「ねぇストライク、今日は何の日か知ってる?」  
「えぇぇ!?し、知らないなぁ」  
「今日はお前が俺のためにチョコレートを用意する日なんだ♪」  
「…え…ゴメン、なんにも用意してない……」  
「仕方無いなぁ!ストライクを食べちゃうしか…」  
「ひ、ひぇぇぇっ!」  
「『剣の舞』『剣の舞』『剣の舞』」  
「ん?あ、リーダ……」  
「喰らえぃっ!」  
「ぎゃあああああっ!」  
「ふぅ……全く油断も隙も…」  
「リーダー!あ、あの…これっ…!」  
「ん?……お前、これは…」  
「あの、好きとかじゃなくてねっ!これからもヨロシクって意味で……」  
「……ありがとな。」  
 
 
「ああ、僕は何て幸せなのだろう……」  
ある独りの男がそう呟いた。  
 
ただいまの日時は2月の14日、巷では『煮干しの日』と呼ばれている。  
幾つかの説は提唱されているものの、世界で始めて煮干し(の原型となる保存食)が発明された日であり、  
詳しく話すのならば紀元前XXX年、ルギアが自分が海の神なのかを疑い始めた頃………  
「…ホワイトデーのお返しを考えなくて良いって幸せだなああああ!」  
 
……町並みには『ハッピーバレンタイン!』『気になる彼を射止めるチャンス!』のような煽り文。  
そしてワゴンに山盛りの様々な形をしたチョコレート類。  
そしてそんな町中を歩くのは幸せそうに笑っている男女のペア……  
 
「…爆発しろ!盛大に爆発して全員死ね!……畜生っ!」  
この男、顔立ちは至って悪くはない。寧ろ世間で言う『活け麺』の部類に入る。  
誰もが引く趣味も持っていないし、内向的でも目の大きさが顔の八割を占めるアニメが好きでもない。  
 
しかし世知辛いのがこのご時世。男はこの休日に朝早く目覚め、寝癖を撫で付け、  
 
そして町内をおおよそ五周分程歩き回り、一応開いてはいる学校に行き、下駄箱を調べ………  
そして若干涙目になりながら家路に着いた。  
行き場の無い寂しさに途中自分でチョコレートを買った。  
若い店員に鼻で笑われたような気がし、店を出てすぐにそれをぶん投げた。  
「……ごるるるぁぁぁぁぁっ!」  
家に帰っても行き場の無い怒りが叫びへと涙へと変わり、とめどなく溢れてくる。  
髪の毛を掻きむしり、枕に関節技をかけ、電灯の紐にドロップキックをかました。  
 
 
「…マスター、何が不満なんだ?」  
「今日はニンゲンのメスが好きなオスに煮干しを贈る日なんだよ。」  
「でも、煮干しなんて町に並んで無いが?」  
「最近じゃ贈るのがチョコレートに変わったってさ。」  
その男の所持するポケモンが巻き添えを喰らわぬよう部屋の端で囁き合っている。  
クッションに怒濤のストンピングを打ち込む男を見ながら、  
ポケモン達は男のために何か出来ることがないかを考えた。  
 
 
さて、ここで予め言っておくが男の所持するポケモンは一体のみである。  
橙色の身体に白い体毛で覆われた胴体、しなやかな尾と頭には炎がめらめらと燃え盛っている、  
男と同じくらいの大きさの、その体色と外見通りに炎の力を宿しているポケモン。  
彼は男とは長い付き合い、ではなくひょんな事から半年程前に男に拾われたのである。  
一方話しているポケモンはとても小さく、桃色の体毛で覆われた触り心地の良さそうな身体に、  
青色の眼と細長い尻尾を持つポケモン。但し枕詞に『幻の』が付属する。  
 
どうしてこの二体がこのように話し合う仲となったのかについては、  
『過去編』『出生編』『唯一神狂咲編』が混ざっているためあまり言いたくはない。  
(その他の言いたくない理由として、『唯一神狂咲編』においては  
「偉大なる」「最強」「負け知らず」という言葉で全文が七割方埋まっていることが挙げられる)  
 
桃色のポケモンは物知り且つ面白いこと好きで、本日この家に来た所存である。  
そこで橙色のポケモンは主人の行動の奇妙さを不審に思い、  
現在壁に蹴りを入れ始めた主人をよそに話し合っている訳だ。  
 
「予想通りで安心した。去年と全く同じ。」  
「毎年この日にこうなるんなら、早くどうにかしたいんだが……」  
「俺の手元にはぁぁぁ!何にも無いんだよぉぉぉ!」男のまさに魂の叫びが部屋中に響く。  
 
「……マスターは何か欲しがっているみたいだ。」  
橙色のポケモンが男の叫びを解釈し、男が欲するものが何なのかを考え出す。  
 
「ケーキ……は、前自分で買っていたな…最近は自堕落に何にも欲しがっていなかったし……何なんだ?」  
「教えてあげる。あの人間が欲しいのはね……」  
 
頭を抱える橙色に、桃色が笑いを堪えながら答えを言おうとする。  
男は現在怒りと悲しみの矛先をハンガーに向け、振り回してはブーメランのように飛ばす。  
その動作をクローゼットに掛けられている分、繰り返した。  
 
「今まで僕は長くこの日を見て、その経験からするに……」「するに?」  
男が電灯の紐に全力で跳び膝蹴りを放った。しかし電灯の紐には当たらなかった。  
ああっ、男は着地を失敗して脛を押さえて悶えている。  
ああっ、悶えながらもクッションに向かって片手でアームロックをかけている。  
「…あの人間は誰かに抱かれたいんだよ。」  
「マジで?」  
「うん。今まで見てきた中では皆最終的にまぐわってた。」  
「……俺がマスターを?」  
「サポートしてあげようか?」  
橙色は人間のものと酷似した指を顎に当てて主人と激しく交わる自分を想像してみる。  
と、頭の炎が急に激しさを増し、周りの温度を暖める。  
「……まあ、マスターが痛くないように」  
「ふぅん…優しいんだ、へぇ……」  
「……混ざる気か?」  
「暇潰しにちょっとね。」  
桃色は愉快そうに笑った。  
男はクッションに電気アンマ(秒間5連打)をかけている。  
 
「ヤるからには、お互い気持ち良くしたいものだが」  
「じゃあさ、こうゆうのは……」  
その後、ポケモン達は延々と話し合った。男が泣きながらインスタント食品を啜る姿は見逃さなかったが。  
どうせ男にはこちらの言葉は解らないため、全文伏せ字にしていい程えげつない会話になった。  
 
「今日は………素晴らしい一日だった…ありきたりで普遍的な、なんの大それた事も無い……」  
男は風呂に入り、寝間着に着替えて若干乱れた掛け布団を整え、潜り込む。  
「…温もりが欲しいよお……」  
一昨年も昨年も、そして今宵も、今日の夜は涙を飲んで眠る。きっと来年も再来年も、  
人がメタグロスに計算対決で勝つ時になっても今日はこうだろうと男は考えている。  
「……ん?」  
モソモソと布団に何か生き物が入ってくる感触。服越しに体毛と男の体温より高い熱が伝わってくる。  
「…ゴウカ……?」  
男は自分が所有しているポケモンの愛称(西川さんをニシさんと呼ぶようなものだが)を呼び、  
「あああ……お前がいてくれて良かった…」  
涙をこぼしながら、その熱が高めの身体をすがり付くように抱く。  
 
(……もうちょい待て…ちょ、マスターが少し…)  
その後ろで桃色のポケモンがふよふよと浮き、  
計画を実行するタイミングを計っているのを知らずに。  
 
男は橙色を抱き寄せ、その高めの体温を満喫しようとする。と、次の瞬間!  
 
(…聞こえますか……私の声が聴こえますか……)  
 
「なッ…!何だこの声は…おのれ、悪魔め!ゆ゛るざん!」  
男はいきなり頭の中に流れ込んできた声を察知し、速やかに辺りを見回す。  
橙色の合図によって、桃色が男にテレパシーを送っている。桃色は予定通りに思念を送る。  
(…私は帝国の手先ではありません…貴方のためにやって参りました……)  
「…お、俺のために…?」  
男は警戒を緩めて思念に答えることに集中する。  
もし桃色の思念がダミ声に聞こえるようだったら速やかに眠っていただろう。  
桃色の思念は男には透き通った成人三年前の少女の声に聞こえているのである。  
(あなたは可哀想な人です…こんな日に無駄な涙を流す……)  
「何を言っているんです…今日は…祝日でも何にもない日でしょう……?」  
否、煮干しの日だ。且つヴァレンタインデーだ。心の奥底で知っているから男の目から涙が溢れるのだ。  
 
(…そんな可哀想な貴方を…そのポケモンが慰めてくれるそうです…)  
 
橙色が男の両肩を掴み、にやりと笑ってアピールしている。  
「……いや、こいつは雄ですが、それに、俺も男なんですけど……」  
(全身の力を抜いて、楽な姿勢を取りなさい…四つん這いとか、六つんばいとか…)  
「ねぇ、ひょっとしてこの状況、楽しんでません……?」  
(…ふっ……恐れる事は何も無いのです…)  
「今、俺の事を笑ったな…」  
(…その時、不思議な事が起こった)  
 
何と、男は身体に力を入れることが出来なくなってしまった。  
茹ですぎた麺類のようにへにゃりと身体がベッドに沈み、橙色をサンドイッチする体勢を取る。  
「うおぁっ!?…ゴウカ、まさかお前俺を…」  
(そのポケモンは言いました『低身長異種拘束上下関係下克上ハァハァ』と。)  
橙色は「流石にそれは無い。」と言わんばかりに首を横に振って、  
 
男を掴んだまま身体を回転、結果マウントを取る。  
「ゴウカ、お前もか」  
(痛くはしないつもりです……寧ろひぎぃらめぇと喘ぎを聞きたいのです。私が。)  
駄目だこいつら。早くなんとか出来ない。どうしよう。  
男の心の中の悲痛な叫びには、誰も答える者はいなかった。  
 
(まずは服を脱いで貰います……半脱ぎ派の意見は申し訳ありませんが却下とさせて頂きます。)  
「止めろぉ!俺は一応ノーマルなんだか…っ…くひひっ…ゴウカッ…」  
橙色の人間と寸分違わない指が、易々と男の寝間着を剥ぎ取る。  
その際体毛がチクチクと男の地肌を刺激し、男は激しく擽ったく感じる。  
寝間着の脱がしやすさも合間って、たちまちに男は一糸纏わぬ姿となった。  
(何かもうこのキャラ面倒臭くなってきた……)  
「くぅぅ…っ……」  
夜中ですっかり暗くなっているものの裸を自分のポケモンに見られているという事に羞恥を感じる。  
おまけに橙色の呼吸音が、いつもと変わっている。如何にも興奮しているように、  
例えばピィを見つけた某エスパーポケモンのように息を荒くしているのだ。  
ここまで来たら最早事態は一直線に進む。男に新たなる世界が花開くだろう。  
そうなる理由は幾つか存在する。一つは橙色が血気盛んな両刀であること。  
一つは生殖機能を持たない桃色が他の生き物の生殖を見るのが大好きであること。  
「…んぅ…っ…!…」  
橙色が男に抱き着いて体を密着させ、手が男の体を撫で回し始める。  
獣臭く熱い吐息がうなじに掛かり(意図的ではない、身長差による必然だ)、  
おまけに強く早い鼓動がどくんどくんと伝わってくる。  
(ああ、ゴウカは本気なんだな。本気で俺をワッショイワッショイする気なんだな。)  
男はこの日一日が丸々夢ならばどれだけ良いだろうかと考える。  
朝起きたら丁寧に包装されたチョコレートがガラスというガラスを砕いて  
 
「ひゃ…っ…!」  
ねっとりとした熱い感触。橙色が男の身体を例によって首筋に舌を這わせ、  
脇腹や臍など敏感な部分を撫で回している。  
身体全身を擦り寄せ、自身の臭いを付けるように身体を揺する。  
 
(畜生っ…!でも、何だこの異様な、いやそんな筈は…?)  
「ふぁぁぁ…っ……」  
いつの間にか男の逸物は隆起し、熱い橙色の腹辺りに先端が当たっている。  
同様に、橙色の逸物も見事に怒張していて。  
形こそ同じだが男よりも長く、遥かに高い熱量を持つ其れが男の腹をぐいぐい押しているのを感じた。  
 
互いに興奮しきった身体が、汗ばんでより雄の臭い、獣臭が鼻孔に届く。  
男は僅かにしか動かせないまま、自分自身が所持しているポケモンによって身体を紅潮させていた。  
「はぅあぁ…っ……んぷっ……」  
まるで長年付き添っていた恋人同士のように、唇同士が重なりあう。  
(無論ポケモンに唇があるかどうかは別の話だ)  
身体の表面よりも熱く、人間のものよりざらついた舌が男の口内を犯し、獣の風味を注ぎ込む。  
「…ふっ…んぅぅ…っ…!」  
やたら粘度の濃い唾液が重力に従い男の喉へと流し込まれてゆく。  
そうしている間にも舌が上顎を撫で、歯茎を丹念に擦り、舌をじゅるじゅると絡ませて、快感が粘膜を駆け巡る。  
橙色は器用に、執拗に男の口内を攻め、脳味噌まで蕩けさせようとしているかのように。  
(……舌攻めだったら、僕にも出来るな…  
だけど万が一『舌より欲しいものがあるのぉ』って言われたらなぁ……)  
 
桃色はそれをじっと眺める。もしかしたら今後の参考になるかもしれないから、念入りにこの情事を見ておこう。  
そんな建前を考えながら見続ける。  
「…んむぅっ…んぅ……ふはぁっ……ゴウカぁ…」  
男の思考回路が良い塩梅に蕩けた所で、長く繋がっていた舌が離された。  
口内に残るねっとりした獣の唾液を惰性で飲み下し、逸物から先走りがとめどなく溢れた。  
(あんなに荒んでいたマスター……今はもう可愛すぎて我慢するのが辛い)  
(それは解る。このまま終わりは許さない……だからヒトの身体を反転させてもらえる?)  
(何でだ。もう色々はち切れそうだが)  
テレパシーによる会話も、橙色の思考にはあちこちでノイズが聞こえる。  
『ズッコンバッコンしたい』という本能が理性を打ち負かそうとしているのだ。  
(だからだよ。空気化は嫌だからちょっとミラクル的パワーで拡張を)  
 
橙色の身体が男の腰をしっかりと掴みぐるりと回転、  
男が橙色を組み敷く形となって、都合良く後ろに回り込んだ桃色から丁度孔が見える。  
(ありがとう。さーて、ひぎぃむりぃは無しな感じで……)  
下手をすれば男の尻が爆発しかねない程の念力を慎重に、それでいて着実に男の孔に滑り込ませていく。  
 
「うぁ…っ……?」  
最初、男はほんの小さな違和感を感じた。  
そんな筈はないのだが、自分自身の孔の中に生き物が入ってきたような感覚。  
その入ってきた「何か」が、急に膨らんだようで、男の内襞を擦り上げ出す。  
 
「ひぃ…ん……っ…何…だ?」  
(現在拡張中…20%……飛び飛び、85%。ゴメンね。)  
例の声が男の頭に響いた。そして  
 
「…ひぁぁあぁっ!?……」  
念力によって男の穴が激しく攻め立てられ、開閉を繰り返す。  
まるで内側をこねくり回されるような、ひたすらに激しい快感が襞に伝わる。  
「ひっ、ひぃぃっ…!?」  
水音が孔から立ち、前立腺を抉り返されて腰ががくがくと震え、腹側の橙色に先走りが垂れる。  
(しかし、前戯では達させたくない。ギラギラした眼でこっちを見ているから。)  
「あぁぁっ…ゴウカ……」  
桃色は念力の操作を終わらせて、男への拡張を止めた。  
既に弄くられる事に快感を覚え、孔は艶かしくひくひくと動いている。  
橙色が男の下から抜け出して背後に回り、腰を抱えて高さを調節する。  
「…あ……っ……」  
孔に橙色自身の逸物の先端が触れ、その熱さに思わず声を漏らした。  
とうとう入ってくる。人間とは違う、獣のあれが。男は溶けかけの頭でおぼろ気に思って、  
 
ぐちゅぶちゅ等というありきたりな水音を出しながら、一気に逸物が突き立てられた。  
「ぁぁぁ…ぁ…っ…!」  
熱い。最初に男はそう感じ、次に僅かな異物感、そして多量の快感。  
ずるずると容易に侵入した逸物はまるで男を内部から焦がすように熱を拡げている。  
びくびくと内襞に当たる度に、それに反応して更に質量を増しているような。  
「ゴウ……カ…」  
男は快感のあまりに、内部を抉っている逸物を軽く締め付けてしまった。  
と。  
 
「ひぃ…ぐ…っ…っ!?」  
既に橙色の理性はとっくに切れかかって、先程の締め付けで完全に切れた。  
腰をガッチリと抱え、猛烈な勢いで身体を揺らし始める。  
全身の体毛を逆立たせ、頭の炎を更に燃え上がらせて。男が自分の主人であることも忘れて。  
ひたすらに快楽を得るために。雌に快楽を与えるために。  
 
「あぐっ…ゴウカぁ…っ……」  
火の付きそうな程速く橙色の腰が動かされ、逸物が淫靡な汁を纏いながら抜き差しされる。  
人間の形状とほぼ同じの先端の膨らみが(本来は他の雄の子種を掻き出すためのものだ)、  
返しとなって引き抜く際に内襞やら孔の入り口を引っ掛け、突き込む際に更なる快感を男に与える。  
「…!…ぅぁぁ…っ…」  
限界が近いのか、橙色のしがみつく力が強くなる。  
背中に密着した身体も熱く、既に男は汗まみれになっていた。  
首筋に吹き掛けられる荒い吐息すら気持ち良く感じ、自分の中で暴れる逸物が快感を。  
橙色もすっかり本能のままに男に腰を打ち付け、跡を残すようにうなじに噛みついた。  
「ひゃぁ…っ!?」  
すると男は橙色の逸物をより強く締め付ける。  
しこりのような前立腺を擦ると声高に喘いで。  
「もぅ……っ…出る……ぅ…っ」  
しゃくりをあげてベッドを汚していた男の逸物は限界が近く、小刻みに震えている。そして  
 
「!…っ…ふあぁ……ぁぁっ…!」  
男と橙色は、ほぼ同時刻に絶頂に達した。  
男の逸物は先端から勢い良く白濁が飛び、ベッドと枕に染みを付け生臭さを漂わせる。  
「やっ……熱…ぃ…っ……」  
橙色は逸物を全て男の内部に入れ、射精した際の急激な締め付けにまかせ、白濁を注ぎ込む。  
人間よりも遥かに粘性の強く濃厚な白濁は、男の内襞にたっぷりとこびりつく。  
男よりもずっと長く橙色は射精し続け、白濁を溢れさせることなく男の中へと。  
「ゴウカ……ぁ…」  
白濁の熱を感じながら、男は十二分に雄臭くなったベッドに沈み込んでしまった。  
 
(はっ…はぁっ…)  
(…どうだったかい?)  
(もう……マスターと結婚したい)  
(ふぅん)  
男に挿していた逸物を引き抜くと、ネバついた自身の白濁が糸を引く。  
裸の男が風邪を引かないように隅に転がっていた布団を掛け、ついでに自分も布団の中に入り込んだ。  
 
(良い夜だった……ありがとな。)  
(いやいや、こっちも良いもの見せてもらったよ。じゃあね。)  
桃色は小さめの腕を数回振って、テレポートして消えた。  
 
 
その後の行方は、誰も知らない。  
 
「……アナタは、誰?」  
(それは匿名希望。ひょっとして、あのヒトが好きだったりする?)  
 
 

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