とんでもない光景を見てしまった、と、デンジは頭を抱えた。  
デンジは、バトルフロンティアの宿泊施設内をふらふらと散歩していた。  
そろそろ散歩にも飽き、友人の部屋を通り過ぎようとして、デンジはふと足を止めた。  
声が聞こえる。あいつの声ではない、別の声。この甲高さは、間違いなく女だ。  
ただ一瞬だけ声を聞いただけだというのに、瞬時にこの扉の向こうの光景を察することが出来た自分が恨めしい。  
聞こえていたのは女の―――――悩ましげな喘ぎ声だった。  
(この真昼間に……お盛んだこと)  
すぐにその場を立ち去ってもよかった。だけど、それが出来なかったのは、自分もいい歳をした男であるからで……  
意味もなく自分自身に言い訳しつつ、そっと扉に耳を近づける。  
『あ、あぁん!! あぁぁっ! オーバぁ!!』  
女の声は一層高くなり、それと同時に息遣いも荒くなっていく。  
『ほらほらどうした? もっと俺を熱くさせてみろよ!』  
『イイ! そこ、イイのぉ!! あんあんっ、きもちいぃのぉぉ!!』  
口にたまった生唾を飲み込むと同時に、この扉の向こうに興味が沸いてしまった。  
あのアフロ野郎に突かれ、喘ぐ女の顔を見たい。あのアフロ野郎がどんなプレイをしているのか。  
気がつくと、両の手はその部屋の扉を押していた。部屋の中にこもった嫌な臭いがデンジの鼻腔を刺激する。  
光が差し、カーテンすら閉められていない、明るい部屋の中に、一体化した影が一つ。床の上に転がるそれは、なんとも異様な物体だった。  
赤いアフロが激しく動いている。まるでポケモンの交尾のように、後ろから女を突いていた。  
「そこ! おかしく、なっちゃ…あうっ!! あぁあん!!」  
アフロに突かれているのは、昨日知り合ったばかりのエリートトレーナー。なんでも、オーバのファンらしい。  
出会ってすぐに食っちまうとは…。親友に対し大いに呆れるも、目の前の情事に対し、興奮し、反応している自分がいる。  
(くそっ……なんでアフロの交尾ごときに……)  
このままここに経っていると、理性が吹っ飛んでどうにかなってしまいそうだ。  
部屋に戻るという本来の目的も忘れ、逃げるようにその場を後にしたのだった。  
 
 
「困ったな……」  
しょうぶどころの隅の席で、うなだれ、頭を抱える。あの様子じゃ1日中ずっとあの調子だろう。  
親友の性癖くらい知っている。あいつは、自分が燃え尽きるまで延々と交尾を繰り返すはずだ。  
このままここで少し時間を潰して戻ったとしても、あの悩ましげな声を聞き続けなければいけないと思うと、げっそりとしてしまう。  
アフロには後で十万ボルトでもあびせるとして……まずは今後の予定を立てなければ。  
「あ、デンジさんじゃないですか!!」  
頭を起こすと同時に元気を音で表現したかのような明るい声が自分の名を呼ぶ。  
デンジには、この声の持ち主がすぐにわかった。そして、自分の視線の先に少女がひょっこりと現れる。  
「こんにちわ〜! デンジさん、来てたんですね!」  
「ヒカリか。……相変わらず元気だな。」  
褒めたつもりではないのに、ヒカリは頬を桜色に染め、苦笑する。まったく、こっちは予想外の光景を見てげっそりとしているのに……。  
「それで、お前はなんでここに? 今日はバトルタワーで新記録出すー、とか言ってなかったか?」  
「うぅ……それが、最低記録で終わっちゃったんです。3連勝しか出来なくて、ジュンくんパパに笑われました……。  
あ、そうそう! その後、メリッサさんと会ったんです! それで、しょうぶどころでバトルしようって言われたんですけど。  
うーん。いない、ですねぇ…。メリッサさん、どこ言っちゃったんでしょうか?」  
デンジはくつくつと笑った。やはりヒカリは面白い。見ていて飽きないと言うか。  
一つの話をするのに、何度も何度も表情が変わる。くるくると変わる彼女の表情を見ていると、げっそりしていた気分がすっかり晴れた。  
「あ、そうだ! デンジさん、この後、予定ありますか?」  
「ん? あ、いや、別に……」  
「だったら、別荘に遊びに来ませんか? メリッサさんもいないし…。あ、デンジさんがよかったら、でいいですよ!!」  
別荘とは……たかだか10代の少女が口に出す単語ではない。そういえば、ヒカリの別荘には、まだ行ったことがなかった。  
ホウエンの資産家の息子が手放した物件を、通りすがりの少年に強引に押し付けられたと言っていたが。  
「ああ……行く。」 気がつけば、ほぼ無意識に返事を返していた。  
 
リゾートエリアにあるヒカリの別荘とやらは、別荘というにはやたら質素だった。  
本来別荘というのはこんなものなのだろうか。別荘と言えば、無駄に豪華絢爛なイメージがあったのだが。  
中に案内されても、質素だという第一印象は変わらない。なにせ、物がかなり少ない。  
「随分と持て余してるみたいだな。」  
「そこのカタログについてる家具、ものすごく高くて買えないんですよぅ! 今ある物はシロナさんから譲ってもらった物なんです。」  
テーブルの上に置かれたカタログにざっと目を通してみる。そこに連なっているのは、特注品の家具ばかりだった。  
なるほど、確かに子どものお小遣いで買えるような代物ではない。正直、自分にも迂闊に手を出せない額だ。  
「飲み物お出ししますね。紅茶でいいですか?」  
「ああ。」  
パタパタと台所へ駆けていくヒカリを目で追う。この質素さに妥当なくらいマッチしている台所。  
陶器のぶつかる音とガスコンロの音が、静粛な空間を切り裂く。  
鼻歌交じりに紅茶を沸かす彼女を見ていると、無意識に視線はひらひらと揺れるスカートに釘付けになっていた。  
その光景が、先ほど見てしまったあの、交尾と重なる。あれ以上に激しく動くアフロの腰。淫乱な獣へと化してしまったあの女。  
目の前にいる純粋無垢な少女も、あの女のように快楽に溺れ、自ら乱れていくのだろうか。  
デンジはおもむろに立ち上がった。その足は、ゆっくりと彼女のほうへ向かっていく。  
「あ、ご、ごめんなさい、待たせちゃって!! 紅茶入れるの初めてで! そうやっていいかわかんなくて―――」  
「紅茶は、もういい。」  
呟くようなデンジの声が耳元に届いた瞬間、後ろから抱きすくめられた。手に持った紅茶の瓶が、音を立てて床に落ちる。  
 
「ヒカリ。俺は、君に興味があるんだ。」  
マフラーと帽子を取り、彼女の耳元で呟く。耳まで真っ赤になっている様子がよくわかる。  
「ふぇ、ええと、な、なな、な、なん、ですか?」  
慌てる様子がデンジの理性を刺激する。歳相応に可愛らしい反応だとデンジは思った。  
黒髪に鼻をつけると、ふんわりと甘いシャンプーの香りがする。彼女らしい清潔な香り。  
こんな少女が、あのように激しく入り乱れるかと思うと、ぞくぞくとする。  
「君が淫乱になっていく姿を見たい……」  
「いんらん、って、な―――」  
ヒカリの言葉も待たず、抱きかかえて寝心地のよさそうなベッドに連れて行くと、そのまま彼女に覆いかぶさった。  
「ふええぇっ!!? で、で、デンジさん!!?」  
顔を真っ赤にし、何が起こっているかわからない、といった目でデンジを見上げるヒカリ。  
どうやらヒカリには性知識というものが皆無らしい。男が女に覆いかぶさってすることといえば、一つしかないのに。  
「あの、つ、つ、疲れてる、のなら、このベッド、貸しますよ!!」  
「いいや。これから疲れるんだ。俺も、君も。」  
明るい声が紡ぎだされる唇を、瞬時に塞ぎ、口腔を犯す。貪るように、わざと荒っぽくしてみる。  
2人の唇の隙間から漏れる熱っぽい吐息。その隙間から更に、生じた唾液が零れ落ちる。  
どれくらいそうしていただろう。彼女が苦しげな声を上げると同時に、唇を離した。  
舌と舌を唾液の糸が繋ぎ、彼女の熱い息が、デンジの唇にかかる。  
「デンジさん…。な、なんか、変、ですよぉ…」  
「変? どこが。」  
「私、なんだか、どきどきしてる……」  
「ふぅん……じゃ、確かめてみる。」  
鼓動を確かめるには、胸に耳をつけるのが手っ取り早い。ヒカリの衣服を剥ぎ取り、膨らみかけの小さな胸に、耳を押し付けた。  
「本当だ……」  
ヒカリは声を上げなかった。というより、叫びたくても声が出ない、といったところだろうか。  
なんにしても、先ほどから自分の頭をぐいぐい押してくる手が邪魔でしょうがない。  
「手、縛るから。」  
「え、えぇっ……!?」  
慣れた手つきでヒカリの手を縛り、ベッドの柵に縛り付ける。  
「で、デンジさぁん! ほ、ほ、ほどいてくださいっ」  
顔を紅潮させ、潤んだ目で自分を見上げるヒカリ。なんていい眺めなんだろう。思わず口元に笑みが浮かんだ。  
たかが10代の少女でこんなに興奮するとは思わなかった。ズボンの中の自身は、明らかなくらい硬化している。  
「可愛い……」  
何度も何度も、嘗め回すかのようにヒカリの姿を視姦した。この姿を脳にしっかり焼き付けておきたい。  
服をまくられ、あらわになったくびれや、少女らしい膨らみかけの胸。その登頂は恥らうように淡い紅色に染まり、ぴんと立っている。  
そして、下半身を覆うものは何もなく、足にはニーソックスのみ。なんとそそられる光景だろう。  
幾度となく女の体を見てきたが、これほどまでに恍惚とさせる肉体は初めてだ。  
十分すぎるほどに視姦したのち、一つ一つ味わうかのように、前戯を開始した。  
どうすれば彼女は乱れるだろう。そればかりが頭の中にある。  
先ほどから色々な場所を舐めたり、くちづけたり、撫でたりしているが、可愛らしい反応しか返ってこない。  
「んっ……ひゃぁぅん……! ふぁ、ぁあ……」  
自分が思うような反応ではないものの、デンジ自身の劣情を煽るには丁度よい。この声をもっと聞きたい。そう思えた。  
「ほら、もっと、もっと―――」  
頑なに閉じられた足を強引に開き、閉じられないよう間に体を滑り込ませる。  
まだ誰にも侵入されたことがないであろう、恥らうような桃色をした花弁に強引に口を押し当て、わざとらしく音を立てて味わう。  
ヒカリの体が海老のように跳ねた。そして、甘い声が一変、艶かしい嬌声に変わった。  
そう、自分はこれを欲していたのだ。この声が聞きたくて、彼女を―――  
口元に自然と笑みが浮かぶ。こうなってしまえばもう止まらない。すべての行為を終えるまで。  
まったく、自分も奴のことをとやかく言う筋合いはないなと、思いつつ、ヒカリの反応を存分に楽しんだ。  
 
「ヒカリ…どうだ、気分は」  
体中が紅潮し、湧き出た熱に浮かされているらしいヒカリは、息を切らしながらも、返事を返した。  
「あの…う、まく、言えないんですけど……。なんだか、すっごく…」  
「すっごく?」  
「えっ、と、その……、お腹の辺りが、じゅん、ってなって……えっちな気分、です……」  
言い終えた後、羞恥心に駆られたのか、ヒカリは真っ赤になった顔を背けた。その瞬間はっとなった。  
気付いてしまったのだ。いや、本当はずっと前からわかっていたことなのだけど。  
思わず苦笑してしまった。何てことだ、と。突然笑い出したデンジを不審そうに見つめるヒカリ。  
「デンジ、さん?」  
「くくく……いや、何もない。」  
ヒカリの裸体を見て興奮したのも、ヒカリの入り乱れる姿を見たいと感じたのも。  
すべて、自分が気付かぬうちにヒカリとそうなりたい、と願っていたからだったのだ。  
自分の気持ちに気付くよりも先に、自身の快楽を優先するなんて。これでは、自分もアフロと同じではないか。  
なんて馬鹿馬鹿しい。自分自身を自虐するのと同時に、あれほどいきり立っていたもう一人の己が、急激に萎えていった。  
「なぁ、ヒカリ。」  
「な、なんですか…?」  
そう答えて欲しい。だけど、答えてくれる確立はほぼ0%だろう。  
懇願と自嘲をこめて、最後にヒカリに尋ねた。  
「俺がもし、もう一度こういうことを―――いや、これ以上にいけないことしようとしたら。  
ヒカリは、どうする?」  
彼女は目を丸くした。ああ、きっと自分の思ったとおりの答えが返ってくるだろう。  
ヒカリはしばらく黙った後、頬を染め、はにかみながら、呟いた。  
「デンジさんなら……しても、いいです。」  
思わず目を見開いた。  
 
 
萎えきったはずの己自身が、再びむくむくと膨張し始める。  
 
 
 
 
 
END  
 

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