「ポケルス?」  
ポケギア越しで興奮気味に語る相手に、冷静な声で返す。  
青いジャケットに黒のジーンズ、ポケモンを模って作られた首飾りをしている、目つきの鋭さが目立つ青年である。  
コガネシティへ向かう途中の34ばんどうろで、休憩がてらに昼食をとっているとポケギアが鳴った。  
「ああ!噂では聞いたことがあったが、まさか自分のポケモンがかかるなんてツイてるぜ!」  
「……かかる?ってことは病気か何かか。何で喜んでるんだ」  
話している相手は昔からの幼馴染で、同じポケモントレーナーだ。  
自分と真逆の性格の、常にテンションの高い彼となぜ友人なのか自分でも理解に苦しむが、連絡は良く取り合う。  
彼は自分とは違い、ポケモンをえらく大事に扱っているので、そのような理由で喜んでいるのが分からなかった。  
「病気というか、ウィルスだな。なんでも、かかったポケモンの成長を早めるとか」  
「……ほう」  
妙なウィルスもあったものだな、と思いながらも友人の話に食いつく。  
最近、ジム戦にあと一歩及ばず敗北してしまい、手持ちの力不足を感じていた青年には実に興味をそそられる内容だ。  
「それは、どこで伝染った?」  
「えーと……36ばんどうろだな。まだ感染してるやつもいるかもしれねーな」  
「わかった、ありがとう」  
そう言い、ポケギアを閉じる。  
だが、肝心の感染方法を聞いていない彼は、あいつも物好きだな、などという盛大な勘違いをしながら、目的の場所へと歩を進めた。  
 
36ばんどうろに着いた時には、日は既に沈み、月光が辺りを照らしている時間帯になっていた。  
今の季節は、虫ポケモンの飛翔が織り成す光の軌跡がとても美しく、街の喧騒もここまでは届かない。  
野生ポケモンがいる草むらからは距離のある、小高い丘の上。  
待ち合わせ場所に便利そうな目立つ巨木の前まで来て、彼は自分のポケモンを呼び出す。  
「出てこい、フシギソウ」  
モンスターボールの開閉スイッチを押し、眩い光とともにフシギソウが現れる。  
長い間手持ちにいるものの、戦闘があまり得意では無く、フシギソウになったのもつい最近だ。  
進化したての雌の彼女は、まだ自分の身体から発せられる甘い香りや、蜜などがコントロール出来ていない。  
「マ……マスター。何の、ご用でしょうか」  
上から見下ろされる鋭い視線に威圧感を受けながら、フシギソウは上目遣いで用件を尋ねる。  
戦いに不向きな彼女は、必然的にそれ以外の役目で呼び出されることが多い。  
それは、甘い香りで敵をおびき寄せたり、捕獲のために状態異常を与えたり。  
そして、夜に呼び出されるときは、大抵は主人の性処理のためであったり。  
今晩も例に漏れずそうなのか、と思った。もっとも、多少喜んで見えるのは気のせいだろうか。  
「何だ嬉しそうな顔して。そんなに俺の夜の相手がしたいのか?」  
「そ、そんなこと!ないです、けど……」  
顔を赤らめ、徐々に尻すぼみになりながら返答する。  
こういうところは可愛いな、と思うのだがいかんせんバトルで使いものにならない。  
そこで、先程聞いた話を試してみよう、と考えたのである。  
「まあ、今日の相手は俺じゃないがな」  
「……ふぇ?」  
「昼間の話を聞いていただろう?」  
モンスターボールに入っていようとも、辺りの会話やら様子はちゃんと把握することが出来るらしい。  
主人にべったりな彼女は、彼のことは漏らさず見続けている。  
「ポケルス……でしたっけ?」  
「ああ。夜だしこの辺りのポケモン共も盛ってるだろう。お前、ちょっと行って伝染されてこい」  
「……え、ええっ!?」  
予想外の提案である。  
確かに野生のポケモンからウィルスを貰う、と聞くと性行為が容易に思いつく。  
だが、まさかそのようなことを自分に要求されるとは思わなかった。  
「一匹だけじゃ感染するか分からんからな。これから毎晩、感染するまで続けようと思う」  
「そ……そんなぁ」  
主人の出す命令はいつも無茶がある。  
1匹相手にするのだって体力を相当使うというのに、それを毎晩と。  
「言うことが聞けないのか?」  
その言葉にフシギソウはビクッと反応し、身を竦める。  
「わ、わかり……ました」  
「よし。ちゃんとかかって来たらご褒美をくれてやる。さあ、行け」  
「はぁい……」  
トボトボと草むらに向かって歩き出すフシギソウの背を見送りながら、青年は満足そうに木に腰掛ける。  
今日はあいつの叫び声でも聞きながら眠りにつくとしよう。そう思いながら彼は目蓋を閉じた。  
 
「うぅ……マスターのばかぁ……」  
今にも泣き出しそうな声で一人ごちながら、フシギソウは薄暗い草むらへとたどり着いた。  
背の高い草や太い植物などが多く茂っていて、辺りの視界はあまり良くない。  
いつ周りからポケモンが現れるか、と考えると心中は落ち着かなかった。  
「でも、ちゃんと言うこと聞かないとマスターに怒られちゃうし……やるしかないよね」  
以前、主人の命令を聞かずに行動したところ、その日の晩は夕飯は抜かれるわ、明け方まで寝させてくれないわと散々だった。  
そんな仕打ちを再度受けるぐらいなら、きつい命令であってもしっかり達成して、愛するマスターのご褒美にあやかりたい。  
意を決したフシギソウは、身体をぷるぷると震わせ、蕾から『あまいかおり』を周囲に拡散させる。  
普段、黙っていても身体から発せられるそれとは違う濃い香りは、容易に辺りのポケモンを引き寄せる。  
(だ……誰が出てくるかな)  
不安と、多少の期待感を抱きながらその時を待つ。  
この辺りには割と小型のポケモンや、あまり強くないポケモンしかいない。  
もし複数のポケモンに襲われることになっても、さほどきつい羽目には会わないだろう、と高を括っていたのだ。  
彼女自身、あまり気が付いていないが、主人との度重なる夜の営みで身体が性行為の楽しみを覚えてしまったのも、期待感を持つ理由の一つだ。  
すると、さっそく遠くからガサガサと草を踏み分けてくる足音が聞こえてくる。  
まだ遠いのでシルエットしか見えないが、どうやら二足歩行で歩いているように見える。  
以前、この近辺を通った時に、二足歩行のポケモンはいただろうか。  
そんなことを思い返しながら、数秒後に月明かりが照らし出すその姿に、彼女は面食らってしまった。  
(ニ、ニ、ニドキング!?何でこんなところに!?)  
声にならない悲鳴を胸中で上げ、フシギソウは二、三歩後ずさる。  
だが、こちらから姿が見えているということは向こうからも見えているということだ。  
その小さな姿を確認すると、ニドキングはにたっと笑いながら話してきた。  
「よう嬢ちゃん。こんな所にフシギソウがいるなんて珍しいな?」  
(それはこっちのセリフだよ……)  
心の中でつぶやきつつ、表情には出さないように慣れない愛想笑いを浮かべる。  
「え、ええ。ちょっとマスターとはぐれてしまって……」  
ニンゲンの手持ちならそう簡単に手は出されないはず。  
そう踏んでいたのだが、ニドキングはフシギソウの曖昧な笑みから勝手な推測を立ててしまう。  
「んー、何だその複雑そうな顔は。もしかしてお前さんも主人に捨てられた……のか?」  
「ち……違いますっ!」  
お前も、ということはこのニドキングも主人に捨てられたのだろうか。それならばこんな所にニドキングがいることにも納得がいく。  
それより、このままではせっかく立てた予防線が逆効果になってしまう。  
必死に否定しようと言葉を続けようとするが、勘違いをしているニドキングは止まらなかった。  
「なるほどなあ。いやあ、俺もちょっと乱暴が過ぎちまってな……主人に愛想つかされちゃってよお」  
「いえ、私は……」  
「こんないい匂いまで出しちまって、寂しかったんだろ?同じ仲間同士、仲良くやろうぜぇ」  
(聞いてない……)  
蕾の辺りを撫でまわしつつ語りかけるニドキングにげんなりしつつ、フシギソウは観念する。  
どうせ一夜限りだ。体格差など気にしてたらきりがないだろう。  
 
「はい、実はそうなんです……。マスターと毎夜、仲良くしていただいたのが忘れられなくて……」  
頬を赤く染めながら、俯きがちにつぶやく。  
我ながらあからさまな誘いだと思ったが、単細胞そうに見えるこの相手ならこんなものだろう。  
案の定、ちらりと視線を向けると、舌舐めずりをしつつ厭らしい笑みを浮かべている。  
「おいおい、そんなアピールされたら俺だって黙ってられねえな。さっきから身体からいい匂いさせて……よぉ」  
「きゃっ!」  
いきなり蕾の表面を舌で舐められ、敏感に反応してしまう。  
日々著しく成長するそこは、フシギソウの性感帯でもあった。  
「匂いだけじゃなくて味も甘ぇなあ。ここが気持ちいいのかあ?」  
そう言い、中の方へと指先を入れて掻き回す。  
「やっ……!蕾はだめ、ですっ……!」  
普段は秘部への刺激が多いため、慣れないその感覚にフシギソウはすぐに根を上げてしまう。  
その声にようやくニドキングは手淫をやめ、指先についた液を舐めとる。  
刺激から解放され、はぁはぁと息を整え視界を戻すと、ニドキングの股間には既にピンク色の性器が生えていた。  
「へへ、あんまり色っぺえ声出すからすぐ興奮しちまったよ。最近してねえし、もうあんま我慢出来そうにねえんだがなぁ」  
「ちょ、ちょっと待ってください……!こちらも慣らしていただかないと……」  
「おっ、そうか?じゃあまずは充分濡らしてもらうかあ」  
ニドキングは体制を変え、ちょうどフシギソウの目の前へとペニスを持っていく。  
主人のそれより遥かに太くて長い、初めて見るその大きさにフシギソウはごくりと唾を飲む。  
そして、先端へとゆっくり舌を這わした。  
「っぐお……」  
ニドキングが声を上げたのを確認してから、徐々に口内へと運んでいく。  
ご無沙汰と言っていたニドキングの雄からは、ほのかに恥垢の匂いが漂う。  
人とは違う、野性を刺激する匂いにフシギソウの感覚が徐々に麻痺してくる。  
舌を動かしているうちに透明な液が溢れてきて、口元から地面へと流れていく。  
ニドキングの息が荒くなってくるのと同時に、段々とフシギソウは咥えるのが苦しくなっていた。  
興奮が高まってきた性器がさらに大きさを増していたのだ。  
「大丈夫……かあ?」  
「え、ええ……」  
このままさっきの所まで咥えこむのは無理だと判断し、一旦口元から離す。  
そして、先端部分だけ口に含み、さらに蕾の下から蔓を伸ばしニドキングのペニスへと巻き付けた。  
舌を動かすのと同時に、蔓で性器を上下に扱く。  
主人にはやったことがなく、大型ポケモンなら、と思い試してみたが、効果が出すぎてしまったようで、  
「や、べえ……も、もうイっちまっ……!」  
想像より強かったらしいその刺激にニドキングは、あっという間に絶頂に達してしまった。  
フシギソウの喉へと大量の精液が流れ込むが、あまりの勢いに口と蔓を離してしまう。  
結果、数度の吐精を全身で受け止める羽目になってしまった。  
顔や背中の葉、腹部や股下にまで子種が飛び散り、身体中が白く汚れ、濃い雄の匂いが立ち昇る。  
「っくはあ……。すまんなあ、いきなりあんな攻められたら俺も持たねえよ」  
「すいません、です……」  
身体をよじり、届く範囲で付着した液体を嘗めとっていく。  
その度に独特の苦味がして顔をしかめるが、癖になる味でもあった。  
「そんなもん、後で水辺にでも行って洗おうぜえ。それより本番がまだ、だろ?」  
今出したばかりなのに、ニドキングのペニスはまるで衰えていない。  
精液を飲まされたことでフシギソウの本来の目的は達せられたようなものだが、続きをしたほうがいいのだろうか。  
躊躇っていると、ニドキングが自分の脇腹の辺りを太い両の腕で持ち上げる。  
 
「わっ!な、何するんですか!?」  
「何って、これから嬢ちゃんが気持ちよくなる番だろう?あそこを慣らしてやらねえとなあ」  
そう言うと、下から見上げられるような格好になっているフシギソウの秘部をぺろりと舐める。  
「ふあっ……!」  
慣れている刺激とは言え、感じてしまうのは押さえようがない。  
先程受けた刺激で出ていた蜜と、ニドキングの放った精液とが混ざった液体を綺麗にする。  
「へへ……甘いのか苦いのかよく分かんねえ味がするぜえ」  
なおも舌での愛撫を続けると、フシギソウの顔が徐々に惚けた表情へと変わっていった。  
「あっ……そろそろ、大丈夫、です」  
「もういいかあ?それじゃあ、力抜いてくれよ……」  
ニドキングの目線と同じ高さまでフシギソウを下ろして、視線を合わせる。  
見つめられて恥ずかしくなってしまい、フシギソウはギュッと目を瞑った。  
経験があると言った割に初心なその反応に、ニドキングは自然と笑みを浮かべてしまう。  
「可愛いなあ嬢ちゃん。じゃあ、挿れるぜえ……」  
抱えたフシギソウの割れ目へと自分の雄をあてがい、耳元へと囁く。  
そして、ゆっくり押し込むように挿入を始めた。  
「ひゃっ……うぅ……!」  
規格外のサイズのペニスは快感も一際大きいが、慣らされたとはいえ、元々のサイズが違いすぎるので当然痛みも伴う。  
限界まで広がってもきつそうなそこは、ニドキングの性器を強く締め上げる。  
「っく……キツいけど、気持ちいいぜえっ……!」  
「わ……私も痛いけど、気持ちいい、ですっ……!」  
腰を少しずつ押し込んでいくと、最奥へとぶつかりこれ以上進まなくなる。  
それでも、ニドキングの雄はまだ半分程度しか入っておらず、少々物足りなさを感じた。  
「じょ、嬢ちゃん……わりぃけど、さっきのあれ、またやってくんねえかな……」  
「つ……蔓、ですか?」  
「あ、ああ、頼む……」  
こくりと頷くと、蔓を伸ばし、自らに入っていないペニスの下部分へと絡みつける。  
先程は少し強すぎたため、力を加減してゆっくりと動かした。  
「うっ……くっ、い、いぞ嬢ちゃん……!」  
さらに心地よい刺激が加えられ、ニドキングは満足したように腰を引いていく。  
その摩擦に思わずフシギソウは声を上げてしまい、身体をビクンと震わせた。  
一旦引き抜いたそれは、先程出した精液とフシギソウの愛液であやしく月明かりを反射させている。  
「もっと激しく、動いていいかぁ……?」  
「は、い……」  
再び勢いをつけ、膣へと戻していく。  
手持ちから急に野生へと戻った反動なのか、ニドキングは容赦なく本能のまま動き始めた。  
スピードが増していくごとに、フシギソウの理性も吹き飛んでいく。  
ぐちゅぐちゅと二匹の液が混ざり合う音と、彼女のあられもない嬌声が夜の静けさに水を差す。  
「ぐるるぅ……!」  
意味のある言葉も出て来なくなったニドキングは、唸り声をあげさらにピストンを激しくする。  
フシギソウは上下の動きに合わせ喘いでいたが、一際奥まで突かれついに限界を迎えた。  
「ふあああぁっ!」  
結合部から蜜が大量に溢れ出てくる。  
達した衝動で内部をきつく締め、さらに巻きつけていた蔓にもぎゅっと力が入る。  
ラストスパートとばかりに突き上げを強めていたニドキングも、  
「ぐうぅ……ぐるおおおおおおっ!」  
耐えきれずにフシギソウの体内へと白濁液を流し込んだ……。  
 
行為が終わると二匹は近くの小さな水溜りで身体を洗った。  
しきりにフシギソウの今後に心配してくれたが、そもそも自分はニンゲンの手持ちであるので余計なお世話だった。  
「そんな小っこい身体で大丈夫かあ。まあ、達者で暮らせよお!」  
「ええ、そちらこそお元気で」  
ニドキングの姿が見えなくなるまで前足を振り、ようやく溜息をついた。  
「はあ、疲れた。……ちょっとだけ、気持ちよかったけど」  
先刻の自分の姿と、ニドキングの荒々しい姿を思い出し、顔を火照らせる。  
だが、こんな夜が毎晩続いたら身体が先に参ってしまう。  
明日になったらマスターにお願いしてみよう、と思い主人の待つ大樹の元へと向かうのであった。  
 
 
―――翌日、友人からポケギアに電話がかかってきて、前日に言い忘れた正しい感染方法が伝えられた。  
フシギソウが猛抗議し、青年がそれを煩わしそうに聞いていたのは言うまでもない。  
 

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