立て続けな攻撃に、レントラーは立っているのがやっとだった。ほとんど倒れ込むように体当たりをすると、アーボックはするりと避けてしまう。
避けながら放たれたアイアンテールが胴に入ると、なけなしの体力も底を尽く。攻撃に逆らうこともできず、地面に突っ伏した。
「レントラー!」
主人の悲鳴が聞こえるが、霧がかかったようにぼやけた物にしか聞こえなかった。聴覚だけでなく、視覚も全くピントが合わなくなっている。もう、意識が切れかかっているのだろうか。
「自分から前に出てくるからどれだけ鍛えられてるのかと思えば」
男の声が聞こえと思うと、頭を引っ張られた。タテガミをつかまれているようだ。
「コラッタの方がよっぽど良い体当たりするぜ」
吐き捨てられる罵声を受け、地面に叩き付けられた。後頭部の激しい衝撃に、一瞬視界が暗転する。それなのに気を失うことはできず、口の中に広がる血の味に苦痛を引き立てられた。
「やめて! 私のレントラーをいじめないで!」
「うるさい女だな。ちょっと黙らせろ」
「おう」
鈍い音、くぐもった声、人の倒れる音。何が起こったかは目が利いていなくても明らかだった。血圧が上がり、立ち上がろうとしたが、前脚で地面を突くのが精いっぱいだった。
「なんだよ、こいつまだ起きてるのか……アーボック」
蛇特有のシューッと言う威嚇音の直後に、首に激痛が走った。悪寒に似た物が血管を伝って、体表の裏を侵食しているのだけが鮮明に感じ取られた。
死にたくない。そんな悲哀が首をもたげたところで、ようやくレントラーは気絶した。
レントラーの気がついた時、そこは真っ暗だった。意識があっても目は見えないと言うことは、本当に死んだのか。レントラーはそう思って、歩き出そうとしたが、首が何かに繋がれていた。
「……首輪?」
首の辺りを探ってみると、重量のある金属に手が触れる。どうやら首輪をされているのは間違いなさそうだ。焦燥感から首輪を千切ろうと、首を思い切り振ると鋭い痛みが走る。レントラーは小さく鳴いた。咬まれた痕がまだ痛むらしい。
「死んでない……」
そう自覚したものの、だからと言って安堵できるわけがなかった。暗い場所に首輪で繋がれている。フーディンのように聡明なポケモンでなくても、その意味は労せず理解できるはずだ。
監禁。その結論に辿り着くのに一秒も必要なかった。毒が身体中に広がったのと同じように、恐怖心がじんわりレントラーの全身に広がっていった。
監禁。何のために、ここはどこ、逃げられないのか、ご主人は――。ほぼ単語だけの思考が爆竹のように現れては消え、また現れる。
室内飼いの箱入り娘だったレントラーはこんなパニックに陥ったことがなく、それを処理する術を知らなかった。生まれて初めて絶叫し、身体が痛むのも構わずめちゃくちゃに暴れ回った。
全力で走って壁に激突する。跳躍して背中から墜落する。首輪をがしゃがしゃ鳴らしまくる。不安のあまり号泣する――。
「……レントラー、レントラー!」
喧騒のせいで、自分が呼ばれていることに気がついたのは、うずくまってめそめそし始めたころだった。その声に気がついた時、絶望だけだったレントラーの脳裏に一筋の希望が見えた。
「ご主人」
ポケモンの言葉でそう呟いて、声のする方へ顔を向けた。暗闇に慣れた目が映し出したのは、いかにも監禁室らしい、石でできた湿っぽい壁だった。主人は、隣の部屋に入れられているのか。
「レントラー、レントラーなの? レントラーだったら壁を三回叩いて」
言われるがまま、レントラーは壁を三回殴りつけた。壁の向こうから、歓喜の声が上がった。
「レントラー! 良かった! 無事だったんだ! 大丈夫? 怪我は?」
レントラーは、アーボックのアイアンテールのせいで全身打ち身だらけだったが、それを偽って元気に吼えた。
「良かった、私のことは心配しないで。手錠みたいなの付けられてるけどこんなのすぐ――」
彼女の声はそれで突然途絶えてしまった。何が起こったか戦々恐々と耳を澄ましていると、靴音が遠くから聞こえてきた。
向こうの部屋で、扉が軋むのが聞こえた。
「よーっす。良く眠れたか?」
レントラーは身じろいだ。自分をコラッタ以下だと評した男の声だった。靴音はどんどんこちらへ近づいて、間もなく制止した。
レントラーには、靴音は二人分あるように聞こえた。
「おいおい、そんな怖い顔すんなよ。せっかく可愛いのに台無しだ」
「俺は好きだぜ、そういう顔。これからどれだけ崩れるかと思うと、楽しみだ」
短い笑い声がする。レントラーは微動だにせず壁の向こうに耳を集中させていた。
「レントラーに会わせて」
「あいつが生きてるの知ってるのかよ――駄目だ。アレなら何されても簡単に取り押さえられるけど、念のためだ」
「それに、あいつにお前のあられもない姿を見せるのは情操教育上良くないと思うぜ。なあ?」
「ちげーねぇ」
男たちは愉快そうだった。主人に何をするつもりだろう。レントラーは「あられもない姿」が何なのか、レントラーは想像しようとしたが、去年の二月に空から降ってきた白い雪のようなものしか連想できなかった。
「やめて」
震えた声がした。レントラーは、コリンクのころに主人と雪ゾリで遊んだ思い出を、記憶の引き出しにしまった。
「据膳食わぬは、って知ってるか? 小娘」
「やめて」
「いいねぇ、そういう表情。これだから強姦はやめられない……」
「いや、やめて、あっ!」
服が千切られたようだった。壁を挟んでも情景がありありと眼の前に浮かんでくる。レントラーは耐えられなかった。壁に寄りかって唸りつつ、爪で壁を引っ掻く。今のレントラーにできる、精一杯のことだった。
「ああ? 隣のこねこポケモンも起きてるのか」
「ほっとけほっとけ。あいつはどうせなんにもできないだから」
「レントラーをそう言う風に言わないで!」
「うっせーな。黙れよ」
ぱん、と乾いた音が響いた。にわかに怒りで顔が上気する。感情に任せて男たちを罵ると、口からはがうがうと獣が喚く声しか出てこなかった。
「ったく、向こうもうるさいぜ」
「黙らせた方がいいかもな」
「駄目! レントラーには手を出さないで」
「聞いてやるかよそんなの……おい、お前のカイリュー貸せ」
「あ? どうすんだよ」
「あのレントラー雌だからさ。ちょっと待ってろ」
一人分の靴音が遠のいて、扉が軋み、またこちらに近づいてきた。こっちに来るつもりだ。振り返ると、丁度男が扉を開いているところだった。外から差す光に目を細める。
「ほらよ」
男はそっけなくモンスターボールを二個投げた。レントラーの赤く染まった額は一瞬にして青ざめる。出てきたのは、レントラーの身体を散々にしたあのアーボックと、いかにも血の気の多そうなカイリューだった。
黙らせた方がいいかもな。そう男が言っていたのを思い出して、レントラーは戦慄を禁じ得なかった。やっぱり、殺すつもりなんだ。
男が何かスイッチを入れると、白熱灯が弱々しく光った
「好きなだけ、ご奉仕してやりな」
男はそれだけを言い残して、扉を閉めた。どんな奉仕をされるか、想像するだけで気分が悪くなった。
「ずいぶん手ひどくやったんだねぇ、アーボック」
カイリューが口を開いた。白熱灯の光を受けて映し出される大柄な肉体は、健康的な光沢を持っていて見るからに体力が充実していそうだった。
大柄だからか、口調はややゆっくりとしているが、レントラーを気遣っているわけではないことは、言われた本人も悟っていた。
「苦あれば快楽あり、って言うだロ?」
いや、言わないから。カイリューが否定するのに答えず、アーボックが長い胴をくねらせてこちらにやってくる。鱗がずるずると不気味な音を立てた。雪崩のような悪寒が背中を走った。
戦闘経験のないレントラーを、容赦なく打ち付けて瀕死の重体まで追い込み、挙句頸動脈から毒を流しこんだのは他でもないこいつなのだ。
「来ないで」
無意識のうちにレントラーは逃げ腰になっていた。
「おーう、怖いカ、怖いカ? 逃げないとまた、お前の肌に穴開いちゃうゼ?」
フシューッと言う威嚇音とともに、アーボックはゆっくりと真っ赤な口腔を見せつけてきた。
レントラーの爪なんかでは束になっても勝てないような、太くて鋭い牙が青白く光っている。それが、二本もある。
あんなものが、自分の首に刺さったんだ。レントラーはめまいを覚えた。
「おいおい、やめろよ? せっかくの美人さんだ。できれば綺麗なままにしておこうよ」
「安心しろ旦那。今度のは体傷つけないデ、あいつを苦しめられるンだよ」
アーボックの目がギラリとこちらに向いた。原始的な本能で逃げ出そうとしたが、それすら許さないほどアーボックは素早かった。
腰に重い衝撃を感じて、刹那の後には全身にアーボックが絡みついてレントラーを拘束していた。いつのまにか天地逆転して、視界には至極楽しそうなアーボックの牙しか見えなかった。
アーボックの筋肉が唸りを上げ、首と胸部が絞まる。レントラーは、ぐぅ、と無力な声を上げた。
「ククク、苦しメ苦しメ。お前は俺たちに――」
「ねえレントラーに何をしてるの? カイリューたちに何をさせたの!」
白黒する世界の中で、主人の声が聞こえた。アーボックの力が弱まって、いささか色彩が戻ってきた。
「何って、お前のレントラーが雌で、俺のアーボックとカイリューが雄だからさ」
「ああ、交尾させてやるってことか」
「あんたたち馬鹿じゃないの!? 良くもそんなくだらないことを!」
「まー副産物だからくだらないとかどうでもいいよ」
「そうそう。主産物はお前の蜜壺なんだから……」
「ぐっ、やめ、いやあ!」
「レイプする時には電マ使って無理やり気持ちよくさせるのが良いって聞いたんだけど」
「うん、その情報は間違いないだろうな、……濡れすぎだ」
「あっ、うう、違う! 濡れてなんか、」
「ほうほう、濡れてなければ中指なんて絶対入らないだろうけど」
「うあっ!? やめて! うああ!」
「声でかすぎだろ。ほら、ここがいいんだろ?」
レントラーはそれ以上聞いていることができなかった。その理由は、アーボックがまた締めつける力を強めたとか、主人が口を塞がれたようだとか、そんなものではなかった。
「安心しナ。俺たちはお前ニ、あれ以上のことしてやるからヨ」
自分があのようなことをされることに対する恐怖ですら、最たる理由とは言えなかった。
「……おお、泣いてるね。女の人の泣き顔はいいなぁ」
「クク、主人があんな風にされテ、悔しいカ? 悔しいカ?」
まるで、主人に裏切られたような気分になった。レントラーの主人は知らない男に悪戯されて感じてしまうような、阿婆擦れ女ではなかったはずだ。
「心配すんナ。そんなことどうでも良くなるぐらい、気持ちよくしてやっかラ」
「気持ちよくなんか、なるわけない。私のご主人だって……」
なけなしの反論は一笑に付された
「現実を見ロ。いや、聞ケ。壁の向こうから聞こえてくる喘ぎは、誰のダ?」
「なんだかハァハァ言うのも聞こえてきたなあ」
「そんなこと言わないで……」
「いいねェ。もっと絞めつけたくなるゼ」
アーボックの力がレントラーの毛皮を歪める。最早、そこから生じる肉体的な痛みなど、精神的な辛さと比べるとちっぽけで、どうでもよくなっていた。
「いきなり突っ込ムのも、悪くはないんだけどネ」
そう言うと、アーボックはレントラーに巻き付いたままずるずると動き出した。レントラーの目の前にあった牙は、下半身側へ消えていった。
「嫌がっているのに段々感じテいくのが、一番エロスな訳デ」
ある所でアーボックは止まり、そうひとりごちた。
「ひぁっ?!」
股間を何か湿ったものがなぞった。アーボックの舌だ。確認するまでもない。
「ん……処女だけあってココも大人しいんだナ」
チロチロと陰唇を蠢いているのが感じ取られる。時折割れ目を舐め上げられて、背筋を冷やされる。気色が悪い。
「おい、動くナ。……ああ、そうカ。気持ちよくないんだナ。やっぱりクリのが良いのカ……?」
「うっ……く」
何か突起のようなものに舌を巻き付けてくる。余計に気色が悪かったが、今までに感じたことがなに何かを感じた。
何だろう。この感覚は。
「クク、やっぱりクリだけは感じるみたいだナ。しっとり濡れてきてるゼ」
アーボックは無造作に尻尾の先で秘部を突ついてきた。
「ちょっとこれデ、かき回してやるカ……」
レントラーは耳を疑った。
「む、無理だって、そんなの……入るわけが……」
「裂いてでも入れてやるよ」
「そんな――」
レントラーの言葉は小さな悲鳴に呑まれた。
「ほら、簡単ニ入るだロ? どんどん深く入れてやるゼ」
先端を入れて得意になったアーボックはレントラーが暴れだすのも構わなかった。レントラーの処女が、徐々に深く侵されていく。
「うっ、いや、うぐ……」
「苦しいカ? 大丈夫、すぐ良くなるゼ」
「んっ……だめ、動かないで……」
アーボックの尻尾がレントラーの中で激しくのたうち回る。
最初のうちこそ潤滑不足で、その刺激は痛みでしかなかったが、愛液の分泌が進むにつれて、摩擦は和らいで、音は淫らになり、痛みは次第に疼きへと変わって。
「ククク……良い顔ダ。やっぱり女の蕩ける表情ってのは良いもんだナ」
アーボックに言われて初めて、レントラーは自分が感じ始めていることに気がついた。屈辱、羞恥、倒錯、欲望。後ろめたい感情がせり上がってくる。
「だ、誰がこんなことで……」
「素直になれヨ」
アーボックが一際強く突き上げる。レントラーは小さな悲鳴を上げたが、それは嬌声だった。気持ちいい。最早肉体が性感を求めるのを、理性では抑えられなくなってきた。
「クク、もうそろそろ良いカ……旦那」
「え、何?」
「その立派な物デ、こいつ貫いてやりナ」
「良いのか? そりゃ僕だってもうはち切れそうだけど……」
「俺は頃合いを見テ、後ろの方に突っ込むからサ」
「……良いね。全く女を虐めることに関しては、君に敵わないや」
「後ろって……」
肛門のこと、と聞く間もなく、アーボックが、今度は首にぐるぐる巻き付いてきて、レントラーを仰向けに押し倒した。反射的に前脚でアーボックを引きはがそうとするが、息が詰まるほど締めつけられはしなかった。
「旦那。俺は頭だけ押さえル。首から下は好きにしてくレ」
「ふふ、ありがとう」
邪気の無い言葉の直後、のしのしと重い足音が迫ってきた。
あの巨体だ。一体どれだけ大きい物を持っているんだろう……。そう考えて、余計に濡れてしまったことに、レントラーは驚いていた。
紫色したアーボックの胴体しか見えない中で、腹に顔を埋められたのを感じた。
「んー……良い匂いだ。今まででも結構上の方かな」
「今まで、って、こんなことするの私たちが初めてじゃないの」
「当たり前だロ。初めてでこんな手際よくできるかヨ」
アーボックがどこか誇らしげに答えた。
今までの被害者はどんな責め苦を受けたんだろう。尻尾をねじ込まれて、巨根で突き上げられて、それから、どうされたんだろう。
想像が膨らむほど、クリトリスが熱烈に勃起していった。カイリューに、それを爪弾かれた。
「やん!」
「おお、ごめんよ。あんまりクリがビクビクしてるからさ」
「旦那、こいつ明らかに感じてるゼ。もうとっとと突っ込んでやれヨ」
「うん、そうだね。我慢は健康に悪いしね。僕だってもうずっと我慢してたし」
「え、いや、やめ――ぐぅっ!」
「野暮なこと言ってんじゃねェ。てめえは大人しくハメられてりゃ良いんだヨ」
腹の上から、カイリューの体重がのしかかってきた。貞操が奪われる。見知らぬ相手に、無理やり。
自分が、こんなことで興奮が湧き上がってくるような性分だとは、夢にも思わなかった。
「うーっし。じゃあ挿れるよ」
「いっ、やめ、あっ、ああぁっ!」
ぐっしょりと濡れた秘唇は、自身の容量も考えず、血走った巨根を秘部に迎え入れた。おしとやかだったものが、みちみちと音を立てて拡張されていく。
興奮したのか、アーボックがシューッと息を漏らした。
「旦那、中はどうだイ?」
「きついよ。んっ、相当こらえないとすぐ出してしまいそう……」
「ひっ、ひんっ、ひぅぅ」
限界をはるかに超えて拡張された秘部だったが、不思議と苦痛はあまりなかった。燃えるような熱さが、疼くようなじれったさを生み出している。
カイリューは巨体を緩慢に前後させ始めた。
「やっ、あっ、」
壊れる、と思った声は甘い吐息に変わっていた。アーボックがいやらしい笑みを浮かべながら、仰向けのレントラーを覗き込んできた。
「ほら、すぐ良くなるっテ言っただロ?」
快感でだらしなく開かれた口に、アーボックが食らいついてきて、レントラーの口腔を舐め回す。応えちゃいけない。一瞬そんな戒めが脳裏をよぎったが、レントラーは快感の前に無力だった。
「キス、初めてかい? 初々しいな」
カイリューは楽しそうにレントラーの胴体を掴んで、本格的にストロークする。愛液の、石畳の床を濡らすほどに分泌され、カイリューのピストン運動も苦にならなくなっていた。
苦が去って、残されたのは、強い心も屈伏させる至上の快楽である。
「ん……ぷはっ、ふゥ。すっかり積極的になったナ」
「ふっ、はあっ、あっ、そ、そこ……」
「そコ?」
「ふふふ、ここが良いのかい、レントラー」
「うっ、あうう! も、もっと……」
「お望みとあれば、いくらでも」
カイリューのペニスは、レントラーを痺れるような快感で虜にしてしまっていた。抵抗する気持ちはすっかり鳴りを潜め、男根をむさぼる肉欲がレントラーに囁きかける。
好きなだけ犯して、私をめちゃくちゃにして、私の主人がされている以上に雌としての私を蹂躙して……。
「良い顔だなァ」
フシュルルルと、舌を巻きながらアーボックが嘆息した。この様子なら、と呟くと、レントラーの首から離れた。逃げられるかも、なんて発想は浮かばなかった。
「お、とうとうアナルにも突っ込むかい」
「あ、あなる……?」
ずんずん突いてくるカイリューに、もつれる舌で聞いた。どこかで聞いた覚えがある。
「クク、アナルってのは、肛門のことサ」
「肛門……」
そんなところまで犯されたら、もっとおかしくなってしまいそう。嫌な気分は全くしなかった。背筋がぞくぞくして、気持ちが昂った。
「おいおい、もっと嫌がってくれヨ……まあいいけド」
カイリューのそれとは違うものが、肛門にあてがわれ、そのまま一気に直腸を貫いてきた。
「うっ、ひぁっ!」
「おお、アナルでも感じるのカ」
「前途有望だなあ」
アーボックのペニスはレントラーのアナルをかき回す。二つの穴を塞がれ、レントラーの股間は愛液やら何やら分からない大量の粘液にまみれ、レントラーたちを汚していた。
アーボックの締め付けから解放され、自由になった前脚は、洪水のような快楽に耐えかねるように、空を掻いていた。
「ううん、くぅ、ふああ……」
「おいおい、さっきから喘ぎばっかでつまんないんだヨ。おら、雌豚らしくぶひぃとか言ってみロ」
「うっ、誰がそんな――ああん!」
「僕も聞きたいな、レントラー。じゃないと、壊れるまで責め立てるよ?」
「ひっ、う、ぶひぃ……」
「はいよくできました。ご褒美に子宮口責めてあげる」
「いっ、いやぁっ! はぁっ!」
「おい、まだダ。私は醜い性奴隷です、ほら言エ!」
「わ、私は醜い性奴隷ですぅ……」
「性奴隷! お前は俺にケツマンコをどうして欲しイ?」
「私は、ケ、ケツ、マ……」
「言うこと聞けないやつハ、こうダ!」
「あうぅ! ケ、ケツマンコをぐちゃぐちゃにかき回して欲しいですぅ! おね、おねがいしますっ!」
「奴隷の言うことなんて聞いてやるつもりはなかったガ、今回ばかりは特別ダ。感謝しやがレ!」
「ふあぁっ、ありがとうございます! いやぁ……!」
二匹に穴を突き上げられる。自我も何もかなぐり捨てて、涎を撒き散らしながら、快楽に身悶えする。レントラーは、強く、高く、性奴隷の台詞を響き渡らせた。
もっともっと犯してください――。
「ぐぅっ、凄い締め付けダ……も、もうイク……」
「僕もだよ、アーボック……どうせだしこの子も一緒にイカせようか」
「そ、そんな、中出しなんて、だめです!」
「黙レ性奴隷。旦那さんがナ、お前も俺たちと一緒にイカせようって言ってるんダ。今から覚悟しとけヨ」
「い、今からって、もう私精一杯です……!」
「大丈夫。女の子は心強いから――うぅ、アーボック、もう僕スパートかけるよ」
「了解ダ、旦那!」
「うあぁ! いやっ、くあぁ!」
二匹が欲望を抑えていたタガを外し、好き放題に腰を打ち付けてきた。意識が真っ白に吹っ飛んでしまったかと思うほどの強烈な快楽が全身に駆け巡る。
気持ち良くなりすぎて、気が狂いそうで、死んでしまうじゃないかと怖くなって、それでも止められなくて、レントラーは仰向けのまま痙攣するように腰を揺さぶるのを止められなかった。
「ううう、やっぱりもうそんなに長持ちしないや……」
「旦那は長持ちしてるだロ、俺なんかこいつのケツマンコが凄すぎてもう危なイ……」
「レントラー、僕たち、君の中に出したいよ、いいかな」
精液で自分を汚して欲しい――。
「い、良いですぅ! 中に、中に出してくらはいぃ!」
「おいおい呂律回ってねーヨ。本当に淫乱な雌豚メ……」
「うぅ、もう出る……」
レントラーは無意識のうちに叫んでいた。
「だ、出してぇ! 私の中に一杯出してぇ!」
「だ、旦那、俺ももうイク……ぅ、うあぁ!」
最後の一突きで、熱い精液が注ぎ込まれた。膣から、肛門から、その両方から。その一突きでレントラーの快感は絶頂に上り詰め、本能の叫びを挙げた。
二匹の注ぐ精液は、オルガスムスに打ち震える肉壁に絡み付き、レントラーを白く染め上げる。止まらない射精は、レントラーをたちまち満たすが、ペニスが塞いでいるために外へ出てこれず、レントラーの体内を膨張させていく。
繋がりあい、見識のほとんどない獣たちは、示し合わせたかのように、絶頂に咆哮していた。本能によって得られた快楽が、三匹の心を原始的な部分で通じさせたのだった。
三匹の咆哮は、空中で絡まり合って、牢獄を淫靡なハーモニーで一杯にした。
レントラーは力尽きて仰向けになったまま事後の余韻に浸っていた。
二匹の射精は尋常ではない量の精子を吐き出して、膣の方は、子宮の先の輸卵管まで、肛門の方は、直腸を越えてS字結腸までが、雄の種子で満たされた。留めておけない分が、粘りながら菊門や割れ目から漏れ出ていた。
体外へ押し出された精液は粘り気が強く、蛞蝓のようにレントラーの体を伝って、白く水たまりを作っていた。
精液だけでもそんな有様だから、レントラーは腹から太股にかけて、精液、愛液、腸液などの液体で汚され尽くされていた。そこから発せられるきつい性の香りは、狭い牢獄をあっという間に充満した。
「クク、どうだ、良かっただろ。性奴隷さん」
レントラーから少し離れたところでくつろいでいる雄たちが話しかけてきた。性交の余韻で寛大になっているレントラーは微笑みを浮かべ、
「うん、すごく……」
と言おうとした。しかし、俄かに自分と彼らとの関係を思い出して、甘い余韻はシャボン玉のように破裂した。
そうだ、自分はレイプされていたんだった。途中から凌辱されることで悦に入っていたから見失っていたが、これは紛れもなく辱めである。彼らはレントラーをコケにしたのだ。
そう思うと仰向けでいる気にもなれない。静かに体勢を整え、石畳に座る。尻の辺りがヌルヌルするのが余計に腹立たしい。
「私は、性奴隷なんかじゃない!」
中に出して、と叫んだ時と同じぐらい、無意識な言葉だった。どうして今更になって行為に対する憤怒がこみ上げてくるんだ。この怒りは何にぶつければ良いんだ。
「中に出してくらはいぃ、なんて言ってたぞ君は。人格、二つあるのかな?」
「クク、いざセックスとなると色情狂になっちまうわけダ。こりゃ良イ、こりゃ良いゼ」
アーボックが耳触りな高笑いを上げる。室内育ちのレントラーは、おしとやかに育っていたので、殺戮願望と言うものは、今の今まで抱いたことがなかった。
「しかし、ポケモンは飼い主に似るって、本当みたいだね」
カイリューがそう言うのを聞いて、レントラーに電流が走った。
主人のことを忘れていた。今まで自分のことに手いっぱいでほとんど気にかけることができなかったが、主人はどうなったのだろう。
「おイ、壁の向こうの、聞いてみろよ。お前は性奴隷だガ、お前の飼い主は肉便器になったみたいだゾ。聞いた限りだがナ」
肉便器。性奴隷より酷いじゃないか。レントラーは耳をぴんと立て、壁の向こうの言葉に意識を向けた。カイリューも興味深そうに壁を見つめる。
「……しゃぶれ」
「先にボールギャグ外さないと」
「じゃあお前外せ。付けたいって言ったのお前だろ」
「はいはい。ほら」
「おい、もう一度言うぞ、しゃぶれ」
「い、いや、嫌です……」
「おい、忘れたか肉便器。お前のレントラーはいつでもどうにでもできるんだぞ」
乾いた音。
「うぅ……すみません、でした」
「三回目の命令だ。しゃぶれ」
「……はい」
「良い子だねー。じゃあ俺はもう一回アナルで扱いてもらおうかな」
大体向こうがどのような状況になっているのか、把握するにはそれだけで十分だった。
「お涙頂戴だナ。自分の飼ってる性奴隷のためニ、なんでも言うこと聞く肉便器になるとはナ」
「なんだか、喜んでるみたいにも聞こえるけどね」
レントラーは自分の怒りが、誰に対する怒りなのかようやく理解できた。自分自身に対する怒りだったのだ。
自分の主人が、自分のためにプライドも何もかも捨ててしまっているというのに、自分はどうだ。ケツマンコをぐちゃぐちゃにかき回して欲しいとか、中に出してくらはいとか、主人の思いを蔑ろにしすぎじゃないか。
「さて、向こうでは二回戦に突入してるみたいだし」
打ちひしがれる暇はなかった。カイリューたちの方を振り向けば、既にペニスを勃起させていた。
「色んなものが渇く前ニ、お前のこと精液漬けにしてやるヨ。顔から、胸から、肉球まで」
「良いね、精液漬け。やっぱり、女を虐めることに関しては、君に敵わないや」
女の敵が、余裕綽々と言った様子で性奴隷を狩りに来た。絶望を紛らそうと深呼吸すると、自分にこびりついた雄の生臭さが、存外快くて、自己嫌悪した。