、さっきの子、彼女か?えらい可愛ええ子やったやん?」  
 
にひー、と笑いながらアカネがからかうと、ヒビキが顔をまた真っ赤にして首を横に振った。  
 
「ち…違うって!コトネちゃんは僕の近所に住んでる子だよ。ただの友達だってば!」  
 
目をキョロキョロさせて言うその姿は明らかに怪しい。それを見てアカネは面白いことを思いついた。うん、我な  
がらこれは面白いで!  
 
「ふーん、告白まだっちゅうことやな〜…そや!今からウチとデ・ェ・トせーへん?!」  
 
「えええ?!何でいきなり?!」  
 
「まあ落ち着きぃや。デート言うたかて、練習や!コトネちゃんのハートゲットすんねやろ?」  
 
「ちょ、ちょっとまってよ、だからコトネちゃんは……」  
 
「まあええやんか!いつかは女の子とデートせなあかんねんから!!ほら行くで!!」  
 
戸惑うヒビキを尻目に、アカネはヒビキの腕を引っ張り、その場を後にした。  
 
 
「……あのさ……」  
 
「ん?なんや?」  
 
ヒビキはモジモジしながらアカネに質問した。女の子と二人っきりで出かけたことなんて、まずない。  
 
「どうして、エンジュシティまで来たの?」  
 
「何言うてんねんな!ジョウトでデート言うたら、エンジュの小道かチョウジの怒りの湖でボートやろ?!」  
 
「あ…そう…なの?」  
 
「まあ、アサギのオシャレ〜なレストランで素敵な大人のお兄さんと…ってのもアリやけど!」  
 
「…それはちょっと…僕には無理かも……」  
 
ヒビキは高級そうなヨットハーバーのレストランを想像してうーん、と唸った。…ミカンさんとかって、あいいう  
ところで食事したりするのかな…と彼なりに考えて、ミカンさんは高嶺の花なんだなーと思った。(実際は食堂だが)  
 
「やろ?ほならエンジュやん!近いし!こんくらい知っとかんとアカンで!!」  
 
「う…うん。」  
 
「したら早速レッツゴーや!行くでヒビキ!!」  
 
「あっ!ちょ、ちょっと待ってよ〜!」  
 
いきなり腕を組まれ、ヒビキはまた顔を真っ赤にした。アカネはこの「デートごっこ」にノリノリのようだ。女の  
子にあまり免疫のないヒビキは、二人っきりで手を繋がれただけでドキドキした。舞妓はんと会ったときもその美  
しさにドキドキしたものだが、今はそれとは違うドキドキだった。  
 
アカネはヒビキをエンジュシティの色々な所へ連れて回った。舞妓はんの踊り場から、あの大きな池まで。スズネ  
の小道も、彼女がジムリーダーであること、またヒビキがエンジュジムのバッジを持っていることから入場が許可  
された。  
 
「ここ、やっぱりいつ来てもきれいだなあ……」  
 
「ほんまやね。何で年中紅葉してんねやろうな。今の季節やと金木犀の香りもしてええ雰囲気やわあ〜」  
 
「そうだね……」  
 
四六時中はしゃいで元気なアカネが、このときは紅葉にぼーっと見とれている。普段がやかましいくらいだから、  
ヒビキにこのときの彼女は新鮮に見えた。そういうわけで、そんなに意識していなかったところにも、注意が行く。  
黙ってじーっとしていると、結構可愛い。…胸も結構あるし…って、何見てるんだよ僕。  
 
「ん?なんや?そうそう、ここはなー、女の子にすっごい人気のあるスポットやから、告白にはちょうどええねん。」  
 
人の気も知らないで、アカネはこっちをみてニコニコしながら話してくる。先ほどまで見とれていたヒビキは、心が  
チクリと痛んだ。  
 
「だ、だよね。綺麗だもんね。ここ。」  
 
「やろ?ロマンティックなとこは、女の子のハートを掴むにはもってこいや!エンジュジムのマツバもな、ここに  
 よ〜来るんやで?!……へへへ、何でか知りたい?」  
 
「え?どうして?スズの塔へ修行に来てるんでしょ、マツバさん。」  
 
「もう、ヒビキは鈍感やなあ!決まってるやないか!まいこ…」  
 
「やあアカネ、奇遇だね。」  
 
アカネが言おうとした瞬間に、背後に当人のマツバが現れた。こめかみが引きつっているのは気のせいだろうか。  
 
「あ、あはは〜!ホンマやね!!」  
 
「ところでさっき何を言おうとしていたんだい?言ってごらんよ。」  
 
コワイ。マツバさん顔が怖い。絶対にさっきまでの話を聞いていたに違いない。奇遇ってのも嘘だ絶対に。  
 
「な、何でもないで〜!だだ、ようここに舞妓はんと一緒に歩いてはるな〜ってなだけや!!」  
 
アカネは冷や汗をダラダラとたらしながら取り繕ったが、空気の読めないヒビキは間の抜けた質問をしてしまった。  
 
「舞妓はんと仲がいいんですね。そういえばジムでも同じようなこと……」  
 
「ヒビキ君。」  
 
「はい?」  
 
マツバの顔が笑っているけど笑っていない顔になる。ポン、とヒビキの方に手を置くと、ヒビキの身体に悪寒が走  
った。5度下がるってことはゲンガーか。まさかこの寒気は…あのゲンガーなのか?!  
 
「世の中にはね、大人になってから知った方がいいことがたくさんあるんだよ。」  
 
「…え…あの……」  
 
「な!ヒビキ!!ウチお腹へってもうたわ〜!!何か食べに行こ!!な!!」  
 
危うくシャドーボールで殺されるところだったヒビキであったが、アカネの機転で難を逃れた。その後、アカネと  
いかにも女の子が好きそうな和菓子屋さんで抹茶パフェを食べたり、お寺を見に行ったりしてデートごっこを楽し  
んだ。焼けた塔へ行こう、という案は、危ないからやめよう、というヒビキの制止で中止になった。ヒビキはあそ  
こで不思議なポケモンと遭遇したばかりだし、あの辺はちょっと物騒で、トレーナーがうろついているからだ。  
 
「えーっ、つまらんわあ!トレーナーなんか、ウチが全部倒したるで!」  
 
「もう、アカネちゃんは。大体今日はデートの練習なんだろ?デートでバトルなんかするかなあ。」  
 
「あ、それはそうやな。でも、コトネちゃんの前でええカッコしたら、きっと見直されるで〜?」  
 
「だから僕はコトネちゃんのことは……」  
 
「もう、照れてしもうて!可愛いなあヒビキは!!」  
 
アカネがヒビキの背中をバシバシ叩く。これじゃデート練習っていうより、ただ単に友人との遊び旅行みたいじゃ  
ないか、とヒビキは思った。  
 
(って待てよ!別に練習だからそれでいいじゃないか!!)  
 
ヒビキは思わずハッとなる。だめだ、こんなんじゃ。  
 
(そんな、女の子とふたりっきりでいるだけでこんな気分になるんじゃ、ダメだよ!)  
 
しかし、ヒビキには心の底になにかわだかまりが残る気がした。上手く言い表せない、モヤモヤした気持ち。  
 
「どないしたん?」  
 
アカネちゃんが僕の顔を覗き込んでくる。顔が凄く近い。まつげも、大きなくりっとした目も、日焼けした赤い髪  
の毛も、全部細かく綺麗に見える。僕よりちょっとだけ年上の女の子。元気でハツラツとしていて…コトネちゃん  
とはちょっと違う感じの女の子で……  
 
「なあ、ヒビキ、どないしたん?お腹でも痛いんか?」  
 
違うんだよ、痛いのはお腹じゃないよ。どちらかというと、胸がなんだか痛いよ。心臓が張り裂けそうなんだ。  
 
夕日がエンジュに沈む。スズの塔も、池も全部真っ赤に。僕の顔もきっとそんなんだろう。  
 
 
「ヒビキってば!」  
 
アカネちゃんの声が大きくなったので、僕は我に返る。違うよ、アカネちゃんはそんなんじゃないよ。だって僕よ  
りもちょっとだけ年上だし……言ってたじゃないか、アサギのレストランで大人のお兄さんと〜…って。僕なんか  
相手にされるわけがない。…って何なんだよ僕。だからそういうのじゃないのに。  
 
「大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけ。」  
 
「も〜!こんなときになってまでもしかしてポケモンのことか?たまには休みぃや?」  
 
「えへへ、ウツギ博士の手伝いしてる上にポケモンリーグも目指してたらさ、休む暇なくて。」  
 
「したら今日はええ気分転換になったんちゃう?ウチも楽しかったし〜」  
 
「……かも、ね。」  
 
気分転換…か、わからないなあ。ちょっとヘンな気分になったのは当たってるけど。でも僕も楽しかった。  
 
「さーて、ほんならウチは帰ろっかな……て!もうこんな時間かいな!!」  
 
ポケギアを見ると、もう夜の8時ぐらいだった。コガネまで帰ったら相当遅くなる。深夜のコガネの街をアカネ一  
人で歩かせるわけにはいくまい。最近黒ずくめの変な人達がうろついているという噂もあるのだ。  
 
「うあああ〜…どないしょ〜…、ヒビキ、ごめんなあ〜……」  
 
涙目になるアカネ。ヒビキは元々旅の途中で今日は育て屋さんに厄介になろうかと考えていたので別にエンジュで  
一泊してもよかったのだが。  
 
「いいよ別に。僕は元々旅の途中だから。それより、アカネちゃんはどうするの?今から帰ったら危ないよ?」  
 
「そ、そやな〜…でも泊まるにもど〜したらええんか……」  
 
「マツバさんは?ジムリーダー仲間で仲いいんじゃないの?」  
 
「ア、アカンアカン!アイツはアカンて!!ホンマ堪忍や!!あとアイツ夜はたいがい外しゅ…いや何でもあらへん!」  
 
「どうして?…まあいっか。とにかく宿探そうよ。今からだと無理かもしれないけど……」  
 
「せやな!うん、オロオロするよりも先に行動や!!」  
 
アカネはガッツポーズを決めると、ヒビキと共に走り出した。しかし、どの宿も満室。秋のエンジュは紅葉シーズ  
ンと相まって、観光客が殺到しているのだから仕方がない。二人は走り回ってくたくただった。とりあえず見つけ  
たチェーン店のファミレスで食事をとり、休憩しつつ今後のことについて話し合うことにした。  
 
「やっぱりダメだったね。今シーズンだもんね。」  
 
「うう〜ウチとしたことが…頭入ってへんかったわ……」  
 
「野宿はアカネちゃん嫌だろ、どうしたもんかなあ〜」  
 
「はあ…明日はジム戦の予約入っとるから、せめてお風呂ついてるとこがええわ……」  
 
「う〜ん。じゃあやっぱり、マツバさんあたりに聞こうか。それが一番妥当だね。」  
 
と、早々にヒビキはポケギアを取り出した。アカネは慌てて制止しようとしたが、もはや時既に遅し。  
 
「プルルルル……あ、もしもし。今日はすみませんでした。あの、アカネちゃんと今いるんですけど……」  
 
実はアカネ、一度エンジュに遊びに来たとき、興味本位で彼の実家にお邪魔したことがあった。しかし、そこはや  
はりエンジュジムの本家。ゴーストポケモンの巣窟であり、慌てて逃げ出したのだ。あのときのことは忘れない。  
 
「えっと、今外出されてるから実家は無理ですか……そうですか……え?宿の方紹介してくれるんですか?」  
 
どやらあのゴースト達がひしめく家は回避されたらしい。アカネは内心ホッとした。しかも宿を紹介してくれるな  
ら、これだけ嬉しいことはない。なんや、始めから頼んどいたらよかったわ、と彼女は後悔した。  
 
「んーっと、ここからまっすぐ行ったところにあるんですね、わかりました。親切に有難うございます。」  
 
ピッとヒビキはポケギアを切った。彼が外出している理由はわからなかったが、気にとめないことにした。後ろで  
何だか三味線とか女の人の声がしてた気がするけどもう気にしないことにした。  
 
「どうやら助かったみたいやな〜…一時はどうなるかと思ったわ〜……」  
 
「うん。最初から電話すればよかったね。じゃ、行こっか。」  
 
「そやな。」  
 
「ところでさ、何で電話するの最初嫌がったの?教えてよ。」  
 
「実はなあ……」  
 
宿に向かいながら、アカネはヒビキに色々語ってやった。二人で話しながら歩いていると、今までの疲れも吹っ飛  
んでなくなっていった。ただ、楽しいはずなのに、アカネは少しの不安が脳裏をよぎっていた。紹介…アイツの紹  
介か……またゴーストポケモン出そうな宿とちゃうやろなあ……  
 
しかし、アカネの不安は別の意味で的中することになった。  
 
 
「うわー、結構凄い宿だねー。」  
 
「……これって……」  
 
ヒビキは高そう、と呟いたが、アカネは言葉が出るに出なかった。なぜならその宿は……  
 
「格式!って感じだよね!」  
 
「ははは…まあ、あたってるっちゃ、あたっとるわ……」  
 
江戸時代から、昔からある例のあの宿。単純明快に言おう、連れ込み宿である!  
 
今現在エンジュに花魁はいないので、フツーに入るならに舞妓はんや芸妓はんの舞や歌を楽しむのが主な使い方に  
なってはいるが、お偉いさんなんかが連れの女性と共にいた場合はそのまま……なパターンもありうるわけで。  
 
要は子供の泊まる宿じゃない。  
 
「ううう…アイツ…昼間の腹いせかいな……」  
 
「どうするのアカネちゃん。ここ紹介されたけど……」  
 
入るしかない。しかし男の子と二人だ。いやいや、ウチとヒビキはそんなんと違うねんから!!堂々としてればええ  
んや!!  
 
「しゃ、しゃーないわ…!一晩だけやし、ここにしとこか。」  
 
ヒビキは全く理解しておらず、すごいなー、ついてるかも!などとはしゃいでいた。  
 
(ヒビキには説明せん方がええな……てかしたらアカンわ。)  
 
はしゃぐヒビキを尻目に、アカネはハア…とため息をついた。  
 
 
 風呂に入り、よっぽど疲れていたのか、二人はそのままぐうぐうと寝てしまった。特にアカネは昼間のハイテンシ  
ョンからか、ぐっすり眠っていた。しかし、ヒビキは少し違っていた。アカネと二人っきり。その空間がいつもの深  
い眠りを浅くさせていたのだ。  
 
「ん……」  
 
ヒビキは夜中にトイレのために起き上がり、廊下へ出た。そしてその帰りに、一室だけ明かりが漏れているのを見つ  
けた。いつもなら気にしないでそのまま部屋に戻るのだが、今夜だけは何故か違った。好奇心が彼の足をせき立て、  
明かりの漏れている部屋へと導いていった。  
 
(本当はこんなことしちゃダメなんだろうな……)  
 
罪悪感も感じながら、ヒビキはこっそりと部屋の中を覗いた。  
 
(…何だろ…男の人と女の人が…ってうわっ!!)  
 
ヒビキはすぐさま駆け出した。出来るだけ音を立てないように。それぐらいびっくりしたからである。  
 
そして部屋に帰って布団にもぐりこんでからも彼の興奮は収まらなかった。  
 
(…なんだ…なんだろ……あれ……)  
 
ご想像通り、彼は男女の夜の営みを見てしまったのである。ポケモンに熱中するあまり、そちら方面には無知な少年に  
とって、それは心に相当な衝撃を与えた。あと、男の人のほうはどこかで見た気がするけど髪の毛が乱れていたし、こ  
の際わからないことにしておく。  
 
(うう……頭から離れないよ……!)  
 
その光景は衝撃のあまり、ヒビキの頭から離れようとしなかった。目をつぶればつぶるほど、それは頭の中に焼きつい  
ていった。目を閉じているとそうなるので、思い切って目を開けてぼーっとしていると、横で寝ているアカネが目につ  
いた。自分のことなどお構いなしにすやすや寝ている。憎らしいくらいにだ。  
 
「こういうとき、アカネちゃんならどうするのかな……」  
 
ポツリと呟いてみる。先輩トレーナーとして、はたまたポケモンバトルをして友となった女の子として。じっと観察し  
ていると、やはり寝息と共に上下する胸に目がいってしまう。コトネちゃんも結構その…あるほうだけれど、年齢の差  
のせいもあってか、ヒビキには新鮮なものに見えた。  
 
「僕、どうしちゃったんだろう……何だか、変な気分だよ……」  
 
アカネの胸だけじゃない。可愛い唇と、眠っていてて閉じられているけど大きな目と、柔らかそうな肌と。全てがヒビ  
キの注目の的になっていた。先ほどの光景は、少年に深刻な影響を及ぼしていた。  
 
(……さわって…みたい……!)  
 
ぐっすり寝ているのをいいことに、ヒビキはアカネの胸に手を伸ばす。ふかふかした感触が手に収まった。  
 
(……うわ……柔らかいんだ……)  
 
コトネちゃんも、こんなのなのかな。いや、そんなことどうでもいいや。今は僕はアカネちゃんのことしか考えられな  
い。もっと、アカネちゃんのことを知りたい。もっと、アカネちゃんに触れたい。  
 
ついにヒビキはアカネの寝巻きをはだけさせて、直にその肌に触れてみた。  
 
「……ん……」  
 
アカネが顔をしかめた。ヒビキは驚いて手を引っ込めたが、アカネがもぐもぐ呟いているのを見て、夢の中であること  
を確信し、再度手を伸ばした。滑らかな感触。そして暖かい。ワカバタウンを出てから、直に肌を触れ合わせることな  
んてまずなかった。旅に出る前にお母さんが自分の頭を撫でてくれたことが思い出される。あの時は子供扱いしないで  
よ!僕もう一人前なんだから!と怒ったが、今思えばあれが最後だった。  
 
「……お母さん……」  
 
ヒビキは急にアカネの胸に顔をうずめた。本能がそうさせた。彼女の心臓の音を聞いていると、昔母親に抱きしめられ  
た時を思い出した。しばらくそうしていたが、ハッと我に返ると、安心感は真逆のものへと変わった。今、僕は何をし  
た?!女の子に、何をしているんだ?!  
 
急に心臓がバクバク言い出す。ヒビキはあっという間にパニックに陥った。どうしよう。これって絶対に……  
 
「んー……」  
 
アカネは夢の中で、ミルタンクにじゃれ付かれていた。もう、重いで!ミルタンク!!と叱っても、ミルタンクはアカネ  
を抱きしめて離してくれなかった。だが、アカネは違和感を感じていた。何だか、ミルタンクの下の方が熱いのだ。  
 
……おかしい。これって……いややーっ!!そんなんいやや!!はよ目覚まさなアカン!!  
 
必死で目を覚ましたアカネであったが、そこにはさらに驚くべき事実が待っていた。寝巻きがはだけられていて、そこ  
にヒビキが顔を突っ込んで自分の上に重なっていたのだ。  
 
「……ちょ……な……」  
 
アカネが起きたことに気がつくと、ヒビキはうわああああ!と声をあげて飛びのいた。パニックに陥っていた彼はさら  
にパニックの渦へと吸い込まれていった。手をしきりにわたわたさせ、オロオロする姿はアカネですら見ていられなか  
った。  
 
「……とりあえず落ち着こか、ヒビキ。な。」  
 
アカネはとりあえずヒビキを落ち着かせ、事情を聞くことにした。やっぱりここに泊まるんじゃなかった。最悪の事態  
が起きてしまったのだ。  
 
「うん。まあわかるで。そらびっくりするわ。」  
 
「で、アレってなんなの?僕見たことないよ。」  
 
アカネは頭を抱えた。……誰や、最近の子はマセガキが多いっちゅうたヤツは……  
 
「あ、あれはな……その……まあなんや、好き同士の大人の男の人と女の人がする……うーん…キスの延長みたいなモ  
 ンや……」  
 
アカネはしどろもどろになりながら、何とか遠回しに説明した。我ながらよく言い訳したものである。  
 
「そ、そうなの?」  
 
「まあ、そういうこっちゃ。」  
 
「……じゃあ僕がアカネちゃんにしたことって、間違いじゃなかったんだね。」  
 
「……え?」  
 
「だって、好きな男女がすることなんでしょう?今日はデートの練習、ていうの、忘れてないよね?」  
 
ちょ、ちょっと待ってぇな!ウチは何もそこまで付き合ったるとは言ってないで!!  
 
「いや…その…なあヒビキ、ああいうのはホンマの恋人がすることでなあ……」  
 
「…ダメなのかな……」  
 
「は?!」  
 
「その……アカネちゃんの恋人がさ、僕じゃダメなのかなって……」  
 
ヒビキは俯きながら、顔を赤くしながら言った。やっぱり、僕はアカネちゃんが好きだ。今日のデートごっこでわかっ  
たことだけれど、そうだったんだ。じゃあコトネちゃんは?って思うかもしれないけど、コトネちゃんは何だろう、昔  
からコトネちゃんとは一緒にいるけど、急に女の子らしくなっちゃって、それで気まずいというか恥ずかしいというか  
……似ているけれど、違うんだ。  
 
「……え…?それ……本気で言うてるん?」  
 
アカネは目を丸くさせた。何せ年下だし、弟みたいで今までなんとも思っていなかった少年からいきなりの告白である。  
しかもコトネという少女のことが好きだと思っていたのだから、なおさらだ。  
 
 
「本気じゃなかったら、言わないよ。それに…あんなことも……」  
 
しばらく沈黙が続く。古い壁時計が時を刻む音だけが、部屋にこだまする。  
 
それを破ったのは、アカネのすすり泣きだった。ヒビキは驚き、そして後悔した。やっぱり、そうだやっぱり困らせて  
しまった。自分は彼女にふさわしい男ではないのだと。  
 
「……ごめん……その……困るようなこと言って……」  
 
「……ち……ちが……」  
 
「……いいよ、別に。僕が調子に乗っちゃっただけだし……本当に……」  
 
「違うねん。」  
 
アカネは涙をぬぐいながら顔を上げた。困った顔ではなかった。  
 
「嬉しいんや。アンタみたいな純粋な子にそんなん言われて。」  
 
アカネは笑っていた。女性が見せる涙は何も悲しいものばかりではない。嬉し泣き、というものもあるのだ。ヒビキは  
今、それを知った。  
 
「ウチ、すっごい嬉しい。ホンマ、きっと世界で一番幸せや。」  
 
「えっと…じゃあ……」  
 
「もう!こないなことまで言わせるんか?!アンタが恋人でもええって言ってるんや!!」  
 
そう言いながら肩をバシバシ叩いてくるアカネはやっぱり可愛いと思った。笑っているときのアカネが一番可愛くて、  
僕は好きになったんだろうな、とヒビキは思った。  
 
「そっか。」  
 
そして、ヒビキはアカネの服を掴むと、そのまま急に押し倒した。当のアカネは何が起こったかわかっておらず、ただ  
ぽかんとしていたが、自分の身に起こるであろうことを瞬時に悟り、ヒビキの腕を思いっきり掴んだ。  
 
「ちょっと!何するんや!アカンて!!」  
 
「だって、アカネちゃんと僕は恋人なんでしょう?」  
 
「アホ!それとこれとは別や!!」  
 
「…嫌…なの……?」  
 
急にしょげ始めるヒビキに、アカネは頭を抱えた。ヒビキは純粋すぎる。それは恋愛においてもそうなのだろう。  
 
「あ…あのな、こういうことは“大人”になってからするモンやねんで?!」  
 
「…そうなの?……でも……」  
 
「……でも?何や?」  
 
ヒビキは自分の股間を申し訳なさそうに見た。それは布の上からでもわかるほどに膨らんでいた。  
 
(うっわ……何か目の前で起こると調子狂うわ……)  
 
初めてリアルにその現象を見たアカネは困惑したが、それは仕方がないことだというのもわかっていた。ヒビキのこと  
だ。どうすればいいのかもわかっていないのだろう。  
 
「……その……僕の…おかしいんだ……さっきから……」  
 
「…ま、まあ、そらしゃあないて。男の子やったら当然や。」  
 
「……ごめん……」  
 
「あやまらんでええって!…でも…なんちゅうかその…アンタまだ子供やんか?ウチが手ェ出して本番までいってもう  
たら、犯罪になってまうで。」  
 
アカネはまだ二十歳には程遠いが、どこかのロリコンチャンピオンと違って節度はわきまえていた。勿論年の差はそこ  
まで開いていないが、彼の心の成長を考えると、今その行為を行うことは躊躇われたのである。  
 
「……うん」  
 
「……せやから……な…?」  
 
アカネはヒビキに言い聞かせたが、内心彼の体調が気になった。このまま溜まったままでは、この先旅に集中できない  
のではないだろうか……だが、アカネはいいことを思いついた。そうだ。別に本番まで行く必要はない。  
 
アカネは、ヒビキに悪戯っぽく笑って見せた。そして……  
 
「前座の練習だけ、今からしよ?」  
 
そう言って、ヒビキに口付けた。  
 
「……ん……ちゅ……」  
 
深い口付け。交わすごとに、二人の目はトロンとしていき、その表情を互いに見つめながら、いとおしいと二人は感じ  
ていた。  
 
(アカネちゃん、やっぱり可愛いな……唇、胸みたいにやわらかい……)  
 
特にメロドラマすら見ないヒビキは、初めて見た上にするキスに夢中になっていた。幸せな気持ち。それが今自分が感  
じている全てだった。まるでムウマに幻惑を見せられている気分だ。  
 
「……う……ン!!」  
 
しかし、ヒビキの幻惑は、下半身の刺激でかき消された。いつの間にかアカネが自分のモノをズボンから取り出し、ゆ  
っくりと撫でていたのだ。  
 
「ア、アカネちゃん!そんなの触ったら汚いよ!」  
 
未知の感覚に戸惑い、慌てるヒビキだったが、アカネが手をどけることはなく、むしろその速度を加速していった。  
 
(……えっと、確かこうしたら気持ちええんやんな……?)  
 
アカネは昔面白半分にジムの年上の女の子が見せてきた雑誌を必死で思い出していた。その時は彼女と「えーっいくら何  
でもそらないわーっ」とかいって猥談に笑い転げていたのだが、いざ現実となると目の前の男の子に必死で何かしてあげ  
たい、という気持ちが勝った。ヒビキの方をチラリと見ると、苦しいのだが気持ち良いのだかわからない顔をしていた。  
 
「……うっ……うわあ……」  
 
「ヒビキ……どうなん?気持ちええ?」  
 
実際ヒビキはどちらともいえない、不思議な感覚だったので答えようがなかった。しかし、アカネはそれを自分の愛撫が  
不十分だったと取ってしまい、さらに上をいくサービスで彼をもてなす事にした。  
 
(……しゃ、しゃーない!こうなったら、やるしかないで!!)  
 
アカネは、例の雑誌に書いてあった「いくらなんでもそれはない」行為を行うことにした。  
 
「……ッ!アカネちゃん!何やってるんだよ!!」  
 
「ふえ?」  
 
アカネはヒビキのモノを口に含んでいた。さらにそれを吸う。意外と大きいものなんだな、とアカネは考えながら、彼が  
気持ちよくなるように一生懸命に奉仕した。  
 
「う……うわあああ……ダメだよ……何だか変な気分……」  
 
「……ひもひよふなひんは?」  
 
「何…言ってるのかわかんないよ……ううう……何か……来る……っ!」  
 
ヒビキがあまり気持ちよくないのかとまた勘違いしたアカネはさらに奉仕を強めた。じゅる、という音がさらにヒビキを  
おかしな気持ちにさせた。自分のモノがドンドン熱くなってしまって逆に収まりそうもない。  
 
「アカネちゃん、もういいよ!口…離して……!!」  
 
しかし、ヒビキが言った時にはもう遅く、彼女の中で自分のモノが震え、欲情を吐き出してしまった。  
 
「……きゃあッ!!」  
 
突然口の中に出されたアカネはビックリしてしまい、そのまま口を離してしまったので白いものが飛び散って顔にかかっ  
てしまった。まとわりついて気持ちが悪い。オマケに口の中が苦い。  
 
「ううう……なんでこんなモン、飲んだりするんや……?!頭おかしいで!!」  
 
「えええっ!それ飲んだりするの?!うわあ…何か汚いな…ってゴメン!!そんなことさせて!!」  
 
慌てて謝るヒビキに、アカネは可愛いかもしれない、という感情が芽生えていくのを感じた。彼は本当に純粋だ。こうし  
て、自分のことを真っ先に心配してくれている。こういうことをしている時でもだ。  
 
「んー……コトネちゃんが好きになってまうの、わかるわ。てかウチも好きやけど。」  
 
「え……なんでそこにコトネちゃんが?」  
 
「もう……アンタ鈍感やな……罪深い男やで……」  
 
何のことか全くわかっていないヒビキに呆れつつ、アカネはふいーっと息をついた。とりあえずこれで彼の溜まったもの  
を発散させることはでき……  
 
「……ホンマ、罪深いわ……」  
 
アカネはヒビキのモノを見て、確信した。彼のモノはまだ元気で、刺激を欲していたのだ。しかし彼女とて、一度苦いと  
認識したものをまた口に含むのは躊躇われた。雑誌の内容を頑張って思い出してはみるが、他の方法を思い出すことがで  
きなかった。  
 
(これやったら、最悪自分で慰めてもらうしか……って、コイツ絶対知らんからまたウチが教えなあかんやろうし……)  
 
アカネが悶々と悩んでいると、ヒビキの方から声が上がった。  
 
「あのさ……さっき、覗き見した人がやってたことなんだけど……」  
 
耳をよせ、ボソボソとささやく。  
 
「……ああ、なるほど……そういうのもあるんやね……」  
 
アカネの寝巻きの下の方をはだけさせ、彼女の太ももの間にヒビキは自分のモノを挟み込んだ。そうしてゆっくり擦りは  
じめる。先ほどとはまた違った感覚が彼を支配し、徐々に速度を早めさせた。  
 
「アカネちゃん……よかったの?こういうことして……」  
 
「ウチはヒビキがようなってくれたらそれでええんや。気にせんといて。」  
 
それに、アカネも擦られることによって、自分も感じ始めていた。股が熱い。彼のモノが当たる度に、アカネもまた、未  
知の感覚に襲われはじめていた。  
 
「ん……アカネちゃん……」  
 
自然と唇が重なり、速度も速くなる。それに呼応するかのように、二人の心臓の速度も同じように早まっていった。  
 
「アカネちゃん……好き……」  
 
「ヒビキぃ……ウチも、ウチも好きやでぇ……」  
 
アカネの声が切なくなっていき、身をよじり、そしてそのまま二人は同時に峠を迎えた。ヒビキの欲情は再び彼女の肌を  
汚し、アカネは熱くなった身体で息を切らせていた。ヒビキがまた申し訳なさそうな顔をしたので、アカネは彼の顔を引  
き寄せ、デコに指をコン、と立てて言ってやった。  
 
「なんちゅう顔してんねん。言ったやんか、ウチも好きやでって。」  
 
「でも……」  
 
「遠慮せんでええって。ウチらもう“こいびと”なんやろ?」  
 
そう言ってにひひー、と笑うアカネに、ヒビキもつられてエヘへ、と笑う。それもそうだ。自分から恋人だよね、と告白  
したのに、当の本人が堂々としていないでどうするのだろう。  
 
「続き……」  
 
「うん?」  
 
「続き、僕が……その…チャンピオンになって、それからカントーも制覇して…そしたら……」  
 
言葉を続けようとしたヒビキの口を、アカネがキスで塞いだ。  
 
「言わんでもええよ。ウチ、ずーっと待っとるから。」  
 
でも、あんまし長いと浮気してまうかもな、とニヤッと笑って言うアカネに、ヒビキもキスで返してやった。  
 
「頑張るよ。できるだけ。」  
 
そして二人はそのまま身を寄せ合って眠った。ヒビキは今度は、安心した深い眠りにつくことが出来た。  
 
 
 
 朝になり、ヒビキはアカネをコガネまで送って行った。育て屋に寄るついでだから、と言ったが、本心は彼女ともう少  
し一緒にいたかったから。育て屋に行く、と言うとアカネもジム戦まで時間があるからと着いて来てくれた。  
 
育て屋につくと、自分の預けていたピカチュウカップルが大喜びで自分に抱きついてきた。しかも念願のタマゴを持って。  
ヒビキはタマゴを手に取りながら、今度は何が生まれてくるのだろう、やっぱりピカチュウかな?と期待に胸を躍らせて  
いた。そんな早速ポケモンに夢中な彼を見ながら、アカネはやっぱりヒビキはヒビキなのだと実感した。やはり昨日はあ  
れでよかったのだ。彼が目標を達成し、それを成し遂げるまでは、そのことに集中してもらいたい。  
 
「ホラ見てよアカネちゃん!たまに動くんだよ!」  
 
「へー、ウチも見たことはあるけど、触ったら何やあったかいんやなあ…ふふふ……」  
 
タマゴを撫でながら、ヒビキは幸せそうに抱きしめた。  
 
「…やっぱしピカチュウ生まれるんかなあ、それ。」  
 
「さあ……たまに見たことのないものも生まれたりするし……ところでさ……」  
 
ヒビキが預けていたピカチュウ達を見て、首を傾げた。  
 
「ポケモンのタマゴって、どうやってできるのかなあ……?」  
 
アカネは頭を抱えた。このままでは本当にこの先が思いやられる……!!  
 
「純粋すぎるのも、何か考えモンやわあ……」  
 
アカネは、ポツリと力なくつぶやいた。  
 
 
 
 
 
おまけ〜ジムリーダーの事情〜  
 
 
「もしもし?!マツバァァァァ!!アンタどういうつもりやねん!!あんなとこにウチらを案内してからに!!」  
 
「なんだい?人の折角の親切を。君らが野宿しても僕は全然構わなかったんだよ。」  
 
アカネは事の張本人にポケギア越しに怒鳴っていた。そのおかげでヒビキといい関係になれたわけだが、それとこれとは  
違うのだ。  
 
「アンタなあ……もうちょっとマシなとこ紹介しぃや!おかげでヒビキと…うぐうッ!!」  
 
「ははーん。じゃあ彼氏クンとは、おめでたくいったんだね。おめでとうアカネ。」  
 
「うっうっさいわ!!関係あらへんやろ!!このスケベ!!アホ!!」  
 
迂闊にも口が滑ってしまった。全くイライラする。  
 
「ふーん。ヒビキ君は奥手だと思ってたんだけどなー。まあ僕の…いや何でもない、忘れてくれ……」  
 
「は?!」  
 
アカネは一瞬にして凍りついた。まさか。ヒビキが見た客というのは……そして彼にそういった衝動を与えたのは……  
 
「アンタ、今言ったこと、ウチよーお覚えとくで…!今度会ったら覚悟しいや!!」  
 
ものすごい音量と共に、アカネからの電話は切れた。やれやれ。  
 
「恋のキューピッド、ってのも、性にあわなかったな。今後はやめておくか。」  
 
第一、アレは僕自身じゃなくてムウマージとゲンガーに作らせた悪戯の幻覚なのだけれども、とマツバは呟いたが遅かっ  
たようである。  
 
 
 
 
おわり  
 
 
 

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