家に戻る頃には空は紺色に染まっていた。
家に戻るまでの間、二人の間には殆ど会話はなかった。ただ、行きと違って手を繋いでいた。
細々とした夕食が終わり、リビングで食後のお茶を飲んでいたその時、隣の席でずっと何事か
考えていたらしいイエローが突然話を切り出した。
「レッドさんはいつから私のこと好きだったんですか?」
レッドは吹き出しそうになったお茶を飲み込み、結果むせてげほごほと咳き込んだ。なんとか
息を継いで尋ね返す。
「そんな事聞いてどうするんだよ」
「だって……」
イエローは口元をマグカップで隠すようにし、
「まだ少し信じられないんですもん。実感できないって言うか」
そう述べた後少し赤くなった。レッドはそれを見てひとつ悪戯を思い付いた。
「じゃ、カップ置いて」
「?こうですか」
馬鹿正直にカップを置くイエロー。レッドはその顎に手を掛け、素早く唇と唇を重ね合わせる。
イエローの身体が硬直した。構わず、レッドはイエローの唇の間に舌を差し込んだ。急な
出来事にびっくりしたためか半開きになっていた歯の間まで一気に侵入する。
イエローはびくんと身体を震わせたが、レッドの舌を噛むことだけはしなかった。それが
反射的なものであれレッドを傷付けることを良しとしなかったのだろう。それをいいことに
そのままイエローの舌を探り当てる。胸に当てられたイエローの両手に力がこもった。しかし
その腕に身体を押し返される前に、レッドの腕はイエローの腰を引き寄せて動けなくしていた。
もとはといえば俺のせいだけど、俺がイエローを好きだってことは信じて欲しい。舌を絡める
ようなキスは初めてだったが、その思いがレッドを初めて感じる他人の舌の感触に驚かせること
なく対応させていた。
逃げる舌を追いかけて捕まえる。それを繰り返すだけで二人の舌は絡み合った。その感触は
レッドを支配するのに充分だった。今の刺激に慣れるとさらに深く入れていく。動きは次第に
大胆になり、わずかに息を継ぐだけで唇と舌の絡む音が漏れ始めた。
「ん、んっ……はっ……あ」
一向に止まないキスにイエローの口の端から唾液が伝った。細い身体から力が抜けて
レッドの胸にもたれかかる。イエローは今朝からの薄いワンピースのままだった。布越しに
あたたかい胸を感じた時、レッドは自分の中のブレーキが壊れた気がした。
ワンピースの背中にファスナーを探り当てると金具を片手だけで引き下ろす。すべすべの
背中に手を這わせるとイエローは敏感に反応した。冷たい指先を避けるように背中を
しならせる。
「っ、はあっ……駄目、駄目ですっ……」
やっとの様子で唇を放して、イエローはかくんと俯いた。いやいやをするようにかぶりを振る。
右側の肩ひもが二の腕までずり落ち、瞳はとろんとして潤んでいる。本人の言動とは逆に
ひどく誘ってみせているような姿だった。
身体には未だに力が戻っていない。その頬に手をあてて上向かせると、レッドは言った。
「好きだってのはこういうことなんだ……多分そうだと思う。初めてだからわからないけど
好きならこうするもんだってのは知ってる」
レッドのはっきりとした口調に気圧され、イエローは震える声で弁解した。
「違うんです……解らない……わからないんです、どうすればいいのかわからない」
言葉は途切れ途切れで要領を得ないが、それでも言いたいことは解った。
鼻先が触れ合うほど近くにいるのに、イエローは必死に目を逸らそうとしている。心の中に
炎のように理不尽な怒りが燃え上がる。同時に、それを自分の中に押し込まなければならないと
強く念じた。イエローを傷付けたくはない。自分はそう思っているはずだ。
そう繰り返すと、レッドは自分の気持ちが少しずつだが確実に落ち着いていくのを感じた。
逃げられないようにきつく抱きかかえていた腕を解いてやる。糸が切れたようにイエローの
身体がくずおれ、ソファの背によりかかった。乱れた服を直してやるとその頭をやさしく撫でる。
「……悪い。ちょっと急だったな……」
努めて感情を殺す。それだけ言うとレッドは立ち上がった。あきらめの吐息をついて、
マグカップを片付け始める。
足を踏み出したとき、ぐっと上着が引っ張られ、レッドは足を止めた。
「──」
振り返るとイエローの手がレッドのジャケットの裾を掴んでいた。
「……待って……待ってください……」
ついぞ聞いたことのないか細い声に、レッドはイエローを見た。顔を伏せていて表情は
わからない。手には力が無く、今にも掴んだジャケットの裾を離してしまいそうなほど
震えている。精一杯の勇気なのだとレッドは気が付いた。ジムリーダー以上と言われる四天王の
ひとりと互角に闘い、最後まで戦意を失わなかった彼女がここまで弱々しく震えているのを
見るのは初めてだった。
「…………わから、ないんです……。怖い……。怖いんです、これ以上されるのが……でも」
今にも消えそうな声で囁く。
「レッドさんに、されるなら……ボク…………どうなってもいい」
「……」
レッドは動揺を隠せずその手を取った。強く握りしめて言う。
「……いいのか?多分、最後まで止まらないぞ」
「……はい」
「最後ってのがどんなのか解って言ってるのか?」
「…………」
返答がなかった。レッドの心胆は一気に冷えた。この状態では流石にまずい。レッドは握った
手の感触を必死に頭から閉め出した。
「俺との関係がぎくしゃくするからとか、そういう事は考えるな。女の子にとっては多分そんなに
甘いもんじゃないから」
拒まれて一度冷静になったのは多分幸運だった。自分も彼女も、こういった行為に走るには些か
若すぎる年齢だ。たとえ合意の上でだって、イエローにどう負担が掛かるか想像が付かない。
でも一方で、押さえきれない自分が再び頭をもたげてくるのをどうすることもできない。
レッド自身、これまで何度も修羅場をくぐり抜けて、肉体的にも精神的にも強くなっていた
つもりだった。しかし実際にはこんな弱々しい少女一人を振り切れずに躍起になっている。
「もっと歳いけば少しはラクになるっていうから、それからの方がいいと思う……だから」
「嫌です!」
返ってきたのは強い否定だった。絶句して見やると、イエローが顔を上げてこちらを見ていた。
「お願いです。怖いけど、今レッドさんと離れてしまうのはもっと怖いの……!お願い──」
ジャケットの裾を握る手に力を込め、イエローは涙を浮かべて懇願した。乱れた金髪がぱさりと
彼女の額に落ちる。
「行かないで……」
その声に、最後に残った理性の糸はぷっつりと途切れた。
レッドは無言のままジャケットを脱ぎ捨てるとTシャツ姿になり、イエローに近づく。
ソファの上に座り込んだままのイエローの頬を撫でてやる。涙を拭いている間、彼女は目を
閉じてされるがままにしていた。
その無防備な表情はレッドをさらに煽った。涙を拭いてやっていた手が移動し、細い肩に掛かる。
肩を押すとイエローの身体はあっけなく傾き、背もたれに背中を預けて倒れ込んだ。長い髪が
肩に掛かって肌を隠す。その髪をどかし、肩ひもに手を掛けてゆっくりと外した。
「──」
イエローの身体が目に見えて緊張する。それを見たレッドは覆い被さり、唇を奪った。
「……んっ、はぁ……」
イエローは二度目のディープキスに溺れた。最初は驚いたし、舌と舌が絡んだときのナマコ
みたいな感触は気持ち悪かった。でも、長く続いているとそれ以外の感覚がじわじわと全身に
広がってくる。背筋にぞくりと悪寒が走った。
(……なに、これっ……)
「はぁ、ふあっ」
息継ぎをするたび声が漏れる。身体の力が抜け、イエローはソファに完全に横たわった。
レッドの手が肩から鎖骨を撫で、ファスナーを外したままだった服の下にもぐり込んだ。肩を
出す形のワンピースだったために、イエローは下着を付けていなかった。その為すぐにレッドの
指は直に彼女の胸をまさぐり始める。麓から柔らかい肉を寄せ上げながら、やがて頂へ。その
指先が拙いながらも確実に自分を責め立てているのを感じてイエローは身悶えした。
(……!)
唇が塞がれているため何も言えず、イエローはただ愛撫を受け入れ、それに耐えた。何より
口がきけたところで何を言えるわけでもない。こうしてくださいって、ボクが自分からお願い
したんだから……。恥ずかしさにぎゅっと眼をつぶって、逃げ出したくなる衝動を必死に堪える。
怖かった。もしこのまま抱いて貰えなかったら、自分は一時だけでも男装していたことを
ずっと後悔し続ける事になるかも知れないと思った。他人に肉体を差し出す恐怖よりもその
恐怖の方がずっと恐ろしかった。
胸の部分を覆っていた布地はすでに鳩尾の当たりまでずり落ち、淡いふくらみをレッドの前に
晒している。そこでやっと唇が解放された。
「……!はあっ、はぁ…………ッ!?」
息を付く暇もなく乳首を摘まれて、イエローは声も出せずに仰け反った。自分自身でそうした
時よりもずっと強烈で甘美な刺激が全身を貫く。
「っ、あ、やあっ、駄目、強すぎます……っ!」
両手の指を全てソファに食い込ませてイエローは悲鳴に近い声を上げた。これまで他人に身体を
触れられたことのないイエローにとってはそれだけで達しそうな快感だった。その波に攫われそう
になり、イエローは必死に残った理性にしがみついた。
その様子を見てレッドもまた、加減がわからず戸惑っているようだった。一旦指を離し、「大丈夫
か?」と尋ねる。
「は……あ……」
責めから解放され、喘ぎながらイエローはやっとのことで息を継いだ。理性が戻ってくると
途端に羞恥心が沸き上がってくる。
(ボク、今、レッドさんの前で、こんなカッコで──)
顔を背けるが、嫌が応にもレッドの視線を感じる。その事実に何故か身体の芯が熱くなってきて、
イエローは恥ずかしさにぎゅっと目を瞑った。
「まだ怖いか?」
耳元で囁かれて思わず首をすくめる。恐る恐る目を開くとレッドが少し心配そうに覗き込んで
いた。組み伏せられているから当たり前なのだが、顔が近い。影になったレッドの顔を直視
できずに目を伏せる。
「……わから、ないです…………」
正直に答える。怖い気もするし、もっとして──欲しい気も、する。でもそんな事、死んでも
口に出せない。レッドさんに恥ずかしい子だと思われてしまうのは嫌だった。
レッドはじゃあ、と続けた。
「してる最中は怖くないか?」
「……それは……はい」
本当のことだ。いろんなことされてると頭の中が真っ白になって何も考えられなくなるから
当たり前と言えば当たり前なのだが。レッドは笑った。昼間のちょっと意地悪な笑みだ。
嫌な予感がして静止しようとするが間に合わない。
「じゃ、ずーっと続けてれば怖くないな」
「や、ちょっと待ってくださいっ──あっ!」
胸を庇おうとした両腕は手首を掴まれ、顔の横に固定されてしまった。殆ど同時に、レッドの
頭がイエローの首筋に埋まる。
「──!」
鎖骨を強く吸われ、イエローは震えた。両手に力がこもるがレッドは膂力で押さえ付け、舌での
愛撫を続けていく。その拙さからレッドにも経験がないだろう事はイエローにも想像が付いたが、
レッドは好奇心が強く、また割り切りが早い。最初こそイエローの反応を見ながら愛撫していたが
一旦加減を掴んでしまうとそれからは遠慮会釈無く、好きなようにイエローの身体を弄び始めた。
鎖骨から一旦唇を離し、耳朶を噛み、首筋に舌を這わせながらゆっくりと鎖骨の中心まで降りた
かと思えば、突然胸の頂を口に含み、乳首を舌で転がす。初めてであることがかえって羞恥無く
様々な愛撫を試させているようだった。しかし、同じく初めての経験であるイエローにはたまった
ものではない。
「あっ、あっ!」
感じすぎてしまい、イエローは言葉も発せずに身悶えた。反応する身体を抑えきれない。
身体からは未だ力が抜けない。少しでも気が緩んだら、それこそあられもない姿で喘ぐことに
なってしまうだろう。きちんとした服装や態度を美徳としているイエローにとっては、快楽に
屈服しだらしのない恰好をしてしまうのは恥ずかしいことだった。それもレッドの前で──。
そのため、イエローは乱れまいとして快楽に必死に耐え忍び、その結果余計に体力を消耗して
しまうことになった。
「んっ……気持ちいいか?」
口を離してレッドが訊いてくる。
「……そんな、ことっ……」
「変なところで強情だな、お前」
涙まで浮かべながら否定すると苦笑された。口で否定していても反応から、感じてしまっている
ことがわかるのだろう。イエローは恥ずかしさのあまりここで死んでしまいたいと思ったが、
当たり前だが恥ずかしいだけでは人間は死ねない。
レッドの片手がいつの間にか下半身に回っていた。スカートの下へ入るとするりと腿を撫で、
脚を割ろうと上へ上へと這い上がってくる。
「やっ……」
反射的に脚を閉じて抵抗するイエロー。レッドは少しムッとした顔で身を乗り出した。
「脚、開け」
「や、やですっ」
ぶんぶんと頭を振る。これ以上されたら恥ずかしいだけでなく、自分がどうなるかもわからな
かった。レッドさんの前でみっともない恰好になるのは嫌──。最後の抵抗とばかりにきつく
脚を閉じて抵抗する。
「──」
レッドの瞳がすーっと細められて剣呑な光を宿す。レッドにしてみればOKしたのにここまで
きて何故必死に拒むのかがわからない。煮え切らない態度に流石に堪忍袋の緒が切れたのか、
レッドは突如、爆弾を投下した。
「自分でしてた癖に」
「……」
言っていることの意味が一瞬飲み込めず、イエローは眼を見開いた。レッドは続ける。
「昨日の晩、自分の部屋で、一人でしてたろ」
「────」
イエローははたと思い当たった。瞬間、かっと頭に血を上らせる。脳を直撃されたかのような
衝撃に、頭の中は一瞬真っ白になった。
「な」
何で知ってるんですか!それすら叫べずに視界が暗転しそうになる。自分でもわかるほど尋常で
なく狼狽し、イエローは悲鳴のような声を上げた。
「やっ、嫌、それ以上言わないでくださいッ……」
そう口走った後自分からレッドの言葉を認めてしまった形になったことに気付く。イエローは
肩を震わせ耳まで真っ赤になり、今度こそ「死んでしまいたい」と思った。
レッドの視線から逃れようと必死で身じろぎするが、それがかえってレッドの嗜虐心に火を
付けたようだった。
「ここ、好きなんだろ?自分でしてたもんな」
そう言って足の付け根に向かって手を滑らせる。イエローは自分の感じている顔を見せたく
なくて、捕まえられていない片手だけで顔を覆った。そのため身体から力が抜けてしまい、脚を
割る手を止めることが出来ない。下着の中に手が差し込まれ、まだ薄い恥毛を割りながら侵入
してきた。
「──!」
秘所に到達された瞬間、イエローの身体は電流が走ったように震えた。そこはすでに涙が
溜まったように潤んでいて、下着までしっとりと湿っていた。レッドは見つけた花弁の中心を
人差し指の腹でぐっと押す。
「ああっ、やあっ!」
身体中で最も敏感な部分を擦られ、イエローは身を捩って声を上げた。レッドはすぐに侵入は
せず、指を動かしてそこを弄び始めた。花弁を撫でるように擦り上げ、初めて触れるその形を
確かめるようにひとつひとつ丁寧にまさぐっていき、最後は再び中心に戻る。
下着は剥がされずらされて、すでに用をなさなくなっている。擦られている場所は火が熾った
ように熱くなり、あっという間に身体全体に回っていった。
「俺の名前読んで、こうやって」
「や、はぁ、お願い、もう言わないでくださいっ!」
懇願する。恥ずかしくて恥ずかしくて涙が零れてくる。レッドが言っている事が本当のことだけ
に、段々と早くなっていく指の動きから逃れられない。それが激しくなっていくにつれ、イエロー
の喘ぎも高く早くなっていった。
レッドの度重なる愛撫により高まりきった身体を押さえきれず、突如土手が決壊して大水が
流れ込んでくるような感覚と共に、イエローは白い肢体を跳ねさせた。
「ひぅ、あ、あ──!」
大きく背筋をそらし、息を吸い込んだ声が悲鳴を上げたかのように響く。達したのだ。
「……!」
初めて他人の手で達せられた身体は全身の痙攣が収まらず、イエローは背中をそらしきった
反動で身を縮めながら、暫くの間大きな波に耐えていた。
ふっと全身から力が抜ける。脚を閉じようと身じろぎすると自分の中から溢れてくるものが
信じられないくらいの量になっていることに気付いた。おそらくレッドの指をつたって新品の
服まで汚しているのだろう。想像し、イエローはどうしようもない羞恥に身を縮ませた。
「……っ」
ぽろぽろと涙が溢れてきて止まらなくなる。
(……レッドさんの、前で……ボク……ボク……)
もう駄目だ、顔も合わせられない──。顔を背けて泣き続けるイエローに、レッドは我に
返ったように瞬きした。
「……あー。ちょっと、やりすぎた?」
呟くと手首を掴み続けていたもう一方の手を離す。イエローはその手でも顔を覆って泣き続けた。
レッドは困り切って顔を覆う彼女の手に自分の手を重ねた。
「何でそんなに泣くんだよ……」
「っ……だって……あんなところ、見られただけでも恥ずかしいのに……」
意地悪ばっかり言うから──泣きながら途切れ途切れに言葉を紡ぐと、レッドは苦笑いして
悪かったと呟いた。
「恥ずかしくなんてないよ。て言うか、可愛いと思った」
「……可愛い?」
イエローにとって思いもよらない言葉だった。
「イエローも女の子なんだって思った」
「……」
目を丸くしてレッドの言葉を反芻する。
「そうか、ボク、女の子なんだ……」
「どうしたんだよ、イエロー」
何を今更といったレッドの口調に、イエローはかぶりを振って、ううん、何でもないんです、と
呟いた。いくら可愛い服を着て女の子に戻ったつもりでも、そう思ってるのが自分だけじゃ
駄目なんだ、と思う。レッドさんがこうしてくれてるのって、ボクのこと女の子だと思って
くれてるからなんだ。
レッドはそっとイエローの髪を撫でた。
「だから俺にもっと可愛いところ見せてくれよ」
「……」
「脱がすぞ」
レッドの手がショーツに掛かる。イエローは何も答えなかったが拒否することはなかった。
飾り気のない真っ白なショーツが脚から引き抜かれる。
ボク、一人でしてたとき、確かにレッドさんのこと考えてた。イエローは素直に認めた。レッド
さんにもっと色んなことして欲しい。レッドさんなら、ボクの恥ずかしいところもみっともない
ところも全部受け入れてくれる。スカートの裾を握りしめて、イエローは今度は素直に脚を開いた。
丈の短いスカートは秘所を隠しきれず、まだ固く小さいがこれまでの愛撫によって充血し、蜜を
溢れさせている蕾が露わになる。
「……その」
恥ずかしそうに顔を背けるイエロー。その唇が微かに動いた。
「ボクのこと……見て、欲しいん、です……」
後半は消え入りそうな声になっていたが、レッドにははっきり聞きとれた。自ら脚を開いた
イエローに微笑み、その脚に触れる。
「イエローって意外にエッチなんだな」
レッドの言葉にイエローはぴくんと肩を震わせた。秘所がじゅん、と熱くなる。レッドの目の
前で新たな蜜が溢れ出した。
「……!」
ぎゅっと眼をつぶって恥を堪え忍ぶ。
「レッドさんのこと考えると、こうなっちゃうんですっ……」
「うん──わかってる」
腿の内側を撫で、顔を近付けると、花に止まる蝶のように花弁の中心に吸い付く。
「あっ!?」
脚を跳ねさせ、イエローは叫んだ。
「駄目っ、そんなところ舐めたら汚いですっ」
「よく知らないけど、俺の読んだ本だとこうしてたから」
「こ、こうしてたって……」
絶句するイエロー。レッドは顔を上げてイエローと視線を合わせた。
「お……美味しいんですか?」
「んー……美味しくもないし不味くもない。よくわからないけど」
ズレ気味な質問に律儀に答える。
「イエローが気持ち良さそうだからいいんじゃないか?」
イエローが真っ赤になって押し黙ったのを契機に、レッドは再び舌を使い始めた。
「ん、くぅっ!はぁん」
生暖かい舌が割れ目を舐め上げるたびに、イエローの身体は暴れ回った。レッドは両手でその
太股を押さえ込んで固定する。蜜壺の入り口を吸い上げ、舌の先で掻き回してみると、思ったより
ずっと柔らかい。少し中に入ると押せば潰れてしまうんじゃないかと思うくらいだった。
蜜壺はレッドの舌に応えるかのようにさらに蜜を溢れさせた。それを大きく舐め取ると
またイエローの体が震える。彼女の喘ぐ声は快感を忠実に反映していて、レッドの愛撫で気持ち
よくなっているのがレッド自身にもわかった。
ぴちゃ、ぴちゃと卑猥な水音が二人だけの部屋に響く。舌を這わせているうちに、レッドは上の
方にある小さな豆に気付いた。くっと口に含むと皮が被さっているのがわかる。
「っ、はあっ!?」
同時にイエローの身体が突然大きく跳ねた。悲鳴に近い声を上げて身体を硬直させる。
「やっ……何なんですか、そこっ……」
「そうか、ここがいいんだな」
ここまで来ると彼女をいかに苛めるかが楽しくなってきているレッドは、そんなイエローの
反応を楽しむかのように行為を続行した。
「ちょ、そんな事言ってませんっ……んあぁ!」
突起を舌でざらりと舐めて抗議を封じる。レッドは最初は弱く、次第に大胆に、舌でそこを
責めていった。そして再び指を花弁にかけると、蜜壺の中にゆっくりと沈み込ませた。
「……!」
イエローは自分でも信じられないくらい感度が高くなっていることを認めざるを得なかった。
レッドの指が自分の中を蠢いているのがわかる。蠢きは止まることが無く、内壁を抉るように
蜜を掻き出していく。うねうねとそれだけが独立した生き物のように動きながら入り込み、
急激に彼女の神経を浸食していった。同時にクリトリスをも責められて、躰の中心が二箇所から
マグマを流し込まれたかのように疼く。
熱いなんてものではない。ようやく慣れてきたと思っていた快感が、熱さを通り越し針のように
鋭く彼女を責め立てた。耐え難さに腰をくねらせ、イエローはまるで網にかかった魚のように
悶えた。視界が霞むほどの快楽に晒されながら、彼女は自分自身の絶頂が近いことを感じていた。
こんなの耐えられない、耐えられるわけがない──
「やはあ、は、ひああ────ああああ!」
限界はすぐにやってきた。電流が全身を貫いたかのように、イエローの身体がびくんと大きく
一度飛び跳ねる。
「っ……あ……」
わずかに呻いて余韻に浸る。やがて思い出したように酸素を求めて荒く息をつき始めた。
「またイったな」
「……イっ、た?」
最早ろくに言葉も発せず、ぐったりとした身体を横たわらせて呟く。弛緩しきった手足は言う
ことを聞いてくれず、身を起こすことさえおっくうだった。
「ホントに何も知らないんだな」
うん、可愛い。とにやにやするレッド。
「……ずるいです……ボクばっかりこんな風に……」
責めるような声を出したつもりが、猫が甘えて出すような声になってしまう。何もかも相手の
思い通りになっている気がして、イエローは横たわったまま不満を漏らした。
その言葉を聞いたレッドはふと真面目な表情を浮かべた。
「──じゃあ、俺もイかせてくれるか?」
イエローは瞬きし、レッドを見上げた。
「レッドさんも……こうなるんですか?」
「ああ。性別違うから、イきかたも違うけどな。気持ちいいのは同じ」
「……じゃあ」
イエローは真っ直ぐな眼でレッドを見上げた。
「レッドさんにも気持ちよくなって欲しいです」
「正直、俺もそうしたいんだけどな」
レッドの苦しそうな声が響く。イエローはそこで初めて、レッドが脂汗を浮かべているのに
気が付いた。何かを必死に耐えているような顔。
「痛い思いさせると思うから……まだちょっと迷ってるんだよな」
そうか、とイエローは思い当たった。ボクがレッドさんのことを考えると止まらなくなる
みたいに、レッドさんも……。それに気付くと身体がレッドを受け入れようとまた疼き始める。
「……っ」
イエローは力の入らない身体を肘で支えて上半身を起こした。
「──いいです。痛くても……だから」
その言葉を聞いたレッドはすまなそうに、そして嬉しそうに眼を細めると額をくっつけて囁く。
「ありがとな。俺ももう我慢できそうにない」
体を離すと、レッドはベルトに手を掛け下着ごとズボンをおろした。体格相応ではあるが
既に大人と変わらない形のそれが顔を出す。
「いくぞ。ちょっとの間我慢しててくれよ」
腰に手をあてると、それに応じるようにイエローが目を閉じる。緊張に身体を固くしている
イエローに、レッドはその身体を撫でて声を掛けた。
「力、抜いて」
「ん……はい……」
わずかに力の抜けた肢体の割れ目に先端を当てると透明な液体がくちゅ、と音を立てる。
割れ目はこれまでの愛撫により、小さいながらも柔らかく口を開けていた。レッドはそのまま
力を込め、彼女の中へゆっくりと押し入っていった。
「はぁ……っ!あっ!」
身体をひきつらせてイエローがちいさく叫ぶ。その手は身を屈めたレッドの背中に回され小さな
引っ掻き傷を幾つも付ける。しかしレッドに構っていられる余裕はなかった。小さな穴にねじ
込んだそれは柔らかいがきつい内壁に締め付けられ、今にも精を吐き出してしまいそうになる。
「ごめん……っ、痛いか?」
途切れ途切れに尋ねると、弱々しいがはっきりとした声が返ってくる。
「大丈夫、大丈夫です……」
目尻に涙を溜め苦しそうな顔をしながら、それでもイエローはそう答えた。明らかに強がって
いるのがわかったが、健気にそう繰り返すイエローにレッドのそれはさらに体積を増し
イエローの中を圧迫した。
「……っ……」
(現金だな、俺……)
貫き切ってしばらくすると、ようやくイエローの表情がやわらぎ始める。うっすらと眼を開け、
イエローは身じろぎしないまま──おそらく下手に体を動かすと余計に痛いので動かせないの
だろう──大きく息を継ぎながら尋ねてきた。
「……終わったん、ですか?」
「これで終わりってわけじゃないけど、一応全部入ったから……しばらくこのままでいた方が
いいな。すぐ動くともっと痛いだろうから」
嘘だ。本当は動きたくてたまらない。しかしイエローのことを考えると無理に動くことは
はばかられた。
その時イエローがかすかに動いて唇を開いた。
「レッド、さん……ボクは大丈夫ですから……」
「……」
「レッドさんが動いた方がいいなら、そうしてください……」
「──おい」
苦々しく呻く。
どうしてお前はそうやって、俺の理性を崩壊させることばっかり言うんだ──レッドは忌々
しさすら覚えてそう思った。何も知らず何もわからない状況で全てを自分に委ね恭順する。何でも
自分で出来る、自分を捜すためだけに少年になってまでここまでやってきたイエローという少女。
そのふとした瞬間、ふとした仕草や行動が自分のたがを外し、自制をきかなくさせる。
こういうのが本当に『惚れた』ってやつなんだろうか。レッドはイエローの手を取り、掌を
合わせて握りしめた。
「イエロー……お前、すごく可愛い」
「……あっ……レッドさ……」
その言葉を聞いたイエローが小さく呟いて身体を震わせる。同時にその中がぎゅっと収縮し、
レッドのモノを締め付けた。
「あ……は……!レッドさん……!レッドさぁ……!」
女を開花させたイエローの躰が喘ぐ。その淫靡さにまた欲望を刺激され、レッドは腰を動かした。
内壁の締まりは更にきつくなり、レッドのそれから精液を搾り取ろうと容赦なく吸い付く。
レッドはその動きに逆らわず、むしろ進んで自身を差し出していった。
「く、はっ、っ」
「っ、ひう、はあ」
際限なく溢れ出る陰蜜と破瓜の血が絡み合い結合部分から掻き出され、乱れたスカートの裾に
水たまりをつくっていく。律動は回を増す事にスムーズになっていき、それに従ってイエローの
声も苦痛のそれから快感を享受しているそれへと変わっていった。
「やああ、ひう──あっあ」
突き上げられ揺さぶられるイエローの朱に染まった肌に金色の髪が何本も張り付き、汗を吸って
きらきらと輝いている。かぶりを振りながら「もう駄目」と狂ったように叫ぶ声を遠くに聞きなが
ら、レッドもまた限界を感じ始めていた。身体の芯の高ぶりが加速度的に増していく。それはイエ
ローも同じのようだった。喘ぎが耐えきれないと言う風に速さを増していき、最後には声を
なくして息だけで悲鳴を上げた。絶頂の印として白い肢体が大きくわななく。
「────!──────!」
最後の悲鳴とともに膣内がひときわ強く収縮し、レッドのモノをきつく締め上げる。締め上げ
られる快感がレッドの限界を超過し脳裏を真っ白に灼いた。
「……っ!」
ぎりぎりのところで引き抜く。引き抜かれた瞬間、その先から脈打つような感覚と共に精液が
迸った。ねばねばとした大量の白濁液は少女の躰を汚し、ただ一色に染めていった。
朝。
いい天気だった。
「……」
「……」
二人は向かい合って朝食をとっていた。しかし、
(……会話がない)
(どうしよう……)
二人揃って昨晩の相手を前に悶々としていた。
向かい合ってと言ってもレッドはほぼ横向きと言っていいほど身体の芯をずらして座っているし、
イエローはイエローで俯いたまま殆ど顔を上げようとしない。気まずい雰囲気が朝の涼しい空気に
混ざってしばらく流れていった。昨晩のうちに行為の跡を片付けてしまって本当に良かったと思う。
そうでなければ気まずさは今の比ではなかっただろう。
結局、沈黙は二人が家を出る直前まで続いた。同時刻に玄関の前ではちあわせたことでやっと
口を開く。
「──じゃあ、気をつけてな」
「はい……レッドさんも」
イエローは麦わら帽子を被りながら答えた。それを見たレッドはふと気になって尋ねる。
「なあ」
「はい?」
「女の子の服、昨日のやつ以外に持ってないのか?」
「いえ、最近は着ていなかったけど一応一通りは……」
「じゃあ何でまだその恰好なんだ?」
イエローはこれまで通りのまま、少年の恰好をしていた。初めて出会った際、彼女はれっきと
した女の子の恰好だった。レッドに性別を明かしてしまった後なら町に出ていくのにわざわざ
その恰好である必要もないはずだが……
レッドの疑問の視線に、イエローはちょっと顔を赤らめた。玄関のドアを押して明けたところで
立ち止まる。
「……その」
イエローは少しだけレッドの方を振り向いた。照れたように微笑み、
「……女の子に戻るのは、レッドさんの前だけにしたいなって、そう思ったんです……それじゃ」
目をまん丸くするレッドを振り向きもせずそのままぱっと玄関を出ていった。